西澤保彦のレビュー一覧
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ネタバレこの小説は、主人公たちの活動が終わり、帰りに訳あって寄った家の「不思議」を、家の中にあるビールを飲みながら各自好き勝手に推理していくという、何とも平和な(?)ミステリ小説です。
最初に手に取ったとき、いやに表紙がオレンジ色だなあと思ったら、よく見るとこの小説に登場するヱビスビールのロング缶だったので思わずふふっとしてしまいました。
タカチが積極的に推理を始め、展開が二転三転していくのも、この小説の面白いところだと思います(そして、それ自体が伏線になっていたりする)。
10章の【空き缶は捨てないようご協力下さい】で、タックが「ファースト」にある缶ビールの本数を数えていたことに他のメンバーが唖然としているシーンに笑ってしまいました。
11章の【非熱処理】で、ウサコの「(前略)AとBという、ふたりの人間がいるとするでしょ?BはAの髪型から服装まで、全てを同じように真似する。そうすることによって、BはBではなくて、果てしなくAダッシュに変身してゆくわけ。何のためにそんなことをするのか?Bは第三者に、自分のことをAであると誤認して欲しいから。」という科白の“果てしなくAダッシュに変身してゆく”というところが、どことなく疾走感があってお気に入りです。
12章の【内容量500ml】はボアン先輩がずっとおいおいと泣いているので、「誰か止めてやれよ……」と思いながら読んでいました。 -
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ネタバレ
1章のフラッシュバック〈過去〉を読んだときは、アクロイド博士が主人公なのかと思いました。しかし、実はそうではありませんでした(過去の話の中という意味では、主人公だと言えるのかもしれません)。結局のところアクロイド博士とジンジャーはどうなってしまったのか、この1章が次章以降にどう絡んでいくのかが、とても不思議でした。
5章のクラックアップ〈狂乱〉で江利夫とジャクリーン以外の4人が一気に死んでしまったので、びっくりして思わず「えっ」と声を出してしまいました。お決まりのミステリ小説よろしく、登場人物の誰かが各章で少しずつ死んでいくものだと思っていたからです。
8章のフリップオーヴァー〈逆転〉で真犯人が窪田綾子であると判明した時、今までの「アランは綾子の死に疑問を抱いていた」「だからとりあえず他の5人を全員殺害することにした」と思っていたこと自体が、大きな伏線であったことに気づき、はっとしました。
綾子の、恋愛にも似たアランへの期待と、ジャクリーンに対する強烈な嫉妬心が、この大地震という極限状態においてひどく短絡的で歪んだ方向に進んでいってしまったのが悲しかったです。ジャクリーン、罪な女……。
また、章全体を通して官能的なセリフが散りばめられており、最後のページで、ジンジャーから聞き出した「男女の仲を深める」というセカンド・シティ本来の意義をジャクリーンが江利夫に向けて説明する場面への布石だったのではないか、とも思いました。
しかし、それにしても、アクロイド博士とジンジャーが夫婦となってから、約20年にもわたってCIAを騙し続けているというのは驚きでした。
やはりCIAのデイヴといち社会心理学者のアクロイド博士ではわかり合えないというか、譲れない部分がどうしても出てきてしまうのだろうなと思いました。しかし、「ふたりが近距離で生活し、秘密が世間に洩れないよう常に連絡を取り合うこと」を条件に帰国させてしまうCIAのちょっとした優しさが「騙されるのはそういうところだぞ……」とも思いました。
セカンド・シティの意義からして、婚活パーティー的要素もあるのではないかと一瞬思いました。しかし、人格が転移するという点を考えると、今回の江利夫とジャクリーンのように、全く見知らぬ人同士で人格が転移するのはとてもリスキーです。ジンジャーの言うように、やはりセカンド・シティは、見知った配偶者同士が相互理解を深めるために作られたもの……というのが筋なのかなと思い直しました。そうでなければ、自分という彼氏がいるにもかかわらず、彼女(=ジャクリーン)は見知らぬ男(=江利夫)と一緒に生活し、人格すら相互に転移しているという状況の渦中にいるストーリングが、あまりにも可哀想なので。
この作品の時代設定が197×年であることとセカンド・シティが未来人によって作られた可能性があることを踏まえると、もしかしたら、あの世界線を進んだ先の2026年には、セカンド・シティが作れるほどの技術があるのかもしれない……とも思いました。 -
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積本より。
ものすごくお久しぶりの西澤さん作品。
7回死んだ男が面白すぎて、当時この方の著書を手あたり次第集めていた。
タック&タカチシリーズとか、チョーモンインシリーズとかめっちゃ夢中になって読んでた。
そういえばこんな感じだったな~。
明るくてライトなやつと暗くて陰惨なやつの落差が激しかったな。
今回のは明るくてライトな方。
一人称のそれぞれの視点で進んでいく。
基本的にはキャラたちの会話だけで話がどんどん進んでいく。
会話が進むごとに事件が整理され、推理されていく様子がお見事。
ついでにお酒も一緒にくいくい進んでいってるのがまた。お料理もおいしそう。
ちょっと麦酒の家の冒険を思い出したり。内容ほとんど覚えてないけど。
犯人の始末のつけ方も複線回収という感じで、ああそうなるのかーと。
これは好みの問題だろうけど、随所に挟み込まれる主人公の色ぼけた思考のおかげでとにかく読みにくかった。これも人物を描く、のテクニックといえばそうなのかな?
とはいえ、その描写の中に、読み手が犯行の動機を理解するうえでの説得材料もちりばめられているわけで。
久しぶりにミステリを読んで、ちゃんとミステリで楽しませていただきました。読んでよかった!
以前に本屋で著者の訃報を知り、もう新刊が読めないんだと寂しい気持ちになりました。
たくさんの楽しい時間を過ごさせていただき感謝しています。
ありがとうございました! -
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ネタバレボアン先輩が主として殺人事件に向かう。
タックとタカチは前作の依存であまり登場機会はなく終盤の謎解きで本領発揮。
安槻大学の後輩ソネヒロがボアン先輩たちとの飲み会の後徒歩40分程離れた公園でジョギング姿の女性と揉み合ってナイフが刺さり死んだところを近所に住む盛田に目撃される。別な殺人事件が起き、女子高生の鯉登あかりが自宅で殺されており、その脇には交番勤務の明瀬刑事も殺されていた。全能の神の様な妖しい雰囲気のあったあかりは学校の司書の朔美とただならぬ関係であったらしい。私小説『身代わり』を書き朔美の婚約者と体の関係がある内容のものを見せつけて朔美は激怒する。あらにあかりは朔美の婚約者と実際関係があり妊娠もしていた。
絡み合う2つの事件、紐解いていくと交換殺人。謎の常与神社の天狗吊りの復讐のおまじないで知り合った見ず知らずの2人。天狗吊りはあかりが創作したらしいが、自作の噂で自身が身代わりに殺されるとは因果なもので。 -
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大学生の染谷朝陽は不倫相手との密会中に、ほとんど没交渉状態にあった父親の直道から連絡を受ける。焦った雰囲気の父親は二十年近く振りに高和に来ている、と言い、急いで車で迎えにきてほしい、と告げる。いくつか疑問点はあるが実際に父親のもとへ向かうと、仰臥した見知らぬ女の死体が――。
ということで本作は複雑な家族、親戚事情に、彼らの持つ不思議な能力が絡んで、さらに複雑さを増しながら、事件の真相へと向かっていくミステリです。西澤保彦さんの初期の大傑作『人格転移の殺人』と同様、〈人格転移〉を扱っていますが、アプローチの仕方はまったく違っていて、混乱しつつも読み進めていって、(判断が分かれるところだろうな、というのは承知しつつ)最後まで霧が晴れることをよしとしない余韻が印象的でした。 -
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ループ物の作品として有名な「七回死んだ男」
流石です。とても面白かったです!
まず、主人公のキュータロー(ヒサタロウ)が、凄く好きです。人間的に、好感が持てます。
キュータローは、16歳の高校生ですが、ループを何度も繰り返し続けている為、精神年齢は30歳くらい?だとか。
物語は、ある程度、オチを予想をしていた部分はあったのですが、ことごとく外れました。
くっ…まさか、最後にそうくるとは…と。
でも、個人的には好きな展開なので、、その後どうなったのかを…もっとはっきり知りたかったです。
でも、そこは、きっと大丈夫だと信じています。
少し懐かしい朝ドラを見ているような、楽しいひと時でした。