日暮雅通のレビュー一覧
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古典海外ミステリーにハマった最初の作品。
旧訳は持っているけど、新訳も読み比べのために一緒に本棚へ。
11.12月が設定時期なので、ホリデーシーズンの前に読めるとよりうきうきする。
改めて読み返すと、裏の主人公は「グリーン家の館」そのものであると言える。ヴァンスも繰り返し言っているように、空間自体と流れている空気、堆積した想いや感情が人に作用して事件を起こしていくかのよう。
雪の降り積もる静かな夜の館、誰も立ち入れない開かずの間、車で駆けるニューヨークの街並み。
印象的な場面が多く、浮世離れした登場人物も相まって、100年前の時代の空気を感じられるのが楽しい。
トリックの妙を追求するのとはま -
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歴史の転換期に立ったイングランドを舞台に、多数の実在の人物を壮大なフィクションの世界に引きずり込んで繰り広げられる謀略の物語。上巻で積み上げられた謎を下巻で解き明かしていく構成で、正直、上巻はかなり忍耐力が必要でした。
書物と宗教的背景が絡んでくるためウンベルト・エーコ『薔薇の名前』が引き合いに出されていますし、「犯人探し」の体裁を取ってもいますのでクリスティも言及されています。が、おそらく読書子各位はそれが作品を皮相的に捉えただけの惹句であろうことを、早々に見抜いた上で読み進められたことと思います。
そういう意味では、クリスティもエーコも「レッド・ヘリング」だったと言えるかも知れませんね -
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ネタバレ緋色の研究のスタイルをさらに昇華させた感じで前作より好きでした。
事件自体のぞくぞくするようなミステリアスさもさることながら、ワトスンのキャラクターがどんどん魅力的に完成されていくようで楽しい。例えばコカイン中毒のホームズを本気で叱る場面や、メアリーに告白したいが遺産目当てと誤解されるようなタイミングになってしまったことに悩む場面。ワトスンお前の気持ちわかるよ、と声をかけて寄り添ってあげたくなる。
これは作者の意図したところか不明だけど、主人公側より犯人の方が人種差別意識がなく他の民族とも関係性を築いているのがなんとも皮肉だった。 -
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傑作探偵小説と名高いので名前だけを知っていました。てっきり僧院での殺人事件かと思っていました(^_^;)
マザー・グースの童謡に見立てるかのような殺人事件を素人探偵ファイロ・ヴァンスが解決する探偵小説で、犯人が「僧正」と名乗っているのでした。
私の年代(50代)だとマザーグースはある程度知っている気がする。子供向け番組で「ロンドン橋落ちた♪」「ワンリトル ツーリトル スリーリトル♪」は流れていたし(いまでも「十人の良い子♪」と歌われているみたい)、『不思議の国のアリス』で「ハンプディ・ダンプティ」は知っていたし、なんといっても『ポーの一族』と『パタリロ!』で「誰が殺したクックロビン」を知った -
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ニューヨークの一角に建つ旧世代の名残のようなグリーン屋敷で起きた連続殺人事件を探偵役のファイロ・ヴァンスが解き明かす。
消えた犯人、消えた凶器、怪しい足跡、限られた関係者、過去の出来事から現代の事件へのつながり、隠し部屋、古い名門に隠された内情…。
由緒正しい探偵小説だあ(^○^)
探偵役のファイロ・ヴァンスは貴族階級で、著者であるヴァン・ダインがファイロ・ヴァンスの学友で法律代理人で探偵記録者となっています。
警察ものだと情報を共有して容疑者逮捕を急ぎますが、素人探偵ものだと「今は言えない」が通じるので小説として盛り上がりを作れますね・笑
グリーン家屋敷は三世代前に作られ、前当主のト -
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ずっこい
新薬ずっこい!いや新薬て!おじいちゃん今は新しいお薬が出来てずいぶん楽になったわね〜か!だとしてもそんなに離れてないわ!( ゚д゚ )クワッ!!
新訳です(わかっとるわ!)
はい、ね
「多重解決」の元祖バークレーの『毒入りチョコレート事件』に続き、「見立て殺人」の元祖ヴァン・ダインの『僧正殺人事件』です
ボロクソ面白かった!
ぜんぜん今でも通用するよこれ
そして、たぶんわい中一とかそのくらいに一回読んでるんよね
そんで、当時もっと難しかった気がするんよ
で、今回読んだら凄い分かりやすかった
これはもう新訳効果ですよ完全に
大人になって理解力が上がったとかじゃないと思うんで -
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『十角館の殺人』登場人物フェア開催中(※1人で勝手にやってます)
アガサ→ポウ→カー→エラリイに続いて、5人目ヴァン・ダイン初読み。
ニューヨークに孤絶して建つグリーン屋敷。
名門グリーン一族に次々と惨劇が起こる…
『十角館』フェアをやるくらいなんで、何しろ「館」が大好きな自分には大当たり!!
綾辻行人さんの館シリーズを読んでいる時と同じドキドキ感でめちゃくちゃ面白い。
グリーン屋敷の見取り図も部屋の平面図もあって、館好きはテンションが上がる。
この家族は互いに憎み合っていて、誰が犯人でもおかしくない。
閉鎖的空間でみんなが疑心暗鬼になるこの感じがもう大好きな展開。
アマチュア探偵の -
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ネタバレ「月が割れる」こんなぶっ飛んだ現象から物語がスタートする。
破片が自らの重力でひと塊になり自転していることから「再び一つになることはないにしろ変わりはないのか?重力の釣り合いが変わってラグランジュ点が変わる?」などと(序盤の登場人物達と同じく)軽く思いながら読み進めた。
物語出だしの設定は突飛だが、中身は完全なるハードSFだった。
ハード・レインに向けて月の破片が分裂していく様子や月の核であった鉄を多く含む部分だけが割れにくいというような細かな部分までリアリティを持って考えられた設定や、現実には存在しない小惑星アマルテアを用意し、宇宙ステーションにドッキングしておくという、方舟がなんとか生き -
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ネタバレあの衝撃的な一言で僕がその存在を知ることになったヴァン・ダイン。いつか読みたいと思いながら5年以上経ってしまった。マザーグースの歌に見立てた連続殺人、警察を嘲笑うかのように郵送されるマザーグースの歌、と古典ミステリーを煮詰めたかのようなお話。怪しいと思われた登場人物は次の章に殺され、また新たな容疑者も次の章に殺されを繰り返し犯人の自殺で片がつく。かと思いきや事件はまだ終わっていない。犯人の最後の犠牲者を救出し、真犯人を追い詰めた、と思いきや本当の真犯人は別にいた…、急展開のオンパレードのようなお話。特に終盤の盛り上がりは本当にドキドキした。途中までは彼かなぁとか思ってたけど終盤にアーネッソン
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ネタバレウィステリア荘
今までと作風がガラッと変わった。章がついているし内容も如何にもな推理小説といった内容になっている。今までの短編と比べ容量が倍近くあるため事件ごとに整理してみる。
スコット・エクルズのグロテスクな体験。アロイシャス・ガルシアの家に泊まったところ朝にはもぬけの殻になっているという怪事件。「山魔の如き嗤うもの」や「遠野物語」を彷彿とさせる怪事件だ。この真相はガルシア一味がエクルズをアリバイに利用しようとしたことだった。利用するつもりがガルシアの犯行は失敗し殺され、召し使い達も計画失敗を察知し逃亡したことによりウィステリア荘がもぬけの殻になったのだ。
アロイシャス・ガルシア一味の -
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ネタバレマザリンの宝石
この話は僕読んだことあるよ!ネグレット・シルヴィアス伯爵に盗まれたマザリンの宝石、ホームズはシルヴィアス伯爵を追い詰めるけど宝石の在りかだけはわからない、だから伯爵を罠にかけるんだ!「空き家の冒険」でも大活躍したあの蝋人形を使ってこっそり入れ替わって情報を聞き出す!ホームズかぁっこいい~!!カドミルア卿へのいたずらもお茶目で可愛いなぁ。「僕は頭脳なのだよ。残りの部分はただの付け足しさ」。僕も言ってみたいなぁ。今のところ専ら体専門だけどね………。
ソア橋の難問
ホームズの話の中でも一二を争うくらい凝った話だなぁ!ソア橋で銃殺されたギブスン夫人、お手伝いダンバーさんのタンスか -
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上巻の最後の方から、話題が古代文明(シュメール)に及びます(ネタバレになりますので深くは書きません)。そして世界を揺るがす大きな謀略が進みつつあることを主人公が知り、他の登場人物と助け合いながらエンディングを迎える、というあらすじですが、実は本書のキートピックの一つが「ウイルス」であるということに深い感銘を受けました。
本書は「メタヴァース」ばかりが脚光を浴びますが、実はウイルスには生物学的なもの(新型コロナなど)、コンピュータプログラムに影響を及ぼすもの、そして言語的・思想的なものがある、ということが語られているわけです。その意味ではコロナ禍の今、カミュの「ペスト」に並ぶウイルス本という位 -
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2021年フェイスブックが社名をメタに変更し、世界的に「メタヴァース」という言葉の関心が広まるなか、メタヴァースという言葉が作られた伝説的SF作品を読んでみました。下巻まで読んでからの感想になりますが、理屈抜きで面白かったです。最初の方は本書の世界観になじむのに時間がかかりましたが、上巻の真ん中位からはすらすらと読めるようになります。
ネタバレになりますのであまり書きませんが、本書の舞台は未来の米国で、そこでは連邦政府の力が完全に弱体化し、かわりに「フランチャイズ疑似国家」が乱立しています。そこでの主人公、ヒロ・プロタゴニスト(まさに主人公!)はメタヴァースを作ったハッカーの1人であり日本刀 -
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ネタバレ下巻は暗号解読の達人である幾何学教授の手記から始まる。
上巻は、まずヴェネツィア人の医学生であるコーラの手記から始まったのだが、真面目でお人好しの好青年と思われた彼の姿は、ふたり目の法学生プレストコットの手記によって、いささか様相が変わってくる。
重大な事柄の記述漏れ、明らかな噓。
コーラはなぜ、ロンドンではなくオックスフォードにやってきたのか。
しかしプレストコットの手記も変だ。
尊敬する父の汚名を返上するための彼の行動は、どう見ても常軌を逸してきている。
ヒステリックなその行動を、彼は、さらに魔法をかけられたからだと思い、その魔法から逃れるために、サラを無実の罪に陥れ、死刑へと向かわせる