日暮雅通のレビュー一覧
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数々の賞を受賞しカズオ・イシグロも絶賛したという小説。
十何年ぶりに再読した。
ベジェルとウルコーマという壁のない東西ベルリンみたいな話て2つの都市は異なる発展、言語で相互の国民が見ないことによって分断されていて、その境界を乱すものを監視するブリーチという超法規的謎の権力組織がその入り組んで隣接する境界を管理徹底している。
そこに一人の女性の遺体が発見され……
クロスハッチやブリーチなんていう特殊な言葉が普通に使われる。前後の文脈である程度わかるが、この世界の人達にとっては普通なので不都合についての感想は述べるけどその用語の説明はしない。
隣接都市を盲点に追いやり共存するというユニークな設定 -
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心理学や脳科学などの科学的な成果からどういう心構えでいればいいか。マインドセットの話。理想の賢人ホームズと凡人ワトソンというのを使って述べている。ただ、ホームズの凄さは事件の全貌をコナン・ドイルは知っていてホームズとワトソンを書き分けている。杉下右京などもそう。この作者にしてもあくまでも架空の人物の活躍なので後付ととるかそれに託したと思うかで印象は違うかも。多少専門的な概念が出てくるけど大体、参照している論文などは同じなのでなんとなく知っている感じではあるかな。『パスカヴィル家の犬』読んでから読んだので関係性や雰囲気を理解しつつ読めた。ホームズに託すことがどこまで具体的なことかどうかはわからな
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ネタバレ物語の舞台となるのは、ふたつの都市国家。両国の領土は隣り合っているというより、飛び地のように入り混じっている。区画ごとに国が入れ替わるような地域もあれば、公園の真ん中や木立の途中で国境が引かれた地域もある。網目状に入り乱れた国境線には壁はない。しかし両国の住人たちは幼い頃から訓練を受け、たとえそれが目の前にあっても、隣国の情景は意識から追い出すよう求められる。そしてその規則を破ったとき〈ブリーチ〉と呼ばれる組織がどこからともなくやってくる…。
奇抜な着想を、綿密なディテールによって読ませる、ハードボイルド・ミステリーでありSF小説。奇妙な都市と都市との間に、さらにもうひとつの都市が隠されている -
- カート
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試し読み
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ネタバレワトスンが書いた(と、いう設定の)前作「緋色の研究」は、ホームズに言わせると
「ロマンチックが過ぎる」
ちゅうことやったけど、今回はロマンチックの極みやったな!
エッ!? いきなり恋に落ちちゃう感じ!?
ちゅうお約束のツッこみを、まさかホームズシリーズでやることになるとは・・・(笑)。
ワトスンくん、若い恋人をゲットしましたネ・・・。
細かい注釈を並行して読むほうが面白かった(前回は注釈をまとめてドカッと読んだ)。
「〇〇か▽▽かは、シャーロッキアンでの論争テーマの一つ」
とか注釈をうたれると、なんかニヤニヤしちゃうよね!
シャーロッキアンって社会的に認められているホームズおたくやもん -
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多彩な作風を示すミエヴィル、この『クラーケン』は『アンランダン』に似ている。シュールというよりアブサード。正直、あんまり好きじゃない作風。クラーケン、すなわちダイオウイカの標本が神? アホくさいことを言う。アホくさいことを承知の上で、アホくさいことをアホくさく言うのが、しらけてしまうのだ。アホくさいことに気づかず、アホくさいことをアホくさく言ったり、アホくさいことを承知の上で、アホくさいことを真面目くさって言うのはいいのだが、アホくさいことを承知の上で、アホくさいことをアホくさく言うのは、その内容のアホくささに語りのアホくささが加わって、しらけてしまうしかないではないか。
ミエヴィルはこの -
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「クラーケン」ですよ、海洋冒険SFでしょ、ふつう。オールド・ファンならジョン・ウィンダムを思い浮かべるかもしれません。
ウィンダムのを星新一は「海竜」と訳したけど、クラーケンは本書の場合、ダイオウイカです。NHKが撮影に成功する前にも、ダイオウイカは存在し、その標本はあったわけで、本書はNHKのダイオウイカ・ブームとも関係ありません。
ダイオウイカの標本はとあるロンドンの自然史博物館の呼び物です。ダイオウイカの標本作製を担当した学芸員のビリー・ハロウが主人公です。ある日、ビリーが見学者たちを案内していると、あの巨大なダイオウイカの標本が消えていた。というのが発端。
奇妙な警察官がやって -
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『ペルディード・ストリート・ステーション』を読み終えて、私はミエヴィル中毒になった。これはミエヴィルの短編集。『ペルディード』ふたたび、と思っていると、やはりちょっと違う。彼はホラーとかウィアードの作家ということになっており、そういう掌編が並ぶ。マンガも。
何だかダメになったロンドンでジェイクと別れた話。建物の基礎の声を聴く男。デパートのボールルームの怪異。魔法使いの使ったスプラッタな使い魔の行状。ある言葉を聞くと脳の一部が蠕虫状になって脳を食い荒らしてしまう病気についての医学事典の記載。クリスマスのあらゆる細部が商標登録されてしまったロンドンのお祭り騒ぎ。外界の線が相貌になって迫ってく -
Posted by ブクログ
心理学と脳科学をシャーロック・ホームズを題材に解説し、さらにホームズの思考術を身につけてしまおうと提案している。ワトスンのような過去の出来事やその場の印象に引きずられるような推理を何故してしまうのか、逆にホームズのような的確な推理はなぜできるのかを、記憶の仕方、記憶の引き出し方、そして注意力、観察力、分析力、想像力などの鍛えられ方の違いから明らかにしている。脳科学から見た”思考の癖”がまさにワトスンの推理そのものであるというのが面白い。そしてホームズになるためにはワトスンの思考法から脱却しなければならないのだが、一方でワトスンが欠かせないというのも興味深い。小説において、ワトスンが思いつきを