西澤保彦のレビュー一覧

  • 彼女は逃げ切れなかった

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    元女刑事と超能力が使える双子がタッグを組んで……なミステリなんだけれど、双子の能力を全面に出す特集能力ミステリじゃないところが面白い。ミステリはミステリとして成立してて、たまたま双子がいるって感じだ。シリーズ化してほしいな〜。

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    2025年04月29日
  • パラレル・フィクショナル 予知夢の殺人

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    「確定している未来の事象を事前に幻視する」予知夢を見る能力を持つ久志本刻子と甥の素央は、謎の殺人鬼による一族に起こった惨劇を夢に見る。未来は変えられるかもしれない、と一縷の望みをかけて惨劇の場に顔を出さない、という選択をした素央の行動によって、惨劇は回避された。何故、惨劇は回避されたのか。ふたりはお互いに見た夢の答え合わせをはじめるのだが――。

     というのが、本書の導入。他の能力では代替できない『予知夢』だからこその『殺人』の形を描いた傑作だと思います。個人的には著者の作品群の中でも、かなり好きな作品です。一筋縄ではいかない複雑な構成によって放たれるラストの強烈な一撃にミステリ的な快感を覚え

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    2025年03月16日
  • 下戸は勘定に入れません

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     十二月の終わり、その年、五十歳を迎える大学教員の古徳は、学生時代の同級生である早稲本と再会する。古徳にとって早稲本は旧友でありながらも、ひとりの女性を巡って因縁があり、再会が必ずしも喜ばしいものではなかった。一緒に酒を飲むことになったふたりは、気付くと二十八年前の世界にタイムスリップしていた。実は古徳には様々な条件が重なることで、タイムスリップできる体質を持っていたのだ。過去に戻った早稲本は、ずっと抱えていたある疑念を古徳にぶつけるのだが……。

     本作はタイムスリップ能力を持った男を主人公にした連作集になっています。過去に戻れるという能力を有している、と言っても、自由自在に行き来できるわけ

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    2024年12月24日
  • 狂う

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     狂う。なんて魅力的なタイトルだ、と初めて見た時、そんなふうに思いました。単行本時のタイトルは『彼女はもういない』。内容を考えると、どちらも作品には合っているのですが、個人的には『狂う』のほうが好きです。

     鳴沢文彦は母校の同窓会名簿の改訂版を見たことをきっかけに、爆発的に憎悪が醸成されるようになった。かつてともにバンドのメンバーだった奏絵の連絡先が空欄になっていたのだ。この出来事をきっかけに鳴沢は自分の得た遺産を目当てにする甥を利用して、凶行を重ねていく。

    『狂った』としか思えない行動の、『動機』だけは不明瞭なまま。どんなに他人からは理解されなくても、当人には当人なりの論理が大抵、あった

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    2024年12月22日
  • 殺す

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     異様な遺体となって見つかる女子高生、常軌を逸した行動を繰り返す刑事。被害者たちの共通点が分かるとともに、やがて明らかになる犯人の意外すぎる動機。ということで、西澤保彦『殺す』は、元々のタイトルは『猟死の果て』で、どちらであったとしても、過激さを感じるタイトルですが、内容も名前負けしない異様さを持っています。

     心の歪みが暴走するとともに、周囲にいた者たちまでもがおのれの闇をさらしていく。これは怖い。そして露悪的にデフォルメして描かれているように見えて、必ずしも、「いや、こんな奴おらんやろ」と言い切れないものを感じてしまうことに、さらなる怖さがあります。

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    2024年12月14日
  • あの日の恋をかなえるために僕は過去を旅する

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     著者がかつて書いた作品の中に、『七回死んだ男』という作品があります。遺産相続をめぐる騒動の中で死んだ祖父の死を回避するために、同じ一日を何度も繰り返す少年の奮闘を描いた著者の代表作です。

     ふと読みながら、『七回死んだ男』を思い出したのは、本作も家族の死を回避しようとする男の物語だったからかもしれません。だけど死を止めたい理由が独特と言えば独特ではあります。突然、現在の姿のままタイムスリップした男が死を止めたかったのは、姉のため。女性しか愛せなかった姉はそのことで反発し合っていた昔気質の父親が殺されたことがきっかけで、望まぬ結婚をし、望まぬ人生を歩んでしまったからなのです。

     家族をめぐ

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    2024年12月12日
  • 新装版 七回死んだ男

    匿名

    購入済み

    ミステリーを読んだという感じはあまりしないですが、ループものとしてはかなり面白かったです。
    遺産相続の話で暴言が飛び交ったりもするけど、不思議とどの人物も憎めないのがいい。

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    2024年09月25日
  • 人格転移の殺人

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    ジェットコースターに乗せられたかのようなスピーディーな展開だったし、手品を見せられているかのような見事なトリックと謎解きだったので、一気読みした挙句、読後しばらく放心してしまった。本当にすごかった。登場人物たちの人格が入れ替わる、なんて設定はどちらかと言えばSF寄りなのに、それでも憎悪が湧き、突発的な暴力も計画的な犯行も起きるのだ、とこうも見せつけられて、驚かない読者なんていないと思う。そのくせ、最後はなんだかんだロマンティックに締めてくれるのだから、ラスト一ページまで油断のならない、とんでもない一作だった。

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    2024年07月28日
  • 人格転移の殺人

    匿名

    購入済み

    設定がワクワクする

    SF×クローズドサークルミステリ。
    こういうジャンル大好きですが、やっぱり面白かった!
    ハイペースで人格が入れ替わるところは少し混乱したけれど、
    図もあるし、説明も丁寧なので乗り切れました。
    理屈が納得出来たし、読後感も爽やかで、読んで良かったと思いました。

    #ドキドキハラハラ

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    2024年06月17日
  • 腕貫探偵

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    中学生の頃好きだったシリーズの1弾を再読。
    全く覚えていなかったのが幸いし、2度楽しめた。
    この重すぎないミステリーの短編と、絶妙に交差する人間関係の描き方が良いな〜。

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    2024年05月25日
  • 彼女が死んだ夜

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    今読むには少し古い物語だとは思いますが、それでも私はこの物語に心を掴まれました!
    このミステリーはほんとに素晴らしいと思います!!

    ミステリーでは当たり前な展開、今まででてきた登場人物の中に犯人はいて、犯行に関わっている人もいて、少しずつ真実が分かっていくはずなんです。
    少しずつ真実がわかっているのに、自分の推理はどんどん真相から遠ざかっていました。
    最初はハコちゃんと呼ばれる女の子の視点から入ります。その視点では、事件で重要なことが描かれているはずなのに、私は最初のそのシーンのせいで逆に真相から遠ざかっていきました。きっと作者もそれを狙っていたのでしょう。最初に重要な場面を見せ、読者が真実

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    2024年05月05日
  • 神のロジック 次は誰の番ですか?

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    序盤からなんとなく少し不気味な雰囲気が流れ、独特の世界観が展開される。〈学校(ファリシティ)〉と呼ばれる謎の施設の正体を解き明かしていくことを中心にして物語が進む。二転三転する物語の様相にすぐに引き込まれた。ラストのどんでん返しは本当にすごい。真相が多少SFチックに感じてしまう人はいるかもしれないが、張り巡らされた数多くの伏線もあって全く気にならない。とても面白くて興味深い小説だと思う。

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    2024年01月22日
  • 神のロジック 次は誰の番ですか?

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    不気味な文章が特徴的。個性的な登場人物と違和感のある環境から、自分で推理しながら読めて面白いです。
    設定が約束のネバーランドに似ているところもあって、約ネバ好きとしてはめちゃくちゃワクワクしながら読めました!
    とにかく面白かったです!文章も読みやすいですし、特に中盤から展開に勢いが乗ってゾクゾクしました。もう1回読みたいです☺︎

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    2024年01月02日
  • 人格転移の殺人

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    いや〜!おもしろい!その一言につきる。

    人格転移というSF設定とその中で巻き起こる殺人事件。どちらもハラハラ展開で、後半以降の展開はスピード感もあり一気に読んでしまった。

    人格転移という設定のため頭が混乱する部分が多々あるが、それを難なく乗り越えるくらいにはおもしろかった。

    特に、最後の最後にわかる「第二の都市」の存在意義。そして、冒頭からの伏線回収と最後の1ページまで存分に楽しめる。

    素晴らしい技術があったとして、生かすも殺すも、やはり使用する私たちにかかっているのだと、そんなことを思わずにはいられなかった。

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    2023年09月08日
  • 神のロジック 次は誰の番ですか?

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    ネタバレ

    なるほど、本書の帯に「ミステリが明らかになった後の衝撃・その後にある気持ちが湧き上がってくる」ということを書いてありその意味がよくわかった。

    物語の後半から一気に増すスピードと、読後にわかる細かな伏線。
    私は普段ミステリ小説はあまり読まないがなかなかにハマりそうな読後感だった。

    以降はネタバレになるが、本書の肝となる「ファンタジー・共同幻想」は現代にも似た部分が多分にあると思う。

    SNSの普及によって自分好みの情報だけを取捨選択できる環境が整った。
    だから自分の知っている世界は一面的で偏りができてしまっているかもしれない。
    そして、そのことに気がつくこともできないかもしれない。

    結果と

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    2023年06月25日
  • 死者は黄泉が得る

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     死者たちの世界―― 誰も寄り付かない辺境の屋敷にそれはあった。 生前の記憶をリセットして生ける屍として再生させる装置、それによって甦った屍は更なる仲間を求め生者を殺していく・・・。 一方死者の世界の隣町では不可解な連続殺人が起きていた、死後の世界と生前の世界が交わる時事件は驚愕の結末を迎える・・・。

     西澤氏のSFミステリ。 「生ける屍の死」の影響を強く受けています。 荒々しいそれでいて雑ではない驚天動地のトリック、ラスト数行で叩きつけられる真相、SFという自由な設定に厳粛なルール付けをして展開される西澤ミステリの最高傑作だと思いますね。(でも舞台がアメリカなので珍苗字は一切出てこないのだ

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    2023年05月13日
  • 自薦 THE どんでん返し

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    綾辻行人、有栖川有栖、西澤保彦、貫井徳郎、法月綸太郎、東川篤哉という、めちゃめちゃ豪華なミステリ作家たちによる短編集。
    ストーリーとして好きなのは有栖川有栖の作品、ミステリとして好きなのは西澤保彦の作品だった。
    収められている作品は、ミステリという枠にとらわれない作品ばかりだが、その著者の作風には見合っている気がする。
    もしこれらの作家の中で気になっている方がいれば、その入門編という形で読んでみてもいいかもしれなき。
    ただ、どの作家も、長編になると一気に癖のある作品を書かれるような、そんな方々ばかりのような気がするが。

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    2023年05月06日
  • 神のロジック 次は誰の番ですか?

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    奇妙な設定が綺麗に伏線として回収されている本。
    所々の違和感がしっかりと伏線になっているし、
    主人公に入り込むほど結末に驚嘆するだろう。
    おすすめ。

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    2023年05月01日
  • 帰ってきた腕貫探偵

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    4編の連作短編集。うち3篇は何十年も前の事件の真相が解明されていくというもので面白かった。ただ今回はどの話も結構重め。

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    2023年03月29日
  • 必然という名の偶然

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    腕貫探偵シリーズの番外編。
    前作のモラトリアムシアターを読んでから今作を読んだ方が私的には良かったのかも。

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    2023年03月22日