連城三紀彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
期待していた連城三紀彦さんらしさを味わい、そして今までの連城三紀彦さんのイメージを覆される……。まったく正反対の感覚を味わった一冊でした。
収録作品は6編。個人的に連城作品のイメージと言えば、美しい叙情的な文章。レトロなロマン漂う作品の時代設定。恋情と哀感の交差するストーリー。そしてミステリの切れ味となってくるけれど、前半の3編がまさにそのイメージ通りの作品。
それもそのはずで、最初に収録されている「花緋文字」、表題作の「夕荻心中」、そして「菊の塵」は、同著者の名作『戻り川心中』の系譜を継いでいます。
「戻り川心中」収録の5編とこの「夕荻心中」の3編は、一冊に納められていた版もあるらしく -
匿名
購入済み美しくも破滅的な短編集。
表題に「心中」とあるように、テーマは一貫して男女の恋愛を絡めたミステリ。
どの作品も、大正から昭和初期の雰囲気を内包した美文で綴られている。
おすすめは『桔梗の宿』 -
Posted by ブクログ
ネタバレまず最初の印象は、太陽が照りつけるメラメラとした密林やじめっとした日本の夏と、それとは裏腹に現場の部屋の中の冷たさと不気味さでした。温度がすごく伝わって来る感じ?
最後まで犯人が誰だか分からない、ミステリーだと感じながら読んでいたのが、大どんでん返しいつ来るのか、物語が終盤から畳み掛けるように進んでいく模様が面白い。
解説の通り、物語の語り手がコロコロと変わることで真実?事実を見つけていく進み方だが、一人称で告白をしている故、誰一人として嘘をついていないのに読み手からすると大どんでん返しが起きているという不思議な感覚を覚えた。
もう一度読めばまた物語の感じ方が変わるのだろうと思えるので少し時間 -
Posted by ブクログ
ひとつの精神病院を中心に四つの狂気が絡み合う、連城三紀彦のデビュー長編。パズルのように緻密で複雑な構成。
連城三紀彦の短編集はいくつか読んだことがあるが、長編は初めて。バラバラで複雑に入り組んだ群像が見事に収束していくんだろうな、と思っていたら、爽快なカタルシスとまではいかず、何とかつなげました、という感じの印象を受けた。これは2読3読してこそ、パズル的な思考を楽しめるようになるのかも。誰が狂っていて、何が本当にあったことなのか、わけがわからなくなるあたり、読者を翻弄するという意味では成功しているのでは。美しい風景描写と叙情的な男女の心情が描けているのは変わらず素晴らしい。作者の凄みは感じる -
Posted by ブクログ
連城三紀彦の短篇ミステリ作品集『小さな異邦人』を読みました。
『女王〈上〉〈下〉』、『連城三紀彦レジェンド傑作ミステリー集』、『流れ星と遊んだころ』に続き、連城三紀彦の作品です。
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誘拐、交換殺人、タイムリミット・サスペンス、そして妖しき恋愛。
著者のエッセンスが満載された最後の短篇集 高校二年生から三歳児まで、八人の子供と母親からなる家族の元へかかってきた一本の脅迫電話。
「子供の命は俺が預かっている。三千万円を用意しろ」。 だが、家の中には子供全員が揃っていた。
果たして誘拐された子供とは誰なのか?
連城ミステリーのエッセンスが満載さ -
Posted by ブクログ
ネタバレ誰が犯人なんだと振り回されて振り回されて、最後にゾッとさせられた。この罪深い家族の秘密は白昼夢のように惑わせてくる。
家族みんなから忌み嫌われる存在の直子が不憫だ。誰もが少しずつ罪を背負っていて、最初に殺意を持ったのが故人である昭世で、トドメを刺したのがまだ子どもである佳代というのがまた何とも言えない後味。
語り手がどんどん代わっていくのが面白かった。それぞれの真実をそれぞれに信じていて、複雑に絡まって歪な様相を呈している。
直子の最後の言葉は事実なのか、それとも桂造の幻聴なのか、もはや誰にも分からない。これも昭世の、呪いにも似た言葉の結果だろうか。 -
Posted by ブクログ
ミステリと恋愛小説が融合した7編からなる短編集。
連城三紀彦3作目。
私の部屋の本棚には連城三紀彦作品で占有された一角がある。そう、私は連城三紀彦を崇拝する者の1人である。
初読【夜よ鼠たちのために】で、美しき文体で描かれた短編叙述ミステリを体験し面食らった。余韻冷めぬうちに長編ミステリ【白光】を連読、美しき文体と構成力はそのままに、人間の闇の底が淡々と綴られ、最後の真実にたどり着いた時は完膚なきまでの衝撃を食らった。そして確信した。この人は天才だと。
以降、今は亡き連城三紀彦を敬愛し彼の作品をコレクションのように集めている。
約8か月ぶりの連城三紀彦作品。
感想から述べると前読の2作