小谷野敦のレビュー一覧
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江藤淳と大江健三郎は、小谷野にとって若い時からのアイドル。本書は、その2人を時系列に沿って追いかける。そこには、焼けるようなファン熱が感じられる(ストーカー的な執着という言い方もできるが)。ゴシップも満載。江藤と大江を知っているなら、100%楽しめる。
江藤と大江という2本の大樹、その対比と交錯、そして彼らをとりまくさまざまな人々。その人間模様がなんともおもしろい。もちろん、ゴシップの火の粉は、これらの人々にも降りかかる。
おそらく小谷野は最初は2人を対等に書くつもりだったのだろう。けれど、江藤については、初期や中期の評価は芳しいものだったのに対し、書き進めるにつれて、後期はそうではなくなって -
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「このミステリーがすごい!」のパロディ企画。○〇はおもしろくなかった、○〇はダメの連発。その毒舌の嵐に圧倒される。しかし、そのことばのなかには、妙に光るものがある。
嫌いなら書かなきゃいいじゃん、というわけにはいかない。小谷野敦は、嫌いだから読み、嫌いだからこそ書くという苦役の人なのだ。
とりあげているのは、純粋なミステリーだけではない。SFも、映画も、テレビドラマも含まれる。いつ、どこで、どんなふうに読んだ(見た)かも書かれているので、小谷野の読書遍歴、鑑賞遍歴の体もなしている。
今回、ほぼ同趣向の小谷野敦『芥川賞の偏差値』(二見書房)と併読したが、『このミステリーがひどい!』のほうは、蘊蓄 -
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カバーに用いているのは大正13年の「文藝春秋」の企画「文壇諸家価値調査表」。評価項目は天分、度胸、風采、腕力、性欲、将来性……。たとえば芥川龍之介は天分96、風采90、腕力0、今東光は天分60、修養52、腕力100、性欲92--これが46人分。表の作成者は直木三十五。ふざけ具合がいかにも直木らしい。
1935年から現在まで、直木賞をめぐるあれこれ、その舞台裏、選にもれた傑作、そしてゴシップ。小谷野の作品評価はほぼ真っ当(と私は思う)。今回は作品がてんこもりということもあって、駈け足で流している分、読後感は爽やか。いつもの毒を期待していた人には、少し物足りないかもしれない。
山口瞳、井上ひさしに -
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ネタバレ著者の視点が面白い。
女優さんだけでなく、女性作家さんたちも写真付きで紹介されている。初めてお顔を知った方も。
確かに、「この顔で女優?」と思う人は増えてきた。
いわゆるルッキズムのせいなのだろうか…。
それとも、現代人は自分に近いルックスの方が安心するのだろうか。
観ている側の私からすれば、テレビや銀幕に登場する演者は美しくあってほしいのだ。夢を与えてくれる存在であってほしい。「こんな風になりたいな」と憧れたい。
もちろん、見た目が良くても演技がヘタクソなのは問題外だし、物語の内容にぴったりの演技を見せてくれる人もいる。
これはこれでとても大切な存在だ。
そんな女優さんもたくさん紹介され -
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世に名作と言われている作品を、権威に負けずに、面白くないものは面白くない、わからないものはわからないと語る。
基本的に主観丸出しの、言いたい放題の対談。
でも、文学を鑑賞することって、主観で、自分の捉え方を楽しむってことだから、これで良いのでは。と思う。
対談している2人が実際に小説や詩を創作している、作り手であること、あまたの文学作品を読んでいることから、語っていることも説得力があり、楽しく読める。
対談形式としたのが功をそうしてる。
一人だけで語っていると偏って思えるけど、どちらかが合いの手をいれたり、私は別にそうおもわないけどと流したりすることで、極論に見えることが、色々あるうちの -
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これオモロイよ〜。
世の男性諸君、是非読んでみて欲しい。
何がオモロイって、まず、この本の冒頭で、「もてない男」っていうのは、「好きな女性から相手にしてもらえないという男」って定義されてる。
だから、この本は、好きな女性に相手にしてもらえない原因とかについて研究してんのかなぁと思ったのです。
ところが、どっこい!
内容は、「もてなくて何が悪いんだ!」という著者の叫び、というか、私怨が渦巻くものになっているのです(私怨で書いていることはあとがきで著者自身が認めている。)。
そう、著者は、「誰からももてない男」だったのです。
まぁ、著者がもてようがどうしようが別にいいんだ -
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芥川賞の偏差値というものの、全体を眺めると50を中心にしたベルカーブを描いておらず、平均は圧倒的に50を下回って下位に偏重している。著者は芥川賞の性格としてあえて(?)面白くない作品を選ぶ傾向があると見ているらしいが、そうであれば偏差値の母集団は芥川賞受賞作品ではなく、候補作や、あるいはもっと広く現代文芸作品などと想定しているのかもしれない。読者にもわかるよう偏差値の意味をはっきりさせてほしかった。
中身は文壇ゴシップや選考委員による評価、ノミネート作品、受賞できなかった作者へのコメント等、芥川賞周辺の話が多く、「芥川賞全部読む」が表側のブックガイドとすればこちらは裏側のそれという感じもする。