小谷野敦のレビュー一覧
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昔広瀬隆氏が欧米の系図を著した時に、なんでも家系に結びつける(特にロスチャイルド家とか)との批判があって不思議に思ったのだが、こうして日本でもエスタブリッシュの関係がまとめられようになって、ようやく”こういう世界”では”陰謀論”とかではなく当たり前の関係だと認識されるのではないだろうか。閨閥関係にあるからいつも密室で決め事されている、と思う方が考えすぎで、もっと”スマート”に関係性が保たれているのだろう。特に何事か成し遂げた人はいかに成果を次に引き継がせるか苦心するものであり、利害が結びついてファミリーが広がっていくのは自然な事だといえよう。
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おもしろいけど散漫では?
伏見つかさの『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を挙げたところなど見所はある。
しかし『芥川賞の偏差値』は芥川賞の受賞作と作家を評するといふ一本筋が通ってゐるが、こちらは散漫な印象だ。
気になった点が三つ。
まづ「……が、……が……が……」と、「が」の連続した文は小谷野の癖だが、この本ではいつも以上に目につく点。さすがに多いのではないかと思った。
次に、説明文が作者やその周辺などの二次情報に始終して、なぜその小説を直木賞のとれなかった名作に挙げたのか理由が不明確なものがある。実際に読めばわかるのだらうが、ブックガイドとしてはさあ読んでみようといふ気にならず釈然としない。たとへば『ドグラ・マグラ』は《それほどの作とは思えなかった。》《〔註。いろいろ見たり読んだりきて〕割とこれはまあ、ましなほうかなと思うにはいたっている。話のネタにはなる。》と書いてあり、私としては果してこれは直木賞のとれなかった名作として挙げてゐるのかと思った。【追記】実はもともとの表題は『直木賞のとれなかった小説たち』だったが、編集部の意向で変へられたといふ。
そして、相変らず読者が見たくないものまで見せられてゐるやうな、ある意味で露悪的な正直さがある。たとへば、村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』のフェラチオ描写について、私もフェラチオされるのは好きと書いてあるのに気持悪さは感じた。小説ならいいが、かういふ本にまで書くのはどうか。万人受けはしない書き方だ。
小谷野はツイッターで売れないと書いてゐたが、やはり『直木賞の偏差値』を期待してしまった。 -
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ネタバレ2022年10月に川端康成の再読を始めたとき、結構長いマラソンになりそうだから、中間地点としてこの本を読もうと考え、目次に現れている本を搔き集めた。
ところへ作者が、津原泰水に対する中傷に近い文章をブログにアップした。
私は作者の下劣な品性を心底から軽蔑することになった。
もとより新書の「性と愛の日本語講座」、「日本人のための世界史入門」、
「文學界」で「ヌエのいた家」や「東十条の女」を読んだくらいの読者。
積読に「『こころ』は本当に名作か」「純文学とは何か」が控えているが。
おそらく「歯に衣着せぬ」と戦略的に取ってきたセルフイメージに、ブログやSNSで内側から食われているのだろう。
無頼と劣等意識とポジショントークとで訴訟馬鹿に。
この人はSNSは辞めたほうがいい。
と、思うが、川端初心者にはこの本は結構面白かった。
「川端康成伝 双面の人」「川端康成 詳細年譜」の落穂拾い、いや、それこそ新書にぴったりの初心者向け「小谷野敦、川端康成を放談する」みたいなコンセプト。
ものすごく面白いブログ記事のよう。褒めてる。
作者が川端を「信奉まではしていない」というスタンスが、面白さを引き出している。
また「魔界」だとか「旅人」といった川端評論のジャーゴンから距離を取っているのも、よい。
作品論とゴシップの間を縫う、雅俗の間を行き来する、とても面白い文章だと思う。 -
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間違いだらけの本。円谷プロが写真を提供しなかったというが、別な意味で正解だろう。
「岸田森と水沢アキがナックル星人に虐殺される」→水沢アキは榊原るみの間違い。後の方では直っている。
『円盤を見た!』→『円盤が来た』
『第三惑星の悪夢』→『第四惑星の悪夢』
「ゴジラも、あれはジョンストン島という米領で、水爆実験のために小さな爬虫類が巨大化した」→ジョンストン島ではなくラゴス島。
「キラアク星人を演じた美女・小林夕岐子」→キラアク星人を演じたのは愛京子その他の女優。
「仮面ライダーに、人造人間になってしまった悲しみ」→仮面ライダーは改造人間。
「ツインテールは(中略)怪獣のデザインは、有名な成田亨だが」→デザインは池谷仙克。
「『ウルトラマン』のアントラーはカブトムシである」→クワガタムシ。
『帰ってきたウルトラマン』の歌詞を間違えて紹介し、それに突っ込みを入れるのは論外だと思う。
「クルマニクラスという怪獣が登場していた。(中略)目は自動車のヘッドライトで」→クルマニクラスの目は3色の信号機。
『故郷は地球』イデの台詞「偽善者はいつもこうだ」→「犠牲者はいつもこうだ」
『快傑!ライオン丸』→『快傑ライオン丸』
『風雲!ライオン丸』→『風雲ライオン丸』
ウルトラセブン最終回「隊員二人が宇宙人の捕虜となり」→捕虜になったのは一人だったと思う。
「『セブン』のアマギ隊員だった阿知波信介や、『ウルトラマンA』の南隊員の池田駿介も死んだ」→アマギではなくソガ隊員。『ウルトラマンA』ではなく『帰ってきたウルトラマン』
著者は自分が交通事故に遭った日、家族旅行に行った日など入念に調べているのだから、肝腎の特撮関連の情報は正確に記して頂きたかった。
同世代の食文化の受容など、面白く読めた部分もあるので☆三つ。 -
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西洋では古代ギリシャ、東洋では三皇五帝、といった紀元前の時代から現代までを一気呵成に通貫した世界史読本。
著者の印象は、いわゆる「むずかしい人」とされるタイプなのではないのかなあ、と読み始めからちょっと感じました。これはダメ、あれは良い、と端々で仕訳が始まるのですが、その判断基準の統一性がよくわからず「むずかしい」のでした。それでも歴史の要約の仕方が巧みで、語り口もおもしろいので、著者のクセさえ認められたならばあれよあれよと読めてしまうでしょう。
世界史のアウトラインを辿っていくような感覚です。270ページに世界史を詰めこんでいるぶん、かなりのスピードで一時代が過ぎ去っていきます。でも要諦をつかんで書かれていますし、生煮えの知識を出してくるわけではありませんから、かゆいところに手が届くような心地よいわかりやすさがあり、そして面白みがある。
歴史の流れを追っていく中で、たびたびの豆知識やちょこちょこ脱線する箇所がでてきます。しかしそれが、ただただ歴史の流れを追っていくならばずっと平面図を見ているような感覚でいるだろうところを、世界史勉強に起伏のようなものを感じることができる仕掛けになっている。といっても、著者にそういった意図があったかどうかはわからないですが。しかしながら、ほんとうに博識だからこそ成せる書き方ではあります。
英国の王家ってドイツやフランスなど各国から連れてきていて、現在の王家はドイツ系なんだなあだとか、モンゴル帝国の版図の広げ方のすさまじさを改めて感じたりだとか、フランスの死刑執行人は代々サンソン家だった(漫画作品がありましたね)などのフランス革命の周辺知識だとか、京都を米軍が空襲しなかったのは、文化遺産を尊重したというのは日本人の誤解をGHQが利用しただけで、原爆投下の候補地のひとつだったからその効果を後で検証するべくそのままにしておいただとか、この本ひとつでも、雑談を咲かせるネタが豊富です。
こうやってまず概観してから世界史の気になるところを知っていくのは方法として良さそう。著者は最後に述べています。学者でもない一般人は、「だいだい」知っていればいいのだ、と。何も知らないのでは困るけれど、でも「だいたい」でいい、ほどほどでいいんだよ、と言ってくれていました。気張らずに学べることって、ふつうの人には良いことです。 -
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「バカ」のための読書案内。書名が衝撃的すぎて読み始めた。
内容は、筆者の主張がガンガン出てて面白い。夏目漱石だろうが、今人気の作家だろうが、面白くないと思ったものを面白くないとバシッと言い切っちゃうとこなんて、自分と意見が合わなくても、その書き方で笑える。特に歴史に関しては、わかんないよりわかってた方がいいんだから、下手に内容の難解なもの、長いものよりは、まんがとかの方がいいよっていう主張とかも、本当その通りと思う。
でもまあ、読むべき本にはとても納得したし、そういう意味ではいい本だと思うんだけど、ものの見方に関しては自分とあんまり意見が被らないな〜っていう印象。 -
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ただつらつらとミステリのタイトルが並べられて、よくない、わからない、わからないとはつまらなかったということだ、などのぼやきが続くばかりなんだけどさ。読み進めていくと、これが意外と面白い。膨大な量のタイトルが出てきて、中には雑読みしたり、途中でやめたり、読んだけどわすれてしまった、というのもあるものの、それだけの本を手に取るだけでも今どき珍しい人ともいえるだろう。作品をとりあげ、こまかく評するのも面白いこともあるけど、こうやってざっくりとただひたすらタイトルと〇か×かだけを並べるだけ、というのもわかりやすくてよい。
自分で読んで、あ、やっぱりつまんなかったんだ、という本もあれば、えー?あれ、そんなにダメかなというものもある。そういうものだと思う。本を読んで感じるものなんて、人それぞれちがうんだからさ。
本について、ああでもない、こうでもないという話を聞く楽しみを味わえたね。