連城三紀彦のレビュー一覧
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二人の人物の関係性に焦点を当てた作品集で、いずれも騙し絵のように、見た目とは裏腹の真相が判明する。
「能師の妻」
能楽師藤生信雅の死の直前に正妻となった篠と、前妻の子である貢との心理的・肉体的葛藤を描いた物語。技量は秀でているが心が伴わぬ貢がどのようにして「井筒」を見事に舞うことができたのか、貢の遺体の一部だけがなぜ離れた場所に埋められていたのか、といったミステリー要素を持っている。
「野辺の露」
妾を作った夫暁一郎に裏切られた妻杉乃と、杉乃に同情した義弟順吉との道ならぬ恋の顛末を描いた物語。
二人の間にできた不貞の子暁介が暁一郎にいじめられていることを知って順吉が悩み苦しむ、そういう話だと思っていると足をすくわれる。
杉乃の順吉に対する想いを、「あなたの懐に潜んだ一匹の鈴虫の遠い鳴き声」に例えた表現が印象的。
「宵待草夜情」
元画家の古宮と、カフェの女給鈴子の束の間のふれあいを描いた物語。
カフェで鈴子と反目していた照代が殺され、現場の状況から古宮は鈴子が犯人ではと疑いを持つが、鈴子にぜひ見にいってほしいと言われた待宵草の群落を見て、鈴子の秘密、鈴子が何に苦しんでいたのかに気づく。
蛍の蛍光、喀血の血といったアイテムが真相にうまく活かされている、
古宮が友人の白川に対してしたことと、それを再現した鈴子のしたことが印象的。
「花虐の賦」
劇団の主催者で劇作家の絹川幹蔵と女優川路鴇子の二人の、人形師と人形のような関係を描いた物語。
絹川が、自作「貞女小菊」のヒロインとして思い描いていた女性とそっくりな鴇子に出逢う場面が印象的。
二人の関係をもとにした劇「傀儡有情」の祝賀会の夜に自害した絹川、その四十九日に後を追って自害した鴇子、そう思っていると足をすくわれる。
「傀儡有情」で絹川役を演じる片桐の視点でこの作品は語られるが、絹川が自害した理由が謎であり、鴇子が四十九日の日を間違えていたことなどから、見掛けとは裏腹の真相に片桐は気づく。
「未完の盛装」
クラブのママ葉子と、そのヒモのような存在の吉野を中心とした物語で、かなり複雑な構図を持った事件であり、最後まで読むと二段構えの反転構造を持っていることがわかる。
15年前の元夫毒殺をネタにした強請り、警察に届いた時効まであと3日あるとの元刑事からの密告、元夫の死亡日を巡る混乱、死亡日を知っている医師の殺人事件発生等、目まぐるしく話は展開する。
赤松はあることから勘違いに気づき、事件の背後にある真相を推理し、それを確認しようとある人物に接触すると、さらに意外な真相が告白される。犯人が隠そうとしたもの、医師を殺した理由等、すべてが反転する。
15年もの間、犯人が持ち続けていた心情が悲しい。 -
Posted by ブクログ
1.潰された目
一つの強姦事件について、
関係者の供述という形で進行する。
語り手が変わる度、
事件の見え方が様変わりする。
真相は予想を上回るものだった。
2.美しい針
「先生」と称する男が
「患者」の女に施そうとする
「治療」の目的とは。
激しい官能的描写の行き着く先が
全く見えずに惹きこまれた。
これまた驚きの真相。
3.路上の闇
連続タクシー強盗が発生する中、
山岸は1台のタクシーを拾った。
彼のコートの内のシャツは
真っ赤な血に染まっていた。
運転手と山岸の腹の探り合い。
展開が限られてしまう設定だが、
それでも読ませる巧さがあった。
4.ぼくをみつけて
誘拐されているから助けて欲しい、
子供の声で掛かってきた110番。
だが、その子は9年前に誘拐され、
犯人の手で殺害されたはずだった。
設定だけでもう面白い。
倒叙ものといった感じ。
驚きよりも話の出来に感心させられた。
5.夜のもうひとつの顔
不倫相手の平田を殺害した葉子。
遺体を発見した平田の妻・雪絵は、
あろうことか部下の葉子に助けを求めた。
続いても倒叙もの。
しかし、この作者が似た様な話を
二編続けて書く訳がない。感服。
6.孤独な関係
偶然懇意になった部長の妻から、
彼の浮気調査を頼まれた野木冴子。
素人探偵気取りの冴子が掴んだ真相は。
浮気相手は一体誰なんだ、
と読み進めると二転三転
予想外の真相が待ち受けた。
7.顔のない肖像画
日本の画壇を駆け抜けた荻生仙太郎。
彼の作品を独占していたある富豪が、
オークションを開催するという。
偶然知り合った荻生の妻から、
ある作品を競り落とすよう頼まれた旗野。
オークションの真意、
荻生未亡人の真意とは。
表題作も納得の余韻の残る作品。
どうしても薄味になりがちで
短編はあまり好きじゃないんだが、
連城さんは例外。
どの作品も短編とは思えぬ読み応え。
これまた素晴らしい短編集だった。 -
Posted by ブクログ
「私は7人の男女に7回殺される」という書店の紹介に惹かれ、目次を見た時に「誰か」というタイトルが並んでいることに惹かれ即決で買った本。
読み進めて行くうちに登場人物達が巻き起こしていく事件の世界に夢中になれた。
また、タイトルが「誰か」となっているためにすぐに名前は出てこず、これは一体7人のうちの誰なのか考え、読み進め、わかった時の驚きはとても爽快であった。
だが…欲を言うなれば、トリックはわかったものの、全てが終わっていない。これまで完璧に奏でていた奏者がいきなり曲の途中でステージを降りたような虚しい驚愕が残ったまま。私はまさに、どよめきが残る会場に取り残された客の一人となってしまった。
作者にはこの変奏曲の終幕をしっかりとおろして欲しかったと思う。