連城三紀彦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ1988年の作品、「このミス」第一回3位です。
この作家さんは最近『戻り川心中』という短編集を読み、その完成度の高さに感服しました。さらに前に直木賞受賞の『恋文』(どちらかというと恋愛モノ)を読んでます。
今作は現代(20年以上前ですが)の東京~パリ~ベルリンと舞台を移し物語が進みます。旧ナチ残党が絡む国際謀略サスペンスと一言で言えないこともないでしょう。
主人公は出生の謎を持っていて、自分の母親を探す旅がついには出生の謎に辿りつく…というのが大筋です、しかしストーリー自体は荒唐無稽というか、「なんじゃそりゃ?」と、突っ込みたくなる出来栄えでした、個人的にですけど…
それでもそれなりに楽しめたのは、男女の感情の機微についての描写、背景、町並み、部屋の中等々、色彩を読者に感じさせる描写、この二つが非常に優れていて読者を魅了するのだと思われます。(解説に書いてある通りに納得です)
既読のモノもそうですが、世界は男と女でできている!的な恋愛感情の交錯がストーリーに絡んできます、エロい描写はないのですが行間にそれを感じさせる書き方が個人的に好むところですし、その風景に色彩が鮮やかに入り込んできます。小説は言うまでもなく文字を読んで、読者が脳内でその世界を構築していくわけですが、その世界に色をつけていく作業がこうもたやすく可能せしむる、のはやはり作家の力量なのでしょう。
旧ナチ残党絡みの小説といえばフレデリック・フォーサイスの『オデッサ・ファイル』が世界的に有名でかなり昔に読みました。主人公が真相に近づくプロセスのドキドキ感、結末の反転と読みごたえ充分でした。