連城三紀彦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
〈またその花が夾竹桃と呼ばれる花であること――夏の盛りに太陽の炎を吸って自らも炎となって燃えあがる花であること。夾竹桃の葉や樹皮には毒があること――花弁の炎の色が、人の命を焼きこがすための色であること。そしてまたその毒のために、数時間後、壊れかけた防空壕のかたすみで、何とか生きて終戦を迎えた小さな命を棄てる運命にあったこと――〉
中堅作家の柚木桂作は一人娘の万由子から結婚を前提に考えている恋人を紹介される。民放テレビ局の報道班に勤めているその恋人と、柚木の著作でもある「虚飾の鳥」の話(太平洋戦争史の陰で暗躍した人物を題材にした大作)から、戦争の話に及び、柚木は彼から、仕事きっかけで知った戦 -
Posted by ブクログ
世評が高く、明らかに趣味嗜好に合致している。でもそんな作品に限って、いつか読もう読もう、と思っているうちに、あまりにも長い時間が経っていた、という経験はありませんか。私はよくあって、連城三紀彦のキャリア後期の代表作である本作『造花の蜜』も、私にとってそんな作品でした。読んで何故もっと早く読んでいなかったのか、と強く後悔してしまいました。
離婚を機に一人息子を連れて実家に戻った香奈子は息子の圭太を預ける幼稚園の先生と思わしき人物から、電話を受ける。圭太がスズメバチに刺されて救急車で病院に運ばれた、というのだ。だけど本当に幼稚園からだったのか、と病院に向かう途中、幼稚園に電話すると、先生はそ -
Posted by ブクログ
胸を撃ち抜かれた♡
大人の恋愛小説なんだけど、恋愛なんて軽い言葉で表現したくない。
「"惚れる”ということはこういうことを言うんだよ」と諭された。
年末に本棚を整理していたら見つけた昭和59年に書かれた本書。私のこの本は昭和62年版…装丁が違う…37年振りの再読となった。
37年前の小娘の私が、この小説の本当のトコロがわかるはずもなく。それでも、その後の結婚と数回の引越しでも捨てずに手元に連れてきたわけで。
面白い、心に響いていたことは間違いないのであろう。
『恋文』『紅き唇』『十三年目の子守唄』『ピエロ』『私の叔父さん』の5話。
直木賞受賞作。
また再読したい♡
今年の -
Posted by ブクログ
【ミステリーレビュー500冊目】自らの命よりも、美しく花を咲かせることの尊さとは… #戻り川心中
■はじめに
レビュー500冊目は、連城三紀彦先生の『戻り川心中』です。ミステリー史上、最も美しいとされている一冊で、どの作品も味わい深く文学的。人間が隠し持っている欲や業、そして愛情を描いた短編集です。
時は大正・昭和前期、日本独特の文化や風習が作品全体から漂ってくる。各作品ごとに花や植物が違和感なく小道具になっていて、耽美な雰囲気をよりかもし出してくれます。しかし、いつの時代も男と女の物語は美しくも哀しいですね…
謎解きとしても綺麗な論理性でまとめてくれるし、文芸作品としても質が高い。もし -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かった。米澤穂信が薦めていたのと評判が良かったので読んでみた。
「藤の香」
代筆屋という伏線。故郷への文と目の前の少女の行く末を考えて、さらに己の寿命まで考えると成敗したくなるのもわかるな。お縫の心情を推し量ろうとするまなざしが良かった。
「桔梗の宿」
二階の窓から花を散らすという仕草になんともいじさらしを感じてしまう。言葉にして直接伝えられない感情を感じる。福村も人形を操ることで何かを伝えていたとしたらそこが二人の共通点になるのかな。
「桐の柩」
主人公がなんか百合の間に挟まる男というか、二人の愛の渦中にいるというか、面白い立ち位置。
主人公のありようがあまりにも希薄なのが良い。