連城三紀彦のレビュー一覧

  • 敗北への凱旋

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    〈またその花が夾竹桃と呼ばれる花であること――夏の盛りに太陽の炎を吸って自らも炎となって燃えあがる花であること。夾竹桃の葉や樹皮には毒があること――花弁の炎の色が、人の命を焼きこがすための色であること。そしてまたその毒のために、数時間後、壊れかけた防空壕のかたすみで、何とか生きて終戦を迎えた小さな命を棄てる運命にあったこと――〉

     中堅作家の柚木桂作は一人娘の万由子から結婚を前提に考えている恋人を紹介される。民放テレビ局の報道班に勤めているその恋人と、柚木の著作でもある「虚飾の鳥」の話(太平洋戦争史の陰で暗躍した人物を題材にした大作)から、戦争の話に及び、柚木は彼から、仕事きっかけで知った戦

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    2025年06月25日
  • 造花の蜜(下)

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     世評が高く、明らかに趣味嗜好に合致している。でもそんな作品に限って、いつか読もう読もう、と思っているうちに、あまりにも長い時間が経っていた、という経験はありませんか。私はよくあって、連城三紀彦のキャリア後期の代表作である本作『造花の蜜』も、私にとってそんな作品でした。読んで何故もっと早く読んでいなかったのか、と強く後悔してしまいました。

     離婚を機に一人息子を連れて実家に戻った香奈子は息子の圭太を預ける幼稚園の先生と思わしき人物から、電話を受ける。圭太がスズメバチに刺されて救急車で病院に運ばれた、というのだ。だけど本当に幼稚園からだったのか、と病院に向かう途中、幼稚園に電話すると、先生はそ

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    2025年06月19日
  • 恋文・私の叔父さん

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    胸を撃ち抜かれた♡
    大人の恋愛小説なんだけど、恋愛なんて軽い言葉で表現したくない。
    「"惚れる”ということはこういうことを言うんだよ」と諭された。

    年末に本棚を整理していたら見つけた昭和59年に書かれた本書。私のこの本は昭和62年版…装丁が違う…37年振りの再読となった。

    37年前の小娘の私が、この小説の本当のトコロがわかるはずもなく。それでも、その後の結婚と数回の引越しでも捨てずに手元に連れてきたわけで。
    面白い、心に響いていたことは間違いないのであろう。

    『恋文』『紅き唇』『十三年目の子守唄』『ピエロ』『私の叔父さん』の5話。
    直木賞受賞作。

    また再読したい♡
    今年の

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    2025年01月05日
  • 恋文・私の叔父さん

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    「恋文」の世界観が好き
    夫や夫の恋人を客観的に見ることで
    自分自身と向き合い自問する様が愛おしい
    自分もそっち寄り気質なので共感してしまう

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    2024年12月10日
  • 戻り川心中

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    「一作目が面白いし短いから読んでみて。読んで面白かったと思ったら全部読んでみるのもあり」と上手い言葉で勧められてまんまと全部読んだ。

    流麗な文章。
    ほんとうにその一言に尽きる。

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    2024年12月03日
  • 戻り川心中

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     花にまつわるミステリーが収録された短編集で、どれも男女の関係や人間の情や業が深く関わったホワイダニットやどんでん返しで意表を突かれ、また登場する花が事件の重要な鍵となる物語の儚くもどこか美しい世界観に惹かれた。

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    2024年08月19日
  • 戻り川心中

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    これだよ、小説はこうでなきゃ…
    稚拙な文章、あっさい人間描写にはうんざりだ。
    連城三紀彦が日本に生まれてくれて本当によかった。

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    2024年06月15日
  • 恋文・私の叔父さん

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    久しぶりにちゃんとした恋愛小説を読んだ。
    主に男女の関係性が描かれているけど、どの短編も角度を変えた題材が印象的だった。今の年齢で読むことが出来て良かったと思う。心情描写がとても素敵。

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    2024年06月09日
  • 戻り川心中

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    【ミステリーレビュー500冊目】自らの命よりも、美しく花を咲かせることの尊さとは… #戻り川心中

    ■はじめに
    レビュー500冊目は、連城三紀彦先生の『戻り川心中』です。ミステリー史上、最も美しいとされている一冊で、どの作品も味わい深く文学的。人間が隠し持っている欲や業、そして愛情を描いた短編集です。

    時は大正・昭和前期、日本独特の文化や風習が作品全体から漂ってくる。各作品ごとに花や植物が違和感なく小道具になっていて、耽美な雰囲気をよりかもし出してくれます。しかし、いつの時代も男と女の物語は美しくも哀しいですね…

    謎解きとしても綺麗な論理性でまとめてくれるし、文芸作品としても質が高い。もし

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    2024年05月23日
  • 敗北への凱旋

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    ネタバレ

    美しいミステリ。美しい暗号。
    戦後の混乱の中の一つの殺人事件。二十数年後にその被害者のことを知り、それを題材にしようとする小説家。雑誌掲載を止めさせようとする謎の女性。

    全滅が予想される出撃の前夜、月明かりの中で指を重ねて運指を伝えるシーンがあまりにも美しくて、悲しくて、心に残った。

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    2023年09月13日
  • 戻り川心中

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    ネタバレ

    面白かった。米澤穂信が薦めていたのと評判が良かったので読んでみた。

    「藤の香」
    代筆屋という伏線。故郷への文と目の前の少女の行く末を考えて、さらに己の寿命まで考えると成敗したくなるのもわかるな。お縫の心情を推し量ろうとするまなざしが良かった。

    「桔梗の宿」
    二階の窓から花を散らすという仕草になんともいじさらしを感じてしまう。言葉にして直接伝えられない感情を感じる。福村も人形を操ることで何かを伝えていたとしたらそこが二人の共通点になるのかな。

    「桐の柩」
    主人公がなんか百合の間に挟まる男というか、二人の愛の渦中にいるというか、面白い立ち位置。
    主人公のありようがあまりにも希薄なのが良い。

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    2023年05月19日
  • 戻り川心中

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    桐の柩がとても良かった。それはそれとして繊細かつ大胆な登場人物たちを見て、連城三紀彦に女性向けシチュエーションCDのシナリオを書いてほしいと思った。

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    2023年04月03日
  • 顔のない肖像画

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    表題作を含む7作品収録
    いずれの作品も結末に驚かされました
    どの作品も一筋縄ではいかない展開とでも
    いいましょうか
    とても楽しめました

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    2023年03月20日
  • 白光

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    最近は意味がわかりませんでした。
    読むにつれて理解が深まる話です。
    何回か繰り返し読みたくなる面白い本です。

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    2022年11月11日
  • 恋文・私の叔父さん

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    「十九年前真実の気持ちを全部嘘にしたのなら、今この嘘を全部真実にしてやる」
    落とし前の付け方が哀しくて、美しい。

    青春時代Number Girlとハヌマーンから受けた同じ類の衝撃でした。
    今度は音ではなく、地の文として、胸元に突き付けられた。
    表現者への未練を断ち切れず、舞台に上がろうともしない僕は、煙草を吸いながら、こんな言葉を紡ぐことができたらなと、これが僕の言葉だったらなあと、ひとり妄想するだけであった。
    誰に向けてるのかも判然としないけど、これが僕の恋文です。

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    2022年07月07日
  • 戻り川心中

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    最高傑作
    女性の美しさ、恋の美しさに満ち溢れていた。文章も美しく、全く飽きなかった。特に桔梗の宿を美しく思う。

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    2022年06月10日
  • 恋文・私の叔父さん

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    設定の妙と人間の心の襞を絶妙な言葉で紡いだ冒頭の「恋文」に一気に引きずり込まれたが、5篇の中でのベストは何と言っても「私の叔父さん」です。恋文の時もでしたが、最後のどんでん返しとも言うべき展開、5枚の写真に秘められたメッセージには胸が熱くなりました。
    若い頃はただ純粋に好きと言える恋愛が、歳を重ねて再燃する恋愛には深い事情が存在し、そんな感情の二人が成就することもあるかもしれません。
    そういえば5篇のうち3篇は年の差恋愛ですね。自分には少しときめくものがあります。

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    2021年12月12日
  • 戻り川心中

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    「屍人荘の殺人」に出てきたので読んでみたシリーズ

    これは・・・すごい!!
    こんなに美しい文章とミステリーが両立するなんて!
    でもトリックとかそんなんじゃない、でも立派にミステリー
    これが花葬シリーズ!!てなった

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    2021年10月11日
  • 人間動物園<新装版>

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    ある雪の日、誘拐された少女。
    盗聴器でその母親と警察を縛る犯人。
    母親が追い詰められるのがいたましい。
    そして、少女の祖父には本当に頭に来てしまった。
    なんてやつなんだろう。
    それが全ての元凶なんじゃないの。
    離婚した両親を、少女はどう思っていたのか。
    幼い心にどんな傷をおったのだろう。
    事件も一筋縄ではいかない。
    警察の様子をうかがう記者の役割はなんなのか。
    真相が明らかにされたかに見えてからの展開がまさに連城作品の真骨頂。
    あの心がせつない。

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    2021年09月13日
  • 暗色コメディ

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    これまた連城節炸裂で大満足。
    不可解な経験をした複数の人物の視点で物語が進む。
    その経験によってだんだん心が壊れていく者たち。
    いったい、本当には何が起こっているのか。
    読んでいるうちに、こちらまで謎に絡め取られていく。
    そのせいで、そこにあるはずの事実を見えなくなっていく。
    終盤、明らかになる事実にいくつものウロコが目から落ちていく快感。
    様々なことに合理的な回答が用意されているカタルシス。
    これだからミステリ読みはやめられない。

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    2021年09月09日