連城三紀彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ベルリンの壁崩壊の前年の作品であり、第一回「このミス」1位。買ったまま未読だったけど、崩壊20周年を契機に本棚から取り出しました。自分の出生の秘密がナチス時代に遡ることを知った主人公。壁に阻まれた東西ベルリン、パリ、リオデジャネイロ、東京、ニューヨークとめまぐるしく変わるシーンと、複雑に入り組んだ背景が見事に収束していきます。
読みながら流れてくるBGMはDavid Bowieのベルリン時代の代表作「ロウ」。壁の存在がもたらした悲劇、ナチスが存在した故の悲劇が、冷たくストーリーの底辺に流れてます。
ナチスのもたらした悲劇という意味では、手塚治虫の「アドルフに告ぐ」も必読。
2009.11 -
Posted by ブクログ
もう一人の自分が暗躍し、その影を追い続ける主婦。自分を弾いたはずのトラックを消滅させてしまった画家。妻に、あなたは1週間前に死んだはずだ、と告げられた葬儀屋。気がついたら妻が別人になっていた外科医。4つの奇妙な狂気から浮かびあがる、うつしよの幻想。幻想が、ある焦点へ収束し、一つの形が創られるとき、真犯人の狡知が明らかになる。
4つの出来事はまさに狂気が生み出したとでも言うべき代物。この小説は序章・第1部・第2部・終章の4部構成ですが、第1部の終わりまでが延々と幻想的な内容で綴られます。その間に、物語の視点は4つの話を転々とし、眩暈がするよう。ここまで奇妙なことが論理的に説明することが出来るの -
Posted by ブクログ
去年の今頃、とてもバタバタしていたことを思うと、今年は結構余裕あり。少々厚めだけど、息子の本棚にあったこの本でもと。
リオデジャネイロから始まって、そのままニューヨーク、東京、ベルリン、パリへと場面転換の第1章。
混血の日本人画家・青木が見知らぬドイツ人女性・エルザから接触を受ける。
第2次世界大戦下、ナチスドイツのユダヤ人収容所でユダヤ人の父親と日本人の母親の間に生れた赤ん坊が青木だと言われ、青木は平穏な生活から一転、謀略が渦巻くヨーロッパへ…。
ここからは仏独を舞台に、ナチスによるユダヤ人虐殺問題や戦後逃亡したナチ戦犯問題など絡めてどんでん返しのテンコ盛り。どんどん話が膨らんでそんなのアリ