小谷野敦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
こころ』は、いろいろな意見がわかれるところでしょうが、作品に齟齬はあるが、著述の時代を考慮すると名作といって良いのではないでしょうか。親友に対する裏切りや自殺に対するプロットで追うのではなく、江戸と明治の差異で読むと理解できるのではないでしょうか。小谷野 敦『夏目漱石を江戸から読む―新しい女と古い男 (中公新書) 』を読むとそのあたりが、すっきりしました。本書はタイトルで『こころ』論とかなとおもっていたが、『バカのための読書術 (ちくま新書) 』の続編ともいえる読書案内ですね。『こころ』については、『夏目漱石を江戸から読む―新しい女と古い男 (中公新書) 』のほうが、納得できました。
-
Posted by ブクログ
酒や車の排気ガスはさほど言われないのに、何ゆえタバコだけがこんなに目の敵にされるのか、その矛盾を摘発しつつ著者の「戦い」について記した本。
あとがきで著者自身が述べているように、一部の文章はネット上のやりとりが元になっていて、お世辞にも美しいとは言えない語り口。それ以外でも過激な表現はけっこう多い。
でも、主張自体は至極もっともで、歯に衣着せぬ糾弾は小気味良くもある。たしかに、偏った層に対するアンケートや世論調査の結果を振りかざして極端なルールを作るのはいただけないし、喫煙者側の意見が大々的に報じられているのも見たことがない。葬られているとしたらアンフェアである。
ただ、行政寄りの司法や、スポ -
Posted by ブクログ
「もてない男」が、この世には厳然と存在するということ、それは決して解決できることではないという事実を受け入れること、あえて綺麗事で逃げ出したく心理を抑えつけて、赤裸々に見つめること。
直感で誰もが感じているが、言葉に出すのがはばかれる常識を論理の積み重ねで辿り着こうとするインテリぶりには隠されたユーモアが漂っていて、いい人なんだなと思う。
前書きに冗談書かないようにすると書いてあるが、結構冗談なんだよね。それがわからないと嫌な奴と思ってしまうんだろうな。
僕自身は3流大出だけど、著者が自分と同じくらいの学歴を女性に求める気持ちは誠実以外の何物でもないし、よくわかる気がする。
自虐と誠実さが同居 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
歌謡曲やトレンディドラマは、恋愛するのは当たり前のように騒ぎ立て、町には手を絡めた恋人たちが闊歩する。
こういう時代に「もてない」ということは恥ずべきことなのだろうか?
本書では「もてない男」の視点から、文学作品や漫画の言説を手がかりに、童貞喪失、嫉妬、強姦、夫婦のあり方に至るまでをみつめなおす。
これまでの恋愛論がたどり着けなかった新境地を見事に展開した渾身の一冊。
[ 目次 ]
第1回 童貞であることの不安―童貞論
第2回 「おかず」は必要か?―自慰論
第3回 女は押しの一手?―恋愛論
第4回 てめえらばっかりいい思いしやがって!―嫉妬・孤独論
第5回 妾の存在意義―愛人論 -
Posted by ブクログ
恋愛は才能である、だから才能の無いヤツは諦めろ。コレはかなり極端な物言いではあるし、外見もダメ、スポーツもダメ、だから学歴に最後の望みを賭けたのにそれもダメで…。(著者は東大卒)と、私憤が多分に含まれているが、それはそれでイイじゃないの。まぁ、もてる男女には不要の書かもしれないですね。もてない男のルサンチマンという切り口で、つまらない男女論に一石を投じたという意味では読むに値すると思いました。それにしても、四民平等などの階層社会の撤廃や男女差別の撤廃によって進められてきた平等主義や、自由恋愛の浸透によって誰でも等しく恋愛できる世の中になってきた事が却って恋愛や結婚において不平等を生み出す結果と
-
Posted by ブクログ
前作の『もてない男』は言いたいことも不明で(多分著者も考えがまとまってなかったのだと思う)、「モテない男が自分について書いた文章という形の小説」としてしか読めなかった。
ところが、去年出たこの本は趣旨も非常に分かりやすくて、とても面白かったです。立場が似ているのか、僕の言いたいこともほとんど同じです。
「女性にどんなに酷い目に遭っても、俺は女が好きだ」という結論は素晴らしいなと思いました。上野千鶴子批判は、よくぞ書いてくれたという感じ。
「もてない男のために社会を改革しろなどと、私は言ったことがないし言うつもりもない。だが、そういう男女がいるということを、人びとに忘れさせないようにした