京極夏彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
矢っ張り文章が良い。斯様に文章だけでぐいぐい読ませる作家を他に知らない。兎に角読者を牽引する力が強い。
泉鏡花が好きなんだろうな〜、っていうのは、京極作品をずっと読んでいると分かるけれど、氏の文章は鏡花のそれともまた違う。
何か色々混じり合い、渾然一体となって別の何かに成り果てたような。そういう意味では正に妖怪的といえるのかも知れない。
白眉は上田秋成の「吉備津の釜」を原作とする一篇。いま自分が読んでいるのが怪異譚であるという事を、途中まで本気で失念してしまった。まるで落語の人情噺のよう。
描き方一つで斯くも物語は表情を変えるものなのか。極上の怪談フルコースである。
リーダビリティに優れた他の人気作家の、誰にとっても"口に合う""食べやすい"小説で満足出来なくなったなら、京極作品を読んでみれば良い。
これを珍味と評するか、将又下手物として味わうかは個人の感性次第だが、何れ我々を飽きさせる事は無い。 -
匿名
ネタバレ 購入済みむしろ新しく思える
明治期をモチーフとしている作品なだけあって、書店の雰囲気などがなかなか現代では見られないような感じを思わせます。ですが、不思議と古さを嫌にならないどころか、むしろこうした昔懐かしい雰囲気が今時の若者にとっては斬新なものとして目に映るのかもしれないと感じました。
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Posted by ブクログ
ネタバレ個人的にツボにはまった表現を抜粋しただけですが、この著者の表現には毎回笑わせられたり、刺されたりします。あと、独自のキャラ設定は、京極堂シリーズにも共通します。
"お子ちゃまだと美緒は威張った。
「そしてあたしは、転んでも泣かずに笑うタイプだから。反省はするけど成長はしない。前には進むがどっちが前だか判らない。頭脳は明晰だが性根はバカなの。だから、まあ、変でおかしい!」"
“雛子がタイミングを合わせて走り抜けてくれるかどうかだ。まあ、抜けたところですぐに追いつかれるのだろうが、たとえそれが焼け石に水であったとしても、水くらいは掛けたくなる心境だった。"
"「何なんや」
律子が肩を抱き、葉月が手を取って、雛子は泣いていた。その雛子を 引き剥がしてあの男の処に。
ーー 潔過ぎるやんか。
何なんだ雛子のあの無抵抗な態度は。それから、あのヒゲの硬直した顔は。不破の悔しそうな顔は。
どうにもできなかったらしいということは容易に察しがつく。不本意だといことも理解できる。越えられない壁というのはあるのだろう。
でも厭なら厭と言え。
悔しいなら悔しいと言え。
あんなに大人しく眺めているだけのものなのか。あれが大人というものか。
喚いていたのは律子だけだった。暴れる律子を不破が抑えた。抑えて、首を振った。"
"「あのな、あたしはお子様だがプラズマ応用工学に於ては世界的権威なんだぞ。 学会の公式サイトに論文だって三つも載ってるぜ。内容はスヴァらしいけど文章が幼児並みだとか言われて激しく添削されたけどな」"
"「要するに、 まったく使い道のないスゴさ。宇宙開発局の開発した超理論を応用して作られたミクロ単位まで正確に同じ長さのトイレットペーパーを切断できるハイテクマシンくらい無意味」"
"「ほら、火事現場でタコ殴り的な言葉あんだろうが」
「ええとな、火事場の馬鹿力」"
"「生かしておきたいならよ、幾ら何だって飯も喰わせないで監禁しっ放しはねえよ。隔離したならしたで、何かするつもりなんだろ。このまんま無菌状態で中年と娘をこんなプースに入れておいたって、どんな化学変化も起こりやしねえよ」"
"「かなーり大物だ。あたしでも名前知ってる人もいるくらいだ」
このあたしがだと、美緒はまた威張った。
「自慢じゃないが賢いが物知らずだぜ、あたしは。数字と記号と理論は判るが他人の名前なんかほぼ知らないぞ」"
"腸(はらわた)がー煮えた"
"「言っただろ。人間はできることとできないことの線引きを自分で勝手にしてさ、その線の内々で生きてるんだよ。でも、大概その線引きは間違っているワケだ。安全圏でぬくぬく生きるのは楽だけどオモシロくなーい。
いいか、絶対できないことは絶対できない。それができると思うのを夢というんだ。だから夢は絶対に叶わない。夢は寝てる時に見るもんで起きてる時に見るもんじゃなーい。
実現できるならそれは夢じゃなくって目標だ。それは、できることだ!」 -
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ネタバレ【あらすじ】
14歳の楠本頼子は、憧れの同級生柚木加菜子と親しくなり、ある日二人で湖を見に出かける。しかし加菜子は、駅のプラットフォームから転落し瀕死の重傷を負う。加菜子を轢いた列車に偶然乗車していた東京警視庁の木場修太郎は、加菜子が運ばれた病院で恋焦がれていた元女優美波絹子と出会う。加菜子の姉である絹子(本名陽子)は、加菜子を絶対に死なせないと宣言し、巨大な箱のような「美馬坂近代医学研究所」へ加菜子を移送する。その後陽子のもとに加菜子の誘拐予告状が届き、警察による厳重な警備にも関わらず、加菜子は忽然と姿を消す。一方作家の関口巽は、カストリ雑誌の編集者鳥口守彦とともに連続バラバラ殺人事件と穢れ封じ御筥様との関連を調査することになる。御筥様の信者リストには、バラバラ殺人事件の被害者と思われる少女や新進気鋭の作家久保竣公の名前があった。二人は京極堂こと、陰陽師の中禅寺秋彦に助言を求める。
【感想】
冒頭から何度か挿入されている不気味な話が、最後に久保の書いた小説とわかるまで、終始気になった。ハコが全てに共通している理由、それぞれの事件や事実がどのように関連していくのかなど、謎が多く次も楽しみ。京極堂のうんちくが少々長く、読むのに時間がかかった。あらすじ書くのも時間がかかった。 -
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久しぶりに京極夏彦を読みたくなったけど、長編は読み切れる気がしなくてこちらの短編集。「嘘」にまつわる短編集で、三津田信三のシリーズのように、著者がそのまま体験したことのある話のような体で書かれている。
最初からこの話は嘘、と言われているから拍子抜けする部分もあり、でも本当に嘘だか分からないとか、どこからどこまでが嘘かわからないというのは逆に不気味で良かった。
一番怖かったのは「ベンチ」の仏壇破壊おじさんかなあ。キンゴロー様の話も好みだった。
きっちりと創作された怪談の、因果関係が明確になるタイプの話も好きだけど、この短編集は実話怪談の「腑に落ちなさ」がある。わけが分からない、意味が分からない、だから怖い。私も実話怪談派かも、と認識させられた一冊。 -
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ネタバレ【2023年14冊目】
「死ねばいいのに」
ともすれば、ものすごい悪口である。悪意100%である。タイトルにもなっているこの言葉は、物語の章が変わる度に必ず発せられる言葉だ。けれど、それを発するケンヤという男は何も相手を不快にさせようと思って言っているのではない。
死んだ女、鹿島亜佐美について何一つ知らないから教えてくれと、話を聞きに行くケンヤの先々には様々な相手がいる。不倫相手、隣人、ヤクザ、実の母親、警察官――亜佐美の話を聞きに行っているのに、なぜか彼らは自分のことばかり話すのだ。だからケンヤは話を聞いた上で結論付ける。
死ねばいいのにと。
言われた相手は皆一様な反応を見せる。だが、「はい、じゃあ死にます」とはならない。普通だ、それが普通の反応の筈なのだ、なのに。
ケンヤの言うことは1人目から最後まで至極真っ当で、そうだそうだと思いながら読みつつも、かと言って話を聞きに行った相手が特別変なことを言っている訳ではない。ただ、視点が亜佐美ではなく、自分の世界だけに向いているだけ。だから、その目線でしか話せない。いつの間にか愚痴になっている。でも死ぬほど辛いわけでもない。
恐ろしいのが登場人物誰一人として辛いから死にたいと思っていたわけではないというところです。そりゃあ、わからないと思う、話も聞きたいと思う。でも死人に口なし。最後の最後でケンヤが笑うんですけど、やっと理解できることを言われた=自分の罪っていうのが何とも。
改めて京極夏彦さんは恐ろしい作家だなと思いました。解説が辻村深月さんというのがまた。
初読:2012年11月1日以前 -
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遠野物語に載っていない逸話集「遠野物語拾遺」を京極夏彦が再編集したもの
柳田国男の原著「遠野物語拾遺」も併載
遠野での怪異や行われている風習なども多数載っている
逸話の順番が入れ替えられていて、原著では気づきにくい逸話同士の関係などが京極夏彦の解釈として描かれている
訳の仕方や補足で付け加えられている情報など、京極っぽいものを感じる
遠野物語との関係性や出版に至った経緯などの説明も併記されている
個人的に面白かったのは
・餅を食べたいが故に交換条件で色々してくれる「何か」
・子供が仏像で遊んでいたのを注意したら、「折角遊んでいたのに」と夢枕に出てくる神仏
この辺は物語の定番と違った展開になっているのが面白みを感じる
その他にも、物語の定番とは異なるる展開のものも結構ある