小谷野敦のレビュー一覧

  • 『こころ』は本当に名作か―正直者の名作案内―

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     著者がこれまで読んできた、名作と呼ばれる小説を選定した本。冒頭で、文学には普遍的な価値基準は存在しない、と前置きしたうえで、名作本をいくつかの段階に分ける。著者の見解として、紫式部『源氏物語』、シェイクスピア作品、ホメロス『イリアス』、『オデッセイア』、そしてギリシャ悲劇(ちなみにギリシャ喜劇のほうは面白くないと考える。笑いは地域と時代によって通用しないからだという。)が最高峰の名作だという。先ほど述べたように、文学において普遍的な要素を求めるべきではないし、著者自身もこれらの作品が後世に読み継がれる保証はないと考える。それでも、近代の作品と比べると上記の作品のほうが長い時を経ても耐えている

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    2024年04月03日
  • 日本人のための世界史入門

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    氏の「このミステリーがひどい」の印象が良くなかったので、はてさてどんなものかと読み始めたが意外に面白く同調できる所も多かった。

    氏が最後の結論として「歴史はだいたいでいいのである」と述べているが、これには大いに同調できる。多くの人は試験などで細かい重箱をつつくような問題をやらされるのでイヤになるのである。歴史の専門家でないので、必要以上に細かい知識は確かに必要ないと思う。

    ただこの人はわざとだろうが、書き方が斜に構えて尊大なところがあり、上から目線のところがある。いらぬ反感を買って損をしている所もあるのではないだろうか。

    新書1冊で古代ギリシャから現代までの世界史を俯瞰しているので、なぞ

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    2024年01月08日
  • もし「源氏物語」の時代に芥川賞・直木賞があったら 小谷野流「日本文学史早わかり」

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    勉強になる
     かるく日本文学史が語られてゐて、著者の好みもありおもしろい。なにより小谷野を模した小谷崎(谷崎潤一郎の大谷崎を対比させたのかと勘繰りたくなる)に垂髪きらりが添へてあることで対話形式になり、客観的に捉へられて露悪的なかんじがなくおもしろい。丸谷才一がソクラテスの対話をほめてゐたのをおもひだした。郷右近聖は本郷和人かな。
     惜しいのは、だんだん垂髪きらりが大したことをいはなくなって、へえへえをくりかへすところ。もしこのふたりのかけあひがもっと見られるなら見たいとおもった。
     ところでほかのひとは敬称略なのに、なぜか丸谷才一は丸谷さんと書いてゐた。

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    2023年11月11日
  • バカのための読書術

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     哲学等の抽象的な議論が苦手な人=バカ向けに、著者が読書法を伝授する。はじめに結論を述べると、バカは歴史を優先的に学習すべきである。それは、たとえ本格的な学術書でなかったとしても、小説や漫画をきっかけに歴史を知るべきということだ。
     入門書の選び方についても語るが、その際注意すべきこととして、最新の知見が載る本が必ずしも初心者に向いてるとは限らないことである。また、参考文献リストが充実してる本は、良書の可能性が高い。
     さらに、各分野における選書方法や学ぶべき最低限の知識にも触れる。経済学は資本主義と貨幣について、社会学は統計データを扱っている、心理学は怪しいものが多い、宗教学は概論よりも個別

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    2023年11月05日
  • 日本人のための世界史入門

    購入済み

    知識をもう一品

    作者の豊富な知識を基に、おやじさんの会話のような語り口で歴史の中の一つの一つの物語ごとに話し続けてくれます。あまり、世界の歴史を知らない方が素直に読めるのと同時に、物語の周辺情報も知りたくなりました。オカズのように教養を一品つまめる本でした。

    #タメになる

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    2023年10月08日
  • 忘れられたベストセラー作家

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    まあ悪くない本だと思ふが
     明治以降の人気だった小説家については勉強になった。かういふ平易に書いた本はなぜか評価は低いのだが、地味で情報ばかりに感じるからかもしれない。私はなぜかこの著者の文章は堅苦しくなく、すらすら読める。
     むしろベストセラーの動向についてはあまり立体的につぶさに分析できてをらず、だからなぜベストセラーになったのか明白な理由はわからない。佐伯順子が天地真理に似てゐるとか、さういふ著者の推量も私はちがふ気がする。まあ統計的ではないものの、まとまってゐるほうだ。
     ちなみに2000年以降の青少年やネットを対象にした読書ニーズ分析だと、飯田一史が統計的に捉へてゐると思ふ。

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    2023年07月16日
  • 芥川賞の偏差値

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    筆者は学者だったけど今は作家で、やはり実践者・作る側の人だけに説得力がある。そのかわりに随分と偏っている。そこを楽しむ本。

    その作家でもある作者が自ら「文学」は終わりに近づいているという。単なる個人の感想だが、文化・芸術の中で、絵画や音楽、演劇でさえもまだ国民から尊重されているように思えている。そして新しい作品が望まれている。が、古いものさえあればいい、と一番思われているのが文学なのではないか? その中で、知名度ゼロの専攻委員やら文壇やらが権威を振り回すのも、失礼ながら馬鹿らしいというか。

    あと、賞をめでたく取ったそのあと、ほとんど書いていない作家もいるが、だいだい書いてもボツにされた、と

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    2023年06月16日
  • もてない男 ――恋愛論を超えて

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    このくだらない感じで盛り上げてくるところは好きなもので、ぶっちゃけ出てくる学者連中のほとんどは名前も知らんがなってなとこだけど、勢いで楽しめる。自慰行為というものに対して大っぴらに語れない程度にムッツリでも嫌いではないという場合においてはこの本を一人で読みながらニヤニヤするのが吉でしょう。
    とは言え後半に向けて次第にアカデミックになっていくもんで、いや段々と何言っているか分からんというか、あんまり残っていない模様。
    結局のところ、恋愛に頑張れない男子はどうすればよかったのか。教えてエロいひと!

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    2023年04月30日
  • 「昔はワルだった」と自慢するバカ

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    著者の本ではまとまってゐるほう
     意外と論理的に書いてあって、なるほどと思った。最後のあとがきで、実は著者自身も悪者俗物なのではないかと思はせる。
     しかしこの本に怒ってゐるのは、金井美恵子の文章教室と同様に、バカや俗物だと分類されて不愉快になった人物ではないだらうか。
     私も一種の文学俗物、知的俗物かもしれない。

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    2023年03月09日
  • 私小説のすすめ

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    私小説の意義
     私も高校のころは丸谷才一に啓発されて、私小説なんてくだらないものだと思ってゐた。
     しかしさうではないのである。ある種のリアリズムや私小説には凄味はあり、もっぱらそれは想像力ではまかなひきれない、事実から来るからだ。私は石原慎太郎の『弟』を読んだりしてそれを痛感した。たしかに絵空事の小説はしらじらしいものが多い。
     ただ、蒲団を批判した中村光夫についての考察はちと長い。まあそれだけ読みごたへはある。

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    2023年02月19日
  • 友達がいないということ

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    小谷野氏のエッセイとして読んだ感じですかねぇ…社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    「もてない男」も読んだんですけれども、何も覚えちゃいない…僕的にはこの作品の方が面白かったような気がしなくもないですねぇ…。

    便所飯ですか…僕はしたことありませんけれども…てか、僕が学生の頃にはこのような単語は無かったように記憶していますねぇ…。

    読んだ割にはあまり内容の方を覚えていませんけれども(!)時たま現れる小谷野氏の所感とか、学生時代のエピソードなんかが面白かったですねぇ…。

    あとは孤独を描いた作品群ね! 読みたい本がまた増えたナリ…アメリカ人やら、あるいはイギリス人なんかでもいいんですけれど

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    2023年01月31日
  • バカのための読書術

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    書いてあることにはおほむね賛成
     一部、統計学がなぜ信用に価するのか理解してゐない人による感想が見受けられた。統計学が用ゐてゐるものは統計といふ実證的な方法で明かにされた事実だ。その事実はすべて蓋然性が高い。しかしその事実にもとづいた意見(推測など)は事実かどうかわからないから、また別に蓋然性が高いのか低いのか検討されなければならない。
     この、事実を足がかりにすることこそが学問において根幹なのである。もし事実を根幹に据ゑなかったら、妄想でも空論でもなんでもありの意見がまかりとほってしまふ。
     いまでは生物や社会科学などの研究では統計が欠かせないものである。

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    2022年12月13日
  • 『こころ』は本当に名作か―正直者の名作案内―

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    こころは駄作
     おもしろかった。
     突飛な意見もあるが、私には著者の意見は的を射てゐると思った。
     高校の時に買はされ、教科書で読まされたこゝろはつまらなかった。
     昔私は、自身にとってつまらなかったり理解できなかったりしても良い作品はあると思ってゐた。いま考へると自己欺瞞だったのだらう。
     書き方がいやといふ他人の感想も解るが、よく勉強してゐて芯が通ってゐる事やその正直さを私は評価する。

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    2022年04月30日
  • 文豪の女遍歴

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    各作家たちの恋愛遍歴は

    ほぼ4ページくらいで さっとまとめられていますので

    簡単に恋愛模様の 概要を知ることができます

    どの作家も なかなかの暴れっぷりですね
    そして嬉しいのが

    作家たちの写真もちゃんと載ってる



    それも 恋愛を大いにしたころ

    若いころの写真を載せてあるんですね



    ほほぅ 若いころ

    こんなに男前だったら

    モテるわなぁ

    とエピソードを読みながら

    感心できます

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    2022年03月03日
  • 頭の悪い日本語

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    著者が鋭い口調で誤用されている日本語を喝破していく一冊。「自作自演」や「大盤振舞」など、私も誤用していた言葉があったので大変勉強になった。
    「看護婦」のくだりは"爆"笑した。

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    2021年09月18日
  • 日本人のための世界史入門

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    歴史を語るにあたって著者の主観が大いに入っていてかえってわかりやすくなっている。
    宣教師たちはヨーロッパでは磔刑にされないので秀吉によって磔刑に処されてさぞ喜んでいただろうとか笑える。

    各章でさまざまな歴史本がさらさらと紹介されていて、ガイド本としても優れた一冊。巻末にまとめてほしかったなぁ!
    しかし日本の若者は歴史を知らなすぎるという指摘は耳が痛い。大学生でも中学生レベルと言っていて、はい、その通りですね…。私も知らないことだらけ。
    暗記重視の受験勉強スタイルへの批判はずっと続いているけれど、歴史のようにそもそも覚えなくてはいけないものもあるのでやっぱり一概に批判はできないよなぁ。

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    2020年02月29日
  • 帰ってきたもてない男 ──女性嫌悪を超えて

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    小谷野氏の代表作「もてない男」の続編。ざっくり言えば女性にもてないことを根源とした恋愛論、女性論であるが、著者の主張には肯首できる部分とそうでない部分があるものの、論旨は明解で面白い。要所要所で著者の実体験を記しており、それらに裏打ちされた主張は単なる言葉の羅列よりも重く感じる。

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    2019年03月23日
  • 純文学とは何か

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    書店に並んだときにも気にはなったけど、いったんスルー。この度、中古で安価に入手。やっぱり本著者、題材の設定が上手。というか、個人的にツボ。かといって、手放しで絶賛したくなるほど好きな訳じゃなく、それなりに楽しめはするけど、っていうくらいなんだけど。まあでも、書店で数多並んでいる本の中から、題名を見て手に取って、パラパラめくって購入を決める訳だから、興味を惹く題材設定は圧倒的に大事な訳で、それだけでも凄いと思います。で、純文学に関しては、要は作者毎にはっきり分かれるのではなく、各作品毎にマチマチだ、ってことですね。当たり前みたいだけど。

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    2019年01月17日
  • 美人好きは罪悪か?

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    「美人好きは罪悪か?」というタイトルから、一部の急進的なフェミニズムを批判する内容を予想したのですが、美人についての著者自身の所感を自由につづったエッセイというべき内容でした。とはいえ、古今東西の文学や歴史、さらにサブカルチャーにいたるまで、あらゆる知識を総動員して著者がみずからの趣味を語りつくしており、おもしろく読めました。

    個人的にもっとも共感したのが『宇宙船サジタリウス』のアン教授についての議論で、著者は「これは「美人問題」最大の謎の一つだと言っても過言ではない」と述べてさえいるのですが、言われてみるまでまったく気が付かなかったものの、たしかにあれはいったい何なのだろうかと不思議になっ

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    2018年11月21日
  • 帰ってきたもてない男 ──女性嫌悪を超えて

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    正直、眉を顰める向きも少なくないんじゃないかって内容ではある。でも、それは本作者に関しては折り込み済みな訳だし、ここで目くじら立てても仕方ない。という訳で、個人的には純粋におかしみました。これをかいているときの著者と、今の小生がちょうど同い年ってのも奇遇で、より楽しめたって部分もあるのかも。とはいえ10年以上前の著作だから、出会いの在り方とか、この頃とは更にまた違ったものになってるなぁ、って印象。谷崎作品とか、彼の女性遍歴とかを事ある毎に引きまくってるけど、よほど好きなんですね。

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    2018年11月14日