三羽省吾のレビュー一覧

  • イレギュラー

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    野球の底しれぬ素質は持ちつつも、水害に遭い、町の人間に対して不信感を抱き、やり場のないエネルギーを持て余すコーキ。自信は軽く砕かれ、本気モードへ。野球に向けられたエネルギーは仲間たちとライバル、嫌っていた町の大人たちの見守りで昇華していく。ありがちな青春物語に災害被害者が仮設住宅から元の生活を取り戻す大変さを織り交ぜている点がいいと思った。

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    2010年08月18日
  • 厭世フレーバー

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    すごい。
    やられた。
    深い。
    単なる家族の物語ではない。
    いろんなことが絡み合っているけれど、
    こじれていない。

    章が進むごとに
    いままで点だったものが
    線になり、
    面になり、
    立体になっていく。
    ニューロンとシナプスがフル稼働しているような、
    スパーク感を感じながら読んだ。

    “厭世”ですが、なにか?
    そんなポップさ、クールさがある。

    角田光代さんの解説が、またいい。
    いい本を読んだ。ありがとうございます。

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    2009年10月07日
  • 太陽がイッパイいっぱい

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    久々わけも無く泣いた・・そして笑った・・
    電車で爆笑しかけた・・
    森見さんが京都を舞台にしたエリート大学のイッチャッた学生の青春オバカ小説なら、こちらは大阪を舞台にした3流大学(気骨あるがゆえに休学中)の学生のホントの意味で突き抜けてる汗と笑いと涙の青春モノ・・

    文学系かガテン系かの違いはあれども、しかしどちらも比喩表現が秀逸。
    でも等身大で現実的・・て意味で、こちらに共感するかな・・・
    随所にいい会話いい言葉笑えるネタはあるんだけど
    「とりあえず頑張っとけ・・春は来る」
    この言葉がやっぱいい。
    またいい作家さんに出会えた。



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    2009年10月04日
  • 太陽がイッパイいっぱい

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    粗野で単純で飾らない肉体労働者の青春物語・・・かと思いきや、そんな純粋な世界はないのです。今の世の中がどんなに気に入らなくたって、反抗してみたつもりでいたって、生きていくのはこの社会でしかない。それを認めるのってなんだか負けたような、流されてるような気持ちになる。けどそれって本当は強さであり潔さですよね。とりあえずそう、笑っとこう。笑う門には福来るってね。

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    2009年10月04日
  • イレギュラー

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    自分は野球が大好きです。プロ野球もアマチュア野球も結構観に行く。やるのはからっきし
    野球漫画やドラマは昔こそ見てたが最近はあまり見ていない。『事実は小説よりも奇なり』この言葉は野球のためにあるのではないかと思うほどだ

    そして今回は野球の話…なんだけどこれは「野球の話」だけでは絶対にまとめてはいけない話だと思う。
    被災した方々の人間ドラマ、そこでの若者たちの葛藤
    そこに定番のライバル達とのストーリーがある。最初は本当に生意気なだけのどーしようもない奴が主人公だなあと感じた。でも読んでいくうちにこの野球と被災を組み合わせた時、この主人公でないとと感じるほどあってるしかっこいい

    自分の中で勝手に

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    2025年12月06日
  • タチコギ

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    ネタバレ

    柿崎信郎
    ノブ。四十歳。祖母が亡くなり、葬儀のため十歳まで住んでいた亀岡に帰郷する。柿崎家は江戸末期から四代続く鉱夫の家系。小学四年生で、身長百二十六センチで仲のいい友達が五人おり、生き物係だった。

    智郎
    信郎の息子。十歳。小学四年生。

    杏子
    信郎の妻。看護師。

    信郎の祖母
    八十八歳で亡くなる。

    ウネリン
    信郎が小学四年生の頃の友達。仲間内で一番大きな身体。仲間内のリーダー格。

    タマキン先生
    宮本珠紀。飼育委員会の取りまとめ役。この春赴任したばかりの若い教師。涼しげな目元と艶やかな黒髪が印象的な美人。

    チクワ
    酷い蓄膿症で年中口が開いている。

    禿げ村のおっちゃん
    おしゃれサロン影

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    2025年05月15日
  • 共犯者

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    ゴシップ紙の記者である主人公和貴のゴシップ紙らしい推理力が魅力。
    どちからというとミステリー要素は弱め?かな?

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    2025年02月08日
  • 刑事の遺品

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    ネタバレ

    面白かった!
    小学生の作文から始まって終わりも小学生の作文になってる構成も良かった。
    剣と守の正反対なようでそっくりな兄弟の関係性も良い。振り回されるお母さんと奥さんたちは大変だろうけど…
    警察内部の闇を暴くってことで、誰が信用できるか分からないなかでお互いだけを信じられた兄弟が亡きお父さんの遺志を継ぐ…
    最後は信頼できる仲間たちとドラマティックな作戦で華麗に勝利!ヤクザの幼馴染との関係も好きだった。
    クズくんとか小谷野さんとかキャラもみんな良いし映像化したらもっと面白そう。
    結末はスッキリ!と行かないのが良いのかな。イチゴちゃん頑張ってほしい。

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    2025年01月10日
  • 嘘つきな彼との話

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    孤独な俺が始めたボクシング。たまたま出会った友達を誘う。挫折、栄光。

    真剣なボクシング小説に、複雑なメンタルを混ぜた珍しい小説。ボクシングやってた者としてはテクニカルな表現がごちそう。面白かった。

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    2024年09月03日
  • 太陽がイッパイいっぱい

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    ネタバレ

    「なんだかんだで、物事は進む。それを悲劇にするか喜劇にするかは、本人の意志次第だ。取り敢えずシラけたりせずに頑張っとけ…春は来る」

    あえて言わなくても、というような文言が、不意に突き刺さる。理解しているようで理解していない…理解というか意識していないから、思いがけない時点で目頭を熱くしてしまうことになる。青臭いといえば、その通り。自分可愛さに自分自身を擁護しないよう、できるだけ客観的に省みる。自信を持ってよいと思われる場合でも、常に引いて見る。僕自身の正当性など、とてもじゃないけれど胸を張って主張できない。そうかもしれない。でも、ダメかもしれない。行き過ぎた自己肯定感の低さゆえ、諦めてきた物

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    2024年08月08日
  • 厭世フレーバー

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    連日「暑い」ばかり耳にする。もういいじゃん、って思わなくもないけれど、きっと無自覚に溢れる言葉なのでしょう。僕自身はどうなの?と思う。でも、自覚はしているかな。僕自身はね。言葉にしなくても共有できる感覚だし。僕の汗まみれの顔を見たら、きっと「暑い」って言葉にしなくても伝わると思う。ほら、あなたの顔も、汗まみれですよ。
    最近、すこしだけ思うこと。気になるかといえば気にならないこともない、その程度の感覚なのだけれども、一般的な傾向として、皆それぞれ他人に対して清廉潔白を求めすぎではないのかなあ、と思う。清廉潔白というのは、他人に期待するのではなくて、自分自身の在り方を示すものだと思う。僕自身は清廉

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    2024年07月28日
  • イレギュラー

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    太陽がイッパイいっばいを読んで久々に大笑いしたので三羽省吾さんの本を買ったが積読の山にうもれていた。たまに笑いと下ネタを織り込みながらテンポよくすすむストーリーは読みやすく感情移入しやすい。流石だなあと思う反面なぜだろう?と私なりに考えてみました。三羽省吾さんの作品を何冊か読みましたが主人公の10代の若者が近年の若者言葉をあまり使わないところではないかと思いました。今現在の若者を描くのであれば語尾を上げたり言葉を短縮したりすればある意味リアルな文章になるのかもしれないが私を含めある程度の年齢の読み手には薄っぺらい捉え方しかできず物語自体が薄っぺらく思えてしまう。活字で薄っぺらく感じるのでそれが

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    2023年07月06日
  • 警官の目

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    警察小説の重鎮、中堅どころ4人の作家による文庫オリジナル短編集。
    偶に読みたくなる刑事もの。
    事件が発生して捜査本部が立ち上がる。
    本部による捜査では働き方改革なんてもってのほかのブラックな労働環境。そこにカタルシスを感じてしまうのは昭和生れの名残りか。
    本部と所轄、ベテランと若手、幹部と下っ端。
    組織、チームならではの人間模様には確執、軋轢が蠢く。
    地道な捜査から浮かび上がる細々とした点と点。それを繋ぐ線はベテラン刑事の長年の経験とある種のカン。ベテランは新人若手を育てる。
    ま、警察小説の醍醐味は語り尽くせない。
    なので見応え十分な長編も捨てがたいが、キレの良い短辺もナカナカ。本書もそんな感

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    2023年06月09日
  • 前略、旅の途中です。

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    バッセンの著者の読むのは2冊目。これは6編からなる短編集。全編、話には入って行きやすかったが、面白かったのは2編目と6編目。
    バッセンもそうだったけど、何かですごいやつは全然出てこない、本当に等身大の話。でも、今思い返せばそんなに思い出せないから、あの頃、中坊時代も高校時代も、もっと真剣に毎日を、毎分毎秒を過ごせれば良かったなと、何故だかそういうことを考えさせるような話だった。

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    2022年07月04日
  • Valentine Stories

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    ラブラブ甘々なものは全くなく、
    どれもどこか切ないのが小説って感じでした。

    やっぱりあんまり幸せすぎるのは
    ネタにならんのでしょうな。

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    2022年06月13日
  • 刑事の遺品

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    ネタバレ

    2022/4/8
    三羽省吾の刑事もの。
    結構本気の刑事ものでへーと思う。
    普通に面白いけど三羽省吾と言えば愉快なブルーワーカーってイメージだったので。
    現場の刑事もブルーワーカーかもしれんけど。
    兄弟の確執・父の秘密・刑事の魂みたいなことだったのでいつものいい感じにヘラヘラしたとこなし。
    いやおもしろかったけど。とまどいがあった。

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    2022年04月17日
  • 厭世フレーバー

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    著者の太陽がイッパイいっぱいが面白かったので読んでみました。リストラをうけて失踪した父親のあとにのこされた崩壊寸前の家族5人が主人公となる短編ストーリーです。章が進むにつれて紐解かれる真実に心をつかまれます。表現の仕方が巧みなところもツボで第2章の夫婦は似るっていうけどのくだりは最高です。

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    2021年09月05日
  • ニート・ニート・ニート

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    ニート3人組+ダサ少女の北海道ロードノベル

    女性がらみのトラブルでその筋の人達に追われているヒモでロクデナシのレンチ
    大学中退したヒキコモリのキノブー
    「なんとなく」で退職したタカシ
    中学からの腐れ縁のレンチによる拉致状態で北海道に行くことになった一同
    出会い系でコンタクトを取ったという美女を仙台でピックアップするはずが、現れたのはオーバーオールとメガネ姿のダサ少女の月子
    そんな月子に巻き込まれながら北海道の観光地を非効率な順番で転々とする理由とは?そして新たなトラブルに見舞われた一行の行き着く先とは?はなお話



    月子が非効率な順番で観光地を巡って、景色を楽しむでもなく不可解な行動をする

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    2021年06月30日
  • 前略、旅の途中です。

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    建設現場の近くを通るとき、そこで働く人を見かけると、なぜかそれだけで泣きそうになることがあります。本作はその理由を教えてくれたような気がします。

    三羽さんのデビュー作であり、私が彼にハマったきっかけでもある『太陽がイッパイいっぱい』と同じような現場から始まり、前章までの登場人物がカメオ的に出演する連作短編集。気になっていた人のその後がちらりと見え隠れ。

    皆に薦めたくなるほどのインパクトはないけれど、心に焼きつけたい台詞がいっぱいある。「ちゃんと間違って、ちゃんと狂って、ちゃんと失敗しろ、馬鹿野郎」。その通り。

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    2021年02月25日
  • 警官の目

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    ネタバレ

    大好物な、警察小説アンソロジー。

    初読みは一人だけ…

    三羽省吾【シェパード】
    ・・・「スタン飯店」の親父がイイ感じ♪
    犯人も…可愛いげがあるというか、"希望"を見出だすラストに好印象。三羽省吾、要チェックかな。

    五十嵐貴久【汚名】
    ・・・「リカ」と「リターン」だったっけ…?既読の2冊は、"可もなく不可が少々"な感想だった記憶だが、本作はなかなかに感情移入のできる人情話だった。
    "もう読むことは無い作家さんだな"の認定を外そう。

    今野敏【消えたホトケ】
    ・・・安心の今野敏。未読だが、筆者の持ちシリーズからのスピンオフらしい。相棒

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    2020年01月06日