日暮雅通のレビュー一覧

  • 四つの署名
    小学生の時にシャーロックホームズシリーズにハマって何度も読んだ。しかしそれ以来なかなか読み返すこともなく、本棚の隅にずっと並べていた。
    訳者の日暮さんはシャーロキアンと聞いていたので、期待して読んだところ当たりだった。
    読みやすい訳文、充実した注釈、多くの画家による挿絵。装丁もおしゃれでとてもいい感...続きを読む
  • 四つの署名
    小学生の時以来だけど、その時はポプラ社の翻案ものだったので、原作は初めて読んだことになる。全然覚えていなかった… ホームズの長編は探偵小説というよりは冒険小説なのよね。歴史小説を書きたかった、という片鱗も見えて興味深い。
    ホームズの観察でわかるところはここまで、で、動機やここに至るいきさつは当人の述...続きを読む
  • 都市と都市
    2つの都市国家が同じ位置にありながら、互いに見えないものとして人々が暮らしている。生まれたときから見ないように訓練している。都市は完全にこちらに属する部分、重なる部分があり、重なる部分では見ないふりをしながらぶつからない様に避けねばならず、とややこしいファンタジー設定。
    しかし、冒頭は殺人事件現場で...続きを読む
  • 指差す標識の事例 下
    読み応えがあった。
    語り手が変わるたびに意味が変わっていく出来事の連続で、主観が違うとこうも違うのかと。もちろんあえて真実を書いていない語り手も存在しているのだけど。2人目が1番手こずった。ちょっとどこまでが妄想なのか…。下巻に入ってからは割と一気に読めたかな。

    手記ごとに訳者が違うも面白い。より...続きを読む
  • 僧正殺人事件
    ヴァンダインの代表作の一つに挙げられることが多い作品なので読んでみた。文学や数学についての肉付けが多くやや疲れるが、事件の進み方、解決パートについては全く古さを感じない優れた作品だと感じた。教授が罪をなすりつけたのはなるほどそういうことか、と。

    ワインを入れ替えるくだりは『バイバイ、エンジェル』を...続きを読む
  • 僧正殺人事件
    学術的な話や芸術作品の話が合間にちょくちょく出てくるので難しく、最初は読み進めるのに苦労したけど後半は一気に読んでしまった。

    確かにこれはミステリを読む上で読んでおかないといけない一冊、という感じ。
    そして最後のダークな終わり方が後味良すぎなくてよい。
    なるほど乱歩が絶賛した理由も分かるかも。

    ...続きを読む
  • 恐怖の谷
    シャーロック・ホームズの、4つある長編のうちの一つ。他の長編「緋色の研究」と同様に2部構成になっている。第1部が事件発生とホームズの推理、第2部で事件の背景にある過去の出来事が語られる。第2部にはホームズやワトスンが登場しないのであまり期待していなかったのだが、予想外に面白かった。実話を元にしている...続きを読む
  • 指差す標識の事例 上
    本作が語られる時代背景や宗教の状況等、知っていた方が断然楽しめます。下巻の末尾についている年表をざっとでもよいので眺めておくとよいかもしれません。
  • 七人のイヴ 上
    長い!けど面白い! 普通の単行本の2~3冊分ぐらいあるけど、これでまだ上巻。
    これだけ長いのは、説明にすごくリアリティがあって、話も具体的でかなり細かいからですが、その割には冒頭でいきなり月が7つに分裂して、その原因とかはまったく追求されない 笑。きっと月が分裂する理屈より分裂した後のストーリーにリ...続きを読む
  • 指差す標識の事例 上
    格調高い文章が、どうにも読みにくかったです。医学創成期の技法が興味深かったですね。輸血の方法とか。血液型も調べないでいいんかい!とは思いましたが、なかなか面白かったです。そうしたサイドストーリーには興味は引かれましたが、ベースとなるストーリーはやや浅め。下巻に期待。
  • 指差す標識の事例 下
    なぜ翻訳者が4人もいるのか、という読む前の疑問があったがそれは納得できた。

    ひとつの出来事を複数の視点から語るという手法は大好きで、信頼できない語り手感がどんどん増していくのは大変に楽しめた。

    ただ、それほどまでにして隠したかった暗号文は、正直なところ「ふ〜ん…」という印象だった。
    イングランド...続きを読む
  • バスカヴィル家の犬
    荒涼としたダートムアが舞台。バスカヴィル家に伝わる魔犬伝説が絡み、サスペンスっぽいハラハラする展開だ。ホームズは当然として、ワトスンもかなり活躍してくれる。名探偵の助手っぽい感じになってきた。
    犯人の動機が分かるあたりはちょっと展開が安直な気がするけど、全体としては面白かった。ホームズものは謎解きも...続きを読む
  • 指差す標識の事例 下
     四人の語り手の手記により、大学で発生した毒殺事件と、その犯人と疑われた女性の運命如何を主筋として、イングランド王政復古時代の政治情勢や党派対立等を絡ませながら、物語は進んでいく。

     ミステリとして見れば、信頼できない語り手の問題や語り=騙りといったことになるが、媚びず、卑屈にならず生きていくヒロ...続きを読む
  • 指差す標識の事例 上
     先ずは本書の無事刊行を寿ぎたい。

     本書の帯とカバー裏には、『薔薇の名前』とクリスティの名作が融合と謳われているが、本作を手に取り、内容ではない別の面での『薔薇の名前』との共通点を思って、しばし感慨に耽った。

     それは、日本語訳がなかなか出なかったということである。『薔薇の名前』が映画化された...続きを読む
  • 四つの署名
    「緋色の研究」に続くホームズ長編2作目。メアリー・モースタン嬢から奇妙な出来事についての相談の受けるところから始まる。ホームズの名探偵ぶり、いろんな捜査方法、犯人を追い詰める場面など、冒険小説の要素もあって面白かった。
    「ぼくの頭脳は、停滞しているのが大きらいなんだ」「頭を使っていないと、生きている...続きを読む
  • 七人のイヴ 下
    分裂と統合の物語。

    相変わらず冗長ともとれてしまう細々としたコロニーやらメカやら古典・現代物理学の説明セリフも多く、ひぃふぅ言いながら読み進める。

    頁を進める毎に細々とした説明が加速度的に、まさに”指数関数的に”増してゆくようで、あれこの人今何してたんだっけ、っていうかこの人誰だっけ・・となって...続きを読む
  • 七人のイヴ 上
    ディストピアはなぜか心地よい。

    月の分裂にはじまるパニック、分断、希望の象徴としての箱舟宇宙ステーション建造とここまでは地球・人類滅亡の物語だ。

    中盤、いよいよ地上最後の日の描写がとても心地よい。
    心地よい分、もう少し長く楽しみたかった気もする。
    いかんせん最後の日の描写が短いのだ。

    もちろん...続きを読む
  • カナリア殺人事件
    カナリアと呼ばれた元女優が密室で殺された謎を追う。
    探偵役のヴァンスは癖のある人物だけどそれがまた良い。
    心理学的見地で事件を読み解く様は面白く、特にポーカーの場面が興味深い。
    まさに精神分析学だなと。
    劇的な展開はないけれど、つい読んでしまう一冊。
  • 僧正殺人事件
    「ファイロ・ヴァンス」シリーズ第4作。見立て殺人の嚆矢として知られる作品ですが、確かに異様な不気味さを作り出しているものの、マザー・グースの詩に見立てなければならない理由は特に見当たらず、やや不満が残ります。
    それでも、教授同士の心理戦、犯人の動機、ラストのどんでん返しなど見どころ盛り沢山で、ミステ...続きを読む
  • クラーケン(上)
    ファンタジー。サスペンス。ミステリ。伝記。警察。
    様々な要素を詰め込んだ感じの作品。
    ファンタジー感溢れる、異様なロンドンの雰囲気が独特。
    女性警官コリングズウッドのキャラが好み。
    どんな結末になるのか、下巻に期待。