連城三紀彦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
恋愛の美しい部分だけを切り取ったような短編集。
恋愛における「嘘」が軸になり、どれも切ない余韻を残す作品となっています。
自分のためであれ、相手のためであれ、恋愛を取り巻く嘘はどれも哀しすぎる。
「恋文」
登場人物の誰もが少しずつ欠落した部分を持っていてそのちょっとずつの見栄とか同情とか強がりとか中途半端な優しさとかが小さな嘘となって、最終的にどうしようもなく切ない気持ちにさせてくれる作品。
「紅き唇」
いつもいつも他人を優先にしてきたおばあちゃんの最初で最後のワガママの叶え方が、なんともいとおしい。パチンコの景品を自分へのプレゼントにするおばあちゃんのいじらしさ。
「十三年目の子守唄」
これだけ妙にミステリー色が強い。
テーマも恋愛ではなく父子。
「ピエロ」
優しすぎる旦那を試すように裏切ってしまうなんて哀しすぎる。「失敗をもっと大きな失敗で庇う旦那」という設定が最後に生きるあたり、さすが連城さんだと思う。
「私の叔父さん」
こんなかっこいい叔父さんいたら好きになるのは当然。でも、お互いに選ばなくてよかったんだと思う。
好きになるひとと、結婚するひとは別って話をカメラのレンズを通して描くところが巧い。 -
Posted by ブクログ
直木賞を受賞した短編集です。全5編で、どの作品も男と女の人生が描かれています。有名なのは、表題作『恋文』と『私の叔父さん』でしょうか。
私は恋愛に関する小説というものが苦手で、これまであまり読んでいません。なぜ苦手なのか考えてみると、なんとなく馬鹿馬鹿しいというか、そのような印象を受けるのです。
しかし今回の作品達はどれも興味深く読むことができました。それはきっとミステリーだからだと思います。特に好きなのは『恋文』と『ピエロ』です。『恋文』は「愛とは相手に一番やりたいことをやらせる勇気」という言葉とラブレターが感動でした。『ピエロ』は男性の生き方が素敵でした。
ぜひ読んでみてください。 -
Posted by ブクログ
ネタバレからみあう愛と憎悪、そしてあなたもだまされてしまう。
予期せぬ結末が待つ12の物語。
■夏の最後の薔薇(1997.1)
■薔薇色の噓(1997.4)
■噓は罪(1997.6)
■罪な夫婦(1997.10)
■夫婦未満(1997.12)
■満天の星(1998.2)
■星くず(1998.11)
■くずれた鍵(1999.1)
■鍵孔の光(1999.3)
■仮橋(1996.9)
■走り雨(1999.11)
■雨だれを弾く夏(2000.8)
12編すべてが「浮気」をテーマに男女の様々な人間関係を描いている。
印象に残った作品は『噓は罪』だろうか。
三人称と一人称と織り交ぜながら、ラスト3ページは急転直下の結末に、一人取り残された女の虚ろな様子を描いてみせる。
ただやはりテーマを決めてしまう部分の弊害というか、1日1編と決めて読んだものの何かしら「飽き」の感覚を覚えてしまうのも事実だった。
ミステリ :☆☆☆☆
ストーリー :☆☆☆
人物 :☆☆☆
文章 :☆☆☆ -
Posted by ブクログ
ネタバレ恋愛小説をあまり読まない私には、連城さんは縁がない作家さんだと思っていました。表題作の『恋文』を読んだら「やられたー!まずいなぁ」と思いました。いいじゃないですか、とっても。女心も男心も共感せずにはいられません。いや、本当はダメな男は好きではありません(苦笑)が、ヒロインの女性にしてみれば、そんなところもほっとけなくて愛しいのではないだろうかと思うわけです。
『紅き唇』も好きです。
この短編集に登場するのはどちらかというとダメ男さんが多いですが、女性は気が強いタイプが多いですね(笑)
物語が美しいというか情緒的というか、連城さんの恋愛小説は絶品ですね。(この本しか読んでいないですけど^^; ) 本当に困るのです。とっても素敵な文章で間違いなく好みなのですが、こうオンナオンナしているのは読んでいて気恥ずかしいというか自分の痛さに触れるというか、居心地が悪いというか…。雰囲気は好きだけど、ストーリーは好きじゃないというのが今の私の心境です^^;
でも好きじゃないけど、きっと連城氏の作品を読んでしまうのだろうなぁと(笑)
それだけ魅力的でした♪ -
Posted by ブクログ
高い叙情性とミステリの面白さの共存......って、これ何回書いたかな?
すべてを読んだわけではないが、とにかく連城三紀彦の短篇集にハズレなし!
ハルキ文庫版の『夜よ鼠たちのために』にあった『代役』『ベイ・シティに死す』『ひらかれた闇』は、こちらにも収録されている。
この三作品だけでも読む価値はあるので、興味のある方は比較的入手しやすい『密やかな喪服』はいかがだろうか。
もちろん他四篇も面白いのでおすすめ。
『白い花』
自宅療養中の書道家と物静かな家政婦。
犯人もトリックもなんとなくわかる。でも凄いのはそこじゃない。
わからなかったことが二つあった。その謎が解けるとき......
『消えた新幹線』
午後五時三十五分。
新幹線が熱海を出てまもなく、車内に突如あらわれた森の石松。
瞬間ギョッとする車掌。
刀をふりまわす浪人風の男と逃げる町娘風の女。
眼を疑るサンドイッチの売り子。
『密やかな喪服』
夜中にふと呟いた妻の一言。
「喪服を用意しておかないと......」
その言葉に次第にとらわれていく夫。そして不穏な気配。
『黒髪』
十五年ぶりの女との逢瀬。京都。ある真相。
連城三紀彦の短篇集はまだまだあるので、これからも随時読んでいく予定。
一定のクオリティを保った短篇をコンスタントに発表していた連城先生にただただ感服。 -
Posted by ブクログ
作者が本人の体験を描いたのではないかと勘繰らせる文脈を挿入し、メタ的な構造を挿入した実験作。(実際にはそうすることによって効果を狙った、私小説を装ったフィクションなのではないかと思われる)
個人的にメタフィクションというものが苦手なのだけれど、それを脇におけば、本筋が非常に面白かった。同性愛を扱っているのだけれど、愛憎模様というか、すれちがい&憎しみ愛的なものに「滾る!」となる人にはオススメしたい。
連城三紀彦の恋愛小説に漂う陰のある色気というか、エロスというか、そういう空気感は非常に魅力的だと思うのだけれど、しかし今回、一か所だけ性描写にものすごくエグい表現があってドン引きした……ドン引きした。あれはないわー。
そういうのもあって、好きな人は好きだろうが苦手な人は苦手だろうというか、少々上級者向け(?)の一冊という所感。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ著者連城氏の処女作『変調二人羽織』を含む5編の短編集。
三津田信三氏が著作『忌館』の中で登場人物(雑誌編集者)に述べさせていた連城氏に対する評価があるが、「変調二人羽織」の書き出しにそれが凝縮されていると思う。
誤って薄墨でも滴り落ちたかのようにゆっくり夜へと滲み始めた空を、その鶴は、寒風に揺れる一片の雪にも似て、白く、柔らかく、然しあくまで潔癖なひと筋の直線をひきながら、やがて何処へともなく飛び去ったのだと言う
なんと美しく流麗に日本語を駆使する作家さんなのだろうか、そして本格の名に恥じないプロット、伏線の回収、読後感。短編に関していえば、淡坂妻夫氏と連城氏が個人的東西横綱である