あらすじ
文学史に名を刻む、森鴎外、夏目漱石、志賀直哉、芥川龍之介、川端康成、……
しかし、そんな「文豪」よりも遙かに「愛されていた作家」たちがいる!
菊池幽芳『己が罪』、『乳姉妹』 / 矢野龍渓『経国美談』、『浮城物語』 / 菊亭香水『惨風悲話 世路日記』 / 東海散士『佳人之奇遇』 / 村上浪六『当世五人男』 / 村井弦斎「道楽」シリーズ / 徳冨蘆花『不如帰』 / 桜井忠温『肉弾 旅順実戦記』 / 半井桃水『胡沙吹く風』 / 渡辺霞亭『渦巻』 / 柳川春葉『生さぬ仲』 / 木下尚江『良人の自白』 / 田口掬汀『伯爵夫人』 / 小杉天外『魔風恋風』 / 小栗風葉『青春』 / 島田清次郎『地上』 / 江馬修『受難者』、『山の民』 / 倉田百三『出家とその弟子』 / 奥野他見男『学士様なら娘をやろうか』 / 白井喬二『富士に立つ影』 / 直木三十五『南国太平記』 / 尾崎士郎『人生劇場』 / 小島政二郎『人妻椿』 / 島木健作『生活の探求』 / 豊田正子『綴方教室』 / 火野葦平「兵隊」三部作 / 小川正子『小島の春』 / 大迫倫子『娘時代』 / 岩田豊雄『海軍』 / 石坂洋次郎『青い山脈』 / 田村泰次郎『肉体の門』 / 富島健夫『おさな妻』 / 原田康子『挽歌』 / 源氏鶏太『三等重役』 / 柴田翔『されどわれらが日々――』 / 森村桂『天国にいちばん近い島』
……など
彼らはどうやって人気作家となり、なぜ「忘れられて」しまったのか?
明治から昭和までの人気作家たちの悲哀に迫る、もう一つの文学史。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
【注】小谷野敦先生に2021/08/28/土 ツイッターで直接"164pに載っています"と指摘いただきました。星取り表を訂正します。ごめんなさい。新刊は定価で買います。
以下原文
森村桂が載ってないか楽しみに手に取ったのに無かったので、減点。残念!『忘れられたベストセラー作家』小谷野敦 ☆2
Posted by ブクログ
まあ悪くない本だと思ふが
明治以降の人気だった小説家については勉強になった。かういふ平易に書いた本はなぜか評価は低いのだが、地味で情報ばかりに感じるからかもしれない。私はなぜかこの著者の文章は堅苦しくなく、すらすら読める。
むしろベストセラーの動向についてはあまり立体的につぶさに分析できてをらず、だからなぜベストセラーになったのか明白な理由はわからない。佐伯順子が天地真理に似てゐるとか、さういふ著者の推量も私はちがふ気がする。まあ統計的ではないものの、まとまってゐるほうだ。
ちなみに2000年以降の青少年やネットを対象にした読書ニーズ分析だと、飯田一史が統計的に捉へてゐると思ふ。
Posted by ブクログ
先月読んだ「江戸川乱歩と横溝正史」で、作家は「売れたから残る」のではなく「残ったから売れる」のだ、となんとなく気づきました。乱歩は少年探偵団のジュブナイル、横溝は角川映画、にピックアップされたことが、21世紀にもその名を残す原因なのだ、ということです。いわば二次使用されることが、次の二次使用(三次使用?)に繋がり、という新作の連鎖が「売れ続ける」ということ。本書はベストセラーを生み出しても、今では忘れ去られた作家達列伝です。明治・大正・昭和の作家達にとって残る残らないのファーストステップは「全集」に入るか入らないか?次は「文庫」に入るか入らないか?あとは「教科書」とか「舞台」とか「映画」とか、文学として優れているか優れてないかは関係なく、それが次にどう使われたかで寿命は決まる、と言ってます。そもそも文学として…というのも怪しげだと、川端康成「雪国」太宰治「斜陽」も面白いのは冒頭だけ、とバッサリ。全体にうるさ型、切り捨て型のマニアックおじさんトークなのですが、そこが著者らしい味わいですし、自分には的確に思える部分も多々。また「もてない男」以来の自虐ネタとしてのモノ書きとしてベストセラーには憧れがあったというカミングアウトも可愛く感じます。ベストセラーとロングセラーの違いの研究というより、読書ってなんだっけ?という問題提起の本として読みました。