池井戸潤のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
【2026年29冊目】
東京第一銀行羽田支店で副支店長を務める蓮沼は、日々深夜まで業務に勤しんでいた。不景気の煽りか、赤字の企業が多い中、本部からの要請で長年の取引先に融資の返済を迫る羽目になったものの、人情が先立ち交渉は決裂。だが、支店長の谷がその翌日あっさりと返済を決めて帰ってきて――銀行と光と闇、人間の欲望を描いた銀行ミステリー。
銀行の話を書くと、池井戸潤さんの右に出るものはいませんね、マジで。銀行マンとしての矜持と一人の人間としての思い、裏金と一攫千金を狙う人々の欲望、出世レースと嫉妬に塗れた銀行内部など、さまざまな要素が絡まり合った一作でした。
主人公側がいわゆる悪人側に一泡吹かそうとするものの、一筋縄では行かず逆に一泡吹かされそうになったり、かつていがみ合っていた者同士がわかりあったりと、人間ドラマが詰め込まれています。
主人公の蓮沼、部下の塔山、同期の滝本と、登場人物それぞれの立場が綺麗に作用した見事なお話でした。そして最後はちゃんとすっきりしたので、本当に良かった。
不倫はもちろんダメですが、今作に関しては「まあ、いいんじゃない苦笑」と思いました。結婚してそんなに人間性変わるかなと思いましたが、変わったというか見えてなかった面が見えるようになっちゃった感じなのかも。
冒頭の報告文みたいなところは、ノリきるまで読むの大変でしたが面白かったです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ花咲舞あなたは強い。ついていきます。
ドラマにもなった花咲舞が活躍する。読後感のいい痛快な連作短編集。
舞台はやはり銀行。
納得できないことには、真正面からぶつかっていく、男気があるといえば聞こえはいいが女性、それも美しい人らしい、狂咲とあだ名されるように、時には口でわからない相手には平手で殴りつける、いやはやあるまじき、、、それがあるので。
「激戦区」
自由が丘支店。他行に負けている付けを人件費で埋めようとして、ベテラン女子行員をいじめてやめさせていた。舞は銀行不振の原因を突き止めて、上司と対峙する。
「三番窓口」
一億円を入金した途端に他行で出金するが、振込みは中止として金を持ち帰る、という詐欺計画をたてた。だが振り込みに使った三番窓口には新人に代わって花咲がいた。
「腐魚」
新宿支店、大手得意先のオーナーの息子が融資課にいた。親元を笠に着た非人情なやり口に花咲のビンタが飛んだ。
「主任検査官」
武蔵小杉店に突然金融庁の審査が入った。まずい書類を隠せ!! だが内部の誰かがリークしていた。凄腕の青田主任検査官は余裕たっぷりに地下にあったダンボールを探し出す、だが「まだあるはずだ!」青田は女子ロッカーを開けさせる。さて花咲舞の振り上げたこぶしは?
「荒磯の子」
胡散臭い風体だが、お得意様の武内、彼は「荒磯の子」と言う子ども会の世話をする慈善事業家だと言われていた。
しかし、花咲はその入出金になぜかひっかかった。支店長の慇懃ぶりにまで不安を覚える。今度は支店長を怒鳴りつけて危機を救う、なんとも気持ちが良い(^∇^)
「過払い」
窓口の支払いがすんだ。だが残高計算が100万円合わない。恥を忍んで目指すお得意様に確かめに行き、怒鳴られて帰ってきた。
しかし、あのお客の、あのときに過払いしたのに違いない。そこで花咲の推理が見事に真相を突き止める。
「彼岸花」
エリートーコースを順調に歩き始めていた行員が、当時の噂では苛められ閑職に追いやられ、はては退職したと言う。ある日彼岸花の花束が送られてきた。宛名は過去に出世競争に勝ち残ったと言う上司だった。つき返すのも後味が悪いし銀行のマナーにも反する、そこで当時のことを調べてみる。送り主は自殺していたが、どうも妻が送ったらしい。妻は銀行のパートの仕事をしていた。花咲は一言声を掛ける。
「不祥事」
大得意先の給与を記録した光ディスクを紛失してしまった。空前の不祥事に顔色をなくす。9千人分の給与支払いが遅れてしまう。本格ミステリを掠めるような捜査が面白い。
硬い印象の銀行にもミスは多々ある。それにしても漫画のような活躍ぶり、ホントついていきます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ未視聴だが話題のドラマだった為オーディブルで聴いてみることに
登場人物も多く、専門用語もありつつもするする聴けた。
支店長の件は彼もまた家庭人であることが描かれており、爽快とは思わなかった。もちろん犯した罪については償う必要があり、加担した行内の面々についても自業自得なのでどう転ぼうと庇うつもりはないが、一方でどちらが悪役かと思うくらいに容赦ない主人公に驚いた。まあのし上がるならこれくらいの胆力が無ければ難しそうな環境ではあるし、そう言う意味では読者にとって頼もしい主人公と言えそうだ。
全体的には面白かったが証拠を掴んでからがやや長く、多少の焦れったさを感じた。 -
Posted by ブクログ
激昂、激昂、激昂。
作中で繰り返されるのは、大声を出せば相手が黙ると思っているおじさんたちの熱い激昂。しかし、旧態依然としたおじさん達を、静かな知性が一掃する。
気質的に難しい「女性」という存在を極力排し、男たちのエゴと信念のぶつかり合いに終始している構成が心地いい。
「声の大きさ」を武器にする前時代の遺物に対し、二人のアキラはどこまでも爽やかで、冷静で、そして圧倒的に優秀だ。その対比を眺めるだけでも十分な読み応えがあった。
「倍返しだ‼︎」で有名な作品も含めて、ドラマや映画化が多くされる池井戸作品に出会うのは初めて。
その勧善懲悪の分かりやすさは、エンタメとして心地よくもあり、同時にある種の物足りなさも残った。
だが、この徹底して男たちの生き様に絞った構成には、この結末が相応しいのである、と、思った。