小谷野敦のレビュー一覧
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著者がこれまで読んできた、名作と呼ばれる小説を選定した本。冒頭で、文学には普遍的な価値基準は存在しない、と前置きしたうえで、名作本をいくつかの段階に分ける。著者の見解として、紫式部『源氏物語』、シェイクスピア作品、ホメロス『イリアス』、『オデッセイア』、そしてギリシャ悲劇(ちなみにギリシャ喜劇のほうは面白くないと考える。笑いは地域と時代によって通用しないからだという。)が最高峰の名作だという。先ほど述べたように、文学において普遍的な要素を求めるべきではないし、著者自身もこれらの作品が後世に読み継がれる保証はないと考える。それでも、近代の作品と比べると上記の作品のほうが長い時を経ても耐えている
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氏の「このミステリーがひどい」の印象が良くなかったので、はてさてどんなものかと読み始めたが意外に面白く同調できる所も多かった。
氏が最後の結論として「歴史はだいたいでいいのである」と述べているが、これには大いに同調できる。多くの人は試験などで細かい重箱をつつくような問題をやらされるのでイヤになるのである。歴史の専門家でないので、必要以上に細かい知識は確かに必要ないと思う。
ただこの人はわざとだろうが、書き方が斜に構えて尊大なところがあり、上から目線のところがある。いらぬ反感を買って損をしている所もあるのではないだろうか。
新書1冊で古代ギリシャから現代までの世界史を俯瞰しているので、なぞ -
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勉強になる
かるく日本文学史が語られてゐて、著者の好みもありおもしろい。なにより小谷野を模した小谷崎(谷崎潤一郎の大谷崎を対比させたのかと勘繰りたくなる)に垂髪きらりが添へてあることで対話形式になり、客観的に捉へられて露悪的なかんじがなくおもしろい。丸谷才一がソクラテスの対話をほめてゐたのをおもひだした。郷右近聖は本郷和人かな。
惜しいのは、だんだん垂髪きらりが大したことをいはなくなって、へえへえをくりかへすところ。もしこのふたりのかけあひがもっと見られるなら見たいとおもった。
ところでほかのひとは敬称略なのに、なぜか丸谷才一は丸谷さんと書いてゐた。 -
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哲学等の抽象的な議論が苦手な人=バカ向けに、著者が読書法を伝授する。はじめに結論を述べると、バカは歴史を優先的に学習すべきである。それは、たとえ本格的な学術書でなかったとしても、小説や漫画をきっかけに歴史を知るべきということだ。
入門書の選び方についても語るが、その際注意すべきこととして、最新の知見が載る本が必ずしも初心者に向いてるとは限らないことである。また、参考文献リストが充実してる本は、良書の可能性が高い。
さらに、各分野における選書方法や学ぶべき最低限の知識にも触れる。経済学は資本主義と貨幣について、社会学は統計データを扱っている、心理学は怪しいものが多い、宗教学は概論よりも個別 -
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まあ悪くない本だと思ふが
明治以降の人気だった小説家については勉強になった。かういふ平易に書いた本はなぜか評価は低いのだが、地味で情報ばかりに感じるからかもしれない。私はなぜかこの著者の文章は堅苦しくなく、すらすら読める。
むしろベストセラーの動向についてはあまり立体的につぶさに分析できてをらず、だからなぜベストセラーになったのか明白な理由はわからない。佐伯順子が天地真理に似てゐるとか、さういふ著者の推量も私はちがふ気がする。まあ統計的ではないものの、まとまってゐるほうだ。
ちなみに2000年以降の青少年やネットを対象にした読書ニーズ分析だと、飯田一史が統計的に捉へてゐると思ふ。 -
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筆者は学者だったけど今は作家で、やはり実践者・作る側の人だけに説得力がある。そのかわりに随分と偏っている。そこを楽しむ本。
その作家でもある作者が自ら「文学」は終わりに近づいているという。単なる個人の感想だが、文化・芸術の中で、絵画や音楽、演劇でさえもまだ国民から尊重されているように思えている。そして新しい作品が望まれている。が、古いものさえあればいい、と一番思われているのが文学なのではないか? その中で、知名度ゼロの専攻委員やら文壇やらが権威を振り回すのも、失礼ながら馬鹿らしいというか。
あと、賞をめでたく取ったそのあと、ほとんど書いていない作家もいるが、だいだい書いてもボツにされた、と -
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小谷野氏のエッセイとして読んだ感じですかねぇ…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
「もてない男」も読んだんですけれども、何も覚えちゃいない…僕的にはこの作品の方が面白かったような気がしなくもないですねぇ…。
便所飯ですか…僕はしたことありませんけれども…てか、僕が学生の頃にはこのような単語は無かったように記憶していますねぇ…。
読んだ割にはあまり内容の方を覚えていませんけれども(!)時たま現れる小谷野氏の所感とか、学生時代のエピソードなんかが面白かったですねぇ…。
あとは孤独を描いた作品群ね! 読みたい本がまた増えたナリ…アメリカ人やら、あるいはイギリス人なんかでもいいんですけれど -
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書いてあることにはおほむね賛成
一部、統計学がなぜ信用に価するのか理解してゐない人による感想が見受けられた。統計学が用ゐてゐるものは統計といふ実證的な方法で明かにされた事実だ。その事実はすべて蓋然性が高い。しかしその事実にもとづいた意見(推測など)は事実かどうかわからないから、また別に蓋然性が高いのか低いのか検討されなければならない。
この、事実を足がかりにすることこそが学問において根幹なのである。もし事実を根幹に据ゑなかったら、妄想でも空論でもなんでもありの意見がまかりとほってしまふ。
いまでは生物や社会科学などの研究では統計が欠かせないものである。 -
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歴史を語るにあたって著者の主観が大いに入っていてかえってわかりやすくなっている。
宣教師たちはヨーロッパでは磔刑にされないので秀吉によって磔刑に処されてさぞ喜んでいただろうとか笑える。
各章でさまざまな歴史本がさらさらと紹介されていて、ガイド本としても優れた一冊。巻末にまとめてほしかったなぁ!
しかし日本の若者は歴史を知らなすぎるという指摘は耳が痛い。大学生でも中学生レベルと言っていて、はい、その通りですね…。私も知らないことだらけ。
暗記重視の受験勉強スタイルへの批判はずっと続いているけれど、歴史のようにそもそも覚えなくてはいけないものもあるのでやっぱり一概に批判はできないよなぁ。 -
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「美人好きは罪悪か?」というタイトルから、一部の急進的なフェミニズムを批判する内容を予想したのですが、美人についての著者自身の所感を自由につづったエッセイというべき内容でした。とはいえ、古今東西の文学や歴史、さらにサブカルチャーにいたるまで、あらゆる知識を総動員して著者がみずからの趣味を語りつくしており、おもしろく読めました。
個人的にもっとも共感したのが『宇宙船サジタリウス』のアン教授についての議論で、著者は「これは「美人問題」最大の謎の一つだと言っても過言ではない」と述べてさえいるのですが、言われてみるまでまったく気が付かなかったものの、たしかにあれはいったい何なのだろうかと不思議になっ