西澤保彦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
同窓会名簿の中で、学生時代に一緒にバンドを組んでいた女の子の住所が消えてしまった。
住所が消えただけで裏切られたように思うという、ちょっとわかりかねる原因が動機に繋がり、そこから生まれた憎悪を女性全般へ向けるなど、考え方が飛躍しすぎてます。殺人鬼となるくらいだから通常の心情では計り知れない考え方をするのかもしれませんけど。
その辺り、不自然さもありますが、すんなり受け入れさせるストーリー展開が上手いです。惹き込まれ一気に読んでしまいました。
猟奇的でグロテスクな犯罪の描写部分はヘビーなので苦手な人も多いかなとは思います。
ラストは、多少なりの無理は感じますが、衝撃的でした。ラストを読んでから、タイトルに込められた本当の意味がわかります。タイトルのつけ方が秀逸です。 -
Posted by ブクログ
大好きなシリーズなのに、なぜかしばらくの間遠ざかっていた。長編としては2作目くらいが頂点で、あとは少しミステリとしての面白さに欠けるようになってしまったからかなあ。基本的には短編向きのシリーズだと思うので。
短編向きというのは、要するに酒を飲みながら大学生があーでもない、こーでもないと想像をたくましくしながら議論をする、というのがこのシリーズのお約束だからである。短編なら「ああ、こういう解釈もあったか」と膝を打つような切れ味が感じられても、長編になるとどうも「無理やりっぽさ」が醸し出されてしまう。そのあたりを、登場人物の魅力や、その人間関係への興味で補っているように思う。
この長編もご多分に漏れず。大きな枠があって、そこに全体を貫く謎があるんだけど、この謎はどちらかといえばミステリ的な謎と言うよりも、普通小説に寄りのものである。そしてその中に単発でいくつもの小さなミステリが提示され議論され一応まとまる。その一連の流れから感じられる人間の悲しさみたいなものが、タイトルと大きな枠の内容に響きあう。いい趣向だと思うけど、途中でちょっとあきてしまうような気持ちになった。
シリーズキャラクターに焦点を当てて読むと、今までのどの作品よりもドラマチックと言ってもいいと思う。馴染みだったはずの人物の新たな側面が次々と見えてくるし、人間関係の重大な変化が生まれてくる。特に、結末部分の緊張感は、シリーズとして白眉だと思う。息を詰めながら読み、最後にほっとため息をつくようにして本を置いた。
ただ、そのすごさは、残念ながらこの本一冊を読んでも感じられないと思う。長編をすべて時間順に読んで、短編では最低「黒の貴婦人」だけは読んでおかないと、内容的にも精神的にもついていけないように思う。単純にミステリとして読めば、もうひとつ物足りなさが残る作品だと思うので、遠回りなようでも第1作から読み続け、4人組のファンになってからこの「依存」を手にとってほしい。なかなかのものだから。