連城三紀彦のレビュー一覧

  • 黄昏のベルリン

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    ネタバレ

    冒険小説、国際謀略小説の名作との誉が高いがいかがだろうか。

    流石に30年以上前の作品なので、ベルリンの壁も健在で古さは拭えないが、昨今の世界的な右傾化を見ていると全くリアリティがないわけではない。

    ロシアのウクライナ侵攻でも、ロシアがウクライナをネオナチ呼ばわりしている事(とんでもない錯誤と言うか言いがかりだと思うが)をとっても、ヨーロッパの人々にとっては今もリアリティがあるのだろう。

    典型的な巻き込まれ方のストーリーで話は進むが、お話そのものは派手なアクションがあるわけでもなく淡々と進んでいく。大風呂敷を広げた割にはエンディングは尻すぼみの感がある。

    大風呂敷を広げたついでに行くとこ

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    2022年03月14日
  • 白光

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    二十年前の作品。
    今や、血の繋がった我が子を餓死させたり、赤ん坊を骨折するほどの力で殴ったり、なんて報道されるだけでもゴロゴロ転がっており、この本の結末を受け入れるのに覚悟なんていらないのではないだろうか。
    なんとお行儀のよい人たちだろう。薄く色の付いたセロファンを何枚も重ねて闇を深めるようなこの物語は、もはやメルヘン。現世はヘドロにまみれている。

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    2022年02月10日
  • 白光

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    場面だけでなく登場人物の心情や行動にまで、真夏のジリジリとした暑さとジメっとした湿気をまとっている。愛されていないとは思いたくないが、たしかに「救い」なんてひとかけらもない。

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    2022年01月12日
  • 白光

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    ある家で幼い姪が殺害され庭に埋められる。その事件を機に両家の家族等が次々に自分の心情と認識を告白していくことで、二転三転しながらも事件の真相が明らかになっていく作品。

    1つの真実に対して、誤解や認識不足により登場人物それぞれの事実が存在するため、読者としては情報の上書き、追加を繰り返さなければならない読みごたえある作品だった。

    また、姪の殺害には到底無関係と思われる人物まで何らかの闇を抱えており、嫌気が差すくらい人間の闇を見せられる作品でもあった。
    帯に書かれているとおり、本当に、この物語に「救い」なんてひとかけらもなかった。

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    2022年01月10日
  • 暗色コメディ

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    初めましての作家さん。
    主婦に画家に葬儀屋に外科医。
    4人のエピソードが同時に進行する。
    しかも病んでるから、物の見方とか状況説明とかが普通じゃない。
    中盤くらいまでは、この4人の妄想というか幻覚で
    これってミステリじゃなかったっけ?と思い始めたころに
    精神科を舞台にした4人の患者の妄想と行動が
    整理されてミステリっぽくなった。
    後半に入って、いきなり駆け足状態で
    最後には、そういうことだったのかぁ~って思うんだけど
    イマイチ爽快感に欠ける。

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    2022年01月03日
  • 恋文・私の叔父さん

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    大事な人を思いやって尊重するために自分の本心と折り合いをつけてカッコつける人たちが出てくる短編集。令和の今となってはそのカッコつける感じはキザで古くさくてカッコ悪い気もするけど、そのカッコ悪くて不器用な感じが一周回ってカッコよくも思える。

    自分はどちらかと言うと大事な人にこそ自分の本心をぶつけて、それに対する反応を踏まえて落とし所を探ったりどっちかに判断したりする。自分が楽しくないと人を楽しくさせることはできない みたいな思考回路だ。そして大事な人にもそんなように遠慮なく振る舞ってほしいと日頃から思ってる。でもふと冷静に自省としては、相手がどうしたいかを考えることはそんなにないし深くもない。

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    2021年12月16日
  • 戻り川心中

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    美しい文章に引き込まれ、推理することも忘れ淡々と読んでしまいました。

    ちゃんとストーリーはミステリーなのですが、ミステリーを読んでいないかのような感覚に陥りました。(自分でも何を言ってるのかよくわかりません笑)

    恋と花をモチーフにした短編が5つ収録されていますが、どれも本当に面白い!
    トリックよりも動機に重きを置いているのが好みです。

    なかでも「桔梗の宿」が好きです。

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    2021年12月07日
  • 戻り川心中

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    以前読んだ『夜よ鼠たちのために』という短編があまりにも素晴らしく、是非他の作品も読んでみたいと思っていた。
    大正から昭和にかけて、まだ女性がモノのように売られたり買われたり、それが当たり前だった時代のお話。
    モノのような扱いを受けたって、人間なのだから感情はある。体が女になれば、まだ子どもといえる年齢でも、気持ちも女になっていく。
    今のように、男性も女性も同等の権利を持つ(または持つことが当たり前とする)社会しか知らない人から見たら、こんな世界はきっとおぞましいおとぎ話みたいに思えるのかもしれない。

    花にまつわる・・・という話ではない、でも物語の中で情景の一部である花たちは、そのどれもが哀し

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    2021年11月08日
  • 変調二人羽織

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    ネタバレ

    どんでん返しに先が読めない。
    結末が分かった後、種類の違う感情がじわじわと忍び寄ってきて読み返したくなる。男女の愛憎が絡むと、尚のこと一筋縄ではいかない。『メビウスの輪』と『依子の日記』はその心情を読む物語としても楽しめた。
    美しい言葉選びにハッとしたのは『立花の印』。明治の時代にぴったり合う文体で、思わず遡って繰り返し読みたくなるような情緒があった。

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    2021年10月31日
  • 白光

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    一癖も二癖もある登場人物たちの独白によって事件の真相が明かされていく、といった趣のミステリーで、さほど目新しさはないのですが、事件の真相(らしきもの)に至る展開を演出する方法としては結構ハマっており、悪くはないと思いました。
    なのですが、彼ら一人一人のとる行動が何だか昭和の2時間サスペンスドラマみたいで、冷静に考えるとかなり無理があるような気が。20年前の作品なのである程度割り引いて考えないといけないのかもしれませんが、子供が殺されたのに皆平然としているとか、妻の不貞を義姉に事細かに打ち明けるとか、文学賞の選考対象になったら間違いなく「人間が描けていない」と言われちゃいそうなくらいに作り物感が

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    2021年09月15日
  • 小さな異邦人

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    連城先生の著作を読むのは今回が三度目で、二度目の「夜よ鼠たちのために」を読んだ時にも「9作中9作全部不貞行為があって辟易した(それはそれとして面白かった)」といった感想を書いたのですが、こちらの短編集も8作中6作の登場人物が不貞行為を働いていて、どれを読んでもまず「どーせ浮気しとるんやろが!」とか思ってしましました。おかげで表題作に出てくるお母さんにあらぬ疑いをかけてしまって申し訳ない気持ちになりました。ごめんなさい。
    私は特に男女間の痴情のもつれや、いけないとわかっていても愛さずには憎まずにはいられないといった心の機微に対するアンテナがビンビンというわけではないので、「無人駅」「冬薔薇」「風

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    2021年08月27日
  • 変調二人羽織

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    「変調二人羽織」は、二十代の頃に読んだはずなのだが、幸いにも殆ど内容を覚えていなかったため、改めて新鮮な気持ちで楽しめました。

    それにしても、トリックの意外性と無数にある丁寧な伏線は、毎度毎度、素晴らしいと思ってしまう。表題作にしても、本当に巧妙に入っているので、これは見逃してしまう。円葉のしくじりとか、百人一首とか、なんか緩いんだよね、とか。今読んでも、全く色褪せない推理小説だと思いますし、連城さんの場合、文体や情感の濃さもあるので、それがまた独特の哀愁を醸し出していて好きです。オープニングの鶴の描写なんか、秋に読むと本当に泣くかもしれない。

    ただ、「ある東京の扉」は、いかにもな昭和の陰

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    2021年07月04日
  • 暗色コメディ

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    ネタバレ

    葬儀屋の夫があっさりと自殺したり、犯人の予想以上に物事が上手く運んだり、荒削りな部分はあるが、全体としては物凄くハマった。

    高橋の姪っ子の預言?は凄い。
    彼をもっと掘り下げて欲しかった(特に幼少の頃)。
    碧川は逆に要らない。

    高橋と波島は旧知の関係でも良かったかな
    ※物語に複雑性、交錯性が増したかも

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    2021年05月25日
  • 夕萩心中

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    表題作を含む<花葬>シリーズの三篇に連作短編<陽だまり課事件簿>を併録した復刻版。同じシリーズとはいえ「戻り川心中」に収録された五篇とは少々毛色が異なる印象。この三篇が収録されなかった理由もその辺りにありそうだ。私怨の政治的利用という表題作の傾向は長編作の「敗北への凱旋」に受け継がれているが、歴史や国家といった大義的な飛躍をすると、個人の人間ドラマが置き去りになってしまうので、私はあまり好きになれない。物語のスケール感が小さかろうが、連城氏の艶やかでしっとりした文体は【個の情念】にこそ適している気がする。

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    2021年05月23日
  • 暗色コメディ

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    ネタバレ

    ひとつひとつのエピソードは面白いのだが、全貌がわかるようなわからないような、4つの繋がりもわかるのだけれど、仕掛けが不可能すぎたり、偶発しすぎたりする気がした。

    何かが少しずれていき、狂っていく。それが関わる人全員に伝播しているようで、ホラーのような怖さもあった。

    なかなか人には薦めにくい。

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    2021年05月14日
  • 暗色コメディ

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    伊坂幸太郎氏の熱望により復刊。ということで、ワクワクしながら早速読んでみた。
    うーん、難解。
    気をたしかに持ち、集中しないことには理解できないかも。
    それなりになるほど! と思える部分もあり面白く、続きが気になって最後まで一気に読んでしまったけれど。
    これは、伏線回収のプロである伊坂幸太郎氏だからこそ、頭の中で複雑なストーリーがパズルのように収まって楽しめるということなのでは…。
    もう一回読んでみるかな。

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    2021年05月08日
  • 敗北への凱旋

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    終戦直後に殺害された隻腕のピアニストが遺した楽譜。時を経て、そこに秘められた暗号が解き明かされる時、驚愕の真相が浮かび上がる―。著者の長編作品を読むのはこれが初めて。楽譜アレルギーの私は暗号の解読を早々に諦め、筋読みに集中。音楽家の悲運な生涯を辿ると思いきや、第四章から一気に色合いが変わり、男女の三角関係を巡る真実が明かされていく。初期作とあってか、物語のスケール感と愛憎劇の狭小さがミスマッチな印象を受けるが、犯行動機への飛躍の仕方が実に独創的。戦争の悲惨さを訴える著者の痛烈なメッセージが込められた作品。

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    2021年04月04日
  • 変調二人羽織

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    『誤って薄墨でも滴り落ちたかのようにゆっくり夜へ滲み始めた空を、その鶴は、寒風に揺れる一片の雪にも似て、白く、柔らかく、然しあくまで潔癖なひと筋の直線をひきながら、軈て何処へともなく飛び去ったのだと言う』

    ミステリ史に残る書き出しといえば、ウィリアム・アイリッシュ『幻の女』。あの洒落た雰囲気とリズムも忘れ難いですが、連城三紀彦の『変調二人羽織』の書き出しも初読時に、その美しさにボーっとなりました。作中の時間が大晦日の話で、おりしも作品と同じ時期に、寒い部屋で読んだのも良かったのかもしれない。

    収録作品は5編。先に書いたように表題作の「変調二人羽織」は、冒頭の美しい書き出しからつかまれました

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    2020年12月31日
  • 戻り川心中

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    知人に強く薦められて読みました。
    良くできてるな~とは思いましたが、そこまでです。
    短編集ですが、表題となっている最後の作品があまり受け入れられませんでした。

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    2020年12月29日
  • 白光

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    ある一人の少女の死をきっかけにごく普通の家族がみるみる崩壊していく。
    関係者全員の独白により事件前後の詳細が明らかになるが各々の誤解や勘違い、妄想等により二転三転する真相にはお見事としか言いようがない。
    不愉快極まりない展開なのに淡々とした語り口によってさらっと読めてしまう。

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    2020年12月20日