折口信夫のレビュー一覧
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ネタバレ耽美とは何なのか未だ理解できていないが、収録作から思うに愛憎、背徳、情念、倒錯、フェティシズム、幻想、狂気etcが入り混じったものか。そこにタナトス≒死への衝動が加味された、名だたる文豪らによる10編。
「桜の森の満開の下」(坂口安吾)や「瓶詰地獄」(夢野久作)は本書のコンセプトをまさに体現している作品か。作家のフェチ全開「刺青」(谷崎潤一郎)、美しくニューロティックな幻想「夢十夜」(夏目漱石)、サスペンスからの意外な結末「影」(芥川龍之介)もそこに沿ったものかと。
"美"という点では泉鏡花の「浮舟」、折口信夫「身毒丸」なのだろうが、個人的には独特の文体含め作品世界にハ -
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死者の書は何度も読み返し、その度に魂を奮わされてきた。初稿も読み、人形劇の映画も観たし、近藤よう子の漫画も読んでいる。大坂に単身赴任時に当麻寺や二上山には何度も足を運んだ。
口ぶえも既読。
死者の書の続篇について知ったのは、中沢新一さんの本からだったかな。
概要を知って、それほど食指が動いた訳ではなかったんだけど、本屋の棚に見付け、読んでみた。
従って、このレビューは続篇についてのみ。
左大臣の名が明かにされないのは、本編(?)で亡霊の名が伏せられているのと共通している。読み始めて、あっさり折口の文章に絡め獲られる。
住吉から堺の古墳群を望み、学文路(かむろ)の寺に逗留する。高野山に行く南海 -
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折口信夫の「死者の書」は何度も読み返している。思い入れのある作品。
漫画になっていることは知っていたけれど、本屋の棚で見つけ購入。
近藤版の死者の書は、郎女の物語。僕は最初、原作を読んだ時から、亡霊の声に心が囚われていたので、虚を突かれた。
郎女が幻視する阿弥陀は、「死者の書」の初稿版に依っていると思う。キリストに似ている印象。漫画として近藤さんの解釈のシーンも加えられて、判り易くなっている。
亡霊の訪れを郎女は、どう捉えていたんだろうか。漫画からの印象は原作を読んだ時と違ったので、暫し考える。
語部の媼が郎女に語る「滋賀津彦は隼別でもおざりました。天若日子でもおざりました」。なぜ、終盤 -
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ネタバレ「彼の人の眠りは、徐かに覚めて行った。まっ黒い夜の中に、更に冷え圧するものの澱んでいるなかに、目のあいて来るのを、覚えたのである。
した した した。耳に伝うように来るのは、水の垂れる音か。ただ凍りつくような暗闇の中で、おのずと睫と睫とが離れて来る。」
『死者の書』の冒頭。「彼の人」とは誰か? 謎めいた出だしにぐっと引き込まれる。次に、「した した した」という擬音音が、雫の落ちる音だと知って驚く。闇の中に、生者とも死者ともつかぬものが身を起こす不気味さ。第一章が魅力的だ。
他の章でも、独特な擬音語が登場する。「のくっと」身を起こす様、「こう こう こう」と魂を呼ぶ声、「つた つた つた」 -
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折口信夫の「万葉集」と小池昌代訳の「百人一首」
はどちらも、少し難解というか、その良さがすべて理解
できたわけではありませんが豪華な内容だったと
思います。万葉集や百人一首をここまで深く読んだ
ことは初めてかと思います。
百人一首は、昔覚えた記憶があるのですが、割と
忘れているもので、半分以下しか覚えていません。
でも、かけ言葉や謎、背景、意味がここまで
詳しく読めたのは初めてかもしれません。
『新々百人一首』は中にはいい句もあるのでしょうが
個人的に丸谷氏の旧態のかなづかいがどうしても
気持ち悪くて、読む気になりません。
なんで旧かなづかいをわざわざする必要があるので
しょうか???
現代の -
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日本民族学の大家の4人の作品集
南方熊楠・柳田國男・折口信夫・宮本常一
南方熊楠は、『神社合祀に関する意見』
各地の神社が廃止されていくことに強い危機感を
もって意見書として書いてあるもの。神社をはじめ
日本における宗教的施設の役割や重要さ、もしくは
それが亡くなってしまう場合の民族として失う
ものを体系だてて整理して書かれてある。
少し難解ではありますが、とても趣のある内容で
あると思います。
柳田國男は民族史や古代からの日本の成り立ちに
ついての考え方や意見、考察がのべられている。
『海上の道』『根の国の話』『何をきていたか』
『酒ののみようの変遷』
折口信夫は、『死者の書』貴族の生活と仏 -
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民俗学者折口信夫による小説。表題の「死者の書」は一応完結した作品となっているが、他の収録作品は未完。民俗学者としての作者が捉える民族観・歴史観と、当然ながら作者自身の主観が色濃く漂う作品は、ストーリーの時系列が意図的に組み替えられていることと、単語の読みやかなづかいに慣れないせいかスラスラ読み進む訳では無いのだが、何だか不思議な浮遊感を伴う読書体験だった。
どうしても作者の意図を読み込もうとして、小説としてそれほど楽しむことが出来なかったのが残念。「口ぶえ」が半自伝的小説だという解説でなるほどと納得したが、同性愛的主題は趣味ではないなあ。