【感想・ネタバレ】『こころ』は本当に名作か―正直者の名作案内―のレビュー

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Posted by ブクログ

 著者がこれまで読んできた、名作と呼ばれる小説を選定した本。冒頭で、文学には普遍的な価値基準は存在しない、と前置きしたうえで、名作本をいくつかの段階に分ける。著者の見解として、紫式部『源氏物語』、シェイクスピア作品、ホメロス『イリアス』、『オデッセイア』、そしてギリシャ悲劇(ちなみにギリシャ喜劇のほうは面白くないと考える。笑いは地域と時代によって通用しないからだという。)が最高峰の名作だという。先ほど述べたように、文学において普遍的な要素を求めるべきではないし、著者自身もこれらの作品が後世に読み継がれる保証はないと考える。それでも、近代の作品と比べると上記の作品のほうが長い時を経ても耐えているので、作品としては上手である。
 その一方で、一般的に名作といわれる小説、たとえば夏目漱石『こころ』が本当に名作に値するのか本書の後半で検討する。たとえばドストエフスキー『罪と罰』、『カラマーゾフの兄弟』やダンテ『新曲』に関しては、キリスト教に馴染みのない人に深く理解できるのかと、著者は疑問を投げかける。それ以外にも有名な作品を批判するが、全体的に見て近代以降の作品が多い印象である。言い換えると、著者は読者に近代以前の名作を読むように推奨してるような気がする。

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2024年04月03日

Posted by ブクログ

おもしろかった。突飛な意見もあるが、私には著者の意見は的を射てゐると思った。高校の時に買はされ、教科書で読まされたこゝろはつまらなかった。昔私は、自身にとってつまらなかったり理解できなかったりしても良い作品はあると思ってゐた。いま考へると自己欺瞞だったのだらう。書き方がいやといふ他人の感想も解るが、よく勉強してゐて芯が通ってゐる事やその正直さを私は評価する。

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2022年04月30日

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名作とされている文学作品に対し、自分の感じたまま、良い悪いを断じるのが痛快。
無理矢理なところもあるけど、面白く読めるのは、小谷野敦の知識と技術によるものかなと思う。

小谷野敦は基本的に「もてない男」目線で読んでいる。
「もてない女」である私から見たら共感できる部分もあったし、感覚が決定的に違うと感じた部分もあった。

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2015年09月21日

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片っ端からぶった切ってる感が何とも痛快でした。名作案内、書評のはずなのに何故か痛快で面白い。容赦ないこき下ろしっぷりがまた笑える。
普遍的ではない書評、と言うのがまたいい。決して万人受けする内容ではないが、だからこそに著者の好みや価値観が顕著に出ていて楽しめる。
案内本としてはいまいちだが、一般的な普遍的な書評に飽きた人にオススメしたい

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2014年02月02日

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小谷野敦さんのボヤきのような小谷野節、かなり好きです。
白眉は三島由紀夫の『金閣寺』のこき下ろし方。こじつけもいいところ。金閣寺と聞いたら多くの日本人は「キンカクシ」を連想してしまう…って、そんなこともないでしょう!(笑
おそらく、全く受け付けない人も多いことと思いますが、私はハマってしまいました。読みながら1人でニヤニヤした箇所多数。

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2013年12月26日

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いま、ちまたでは女性お笑い芸人が占い師に洗脳された、という話題が持ちきりである。占いってのは、「こちらがわからない手段によって、こちらのことを知る」技法のことであり、事前調査とかコールドリーディングとか視線の動きをみるとか、かまをかけて反応をみる、とか誰にでも当たるこという、とか様々な技法がある。

で、つまりは、それって、「人間を知る」方法なのであり、そのやり方をしらない人にとっては、「魔術師のように」みえる効果がある。

小谷野氏のこの本は、ある意味そういう「魔術師のように人間を知る」本であり、読んだほうがいい本であろう。

どういうことかといえば、「相手が好む本で相手がわかる」ってことで、たとえば「漱石が好き」という人は「母に愛されなかった」人であり、小林秀雄が好きって人は「母に愛された人」。

じゃあ、両方好きな人は「自己欺瞞に陥っているか嘘つきかどちらか」ってことで、これを知っただけでもこの本を読んだ価値があった。

志賀直哉好きはお坊ちゃん。

ワイルドが好きなひとは同性愛者。

ドストエフ好きーはキリスト教好き。

こういうの知っていると、占い師よろしく、相手の生活環境で好きな本がわかるようになるかも。

まあ、まあ、そもそも読書好きにしか通用しない占いだけどね。

人の生まれ育ちが読書の好みを左右するから、普遍的に面白い本なんてないという、まあ、よく考えると当たり前だが、そんなことをいうと評論家は飯が食えなくなってしまうから誰も言わなかったことをいったから「正直者の名作案内」というわけである。

だから、小谷野も、ここに上げた名作が普遍的な価値をもっているといっているわけでなく、あくまで好みだ、としているから正直だ。これによって、小谷野自身の人間がバレてしまうからだ。

結局のところ、自分をどの程度さらけ出したか、が小説の価値に大きく影響する。
で、「そんなとこまで見せちゃうひとっていままでいなかった」ってのが歴史的名作であり、でも、みんながみせちゃうと、いずれ読まれなくなるかもしれない、から、価値は普遍的ではありえないってことです。

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2012年03月19日

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こころ』は、いろいろな意見がわかれるところでしょうが、作品に齟齬はあるが、著述の時代を考慮すると名作といって良いのではないでしょうか。親友に対する裏切りや自殺に対するプロットで追うのではなく、江戸と明治の差異で読むと理解できるのではないでしょうか。小谷野 敦『夏目漱石を江戸から読む―新しい女と古い男 (中公新書) 』を読むとそのあたりが、すっきりしました。本書はタイトルで『こころ』論とかなとおもっていたが、『バカのための読書術 (ちくま新書) 』の続編ともいえる読書案内ですね。『こころ』については、『夏目漱石を江戸から読む―新しい女と古い男 (中公新書) 』のほうが、納得できました。

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2011年12月09日

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小谷野先生はほんとうに正直でよい。



でも判断基準が感覚的すぎてよくわからんよな。同感だと思う部分も多いのだが、なんでそうなるのかを分析してくれないとなあ。



まあ私にフィクション読む時間がどれくらい残されているのかなあとか考えたり。



2010/12/11 再読。やはりおもしろいなあ。小谷野先生はおそらく自分が直接に実感できる「人間の本当のこと」が知りたいんだと思う。それって文学なんかな。そうなんだろうな。きっちり共感できるもの以外をありがたがる必要はない、ということなんだろう。OK。

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2020年06月15日

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またタイトルに惹かれて、つい読んでしまった小谷野作品。相変わらずの辛口批評が満載で、自分も受け付けなかった文学作品がけなされていると、何となく拠り所が見つけられたように感じてしまう。それが極論の効能なんだろうけど、何だか辟易としてしまう自分もいて、正直、読んでいるうちにだんだん疲れてきました。

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2020年07月06日

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東西の古典文学の「だいたいは読み終えた」という著者が、おもしろかおもしろくないかを大胆に判定を下した読書案内です。

本書は作品自体のおもしろさを中心に評価しているのですが、それ以外にもたとえば白樺派の作家たちがトルストイをどのように受け入れたのかといった、受容史的な観点からのおもしろさというものもあるはずで、本書にも随所にそうした薀蓄が示されているのですが、あまりアカデミックな文学研究に立ち入らないようにしているのか、そうした側面はほとんど切り捨てられているように思います。

たとえば、本書で著者が「好きではない」と述べている推理小説などの場合には、先行作品をどのように消化しているのかといった評価の観点もあるように思うのですが、そういうものは好事家に任せておけばいいので、本書のように単純な意味での作品のおもしろさをズバリ述べているのは、一つの見識ではあります。

もっとも著者は、「インターテクスチュアリティ」といった用語に代表されるような、非実証的なポストモダンの文学理論にどうしてもガマンがならないようで、そのことを考慮に入れておいた方がいいかもしれません。

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2015年02月02日

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 海外文学には興味があるので、博覧強記の小谷野先生の案内は非常にためになる。
 小谷野先生の偉そうな物言いは、ファンの私には心地いいものですらあるのだが、一つだけ、さすがに「許せない」と思うことがある。それは181頁3~8行の記述だ。こんな失礼千万なことを、しかも推測で書くとは、どういう良識を持ってるんだ。

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2014年03月18日

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いろんな時代の文豪たちを作者の目線で評価している。自信をもって、漱石をこきおろしているが、ある意味、それだけ読み込んでいることの裏返しであるし、漱石以外にもこれだけの作品を書評できること自体がものすごいことだなと思う。

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2012年12月24日

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[ 内容 ]
文学に普遍的な基準はありません。
面白いと思うかどうかは、読者の年齢や経験、趣味嗜好に左右されます。
「もてない男」に恋愛小説が、そのケのない人に同性愛的文学がわからなくても、仕方のないこと。
世評高い漱石の『こころ』やドストエフスキーは、本当に面白いのでしょうか?
読むべきは『源氏物語』か『金閣寺』か?
世界の古典を「大体読み終えた」著者が、ダメならダメと判定を下す、世界一正直な名作案内。

[ 目次 ]
第1章 文学作品のよしあしに普遍的基準はない(「もてない男」に結婚生活の不幸を描いた小説がわかるのか 日本人とキリスト教 同性愛感覚 ほか)
第2章 日本人必読の名作たち(最高峰の名作 トップクラスの名作 日本のトップレベル作家 ほか)
第3章 私には疑わしい「名作」(夏目漱石 森鴎外 ドストエフスキー ほか)

[ POP ]


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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年05月22日

Posted by ブクログ

僕は漱石の面白さがよくわからないのだけど、それは実は漱石は面白くないからなのだ…と公言してもよいということがよくわかった。いくら名作の誉れ高くても面白くないと思ったら途中で読むのをやめてよし。人生の残り時間は有限だ。

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2010年05月11日

Posted by ブクログ

久しぶりに『もてない男』著者の本を購入。
文学とは対極にいるボブだが、無謀にも手を出してしまった(T^T)

名前だけは聞いたことがある作家について、著者なりの価値判断で綴った「名作案内」。
「文学作品に普遍的基準は存在しない」(p.12)を持論に展開されている。
小説等を読まないに等しいボブには「空中戦」を見ているようで、次元の違いに四苦八苦した次第。
でも、不思議とシコリが残らないのも不思議。
「漱石は人生論的に、ドストは宗教的に読まれているのだろう」(p.222)
だから評価されている(ように見える)のか…

本書で勧められた小説を読んでみようと思ったボブなのでした( ̄ー ̄)

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2009年10月04日

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