有川浩のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
本書は二つの物語で構成されている。Side Aでは作家である妻が病に侵され、Side Bでは夫が病に侵される。互いに対となる構成だが、読後に残る印象は大きく異なった。
Side Aでは、突然大切な人を失うかもしれないという恐怖が切実に描かれている。残された時間の中で生きようとする妻と、それを見守る夫の姿に深く心を揺さぶられ、思わず落涙した。
一方、Side Bは単なる立場の反転ではないように感じた。夫が癌に侵される現実を前に、作家である妻は物語を書き続ける。物語を書くことによって、夫が死に向かう現実を逆夢へと変えようとする、彼女なりの祈りのように感じられた。
結局、どちらが現実でどちらが創作なのかは明確には示されない。しかし本書の魅力は、その謎解きにあるのではない。愛する人を失う恐怖と、その現実を前にしてなお抱かずにはいられない願い。その両方を描いたからこそ、本書は読み終えた後も不思議な余韻を残すのだと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ知人の紹介で読みました。
有川浩さんの小説は初めてですが、優しい語り口と登場人物が善人寄りに描かれているため、最初は少し退屈に感じる部分もありました。しかし、最後の旅の中盤からは一気に引き込まれました。
サトルの生い立ちや置かれた環境、そして旅の「本当の理由」が明かされてからのストーリー展開は見事でした。
なんとなく、サトルが病気のために新しい飼い主を探しているのかな?とは思っていましたが、実際そうだと分かると、なんだか少し心にぽっかり穴が空いたような、虚しさややるせなさを感じました。
ナナがノリコをすり抜けて逃げ出すところは、もれなく泣きました。ナナとサトルの強い絆をひしひしと感じます。
サトルとノリコ、そしてナナの最後の別れも良かったです。死に際、サトルが一瞬ナナを感じるシーンは、切なくも本当に美しい魅せ方でした。
とても温かいストーリーでした。
-
Posted by ブクログ
ネタバレフィクションなのに何故かリアリティがある。リアリティの要因はきっと緻密で計算され尽くした設定だと思う。架空の法律が実際にあるのではないか、もしくはこれから起こりうる未来だとさえ錯覚するくらい綺麗で繊細な作り込み。このリアリティが作品に没入する入り口を作ってくれる。それでいてラブコメを織り交ぜる事で展開を作りワクワクを止めどなく堪能させてくれる。一人一人のキャラクターが勝手に動くと有川さんは仰っていた。その理由もまさしく深くまで考え抜かれた人物像がなせる技である。どんな人物か読者側も容易に想像でき、しっかりと動いていた。
「選ぶべきものを選ぶときに選び方を躊躇する奴は口先だけだ」「義理も縁もない他人に何かを頼む時「協力してくれるべき」とか「してくれるだろう」とか甘い見通し持ってるやつは絶対に失敗するわ。協力って期待するものでも要求するものでもなくて、上手く引き出すものなのよ。」「正論って面倒くさいのよ」「無法は無茶で叩き潰すのが図書隊の流儀だ」これらは心を震わされた言葉たちで、虚をつかれた。他のシリーズもぜひ見たい。特に柴崎が好き。