西澤保彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大好きなシリーズなのに、なぜかしばらくの間遠ざかっていた。長編としては2作目くらいが頂点で、あとは少しミステリとしての面白さに欠けるようになってしまったからかなあ。基本的には短編向きのシリーズだと思うので。
短編向きというのは、要するに酒を飲みながら大学生があーでもない、こーでもないと想像をたくましくしながら議論をする、というのがこのシリーズのお約束だからである。短編なら「ああ、こういう解釈もあったか」と膝を打つような切れ味が感じられても、長編になるとどうも「無理やりっぽさ」が醸し出されてしまう。そのあたりを、登場人物の魅力や、その人間関係への興味で補っているように思う。
この長編もご多分に漏れず。大きな枠があって、そこに全体を貫く謎があるんだけど、この謎はどちらかといえばミステリ的な謎と言うよりも、普通小説に寄りのものである。そしてその中に単発でいくつもの小さなミステリが提示され議論され一応まとまる。その一連の流れから感じられる人間の悲しさみたいなものが、タイトルと大きな枠の内容に響きあう。いい趣向だと思うけど、途中でちょっとあきてしまうような気持ちになった。
シリーズキャラクターに焦点を当てて読むと、今までのどの作品よりもドラマチックと言ってもいいと思う。馴染みだったはずの人物の新たな側面が次々と見えてくるし、人間関係の重大な変化が生まれてくる。特に、結末部分の緊張感は、シリーズとして白眉だと思う。息を詰めながら読み、最後にほっとため息をつくようにして本を置いた。
ただ、そのすごさは、残念ながらこの本一冊を読んでも感じられないと思う。長編をすべて時間順に読んで、短編では最低「黒の貴婦人」だけは読んでおかないと、内容的にも精神的にもついていけないように思う。単純にミステリとして読めば、もうひとつ物足りなさが残る作品だと思うので、遠回りなようでも第1作から読み続け、4人組のファンになってからこの「依存」を手にとってほしい。なかなかのものだから。 -
Posted by ブクログ
ビブリオバトル首都決戦本戦での杉目さんの紹介聴いて、ぜひ読みたいと思っていた一冊です。
人間の精神が論理的正当性を喪ってゆく様が興味深く描かれていました。何ら害をもたらすはずも無い出来事でも、ある種の、幼い頃から疎外感を溜め込んできてしまったような人間にとっては、それが狂気の引き金なる。数々の戦慄行為の描写もさる事ながら、認識が歪んで狂気に至る過程がとても恐ろしかったです。
結末は見事にドラマ性の高い展開で、やりきれない哀しみが大きいのに不思議と読後の充実感がもたらされました。読むという安全圏の中では出来るだけ鮮やかに騙されたい、そんな読むことへの欲望がみたされているのだと思います。