あらすじ
わけあって故郷に背を向け、孤独に、不器用に生きる20歳の一郎と24歳の辰巳。魂が惹かれ合うように川辺の町で運命的な出会いを果たした「ふぞろいな相棒」に、未来はあるのか?
「おすすめ文庫王国2024」エンターテインメントベストテン第3位の著者が、20歳の一郎と24歳の辰巳のわちゃわちゃした日々と不滅の絆を描いた、熱く切ない感涙の人生ドラマ。
書評家・藤田香織氏おすすめ!
厳つい名前の20代男子が、「たっちゃん」「いっくん」と呼び合う可笑しさと切なさ。
痛みを伴う「あの頃」を思い出せる年齢になった今だから沁みる。
彼らに出会えて本当によかった!
――藤田香織
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
これを読みたかった!三羽省吾久々の大傑作。
世の中が豊かさに酔いしれて悪乗りしてたバブル時代に、ボクシングという泥臭い世界で、底辺からストイックに練習を重ねて階段を一歩ずつ登ろうとしていく男二人の物語。
ド直球の友情と正統派ボクシング小説。三羽省吾は警察ミステリーとか近未来SFに浮気せんと、こういうの書いてほしいんよ!
色々書きたいことは浮かぶけど、とにかく読んで欲しい。ボリューム自体は少なく、決して読みにくい文章ではなく(ラフィンノーズと渡辺次郎とかあの時代に生きた文化の記載はあるけど)3時間もあれば読み切れるので是非。その3時間が濃ゆい読書経験になること、請け合いますよ。(趣味が違ったらゴメンやけど)
Posted by ブクログ
ボクサーっていう人たちは、本当にどうしてこうもセンチメンタルが似合うのかな…
実物の彼らとは接したこともないし、本当のところはわからない。でもジョーや丹下段平が、三羽さんにかかればこうなるのかなと。「俺たちにはバッセンが足りない」に流れているあのセンチメンタルが、この話にも流れていて、またそういう者を読めて良かった。
Posted by ブクログ
孤独な俺が始めたボクシング。たまたま出会った友達を誘う。挫折、栄光。
真剣なボクシング小説に、複雑なメンタルを混ぜた珍しい小説。ボクシングやってた者としてはテクニカルな表現がごちそう。面白かった。
Posted by ブクログ
あまり馴染みのないボクシングの世界の小説。
港湾荷役をしながらボクシングを始めたイチ、夕方、港からジムまで走っているとき、同じ時間に反対側を走っている同年代の男性に気づく。青信号で一緒に駆け出し、向こう岸に着いて声を掛ける。
そしてその男、たっちゃんと一緒に走るようになる。
たっちゃんは豆腐屋で働いていて、友だちも家族もいない。イチとはちょっと似ているような境遇。
そこでジムに誘ってみる。ボクシングが全然似合わないたっちゃんだったが、無心でサンドバッグを叩いたりしているうちにそれなりに強くなり、試合にもイチと同じ頃に出るようになる。
その無心なボクシングが人気になるが、たっちゃんはある時ジムを去ってしまう。
試合の後で何時も泪を流すたっちゃん、イチはその泪の訳が知りたくてたっちゃんを探す。
たっちゃんには誰にも打ち明けられない秘密があるようだが、ひた隠しにしている。
うなされているときの話をして、聞き出そうとするがうまくかわされる。
イチにも育ってきた環境の中で人には言えないこともあり、たっちゃんを気にかけている。
社会の底辺で育ってきた二人、イチにはたっちゃんが守るべき存在のように思えたのだろう。
しかし、たっちゃんはイチより精神的には強かったかもしれないし、イチはたっちゃんに見守られていたのかもしれない。
二人の友情というか、固くはない緩やかな支え合い、繋がり、なんかそういうものを感じた。
ボクシングは激しく、時には暴力的に感じるが、この小説の底には、穏やかな二人の心の交流ではないだろうか。
たっちゃんの最期はきっと幸せだったと思い、ホッとした。