日暮雅通のレビュー一覧
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小学生の時にシャーロックホームズシリーズにハマって何度も読んだ。しかしそれ以来なかなか読み返すこともなく、本棚の隅にずっと並べていた。
訳者の日暮さんはシャーロキアンと聞いていたので、期待して読んだところ当たりだった。
読みやすい訳文、充実した注釈、多くの画家による挿絵。装丁もおしゃれでとてもいい感じ。
久しぶりに読んだ感想としては、こんなにスピーディーな展開だったのか、と驚いた。長編と言っても短い作品の中に、ワトソンの懐中時計からの推理、ホームズのコカインや事件解決に対する考え方、ワトソンの恋と婚約、当時のイギリスとインドの関係など面白いところがたくさんある。
そしてホームズは引用をめっち -
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2つの都市国家が同じ位置にありながら、互いに見えないものとして人々が暮らしている。生まれたときから見ないように訓練している。都市は完全にこちらに属する部分、重なる部分があり、重なる部分では見ないふりをしながらぶつからない様に避けねばならず、とややこしいファンタジー設定。
しかし、冒頭は殺人事件現場で始まり主人公は警部補という大筋ではミステリ小説である。
前半は都市の設定を飲み込みつつ読むのが難しかったが、主人公や脇キャラに馴染みだし、物語が展開するにつれ引き込まれて加速した。ハードボイルドの刑事もののような読み心地とSFらしい世界観の不思議さを感じて満足度の高い読書だった。ラストの切なさも良い -
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ネタバレ読み応えがあった。
語り手が変わるたびに意味が変わっていく出来事の連続で、主観が違うとこうも違うのかと。もちろんあえて真実を書いていない語り手も存在しているのだけど。2人目が1番手こずった。ちょっとどこまでが妄想なのか…。下巻に入ってからは割と一気に読めたかな。
手記ごとに訳者が違うも面白い。より一層、4人それぞれの視点、それぞれの物語へと入ってしまうので事実はさらにわからなくなっていく。
語り手が変わるたびに、ひっくり返されるミステリ。あまりこの時代の宗教戦争に詳しくないことが悔やまれたけれど…薔薇の名前を読んでみようと思う。 -
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物的証拠や状況証拠・容疑者の自白・アリバイといった、犯罪捜査において重要視されがちなものはそのまま信用せずに疑い、犯行の手口や現場を心理学的に検証して犯人を突き止める。教養と才気に溢れた富豪ファイロ・ヴァンスの探偵方法は現代でのプロファイリングに似ている。
衒学的で、相方に自分だけが知る真相を仄めかす言動は、後世の作品や探偵たちのキャラクターに大きな影響を与えていることは間違い無いだろう。とは言え、たまにぶん殴りたくなるほど鼻に付いたが。
探偵“ファイロ・ヴァンス”が仮名で、本作は彼の友人で仕事上のパートナー“S・S・ヴァン・ダイン”による記録であるという設定がおもしろい。作者の影が巧み -
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学術的な話や芸術作品の話が合間にちょくちょく出てくるので難しく、最初は読み進めるのに苦労したけど後半は一気に読んでしまった。
確かにこれはミステリを読む上で読んでおかないといけない一冊、という感じ。
そして最後のダークな終わり方が後味良すぎなくてよい。
なるほど乱歩が絶賛した理由も分かるかも。
解説に後世のサイコ・サスペンスにも影響を与えていることが言及されていたけど、確かに映画のセブンとかも見立て殺人だもんね。ふむふむ。
本作を読んでいて、読書をする上での自分の知識不足をとても感じた。
注釈が書いてあっても全然分からない、、
アリアドネは阿刀田さんの「ギリシア神話を知っていますか」を読 -
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四人の語り手の手記により、大学で発生した毒殺事件と、その犯人と疑われた女性の運命如何を主筋として、イングランド王政復古時代の政治情勢や党派対立等を絡ませながら、物語は進んでいく。
ミステリとして見れば、信頼できない語り手の問題や語り=騙りといったことになるが、媚びず、卑屈にならず生きていくヒロインの人物造形が実に魅力的だと思った。
ヒロインのラストについては、ウーンという気持ちも拭えないが、語りの中で、そこまで含めて書かれているではないかと言えば、そうかもしれないと思わされる(ネタバレ気味の恐れもあるのでぼかしていますが、最後まで読まれた方には分かっていただきたい)。
本書では、 -
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先ずは本書の無事刊行を寿ぎたい。
本書の帯とカバー裏には、『薔薇の名前』とクリスティの名作が融合と謳われているが、本作を手に取り、内容ではない別の面での『薔薇の名前』との共通点を思って、しばし感慨に耽った。
それは、日本語訳がなかなか出なかったということである。『薔薇の名前』が映画化された頃、原作ではアリストテレスやキリスト教、異端審問等に関わる内容が満載だということで、それらに纏わる蘊蓄本がだいぶ刊行されていたのだが、肝心の原作の翻訳が待てど暮らせど出ない、その出版社が東京創元社であった。
翻訳者の一人である日暮氏が、本書についての打合せの始まった時期のことを書いた文章を読んだ -
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「緋色の研究」に続くホームズ長編2作目。メアリー・モースタン嬢から奇妙な出来事についての相談の受けるところから始まる。ホームズの名探偵ぶり、いろんな捜査方法、犯人を追い詰める場面など、冒険小説の要素もあって面白かった。
「ぼくの頭脳は、停滞しているのが大きらいなんだ」「頭を使っていないと、生きている気がしない」など、頭脳的な刺激を渇望するホームズが印象的。ワトスンは意外とロマンチストなのかな。二人のキャラの違いが良い。
訳者解説も良い。特にタイトル「四つの署名(The Sign of Four)」の和訳についての話が知れたのは良かった。
ホームズは鹿撃ち帽がトレードマークだと思っていたけど、 -
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分裂と統合の物語。
相変わらず冗長ともとれてしまう細々としたコロニーやらメカやら古典・現代物理学の説明セリフも多く、ひぃふぅ言いながら読み進める。
頁を進める毎に細々とした説明が加速度的に、まさに”指数関数的に”増してゆくようで、あれこの人今何してたんだっけ、っていうかこの人誰だっけ・・となってしまうのはワタシの読書能力と物理学その他について教養がないせいもあるだろうけども・・
この描写は緻密を超えて、ちょっとオタクっぽ過ぎるかもしれない・・
下巻にはいってようやく題名『7人のイヴ』の正体が明らかになる。
解説でも指摘されている通り、邦題としての『7人のイヴ』はネタバレを含んでしまっ -
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ディストピアはなぜか心地よい。
月の分裂にはじまるパニック、分断、希望の象徴としての箱舟宇宙ステーション建造とここまでは地球・人類滅亡の物語だ。
中盤、いよいよ地上最後の日の描写がとても心地よい。
心地よい分、もう少し長く楽しみたかった気もする。
いかんせん最後の日の描写が短いのだ。
もちろん、この物語の視点は箱舟が中心になるから、地上の最後は通過点に過ぎないのだが。
後半以降はいよいよ箱舟だけの人類史がはじまる。
しかし、ここでも権力、対立、分断という人類を人類たらしめている醜く愚かな一面がのぞいてくる。
滅亡を控えた地上がディストピアであったように、地上滅亡後の箱舟も等しくディ