三羽省吾のレビュー一覧
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ネタバレこれを読みたかった!三羽省吾久々の大傑作。
世の中が豊かさに酔いしれて悪乗りしてたバブル時代に、ボクシングという泥臭い世界で、底辺からストイックに練習を重ねて階段を一歩ずつ登ろうとしていく男二人の物語。
ド直球の友情と正統派ボクシング小説。三羽省吾は警察ミステリーとか近未来SFに浮気せんと、こういうの書いてほしいんよ!
色々書きたいことは浮かぶけど、とにかく読んで欲しい。ボリューム自体は少なく、決して読みにくい文章ではなく(ラフィンノーズと渡辺次郎とかあの時代に生きた文化の記載はあるけど)3時間もあれば読み切れるので是非。その3時間が濃ゆい読書経験になること、請け合いますよ。(趣味が違っ -
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ネタバレ久々の三羽省吾は、勢いノリノリ系じゃなく、社会派ミステリー系の小説。岐阜の山奥で発見された死体遺棄事件を追う三流週刊誌の記者宮治。独特の嗅覚で「何かある」と感じた宮治はこの事件を執拗に追ううちに、兄弟と家族を巻き込んだ真相に迫っていく。ミステリーと書いたが、核心は兄弟妹や家族の在り方を問うところ。犯人探しやトリック崩しをしている中で見えてくる家族の関りが深くて愛おしくて読ませる。
週刊誌とワイドショー的なものが大嫌いで、出来るだけ自分から遠ざけておきたいと思っている。それでも読書、それも小説読みを趣味としている以上、文春や新潮といった出版社にはお世話にならざるを得ないことにジレンマを感じてい -
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有名作家さんたちが書く短編警察小説。
[消えたホトケ 今野敏] 密室の事件現場からの死体消失の謎に三課窃盗捜査係の萩尾が挑む。プロの窃盗犯を相手にする刑事だからこその視点が面白かった。
[汚名 五十嵐貴久] 所轄の警務課員の千田と刑事殺しの罪を背負う元警察官の父のお話。父と子それぞれの思いが苦しかった。
[シェパード 美羽省吾] 所轄の強行窃盗係の佐田はとんでもなく身体能力の高い窃盗犯に逃げられてしまう。刑事と犯人の追いかけっこがワクワクするほど面白い。
[裏切りの日 誉田哲也] 刑事課課長の本宮は管内で起きた殺人事件を担当するもなかなか捜査は進まない。そんな中捜査一課長からあることを調べてく -
購入済み
今回も👍
「警官の貌」に続くアンソロジー集。
前作がとても良かったので、早速こちらも読んでみましたが、さすが期待を裏切りませんでした。
今野敏氏:好きなシリーズの短編
萩尾警部補もの、特に短篇は人情味アッ
プで◎
五十嵐貴久氏:私にとってはお初の作家さん。
途中、あまりにやるせない話で読む
のが辛くなりましたが、終わってみ
れば感動
三羽省吾氏:こちらもお初でしたが、後味の良い、
心暖まる話。
主人公の佐田も良かったですが、脇役
の那智、いい味出してました。
誉田哲也氏:正直、「裏切り」 -
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五十嵐貴久、今野敏、誉田哲也、三羽省吾『警官の目』双葉文庫。
シリーズ第2弾。前作も粒揃いの傑作だっただけに期待が高まる。4人の警察小説の名手による4編収録の警察小説アンソロジー。本作もまた、個性あふれる傑作警察小説が収録されており、非常に面白かった。
今野敏『消えたホトケ』。萩尾警部補が死体消失トリックを解き明かす。短編の中に警察小説の面白さを凝縮した小気味の良い作品。
五十嵐貴久『汚名』。警官殺しの汚名を着せられ、退職した元刑事の父親が亡くなり、その息子が父親の汚名を晴らす。父親と息子の確執と父親が胸に秘めていた秘密。なかなか読ませる。
三羽省吾『シェパード』。初読み作家。アクロバ -
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ネタバレサッカー小説ということしか知らなかったけれど、これは面白かった。
高校を卒業して家を離れ、JFL所属のクラブチームでプレーをすることになった桐山勇。
プロ契約ではないので、生活の糧はスーパーで働くことによって得ることになる。
J1やJ2のチームと違って、J3やJFLのチームはプロとアマの選手が半々…というより、アマチュアの方が多い。それはフットサルのチームでもなでしこリーグでも、そう。
だけど、彼ら選手の生活ってあまりよく知られていない。
地元の少年団と、強豪校ではない地元の中高のサッカー部での経験しか持たない勇は、ひとりよがりなプレーをみんなから批判される。
だけどしょうがないじゃない -
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雨で道がぬかるめば、人の行き来がままならず、立ち止まって譲り合わねばならぬほど狭い路地に建つ“辻堂ビルヂング”。ビルジングではなく、ビルヂングです。築半世紀は経っているであろう、6階建てのくせして隣りの5階建てより小さい雑居ビル。そんなおんぼろ辻堂ビルヂングのフロア毎に1章ずつ、6章から成る連作小説。
1階から6階という順番の章仕立てではありません。
5階、健康食品販売会社、主人公は元フリーター・加藤。
2階、無認可保育園、主人公は五十路の保母・種田。
3階、学習塾、主人公は司法書士を目指す講師・大貫。
4階、不動産屋、主人公は共働きで子どものいないOL・桜井。
6階、広告制作プロダクショ -
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水害に遭った蜷谷村の人々は、仮設住宅で避難生活を余儀なくされています。練習もままならない蜷谷高校の野球部の投手コーキと捕手モウは毎日ダラダラ。監督の大木は練習場所の提供者を探していますが、なかなか見つからず。町には野球の名門である圭真高校、通称K高があり、そのK高監督の結城は大木の教え子。大木は結城の才能を潰してしまったという思いから、結城には声をかけられずにいました。しかし、蜷谷高校野球部の話を聞いた結城のほうから声をかけます。こうして合同練習を開始する名門野球部と田舎の駄目野球部。読み終わった直後は「まぁまぁ」という感想でしたが、じわじわと沸いてくる爽涼感。
さまざまな野球小説に共通して -
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ネタバレサッカーは全く分からない。ちゃんとやったことがないし、入れ込んで観戦した事もない。
ポジションの名前すらうろ覚えで、どうなったらオフサイドになるんかとかすら不明瞭。だからサッカー小説としての出来は分からない。
ただ、一つのボールを追いかけることについてこんなにも熱くなれて、こんなにもクレバーになれて、こんなにも感動できるってことが凄い。野球だったら独立リーグ、陸上だったら草レース…色んな競技のトップリーグ以外のところでも、必死に取り組むプレイヤーがいる。その輝きは十分小説足りえるんだということだと思う。(勿論、三羽さんの筆力があるからこその部分も大いにある)
トッププロじゃない競技者の物語 -
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ネタバレ待ってました!久々の三羽作品。
この人が書くブルーカラーの若者はパワーがみなぎっていて好きなんよねぇ。読んでる俺まで元気もらえる。
で、本作。なんと近未来SFになってるよ。戸籍のない地下住民が最下層にいて、経済的根幹を謎の企業体PRNが仕切っている、相変わらず政治はダメダメという、経済カーストが著しく進んだ日本が舞台。
やり場のない気持ちをウっ屈させた地下住民の若者たちが、世の中にひと泡吹かせてやろうと徒党を組んで暴れまわっているうちに、単なる窃盗や無意味な破壊だった彼らの衝動が日本を動かして行く。
と、あらすじを書くとそうなんだけど、そんなんじゃない。主人公リオと彼女らを取り巻く仲間たち -
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祖母の訃報を受け、不登校の息子を連れて30年ぶりに帰郷した柿崎信郎。甦る少年の頃の出来事と現在の境遇が、父として息子に伝えるべき何かを生み出す。
子供だからといって楽しいことばかりじゃない。大人だからといって世の中を上手く渡れる訳でもない。人間が生きていくには、何かしら背負うものがある。その重さに耐えていくことが成長の証である。
時折、笑えるストーリーだが、突きつけられる現実は実に重い。でも、信郎が偶然訪れた居酒屋に予想外の救いがあった。昔は良かった風の安易なノスタルジー小説ではない。男として、そしてかつての少年として筋を通した生き方を導いてくれる物語である。名作です。