あらすじ
女給ちよや藝者の松栄など、実在する女性たちの像がちりばめられた美しき川端作品の数々は、古今東西の名作のご多分に漏れず、今少しずつかつてとは違う読み方をされつつある。時代の感性や情緒が変化する中、川端作品はどれが「名作」として生き残れるか。高校二年生で『眠れる美女』に衝撃を受けて以来のめり込み、「川端は最も好きな作家」と公言する著者が〝女性″を切口に10の人気作を再読する。『雪国』『伊豆の踊り子』『山の音』『片腕』……幾重にも魅力的に光る女たちの描写から、川端の複層的な人間味も垣間見える画期的論考。
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Posted by ブクログ
川端康成は文章が下手だった
良い本で、評伝から作品をみるといふことをしてをり、川端の人生と運が名作『伊豆の踊子』や『山の音』『雪国』に影響を与へたことがうかがへる。
一方で、新感覚派の比喩はさすが川端の天才性が発揮されてゐるとしても、長篇になると行きあたりばったりに書いてしまひ、筋がめちゃくちゃになってしまふ。その欠点はしっかり書いてあり、一歩引いた信頼できる本だと思ふ。
ところどころ著者の悪い感想がが出てゐるところは、ご愛嬌で、この本は著者が調べた事実の価値とその推定を重んじるべきである。
Posted by ブクログ
2022年10月に川端康成の再読を始めたとき、結構長いマラソンになりそうだから、中間地点としてこの本を読もうと考え、目次に現れている本を搔き集めた。
ところへ作者が、津原泰水に対する中傷に近い文章をブログにアップした。
私は作者の下劣な品性を心底から軽蔑することになった。
もとより新書の「性と愛の日本語講座」、「日本人のための世界史入門」、
「文學界」で「ヌエのいた家」や「東十条の女」を読んだくらいの読者。
積読に「『こころ』は本当に名作か」「純文学とは何か」が控えているが。
おそらく「歯に衣着せぬ」と戦略的に取ってきたセルフイメージに、ブログやSNSで内側から食われているのだろう。
無頼と劣等意識とポジショントークとで訴訟馬鹿に。
この人はSNSは辞めたほうがいい。
と、思うが、川端初心者にはこの本は結構面白かった。
「川端康成伝 双面の人」「川端康成 詳細年譜」の落穂拾い、いや、それこそ新書にぴったりの初心者向け「小谷野敦、川端康成を放談する」みたいなコンセプト。
ものすごく面白いブログ記事のよう。褒めてる。
作者が川端を「信奉まではしていない」というスタンスが、面白さを引き出している。
また「魔界」だとか「旅人」といった川端評論のジャーゴンから距離を取っているのも、よい。
作品論とゴシップの間を縫う、雅俗の間を行き来する、とても面白い文章だと思う。