小谷野敦のレビュー一覧

  • 江藤淳と大江健三郎 ──戦後日本の政治と文学

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    江藤淳と大江健三郎は、小谷野にとって若い時からのアイドル。本書は、その2人を時系列に沿って追いかける。そこには、焼けるようなファン熱が感じられる(ストーカー的な執着という言い方もできるが)。ゴシップも満載。江藤と大江を知っているなら、100%楽しめる。
    江藤と大江という2本の大樹、その対比と交錯、そして彼らをとりまくさまざまな人々。その人間模様がなんともおもしろい。もちろん、ゴシップの火の粉は、これらの人々にも降りかかる。
    おそらく小谷野は最初は2人を対等に書くつもりだったのだろう。けれど、江藤については、初期や中期の評価は芳しいものだったのに対し、書き進めるにつれて、後期はそうではなくなって

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    2025年05月08日
  • このミステリーがひどい!

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    「このミステリーがすごい!」のパロディ企画。○〇はおもしろくなかった、○〇はダメの連発。その毒舌の嵐に圧倒される。しかし、そのことばのなかには、妙に光るものがある。
    嫌いなら書かなきゃいいじゃん、というわけにはいかない。小谷野敦は、嫌いだから読み、嫌いだからこそ書くという苦役の人なのだ。
    とりあげているのは、純粋なミステリーだけではない。SFも、映画も、テレビドラマも含まれる。いつ、どこで、どんなふうに読んだ(見た)かも書かれているので、小谷野の読書遍歴、鑑賞遍歴の体もなしている。
    今回、ほぼ同趣向の小谷野敦『芥川賞の偏差値』(二見書房)と併読したが、『このミステリーがひどい!』のほうは、蘊蓄

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    2025年05月08日
  • 直木賞をとれなかった名作たち

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    カバーに用いているのは大正13年の「文藝春秋」の企画「文壇諸家価値調査表」。評価項目は天分、度胸、風采、腕力、性欲、将来性……。たとえば芥川龍之介は天分96、風采90、腕力0、今東光は天分60、修養52、腕力100、性欲92--これが46人分。表の作成者は直木三十五。ふざけ具合がいかにも直木らしい。
    1935年から現在まで、直木賞をめぐるあれこれ、その舞台裏、選にもれた傑作、そしてゴシップ。小谷野の作品評価はほぼ真っ当(と私は思う)。今回は作品がてんこもりということもあって、駈け足で流している分、読後感は爽やか。いつもの毒を期待していた人には、少し物足りないかもしれない。
    山口瞳、井上ひさしに

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    2025年05月08日
  • 美しくないゆえに美しい女たち

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    ネタバレ

    著者の視点が面白い。
    女優さんだけでなく、女性作家さんたちも写真付きで紹介されている。初めてお顔を知った方も。

    確かに、「この顔で女優?」と思う人は増えてきた。
    いわゆるルッキズムのせいなのだろうか…。
    それとも、現代人は自分に近いルックスの方が安心するのだろうか。

    観ている側の私からすれば、テレビや銀幕に登場する演者は美しくあってほしいのだ。夢を与えてくれる存在であってほしい。「こんな風になりたいな」と憧れたい。
    もちろん、見た目が良くても演技がヘタクソなのは問題外だし、物語の内容にぴったりの演技を見せてくれる人もいる。
    これはこれでとても大切な存在だ。
    そんな女優さんもたくさん紹介され

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    2022年02月18日
  • 忘れられたベストセラー作家

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    【注】小谷野敦先生に2021/08/28/土  ツイッターで直接"164pに載っています"と指摘いただきました。星取り表を訂正します。ごめんなさい。新刊は定価で買います。

    以下原文

    森村桂が載ってないか楽しみに手に取ったのに無かったので、減点。残念!『忘れられたベストセラー作家』小谷野敦 ☆2

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    2021年08月28日
  • この名作がわからない

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    世に名作と言われている作品を、権威に負けずに、面白くないものは面白くない、わからないものはわからないと語る。

    基本的に主観丸出しの、言いたい放題の対談。
    でも、文学を鑑賞することって、主観で、自分の捉え方を楽しむってことだから、これで良いのでは。と思う。

    対談している2人が実際に小説や詩を創作している、作り手であること、あまたの文学作品を読んでいることから、語っていることも説得力があり、楽しく読める。

    対談形式としたのが功をそうしてる。
    一人だけで語っていると偏って思えるけど、どちらかが合いの手をいれたり、私は別にそうおもわないけどと流したりすることで、極論に見えることが、色々あるうちの

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    2020年07月03日
  • もてない男 ――恋愛論を超えて

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    また著者の読んでいる男女に関わる参考書籍の量がとにかく凄い。
    『もてない男』が『もて男』になる為の本かとつい手に取ってしまったが、内容はいい意味で裏切られ、著者は同性からみても漢らしく、まさしく『もて男』なんだろうと。
    「世の中には、三十過ぎまで女の人と付き合ったことのない、しかも童貞だというような男もいる。世間ではジェンダー研究だのセクシュアリティー研究だの男性学だのと言っているが、こういう男が問題にされたのをほとんど見たことがない。どうなっているのか」まえがきより

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    2019年12月11日
  • 日本恋愛思想史 記紀万葉から現代まで

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    いつもと同じ書き方かあ。でも非常に勉強になる。

    ふとおもったが、人類が滅んだあとに火星人の生物学者が文献調査をおこなっているようでもある。

    2019/05再読。やはり情報量が多くてよい。圧縮されているが、大事なことは書いてある。

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    2021年01月05日
  • 芥川賞の偏差値

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    ネタバレ

    単に各作品の偏差値をつけているだけでなく、芥川賞が創設された時のことや文学界についての話が入っているのがとても面白かった。

    紹介されている作品の中で、いくつか読んだ作品もあり、芥川賞受賞作以外にも高い偏差値をつけてある作品も含めて
    これから読んでみたいと思う作品もある。

    本を読むことがますます楽しくなるような一冊でした。

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    2017年12月27日
  • バカのための読書術

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    なるほど。「バカ」が嫌いな著者による、「バカ」を減らすための書か~。「バカ」を自認する筆者による、同類に向けた本だと勝手に思ってたから、良い意味で裏切られました。いわゆる”古典”であろうが退屈なものは退屈、っていう切り捨て方は魅力的だし、内容は秀でているけど難解だから「バカ」には向かない、っていう評価も分かりやすい。最後にオススメ本がまとめられているけど、流れに沿って読み進めているうち、そこに上げられている本くらいはせめて読まないと、って気分にさせられる。読み物としても十分に楽しめる、優れたブックガイドだと思いました。

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    2016年10月13日
  • 頭の悪い日本語

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    ネタバレ

    普段気にせずに使っていた言葉が実は違う意味で使ってしまっていたと…。間違いに気がついた言葉もいくつかありました。外来語編も面白かったです。

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    2015年04月08日
  • 面白いほど詰め込める勉強法 究極の文系脳をつくる

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    久しぶりに面白い新書を読んだ。勉強法の本だと思ったら文系の学問入門だった。かなり偏りがある考えだと思うけれど、文系志望の高校生におすすめしたい。

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    2014年12月24日
  • バカのための読書術

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    この本の中の著者の読書量・勉強術には影響を受けた。
    啓蒙書として読んだが、それも時には重要だと感じる。

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    2012年11月14日
  • 友達がいないということ

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    著者は元文学者らしい。初めて読んだけども,言葉に切れがあって,ちょっとラディカルで痛快。

    友達がいないことについて著者のちょっとさみしい体験談に触れつつも,様々な文学作品等に対して批評を交えて展開される友達論。

    とても辛口。

    友達ってなんだろう,友達がいないってダメなことなんだろうか?
    この本を読んでも答えはないが,友達がいるからといって一人ぼっちじゃない,というわけでもないんだろうなどと思った。

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    2012年09月17日
  • 悲望

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    初めて読んだ小谷野敦の小説。表題作は、とてもよかった。ぼくの書く方法と似ている。ぼくの方法と似ていることがよかったわけではないけれど。

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    2011年09月08日
  • 友達がいないということ

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     リアルに面白かった。モテないし、友達も少ないという著者が書いた友達論。文学者や研究者の友情や決別の話なんかも満載で、ゴシップとしても面白い。著者の辛口コメントには、「こんなコト書いて大丈夫かなー」とも思うが、それがまた痛快。誰しも友人関係で悩んだ経験はあるはず。是非、なかなか友達が出来ずに苦しんでいる大学の新入生にも読んでもらいたい。

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    2011年05月28日
  • もてない男 ――恋愛論を超えて

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    これオモロイよ〜。
    世の男性諸君、是非読んでみて欲しい。

    何がオモロイって、まず、この本の冒頭で、「もてない男」っていうのは、「好きな女性から相手にしてもらえないという男」って定義されてる。

    だから、この本は、好きな女性に相手にしてもらえない原因とかについて研究してんのかなぁと思ったのです。

    ところが、どっこい!

    内容は、「もてなくて何が悪いんだ!」という著者の叫び、というか、私怨が渦巻くものになっているのです(私怨で書いていることはあとがきで著者自身が認めている。)。

    そう、著者は、「誰からももてない男」だったのです。

    まぁ、著者がもてようがどうしようが別にいいんだ

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    2009年10月04日
  • もてない男 ――恋愛論を超えて

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    東大院卒・大学講師の著者が「もてたーい!」という一心で書き上げたルサンチマンただよう大傑作。特に最後の章の「我々はあらゆるメディアに洗脳され『恋愛至上主義』を植え付けられているのだ」という説に目からウロコが落ちました。姫野カオルコと同じく“恋愛”という論点から「“普通”って何?」という疑問を説いている書でもある、と私は思います。

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    2009年10月04日
  • 芥川賞の偏差値

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    芥川賞の偏差値というものの、全体を眺めると50を中心にしたベルカーブを描いておらず、平均は圧倒的に50を下回って下位に偏重している。著者は芥川賞の性格としてあえて(?)面白くない作品を選ぶ傾向があると見ているらしいが、そうであれば偏差値の母集団は芥川賞受賞作品ではなく、候補作や、あるいはもっと広く現代文芸作品などと想定しているのかもしれない。読者にもわかるよう偏差値の意味をはっきりさせてほしかった。
    中身は文壇ゴシップや選考委員による評価、ノミネート作品、受賞できなかった作者へのコメント等、芥川賞周辺の話が多く、「芥川賞全部読む」が表側のブックガイドとすればこちらは裏側のそれという感じもする。

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    2025年12月06日
  • 川端康成と女たち

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    川端康成は文章が下手だった
     良い本で、評伝から作品をみるといふことをしてをり、川端の人生と運が名作『伊豆の踊子』や『山の音』『雪国』に影響を与へたことがうかがへる。
     一方で、新感覚派の比喩はさすが川端の天才性が発揮されてゐるとしても、長篇になると行きあたりばったりに書いてしまひ、筋がめちゃくちゃになってしまふ。その欠点はしっかり書いてあり、一歩引いた信頼できる本だと思ふ。
     ところどころ著者の悪い感想がが出てゐるところは、ご愛嬌で、この本は著者が調べた事実の価値とその推定を重んじるべきである。

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    2025年11月21日