【感想・ネタバレ】造花の蜜(下)のレビュー

あらすじ

その事件は、小川香菜子の息子の圭太が、スーパーで連れ去られそうになった出来事から始まった。幼稚園での信じられない誘拐劇。人質の父親を名乗る犯人。そして、警察を嘲笑うかのような、白昼の渋谷スクランブル交差点での、身代金受け渡し。前代未聞の誘拐事件は、人質の保護により、解決に向かうかのように思われた……。だが、それはこの事件のほんの序章に過ぎなかった。二転、三転する事件の様相は、読者を想像を絶する結末に導く。ドラマ化もされた傑作ミステリ(解説・岡田惠和)

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Posted by ブクログ

 世評が高く、明らかに趣味嗜好に合致している。でもそんな作品に限って、いつか読もう読もう、と思っているうちに、あまりにも長い時間が経っていた、という経験はありませんか。私はよくあって、連城三紀彦のキャリア後期の代表作である本作『造花の蜜』も、私にとってそんな作品でした。読んで何故もっと早く読んでいなかったのか、と強く後悔してしまいました。

 離婚を機に一人息子を連れて実家に戻った香奈子は息子の圭太を預ける幼稚園の先生と思わしき人物から、電話を受ける。圭太がスズメバチに刺されて救急車で病院に運ばれた、というのだ。だけど本当に幼稚園からだったのか、と病院に向かう途中、幼稚園に電話すると、先生はそんな電話を掛けてはおらず、「さっきお母さんが連れていかれたじゃないですか」と言いはじめる。「だって、私、お母さんに……あなたにちゃんと圭太クン渡したじゃないですか」自分とそっくりな『誘拐犯』の正体は何者なのか――これがあまりにも壮大な犯罪の幕開けだった。

 上巻と下巻でここまで色合いが異なる作品もめずらしいかも、と思いました。どこまで語っていいのかとても悩みますし、とても曖昧な言い方になってしまうのですが、まさか〈誘拐〉という二字がこういう意味合いを持つとは、というひとつ目の驚きがあり、そのひとつ目の出来事さえもラストの衝撃の道具にしてしまうなんて……。主要人物はいつの間にか端役へと追いやられ、端役にしか過ぎなかった者は気付けば主演に躍り出ている。美しい文章と構造に惚れ惚れとするような誘拐ミステリでした。

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2025年06月19日

Posted by ブクログ

美しい。
文章が、トリックが、感情描写が。
犯人は、最初は色仕掛けで共犯者を操ったかのように書かれていたけど、第2の事件では違うことが分かる。
そういうのを超越した魅力が、この犯人にはある。
ただ事件が起こって、犯人を推理するだけじゃない面白さが、ミステリなんだけどその枠を軽く越える。
登場人物みんなが癖があって、面白い。

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2020年02月15日

Posted by ブクログ

一気に読んでしまった。すごく面白かった。
ピリッとした文体で緊張感が漂い、緩急をつけて見せ場のところはページをめくる手が止まらない、そんな本だった。
まあほんの少し疑問が残ったところはありましたが、最後は大方サッパリと読み終えることができ、大満足です!
そして日も真っ盛りな今をもって、やっと眠ることができます…!!

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2013年03月22日

Posted by ブクログ

すっきりしないまま下巻に突入…が、しかし

かなりヤラれた!
そう来るかっ!

久々のヤラれた感を味わった作品

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2011年01月05日

Posted by ブクログ

あら!まぁ?
予想外の展開でした。
新しい推理小説ってやつですかね
真相は、…
長編だったんで、チョッピリ疲れました。

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2024年04月26日

Posted by ブクログ

面白かったです。
上巻の続き…なのですが、ある意味別のストーリー。

下巻の前半は、上巻で起きた誘拐事件のからくりが明かされます。
それを語るのが犯人のうちの一人の心情と首謀者の手紙、という個人的にはあまり好きではない手法なのですが、そういった私の嗜好をもってしても面白いと思える仕上がりでした。
白とも言える首謀者の手紙における、感情・感性の描写の細やかさというか、繊細さというか。

下巻の後半は舞台が仙台に移り、上巻で起きた誘拐事件そっくりの事件が起きます。
被害者となる家庭の長女の手記によって記されるこの事件の真相が、とにかく痛快。

事件はさっぱり解決していないのに、爽快さを覚えるから不思議。
面白かった、と声に出して呟いた一冊です。

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2022年10月14日

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これまでに経験したことのないトリック。
二重の誘拐とか、さらにもう一つ誘拐が掛かっていたり、
どうしたらこんなことを考え付くのか。
蜂の比喩など、表現も秀逸。
でも、2件目の話はどうなのだ?プロット、トリックとしては必要ありなのかもしれないが、
この話の山場はすでに終わっている。あそこで終わっていても良いのでは?
詰め込んだなという感じ。

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2018年04月23日

Posted by ブクログ

後半。主人公からして変わってしまってて、同じ事件を扱っているんだけど、別の視点から綴られた新しい物語、って感もあり。前半の主人公、後半には全く登場しないし。何も起こらなかったはずの事件の裏で起きていた大問題とか、その後に引き続いて巻き起こる、一連のものとも思える事件とか、展開が目まぐるしく変わるけど、その上で保たれている整合性も素敵。連城作品は初めてだったけど、面白かったです。

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2015年04月23日

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ネタバレ

たどり着いたように思えた真実が見る角度によってまるで違う様相を呈したもう一つの真実を浮かび上がらせる。
一体どうやってこんな途方も無い物語を考えついたのか。

すごいなーと思うけどただそんなに好みの話ではなかったです。

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2015年03月24日

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シングルマザーの子どもが誘拐された。その真相が明らかになるにつれ、物語が劇的に変化していく作品でした。最終的にはただ唖然しました。
連城作品をかじり始めて5作目くらいですが、叙述がきれいだなと思います。きれいなのに魅力的というか、魅惑的というか、、、。
今まで読んだことのない手法の本であり、賛否はありますが、私は気に入りました。トリックや心理描写、情景描写など、あらゆる一文一文がとても心に響く作品でした。

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2015年02月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【生きた花は枯れ、造られた花は蜜を零す】

二重三重に張られた伏線に気づいたら絡め取られ、終わったときにぽかんと口を開けている事しかできない。

まず、主人公は誰か?
犯人は誰か?

まったくわからないまま終わってしまった。
最後読み終わっても読後の安堵があるのに、どんな話だったのか上手く想像できない。なのに面白かったと感想が浮かんでくる。まるで洗脳を施すようなミステリ。

もう一度読んでも理解できるかわからないが、もう一度読み直してみたい。

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2014年06月25日

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蘭が起こした、第二の事件。
最初の事件に比べて、描写は少ないけれど、第二の事件は面白かった。
第二の事件を独白する、主人公の女の子にあっぱれ!

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2012年06月28日

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誘拐された少年の家の従業員《川田》の視点で事件の真相が語られる。《女王蜂》と《働き蜂》の奇妙な共犯関係。加害者&犠牲者関係。
ラストは「えっ!?」という感じのドンデン返しアリ。

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2012年05月25日

Posted by ブクログ

造花=FAKE。なるほど。すっかり騙されました。面白かったです。ただしトリックのアイデアはいいけど、この犯行実際はかなり困難かも。人心はそうそうままならないし、予測不可能な事態とは起こるものだから。全体が成り立つためには、犯人をああいう形に着地するしかないだろうな。

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2011年12月14日

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久しぶりに連城さんの小説を読みました。
私の仲では恋愛小説家という位置付けだったのですが
ミステリーも書かれるんですね。

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2011年11月28日

Posted by ブクログ

下巻は上巻と主人公が変わる。
圭太くんの事件からまた謎が広がっている。
これまた面白く一気に読んでしまった。

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2011年11月27日

Posted by ブクログ

下巻の主人公は一転して犯人の一人。
犯人の視点から、誘拐事件の全貌が明らかになる。

上巻の圭太誘拐事件はもちろん、
最後のエピローグ的な話についても要否は別問題ながらも、
結末は極めてだいどんでん返しであるのは間違いない。
しかし、だいどんでん返しがあまりにもスマート過ぎてしまい、
正直やられた感をあまり感じなかった。


しかし、一気に読めるし、楽しめる作品であるのは確か。
続きがとにかく気になる時点で、
なんだかんだ言いながらも、作品に惹かれているのは間違いない。

こうした終わり方をする小説ははじめて。
タイトルも含蓄があるな。

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2011年05月31日

Posted by ブクログ

一つの誘拐からいくつかの事件が交錯するトリッキーなミステリー。まさかまさかの連続でぐいぐいと面白く読めました。ちょっとよく出来すぎな感じはしますが。

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2011年04月18日

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ネタバレ

○ 造花の蜜(上)
 「誘拐」をテーマにしたミステリ。連城三紀彦の晩年の作品である。上巻は香奈子の子である圭太が誘拐される場面から始まる。圭太の誘拐には、香奈子の父が経営する工場従業員である川田が深く関わっている。
 誘拐犯は身代金を要求するのではなく、「圭太は自分の意思でここに来た。」「俺はあの子の父親だ。」と主張してくる。香奈子は山路将彦と離婚しており、圭太の父親は山路将彦だが、誘拐犯ではない。この「父親」とは一体何を意味するのか?その後、犯人はこれまでの主張を変え、圭太の身代金として5000万円を要求する。受け渡し場所は渋谷のスクランブル交差点の真ん中
 スクランブル交差点での身代金の受け渡しは失敗したように思われたが、用意されていた5000万円のうち1000万円が消失していた。そして発見・救出された圭太が漏らした一言、「お母さん、この人が誘拐犯?」。失われたはずの1000万円は圭太が持っていた。これは果たして本当に誘拐だったのか?その真相とは?
○ 造花の蜜(下)
 下巻では、上巻の誘拐事件の裏側が描かれる。水絵と名乗る女性が「自分が圭太の本当の母であり、香奈子から圭太を取り戻すために誘拐したい」と川田を誘う。水絵の正体は「蘭」という女性であり、彼女は川田の正体が沼田実という長野の有力者の子であることを知り、圭太の誘拐を表向きの事件としつつ、裏では川田自身を誘拐する計画を進めていた。
 物語は川田の視点で描かれるが、最終的に「蘭という希代の犯罪者による華麗な誘拐事件」の全貌が明らかになる。
 造花の蜜の後には短編「最後で最大の事件」が収録されている。この短編は圭太の誘拐事件をなぞるような形で、仙台のお菓子会社の息子が誘拐される。圭太の誘拐事件で捜査を指揮した橋場警部の偽物が登場し、彼を本物だと思わせる叙述トリックが仕掛けられている。物語は、父親に金庫に閉じ込められたショックで声が出なくなった少女の視点から語られるが、偽の橋場警部が途中で身代金の入ったバッグをすり替えるというトリックで誘拐を成立させる。一見簡素に見える短編だが、十分に楽しめる。さすが連城三紀彦感じる作品
 人間動物園や造花の蜜など、連城三紀彦は晩年に誘拐をテーマとした傑作を立て続けに発表している。造花の蜜においては、前半部分の圭太誘拐がもう少しシンプルに描かれていれば、後半の川田誘拐事件の衝撃がより一層強くなるように思える。前半の誘拐部分が詳細すぎたため、後半で伏線の回収が不十分に感じられ、物語全体がやや散漫に感じてしまった。しかし、連城三紀彦が描く「蘭」という女性の魅力や、川田の存在のやるせなさは非常に印象的だ。全体的に見ると★3の評価で。

○ 登場人物

小川香奈子:誘拐された圭太の母。
小川圭太:誘拐された少年。
小塚君江:香奈子が結婚生活を送っていた世田谷の家の隣人。
山路将彦:圭太の父。香奈子とは離婚している。歯科医。
小川汀子:香奈子の義姉。
小川史郎:香奈子の兄で、汀子の夫。
小川篤志:汀子の子ども。圭太より一歳年上。
高橋:圭太の幼稚園の担任。
川田(沼田実):香奈子の父が経営する工場の従業員。下巻で本名が沼田実と分かる。
坂田:製紙業者の営業マン。
山路礼子:圭太の祖母。
山路水絵:山路将彦の再婚相手。
蘭:事件の黒幕。圭太誘拐事件を表の事件とし、裏で川田の誘拐を計画する。
橋場警部:誘拐事件のプロフェッショナルな警部。
○ 短編「最後で最大の事件」の登場人物

小杉真樹:康美の父の再婚相手。
小杉康美:子どもの頃、父に金庫に閉じ込められたショックで声を失った少女。
橋場警部:「造花の蜜」で登場した警部の偽物として蘭の部下が登場。
小杉光輝:真樹の連れ子。
サトミ:お手伝い。

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2015年11月20日

Posted by ブクログ

下巻から主人公が変わる。というか、上巻の主要人物がほとんど出てこない。誘拐事件の本当の目的。真相。どんでん返し。面白かった。
多くの人が言ってるように最後の章は蛇足な気もする。でもこの章の橋場警部はすきかな。

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2015年08月05日

Posted by ブクログ

連城三紀彦さんの本は2作目。

被害者側に見える人が犯人だったり、犯人だと思っていた人が被害者だったり…
ミスリードによる人物像の変化のさせ方がとても巧い。
特に、川田の立ち位置の変わり方はすごいなあと思いました。

スクランブル交差点や雪降る高崎駅の描写なんかも素敵です。
鮮やかなのにくすんでいる
映画のワンシーンのような場面がたくさんある作品でした。

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2015年03月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

視点を変えることで、2つの事件の多重構造が見える仕組みに感心。
実は裏の事件も「本人に気付かせない誘拐」だったとは。

警察の無能っぷり、意味深なチョイ役、かもしれない犯行、など、
読みながら「ん?」と引っかかる点が多々。

伏線の説明も不足気味で、やや消化不良。
交差点の男って結局誰・・・?医者?

最終章は完全に蛇足。

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2013年11月14日

Posted by ブクログ

二重構造の誘拐事件の謎解きがプロローグとなり、引き起こる誘拐事件。蘭による多重構造の誘拐事件の一応の完結。最後は駆け足感が否めず。首謀者の蘭のシリーズものになったら面白そう。

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2011年05月05日

Posted by ブクログ

本筋と関係ないのに思わせぶりな描写が結構あって、それがダラダラした印象を与える。誘拐のしくみ自体はなかなか面白いけど、最終章のどんでん返し?はバカミスに近いのでは?と思ってしまった。
(C)

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2011年04月18日

Posted by ブクログ

上巻の方が盛り上がったかな?という感じ。
二転三転する展開は面白く読んだが、ラストは「う~ん」って感じだった・・・「蘭」は結局何者??ってとこが知りたかった。

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2011年01月24日

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