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東京の夜空に珍しく一羽の鶴が舞った夜、一人の落語家・伊呂八亭破鶴が殺された。舞台となった密室にいたのはいずれも破鶴に恨みを抱く関係者ばかり。捜査で続々と発覚する新事実。そして、衝撃の真相は――。伝説的探偵小説雑誌・幻影城の第3回新人賞を受賞した初期の傑作「変調二人羽織」を含む、読者を唸らせる連城ミステリー傑作5編を収録した永久保存版。
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Posted by ブクログ
初期の本格ミステリを5編収録した短編集。 どの作品も論理と叙情を両立させたクオリティの高い短編です。 物語の着地点を予想させない、読み手の意表をつくテクニックが群を抜いていて、犯人当てを楽しむよりもただただ作者の描く豊饒な物語を堪能するばかりでした。 心に残ったのは表題作「変調二人羽織」と「六...続きを読む花の印」の2作。 まずは「変調二人羽織」。 東京の夜空に珍しく一羽の鶴が舞った夜、一人の落語家・伊呂八亭破鶴が殺された。 舞台となった密室にいたのはいずれも破鶴に恨みを抱く関係者ばかり。捜査で続々と発覚する新事実。そして、衝撃の真相は―。 出だしから絵画を観るような、格調高い文学的な香りのする文章に引き込まれます。 何気ない描写にも全てに必然性があり、魅力的な謎と人間ドラマが有機的に結びついているのが素晴らしい。 「六花の印」。 明治時代と現代を交互に描いた物語。 夫に呼び戻される名家の妻を駅に出迎えた人力車の車夫と、アメリカから帰国した男を出迎えたお抱え運転手。 車夫と運転手は、彼女と彼が拳銃を隠し持っていることに気づき…。 過去と現在を行き来する流れに最初は戸惑いますが、行き来するたびに次第に増幅される緊張感がスリル満点。 最後には二つの話が合流するのだろうと予想はつきますが、やはり予想の上をいく鮮やかな真相に感服。 夫人が一瞬見せた緋色の布に包まれた拳銃や雪の中をポツポツと舞う提灯行列の光など、幻想的なまでに美しい情景が印象的でした。 巧みなトリックに騙されながらめくるめく美文を味わえるという、なんとも贅沢な時間を過ごすことができました。
1.変調二人羽織 最後の独演会の高座で死んだ、 落ちぶれた落語家。 自殺か、他殺か。 他殺なら、犯人は 不可能な犯罪を犯した事になる。 著者の魅力溢れるの美しい文体。 探偵役の刑事の視点で描かれる部分は ユーモラスで雰囲気のある作品との 融合が面白い。 だが、ミステリとしての満足度は 高くなかった。...続きを読む 2.ある東京の扉 浮浪者のような薄汚い男が、 ミステリ雑誌の編集部へ アイデアを持ち込む。 このプロットが面白ければ 即金で買ってくれと。 男の語る物語は どんな結末を迎えるのか。 本格ミステリ風なやりとりを つまらなく感じていたが、 この物語の本質はそこではなかった。 やられた。素晴らしい一作。 3.六花の印 明治。俥夫の弥吉は駅で奥様を迎え、 雪の夜を車を引いて走った。 現代、大手企業の令嬢夫婦に 雇われる沼田は、 空港へ主人を迎えに行った。 違う時代を生きる2人の男は、 共に良家に使える運転手。 車に乗せた主人が自らの命を絶とうと 考えているらしい点も共通していた。 この、時を超えた2つの物語が どうリンクするのか、 読ませる物語だった。 そして、その真相はまた見事。 4.メビウスの環 「ねえ、きのうの晩、あなた、 わたしを殺そうとしなかった?」。 夫に絞め殺されかけたと訴える妻と、 身に覚えのない夫。 狭い部屋の中で繰り返される殺人未遂。 一体何が起こっているのか。 面白い設定で、不思議なラスト。 余韻が残る作品。 5.依子の日記 戦後、長野の田舎で 隠遁生活を始めた作家とその妻。 静かな生活の中に突如闖入して来た 編集者を名乗る女。 作家の妻が書き綴る日記の形で 物語は語られ、 妻はその女を殺害すると書いていた。 刺激的な始まり方をして、 すぐに没頭した。 何故女は殺される事になったのか、 物語はどんな結末を迎えるのか。 もちろん驚かされた。 全5編の短編集。 どれも連城三紀彦らしい情景豊かな物語。 美しい文体と、予測できないラストが 全てに用意されている。 連城さんマジパねぇ。
連城マジック炸裂。ミステリ色全開です。どれも本当に素晴らしかった。 変調二人羽織 ある東京の扉 六花の印 メビウスの環 依子の日記 表題作は甘美な文章が癖になります。捻りまくった展開に翻弄されます。 ある東京の扉は変則的な一編。ユーモアが効いてます。 お気に入りは六花の印。これ超連城。力業決...続きを読むまってます。 メビウスの環は「美女」に収録されてそうな、連城得意の男女と芝居。 依子の日記もやられました。気持ち良く騙されました。 初期からこんなどえらい作品がゴロゴロしてるとは…天才だ
極上の短編5作品。 一番好きなのは「六花の印」 明治と現代の物語を交互に紡ぎ、最後に明らかとなる真相は目が覚めるほどの。それに至る伏線も細かい。 男と女の肉体の交わりにもこの様なものがあるのかと新たな思考に気付かされる。すげえ!
「変調二人羽織」 これが新人賞受賞作ってマ?すでに連城節完成しとる 鶴は連れて来ちゃだめだよ・・・ 「ある東京の扉」 密室の東京って他の作品で出てきたね 「六花の印」 花葬シリーズのはしり 「メビウスの環」 これはちょっと苦手なタイプの連城節 「依子の日記」 竣太郎怖すぎ
現代風のも面白い。 個人的な好みとして、あらゆる可能性を考慮して結論を導くタイプのミステリのほうが好きだと再認識。 悪くはないのだけれども。
今まで読んだ連城三紀彦作品の中でも一番好みの話が揃ってたかも。依子の日記はじわじわきますね。各々の思惑や感情が同じ方向ではなく、そういった要素がさらに異常さを引き立てたと言うか。何作か読んでるのでこれでは終わらないだろうと思いながら読むのだけど、結局、さらに斜め上の結末で驚かされる。そうしたお話の構...続きを読む成も素晴らしいのだけど、連城作品はどれも文が濡れている。情感溢れる文学作品としても推したい。
変調二人羽織 ある東京の扉 六花の印 メビウスの環 依子の日記 依子の日記 が心に残りました。
「変調二人羽織」と「依子の日記」がよかった。 つまらぬ男のエゴに翻弄される「依子」が崩壊していく様がなんとも悲哀的。どんでん返しの嵐のため、終着点が読めないのが面白い。
「変調二人羽織」は、二十代の頃に読んだはずなのだが、幸いにも殆ど内容を覚えていなかったため、改めて新鮮な気持ちで楽しめました。 それにしても、トリックの意外性と無数にある丁寧な伏線は、毎度毎度、素晴らしいと思ってしまう。表題作にしても、本当に巧妙に入っているので、これは見逃してしまう。円葉のしくじ...続きを読むりとか、百人一首とか、なんか緩いんだよね、とか。今読んでも、全く色褪せない推理小説だと思いますし、連城さんの場合、文体や情感の濃さもあるので、それがまた独特の哀愁を醸し出していて好きです。オープニングの鶴の描写なんか、秋に読むと本当に泣くかもしれない。 ただ、「ある東京の扉」は、いかにもな昭和の陰の匂いをプンプンさせている胡散臭さがあるけれど、実は、これが一番好きかもしれない。ツッコまれる度に、こじつけに近いような訂正で提供されるストーリーに、阿呆らしく思いながらも、実は天才なのかもと思ってきて、楽しくなってきた自分を発見しました。結末も良いです。 そして、好きとは別に、最も印象に残ったのが、「依子の日記」。トリックは今の時代だとオーソドックスなのかもしれないが、それを知る前と知った後とで、また異なる女性の哀しさとやるせなさを実感させられる作りが素晴らしいのと、愛の形って、人それぞれに異なるものなんだろうけど、「竣太郎」の場合はどうなんだろう。それは違うと言いたいけれど、そうかもと思ってしまう、連城さんの物語の説得力のようなものは感じました。ただ、彼を男として見るとどうかと問われると、私の価値観だと違うと思う。でも、彼のそうした愛(あるいは狂気)を理解する人もいるし、愛に正しいとか、正しくないとか無いのかもしれないけれど・・個人的にはトリックよりも、そうしたことを悶々と考え出してしまい止まらない。果たして怖いのは、愛なのか、人間なのか?
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