連城三紀彦のレビュー一覧

  • 戻り川心中

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    匂い立つ流麗な文章。その時代に生きていなくても、空気感が伝わってくる。連城三紀彦の文章はすごいなあと思う。どの作品にしっとりとした翳をまとった女たちが現れる。本のタイトルとなった戻り川心中の真相は恐ろしい企み、の一言としか。

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    2022年07月18日
  • 恋文・私の叔父さん

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    ネタバレ

    知り合いにおすすめされて読みました。『恋文』は感情の表現が素晴らしい。特に好きなシーンは、鉄幹作の小説のことを江津子と話合っているときの描写です。
    「郷子の胸が冷たい一滴を覚えた時である。」
    「今まで胸の奥に隠していた感情が一挙に爆発し、流れ出した気がしたのだった。」
    ラストで離婚届をラブレターと表現するシーンも好きでした。全然共感はできないけど、何故か泣けます。

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    2022年06月05日
  • 白光

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    まさかの展開
    家族やその繋がりのある人、全ての人が一人の少女に関わっていたなんて、、、
    ミステリー好きに読んで欲しい!
    特に人間の裏の顔(人の醜さ)がすごいおもしろい

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    2022年04月20日
  • 恋文・私の叔父さん

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    愛というのはその対象を選ばす、何に対しても惜しみなく注がれるものだと思っている。飼っている猫や育てている植物、勿論本にだって。
    でも恋は違う。
    一般的には、両親や兄弟、子どもに対して抱く感情ではない。そして大抵は一対一のものであり、自分と同じ気持ちでいることを相手に求めてしまうし、始まりがあり終わりがあるものなんじゃないかと思う。

    『恋文』に出てくる郷子と将一は夫婦であり、優という小学生の子供がいる。将一は郷子より一つ歳下で教員をしているが、ある時突然「昔の恋人が不治の病にかかり残り少ない命なので、せめて残された時間を共に過ごしてあげたい」と家を出て行ってしまう。
    恋人の名は江津子といい、漢

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    2022年03月26日
  • 恋文・私の叔父さん

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    <感想>
    初・連城作品。
    評判の良かった短編集から読んでみた。
    もともとはミステリー作家だったとのこと。本短編集はヒューマンドラマがテーマのようだが、ミステリー的などんでん返しもあり、作家の力量の高さを感じる。
    ミステリー要素と「切なさ」を絡めるのが本当に上手い。
    ただ、女性の描き方が昭和感を感じさせる。令和の感覚だとヤバいおじさんの恋愛小説と感じる人もいるかもしれんない。

    ●恋文
    別れた女の最後を見取りたいと言い残して消えた夫。妻が最後に送ったものは…。

    ●赤き唇
    死んだ妻の母と暮らす主人公。新し恋人ができるが義母の辛辣な態度で距離ができてしまう。死んだ娘のことは忘れて早く新しい相手を見

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    2022年03月27日
  • 白光

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    少女が殺される。その母親、父親、母の姉、その夫、祖父、他界した祖母、母親の不倫相手。その家庭に関係する人々の心の中に潜んでいる闇が暴かれながら事件の真実が少しずつ明らかになる。作者の小説によく描かれるドロドロの人間関係は、文庫本のカバーにあるように救いのかけらもなかった。読後感が悪いかと言えば、そうは言い切れない気持ちになるところが恐ろしい。

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    2022年02月27日
  • 白光

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    『すぐに門灯がともり、その灯におびえるように周囲の暮色は黒く陰り、花が光って見えるのが、蒸し暑さのために脂汗をしたたらせているかのようでした。』


    この家には戦地経験のある桂造、その息子の立介と妻の聡子、娘の佳代の4人が暮らしている。
    聡子には幸子という妹がいて、その幸子にも直子という4歳になる娘がいるのだが、最近カルチャーセンターに通い始めたという理由から頻繁に直子を預けに来る。聡子はそれをとても迷惑だと感じている。なぜなのかは、複雑な彼女なりの事情があるのだが、上手く断り切れずにまた直子を預かることになってしまった。その日佳代と歯医者に行っている間に、直子が行方不明になってしまった。やが

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    2022年01月28日
  • 暗色コメディ

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    解説で有栖川有栖氏が書かれているように「爽快なカタルシスではない」というところが連城三紀彦作品の特徴で魅力なのかも

    萎びた朝顔を「老人の小指のように」と形容するなど、多彩な比喩表現が素晴らしい

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    2022年01月09日
  • 暗色コメディ

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    自分が自分ではない、あるいは身近な人物が他人にすり替わっている、という考えに憑りつかれた4人がとある精神病院に集合し、程なくして失踪と殺人事件が起きるという、ひとつ間違えばバカミスと呼ばれかねない突飛な設定で、どこに連れて行かれるか分からない展開に読み始めは不安を覚えたのですが、読み終えてみたら全て納得しました。なるほど、伊坂さんが本作を好きというのはすごくよく分かります。
    リアリティ云々で言ってしまうと正直無理があるとは思いますし、真犯人が誰かという点もミステリーを読み慣れている読者であれば恐らく薄々予想はつくので、そのあたりの驚きはそれほどでもないです。また本作で描かれている個人のアイデン

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    2021年10月30日
  • わずか一しずくの血

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    連続猟奇殺人
    日本各地で次々見つかる人間の部位
    一部は犯人からの自白
    いろんな人の視点が入れ代わりで展開される物語で
    いろんなことが起こるのだけどなかなか犯人に
    行きつかずもどかしくも感じましたが
    読み終えてほっとしました

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    2021年10月09日
  • 白光

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    ネタバレ

    いやダークプレイスくらい色々起きるやんとか思ったけど最後の顛末にはグッと掴まれた。色々ありすぎてえええ?ってなったけど、面白かった。女と男と、それらが寄り集まって家族と親類と出来上がっていく中で、その基盤が腐っているという。男女のどろどろが極大化した上で、一つの家族にぎゅっと集約されてるっていう、一番近い肌寒さがあった。幸子好きじゃないなぁ。

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    2021年09月12日
  • 白光

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    自分勝手で一方的な考えから、延々とすれ違いを繰り返すもどかしさ。
    一人の女の子の死をめぐり、全員が「私が殺したのかも。」と、罪悪感と後悔を滲ませるのに、口から出るのは言い訳ばかり…
    一人称で決して交わることがない。どこかで誰かがきちんと向き合っていれば生まれなかった悲劇。人間関係の難しさと怖さを思い知らされた。
    驚愕の展開ととそのための伏線が至るところに張られているが、あまりの救いのなさに爽快感はなく、ある程度の覚悟を持って手に取る必要がある。

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    2021年08月13日
  • 私という名の変奏曲

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    「レイ子を殺したのは自分だ」と信じる7人の男女。
    謎は大きいが、トリック自体は意外と単純。

    だが、7人それぞれの視点から自分が殺した理由などを語っていくという中弛みしそうな構成ながら、ここまで読者を惹きつける文章力はさすが。
    連城さんの文章の美しさの欠片がようやく理解できたかもしれない。

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    2021年08月10日
  • 暗色コメディ

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    ネタバレ

    緻密に練られた構成が、ページをどんどん捲らせる。
    精神を病んだ人が見る世界観を要素にしたことが、ある面「なんでもあり」感にもなるのが少し残念。

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    2021年07月19日
  • 暗色コメディ

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    混乱するぐらいに謎だらけの奇妙な事件が立て続けに起こり、連鎖し、繋がり出す。
    全ての元凶はとある精神病院。
    これどうなるの?
    本当に解決するの?
    と最後の最後まで目が離せない展開。
    嫌でも夢中になってしまうミステリー。

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    2021年06月30日
  • 暗色コメディ

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    もう一人の自分を見た主婦、自分を轢いたはずのダンプが突然消失した画家、自分はすでに死んでいると妻に告げられた葬儀屋、妻がいつの間にか別人にすり替わってしまった外科医。四人の妄想が複雑に絡み合い崩壊していく現実感。これはミステリとして成立するのだろうか?といかこれミステリ?と思い不安を抱いて読み進めていくと最後の最後で物語は本格ミステリとして解決される。何か清涼院流水を読んでいたはずなのに気づいたら森村誠一だったみたいな狐に化かされた感がある。結末はやや雑に感じられる部分があるけれど、この驚天動地なアイデアは素晴らしい。

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    2021年05月21日
  • 暗色コメディ

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    ネタバレ

    ――

     成立しているのが、狂気。

     あるいはタイトルのとおり喜劇的になっていくのかと思って読みはじめて、ホラーサスペンスなんだなと納得しながら終盤に差し掛かったら、まさかの本格ミステリなのか? と思い直して、読み終えてみればつまりタイトルどおりだったんだな、とぞっとするこれは連城ミステリ。

     さて。
     生きていれば自然と、いろいろな掛け違いや勘違いを無意識に修正しながら暮らしているわけですが。
     何かの拍子に、その勘違いから離れられなくなったら。
     掛け違いを、正しい姿だと思い込んでしまったら。
     そんなくだらない、と鼻で笑うところが、どんどん笑えなくなっていく。
     気付いて助けの手を伸

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    2021年05月19日
  • 顔のない肖像画

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    わりとありきたりな設定で、なんとなくオチが分かるな~と思いながらも
    美しい表現に酔いしれながらサクサクと読んでいたら、
    表題作にやられた………。
    もうこの小話が読めたからOKですというくらい。
    余韻もいいんだよなあ。

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    2021年05月11日
  • 女王(下)

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    美しい表現、奇怪な謎、回想シーンが散りばめられた構成。
    そのどれもから発せられる雰囲気が非常にに幻想的であるだけに、身が震えるような真実が明かされ、その幻想が崩されたときの残酷さは言葉にならない。

    ただ、本書では少しその美しい表現が冗長に感じられる部分があり、そこがもったいなかった。

    そして、本書はミステリーとしてもとても面白い。
    春夫と卑弥呼との"関係"、そして祇介が史郎にしたことの恐るべき動機。
    魏志倭人伝に関する謎解きもとても面白かった。

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    2021年05月04日
  • 夕萩心中

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    ネタバレ

    『戻り川心中』に続く花葬シリーズ三作。明治大正の情緒ある背景に女の気迫や美しさがよく映え、息を潜めて眺めていたくなる。特に表題作は哀切に満ち、儚く花びらを散らすように生きた女の愛と執念を感じた。最期のとき、夕はどんな気持ちだったのだろうと思いを馳せる。
    後半に収録のユーモアミステリ連作はガラッと作風が違い驚くのだが、陽だまり課の連中のキャラクターが良く微笑ましく読んだ。

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    2021年05月02日