有川浩のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
読み終えて、まず感じたのは「構成の巧さ」だった。
テンポよく展開するエピソードの連なりを、私はずっと現在進行形の物語として読んでいた。けれど最後に、それらがすべて回想だったと明かされた瞬間、物語の手触りが静かに変わる。
機研での日々は、決して「今」では終わらない。
それはすでに過去の時間であり、だからこそ一つの塊として、どこか輝きを帯びて立ち上がってくる。
興味深いのは、この作品が学生時代の葛藤や苦悩をほとんど描かない点だ。
現実には、楽しいだけの時間など存在しない。それでも人は、過去を誰かに語るとき、辛かった記憶を意図的に省いたり、感情を削ぎ落としたりする。
『キケン』が描いているのは、 -
Posted by ブクログ
小説ならではの上手い話のようで現実もこんな感じでちょっとした縁や事件で身の周りの状況って良くも悪くも劇的に変わる。
ギリギリ第二新卒という状況を私も経験したのでよけいに感情移入してしまった。
まぁでも若いしね、と思ってしまう部分はあるが〝まだ間に合う〟っていう心持ちは良いものですね。
誠治の変化は見ていてとても気持ちがよかった。
恋愛要素はいるかなぁ?と一瞬思ったけど最後の2行で確かにねぇと思いました。実際そういうのが好転の手助けになるんでしょうね。
そこはさすが有川さんという感じで、青春味のある入れ方だったので良かったです。
これで終わりかと物足りなさを感じたのは、誠治の物語をもう少し見て -
Posted by ブクログ
観光開発、ツーリズム、市町村開発などを手掛けるデヴェロッパー及びその市町村の役所の窓口にはとても参考になる本書だ。役所は縦割り行政が強く「民間感覚」のない頭の硬い、変化を嫌う上役始め公務員が多い。予算をケチるあまり保守的な考えばかりで何もしない、ジリ貧になりつつあっても、気がついた時には手遅れとなっているのが現状、と言う。それを打破するには上層部の人事から変革が必須で、やってみようと言う挑戦意思が見えていない人材が言うだけでは変化できるわけがないのだ。日本の場合、多くはドン底に叩きつけられて初めて変化すると望む体制(雰囲気)になるが、すべての要因で変化嫌いが原因となる。現代、ネット社会をうまく
-
Posted by ブクログ
ネタバレ全体を通してSideAの方が面白かった。読んでいて、文体というか表現というか、内容よりも文章に価値があるような本だった。
またSideBでは、女性が夫を看取るのを避けたい気持ちから、落ちたら大変な怪我を追うような階段をわざと手すりを使わずに降りていく様子がとても印象に残った。自分も、大切な人が自分より先に無くなる状況に陥ったときに、後追いをしないで生きていけるのかと考えさせられる内容だった。
さらに知恵袋の解説で、ストーリー・セラーは、「もしかして有川浩の夫も...」と匂わせる形で二重の作中作を描いているという考察を目にした。これが本当に衝撃的だった。ここがいちばん面白いと思う。今のところネッ -
Posted by ブクログ
ネタバレサトルとナナの旅が始まってその目的を考えると早々にサトルの病が頭によぎった。旅をする中でサトルのこれまでのことが明らかになる度に泣けてきた。特に小学生の修学旅行中に両親を亡くすというのはそれだけで泣けてしまう。その後のサトルの人生は過酷だったと想像するけどその先々で人に恵まれて決して本人が不幸だったとは思っていない。現にかけがえのない人たちとの出会いがあった。引き取って育ててくれたノリコさんのキャラクターも独特だけどサトルの周りにはいい人ばかりだ。彼の人徳が惹きつけるのだろう。そしてナナは最期までサトルの心の支えになってその絆の深さを感じた。