日暮雅通のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
四人の語り手の手記により、大学で発生した毒殺事件と、その犯人と疑われた女性の運命如何を主筋として、イングランド王政復古時代の政治情勢や党派対立等を絡ませながら、物語は進んでいく。
ミステリとして見れば、信頼できない語り手の問題や語り=騙りといったことになるが、媚びず、卑屈にならず生きていくヒロインの人物造形が実に魅力的だと思った。
ヒロインのラストについては、ウーンという気持ちも拭えないが、語りの中で、そこまで含めて書かれているではないかと言えば、そうかもしれないと思わされる(ネタバレ気味の恐れもあるのでぼかしていますが、最後まで読まれた方には分かっていただきたい)。
本書では、 -
Posted by ブクログ
先ずは本書の無事刊行を寿ぎたい。
本書の帯とカバー裏には、『薔薇の名前』とクリスティの名作が融合と謳われているが、本作を手に取り、内容ではない別の面での『薔薇の名前』との共通点を思って、しばし感慨に耽った。
それは、日本語訳がなかなか出なかったということである。『薔薇の名前』が映画化された頃、原作ではアリストテレスやキリスト教、異端審問等に関わる内容が満載だということで、それらに纏わる蘊蓄本がだいぶ刊行されていたのだが、肝心の原作の翻訳が待てど暮らせど出ない、その出版社が東京創元社であった。
翻訳者の一人である日暮氏が、本書についての打合せの始まった時期のことを書いた文章を読んだ -
Posted by ブクログ
「緋色の研究」に続くホームズ長編2作目。メアリー・モースタン嬢から奇妙な出来事についての相談の受けるところから始まる。ホームズの名探偵ぶり、いろんな捜査方法、犯人を追い詰める場面など、冒険小説の要素もあって面白かった。
「ぼくの頭脳は、停滞しているのが大きらいなんだ」「頭を使っていないと、生きている気がしない」など、頭脳的な刺激を渇望するホームズが印象的。ワトスンは意外とロマンチストなのかな。二人のキャラの違いが良い。
訳者解説も良い。特にタイトル「四つの署名(The Sign of Four)」の和訳についての話が知れたのは良かった。
ホームズは鹿撃ち帽がトレードマークだと思っていたけど、 -
Posted by ブクログ
分裂と統合の物語。
相変わらず冗長ともとれてしまう細々としたコロニーやらメカやら古典・現代物理学の説明セリフも多く、ひぃふぅ言いながら読み進める。
頁を進める毎に細々とした説明が加速度的に、まさに”指数関数的に”増してゆくようで、あれこの人今何してたんだっけ、っていうかこの人誰だっけ・・となってしまうのはワタシの読書能力と物理学その他について教養がないせいもあるだろうけども・・
この描写は緻密を超えて、ちょっとオタクっぽ過ぎるかもしれない・・
下巻にはいってようやく題名『7人のイヴ』の正体が明らかになる。
解説でも指摘されている通り、邦題としての『7人のイヴ』はネタバレを含んでしまっ -
Posted by ブクログ
ディストピアはなぜか心地よい。
月の分裂にはじまるパニック、分断、希望の象徴としての箱舟宇宙ステーション建造とここまでは地球・人類滅亡の物語だ。
中盤、いよいよ地上最後の日の描写がとても心地よい。
心地よい分、もう少し長く楽しみたかった気もする。
いかんせん最後の日の描写が短いのだ。
もちろん、この物語の視点は箱舟が中心になるから、地上の最後は通過点に過ぎないのだが。
後半以降はいよいよ箱舟だけの人類史がはじまる。
しかし、ここでも権力、対立、分断という人類を人類たらしめている醜く愚かな一面がのぞいてくる。
滅亡を控えた地上がディストピアであったように、地上滅亡後の箱舟も等しくディ -
Posted by ブクログ
帯でなく表紙へ大書されているように
SF関係の賞だけでなく世界幻想文学大賞も受賞している本
中身は解説にもある通りハードボイルド調の警察もので
この前読んだ「愛おしい骨」と同様に
翻訳を透してそれだけで文化の違い(というより日本が島ということか)を
感じる風な小説だが
舞台設定が奇抜でそこがSF側のこれがSFだと推挙するところである
「都市と星」というより「不確定世界の探偵物語」みたいな感じかと読んでいたが
これを書いてしまうと未読のひとにいらぬ先入観を与えそうで嫌だが
書かずにいられないので書くと
「メンインブラック」にしか見えない
一度そう思うとコメディにしか見えない
というわけで読んでい -
Posted by ブクログ
"小説の中に登場する名探偵をあたかも実在の人物と見立て、名探偵の頭の中を覗き込み名探偵の如く思考するとはいかなることかをシャーロック・ホームズをこよなく愛する筆者が解明している。
参考文献が掲載されているので、もっと深く考察したい人にもやさしい。
文献を列挙しておく
マインドフルネスについて
・心の「とらわれ」にサヨナラする心理学
・ハーバード大学教授が語る「老い」に負けない生き方
・人間の本性を考える 心は「空白の石版」か 上・中・下
・心の仕組み 上・下
科学的思考法を身につける
・コナン・ドイル書簡集
・心理学の根本問題
・科学革命の構造 トマス・クーン
・才能を開花させ -