連城三紀彦のレビュー一覧
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ネタバレ著者初読。
連城三紀彦の『青き犠牲』は、その端正な筆致と哀切な余韻が心を深く揺さぶる傑作だ。不可解な事件の背後にある静かな情念と、人間の業を描き出す構成は、まさにミステリの枠を超えた文学的な味わいがある。登場人物たちは一見冷静に見えて、内側には複雑な感情を抱え、読者に深い共感と静かな驚きをもたらす。
物語を貫く「犠牲」のモチーフが、青という色彩の象徴性と相まって、美しくも痛ましい印象を残す。真実に近づくたび、事件の構造よりもむしろ、人生の残酷な選択と、そこににじむ愛や優しさに目が向けられる。本作はミステリでありながら、人間そのものに対する深い洞察を持った作品である。
読み終えたあと、心に -
Posted by ブクログ
古い本なので「家の留守番電話にテープで吹き込む」とか古めかしい話もあったものの(ナンバーディスプレイすらない時代だろうか)、ラストの展開は予想外でおもしろかった。
読み進めながら、前提が覆されていくのは快感です。
私という名の変奏曲って、ずいぶんナルシストなタイトルだなと思ったけど、ラストの共犯者語りはそれ以上のナルシズムでしたな。
「私」とは、美織レイ子のことなのか、それとも…。
この本の単行本が発売されたのは1984年。40年前ですか(今は2024年)。
美容整形についての考え方も、今と当時では全く違う。整形特有の不自然さ…とか今はほぼないよね。技術も進化してるし、芸能人も一般人もみん -
Posted by ブクログ
ネタバレどんでん返し短編集。
『瀆された目』
『美しい針』
『路上の闇』
『ぼくを見つけて』
『夜のもうひとつの顔』
『孤独な関係』
『顔のない肖像画』
最初の二作が生々しすぎてきつくて、全部読めるかなと不安になったけど、『路上の闇』以降は楽しく読めた。
『ぼくを見つけて』と『顔のない肖像画』が好きかな。
なんていうか恋愛とミステリというとやたら不倫とか生々しい情事とかが出てきがちで、そういうのは苦手なんだよな…。連城作品を読み進められるか心配になるのはこういうところ。カマトトみたいで我ながら嫌なんだけど、男性視点の生々しい欲望みたいなの描写されるとゾッとしちゃうんだよな。 -
Posted by ブクログ
どのお話もただ美しい純愛としてだけ了解できるものにはなっておらず、濃淡の違いはあれど底の方にエゴの奔流が流れている。いくつかの事実の断片を手がかりに事件の真相を解き明かすにつれ、そのどす黒い流れが垣間見える仕掛けになっている。そして、偽善であろうと自己満足であろうと情は情であり、純粋なエゴイズムであるがゆえに美しく見えることもある。
個々のエピソードについて話すなら、2つ目の「桔梗の宿」が1番よかった。この話も広義には恋愛をテーマにした短編ではあるが、それらは自由恋愛ではなく、他にすべもなくただ生存本能として選びとらざるをえない恋愛だ。他の恋愛小説のように華々しくなく、重苦しく切実なものだ。