連城三紀彦のレビュー一覧

  • 敗北への凱旋
    美しいミステリ。美しい暗号。
    戦後の混乱の中の一つの殺人事件。二十数年後にその被害者のことを知り、それを題材にしようとする小説家。雑誌掲載を止めさせようとする謎の女性。

    全滅が予想される出撃の前夜、月明かりの中で指を重ねて運指を伝えるシーンがあまりにも美しくて、悲しくて、心に残った。
  • 戻り川心中
    面白かった。米澤穂信が薦めていたのと評判が良かったので読んでみた。

    「藤の香」
    代筆屋という伏線。故郷への文と目の前の少女の行く末を考えて、さらに己の寿命まで考えると成敗したくなるのもわかるな。お縫の心情を推し量ろうとするまなざしが良かった。

    「桔梗の宿」
    二階の窓から花を散らすという仕草になん...続きを読む
  • 顔のない肖像画
    表題作を含む7作品収録
    いずれの作品も結末に驚かされました
    どの作品も一筋縄ではいかない展開とでも
    いいましょうか
    とても楽しめました
  • 白光
    最近は意味がわかりませんでした。
    読むにつれて理解が深まる話です。
    何回か繰り返し読みたくなる面白い本です。
  • 恋文・私の叔父さん
    「十九年前真実の気持ちを全部嘘にしたのなら、今この嘘を全部真実にしてやる」
    落とし前の付け方が哀しくて、美しい。

    青春時代Number Girlとハヌマーンから受けた同じ類の衝撃でした。
    今度は音ではなく、地の文として、胸元に突き付けられた。
    表現者への未練を断ち切れず、舞台に上がろうともしない僕...続きを読む
  • 戻り川心中
    最高傑作
    女性の美しさ、恋の美しさに満ち溢れていた。文章も美しく、全く飽きなかった。特に桔梗の宿を美しく思う。
  • 恋文・私の叔父さん
    設定の妙と人間の心の襞を絶妙な言葉で紡いだ冒頭の「恋文」に一気に引きずり込まれたが、5篇の中でのベストは何と言っても「私の叔父さん」です。恋文の時もでしたが、最後のどんでん返しとも言うべき展開、5枚の写真に秘められたメッセージには胸が熱くなりました。
    若い頃はただ純粋に好きと言える恋愛が、歳を重ねて...続きを読む
  • 戻り川心中
    「屍人荘の殺人」に出てきたので読んでみたシリーズ

    これは・・・すごい!!
    こんなに美しい文章とミステリーが両立するなんて!
    でもトリックとかそんなんじゃない、でも立派にミステリー
    これが花葬シリーズ!!てなった
  • 人間動物園<新装版>
    ある雪の日、誘拐された少女。
    盗聴器でその母親と警察を縛る犯人。
    母親が追い詰められるのがいたましい。
    そして、少女の祖父には本当に頭に来てしまった。
    なんてやつなんだろう。
    それが全ての元凶なんじゃないの。
    離婚した両親を、少女はどう思っていたのか。
    幼い心にどんな傷をおったのだろう。
    事件も一筋...続きを読む
  • 暗色コメディ
    これまた連城節炸裂で大満足。
    不可解な経験をした複数の人物の視点で物語が進む。
    その経験によってだんだん心が壊れていく者たち。
    いったい、本当には何が起こっているのか。
    読んでいるうちに、こちらまで謎に絡め取られていく。
    そのせいで、そこにあるはずの事実を見えなくなっていく。
    終盤、明らかになる事実...続きを読む
  • 宵待草夜情
    「戻り川心中」で美しい文章とミステリの両立に受けた衝撃再び
    繊細な文章、そしてそれによって作られる世界観が美しくて、その美しさに浸りたくて読み返しちゃう

    中でも「書きたい人のためのミステリ入門」で読書会として取り上げられていた「花虐の賦」の鮮やかさはさすが
  • 恋文・私の叔父さん
    今まで読んだ著者の作品には、『恋文』に出てくるような女を振り回す身勝手な男ばかり出てきてたけど、なぜか憎めない。その身勝手を許して受け入れてしまう気持ちがわかってしまう。
    『紅き唇』のタヅさんの想いが切ない。
    『私の叔父さん』が一番好きかな。
  • 恋文・私の叔父さん
    とにかく文章が美しい。気障な表現や難しい言葉を使っているわけではないのに、なんでこんなにも心に響くのだろう。極限まで美しいものを見たとき、人は言葉をなくすというけれど、それにプラス涙も出ることをこの小説を読んで知った。
    今世では経験することができない、風情のある男女の話。
    意地っ張りで不器用だけど、...続きを読む
  • 戻り川心中
    大正・昭和の男と女を優美な花が彩るミステリー短編集。

    どの物語も真実に近づいていくのが心地よく、ただ流れに身を任せて楽しんだ。
    短編であるということを忘れるほど濃厚で没入してしまう。匂い立つ花の余韻を噛み締めながら、ずっと浸っていたい美しさ。
    粋で情緒のある物語世界を堪能した。
  • 白光
    ある事件をきっかけに『家族』の秘密が露わになっていく物語。

    『家族』といっても夫婦、姉妹、親子、祖父母と孫などいろいろなかたちがある。その登場人物全員が複雑に絡み合い、そして秘密や闇を抱えている。次々と事実が発覚していくが、本当に愛する誰かのために行動するその姿が儚い。

    それぞれの視点から少しず...続きを読む
  • 戻り川心中
    ずっと気になっていた作家の本。
    とにかく「美しい」という評価がついていたけど、その通り。
    こんなに美しい文体の推理小説は読んだことない。
    ミステリーとしても極上。あっと驚く展開で引き込まれる。
    読み終わるたびにため息をついてしまう。

    一番好きなのは「桔梗の宿」
    暴かれる真実のあまりの美しさに、最後...続きを読む
  • 白光
    この本めっちゃすごい。
    まず文章がとても美しい。
    それから物語全体に流れる不穏な空気感、不気味さ。
    夏の暑気やまとわりつく湿度が余計に雰囲気を盛り上げている。
    独白形式や少し古めかしいセリフも余計に影を感じさせ、この家族に引き込まれた。

    (立介のターンで社内で一番や会社で一番とかいうワードが沢山出...続きを読む
  • 造花の蜜(下)
    美しい。
    文章が、トリックが、感情描写が。
    犯人は、最初は色仕掛けで共犯者を操ったかのように書かれていたけど、第2の事件では違うことが分かる。
    そういうのを超越した魅力が、この犯人にはある。
    ただ事件が起こって、犯人を推理するだけじゃない面白さが、ミステリなんだけどその枠を軽く越える。
    登場人物みん...続きを読む
  • 宵待草夜情
    連城ATB1位「花虐の賦」収録
     「戻り川心中」と並ぶ最高傑作集。男女の色恋を繊細かつ緻密に描き、複雑に絡み合う美しき反転の数々で読者を魅了する。「花虐の賦」はまさに至極の一作。「戻り川心中」をも凌駕する驚愕の動機と、鴇子の生き様に強く心を突き動かされる。「未完の盛装」も氏らしい超絶技巧が光る。
  • 小さな異邦人
    レジェンドの最終章を胸に刻む
     著者、最後の短編集。寄せ集めという意見もあるようだが、バラエティ豊かで各話新鮮なサプライズが待つ上質な作品集だった。
     「子供の命は預かった」- だが、8人の子供は全員家に揃っている謎の誘拐事件(「小さな異邦人」)は、結末もまさに前代未聞。読み終わってからこれが氏の遺...続きを読む