連城三紀彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
連城三紀彦の長篇ミステリ作『女王〈上〉〈下〉』を読みました。
久し振りにミステリを読みたくなったんですよね… 連城三紀彦の作品はアンソロジー作品『鉄ミス倶楽部 東海道新幹線50』に収録されていた『消えた新幹線』以来なので、約1年振りですね。
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時空を超える、連城ミステリーの傑作。
南朝の天皇に仕えた男。
炎の瞳をもつ古代の女王。
謎がちりばめられたノート。
すべてをつなぐ、唯一の答とは。
〈上〉
戦後生まれの荻葉史郎の中にある東京大空襲の記憶。
だが彼を診察した精神科医・瓜木は思い出す、空襲の最中にこの男と会っていたことを。
一方、史郎の祖父・祇介は、大晦日の夜にかかってきた一本の電話を受け、急遽旅に出た後、遺体となって発見された。
邪馬台国研究に生涯を捧げた古代史研究家であった祇介が、吉野へ向かい若狭で死んだのはなぜなのか。
瓜木は史郎と彼の妻・加奈子とともに奇妙な記憶と不審な死の真相を探る旅に出た。
〈下〉
代史研究家であった妻、加奈子から、父の日記を手渡された荻葉史郎。
父の春生は「自分はまちがいなく南北朝の末期にも生きていた」と記し、また、燃えさかる炎のような瞳をもつ女王、卑弥呼のもとにいたことをも詳細に記録していた。
壮大な歴史の渦に呑み込まれた父と息子の軌跡を描く、連城ミステリーの精華。
巻末に連城三紀彦「最後のインタビュー」も収録。
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1998年(平成10年)に講談社発行の月刊小説誌『小説現代』に連載され、著者の死後の2014年(平成26年)に刊行された作品です。
■序章
■一章
■二章
■三章
■終章
■解説 香山二三郎
■特別収録〈対談〉
「連城三紀彦の素顔と『女王』の魅力」 田中芳樹×香山二三郎
■特別収録〈最後のインタビュー「わが人生最高の10冊」〉
「男と女の物語」に魅せられた作家生活 連城三紀彦
戦後生まれの荻葉史郎の中にある東京大空襲の記憶… だが彼を診察した精神科医・瓜木は思い出す、空襲の最中にこの男と出会っていたことを、、、
一方、史郎の祖父・祇介は旅先で遺体となって発見された… 邪馬台国研究に生涯を捧げた学者の祖父は、なぜ吉野へ向かい、若狭で死んだのか? 瓜木は史郎と彼の妻・加奈子と共に奇妙な記憶と不審な死の真相を探る旅へ。
だが彼らに立ちはだかったのは、魏志倭人伝に秘められた邪馬台国の謎!?
東京大空襲、関東大震災、南北朝時代、そして邪馬台国… ある男の奇妙な記憶と、女の告白、ひとりの老人の不審死が壮大な歴史の謎へと導く、、、
衝撃の展開、男女の情愛…… 連城ミステリのすべてが織り込まれた傑作!
この物語は読者をどこへ連れて行くんだろう!? と感じさせる序章が印象に残りましたねー 邪馬台国(卑弥呼)、南北朝、関東大震災、東京大空襲、そして現代と、時を超えた歴史ミステリでしたね、、、
タイムトラベルが出てくるSF作品になっちゃうんじゃないかと思わせるような序盤の展開からは想像できない合理的な答えが導かれるミステリ作品… 『魏志倭人伝』に記された邪馬台国の所在地(九州説or畿内説)や「水行十日陸行一月」という邪馬台国への距離についての著者なりの答えも用意されており、歴史好きにも堪らない作品に仕上がっていると思いますね。
ミステリであり、邪馬台国に憑かれた者たちの妄執なドラマであり、男女の情念を描いた物語でした、、、
そして『特別収録〈最後のインタビュー「わが人生最高の10冊」〉 「男と女の物語」に魅せられた作家生活 連城三紀彦』に紹介されていた作品も気になりました… ほとんどが読んだことのない作品なので、機会があれば読んでみたいです。
<連城三紀彦のベスト10>
1位 『ローマの女』 アルベルト・モラヴィア
2位 『一年ののち』 サガン
3位 『棺の花・那智滝情死考』 水上勉
4位 『モデラート・カンタービレ』 マルグリット・デュラス
5位 『花影』 大岡昇平
6位 『寝台車の殺人者』 セバスチアン・ジャプリゾ
7位 『射程』 井上靖
8位 『美は乱調にあり』 瀬戸内寂聴
9位 『野生の棕櫚』 フォークナー
10位 『美しさと哀しみと』 川端康成
<最近読んだ一冊>
『十角館の殺人』 綾辻行人 -
Posted by ブクログ
父に借りました。
著者の作品を読むのは初めて。いい作家に出会えました。
人物、風景の描写力が独特ながらも非常に高く、また、文章構成も見事だと思いました。
ストーリーはというと、誘拐ミステリーなのですが、
いわゆる普通の誘拐とは趣が異なります。
離婚後、実家に戻った女性が育てる一人息子・圭太が誘拐される。
しかしながら積極的な身代金の請求はなく、その額も二転三転し、また身代金の受け渡し場所も渋谷のスクランブル交差点の真ん中、という変わったもの。
圭太は無事に保護されるものの、そのからくりは驚くべきもので犯人は不明なまま。
ここまでが上巻で描かれています。
引き込まれるように読みました。
登場人物も少なくはないのですが、過不足なく個性が巧みに描かれていて、頭に入りやすい。
下巻も、他の作品も楽しみです。 -
Posted by ブクログ
面白かったです。
上巻の続き…なのですが、ある意味別のストーリー。
下巻の前半は、上巻で起きた誘拐事件のからくりが明かされます。
それを語るのが犯人のうちの一人の心情と首謀者の手紙、という個人的にはあまり好きではない手法なのですが、そういった私の嗜好をもってしても面白いと思える仕上がりでした。
独白とも言える首謀者の手紙における、感情・感性の描写の細やかさというか、繊細さというか。
下巻の後半は舞台が仙台に移り、上巻で起きた誘拐事件そっくりの事件が起きます。
被害者となる家庭の長女の手記によって記されるこの事件の真相が、とにかく痛快。
事件はさっぱり解決していないのに、爽快さを覚えるから不思議。
面白かった、と声に出して呟いた一冊です。 -
Posted by ブクログ
各作品、花が共通項の、時代は大正から昭和初期の、連作短編集。
最近、友人にいただいて、古いものだけど、“凄絶な滅びの美学”と、当時の帯が残っていた。凄まじく、恐ろしいという美学なのです。
各作品、ミステリの構成ですが、犯人やトリックを追うものではありません。彼らが、何故その罪を背負う事になったのか、その動機を消し去る為に身を滅ぼしていく犯罪者への哀悼の物語。
「戻り川心中」
最近、坂口安吾の太宰治情死考を読んでいたので、あゝ、連城さんもそうなのか、太宰治の心中を情死とは思えていないのだろうと。
主人公の歌人岳葉は、二度の心中事件を引き起こし、その事件を題材とした傑作歌集を完成させた後、自害する。彼が遍歴した三人の女性達。彼女達への愛情も自堕落な生活も、全てが作品を完成させるトリックではなかったのかと思いを馳せる。旅館の古びた部屋の花菖蒲。その咲いた花の数から真相が浮かんでくる。
「藤の香」
家族の為、色街で働く女性達。文盲の彼女達の代筆屋。代筆屋は、その実情を知り、彼女達の重荷を背負い、一人罪を負う。
「桔梗の宿」
幼い娼婦の淡い恋心が引き起こす、殺人事件。八百屋お七の筋書きをたどる。
「桐の柩」
犯した罪から、好きな女を抱けなくなった男。自分の手下を女の元へ通わせる。男は、女の香を確かめながら手下を懐く。逆縁橋の上で少しづつ解かれる秘密。
「白蓮の寺」
田舎寺の嫡子であった少年の交錯する幼児期の記憶。母親は、最大の秘密を守る為に、その記憶をも操作しようとしていた。母親は、最期まで秘密を守り通して逝く。 -
Posted by ブクログ
愛というのはその対象を選ばす、何に対しても惜しみなく注がれるものだと思っている。飼っている猫や育てている植物、勿論本にだって。
でも恋は違う。
一般的には、両親や兄弟、子どもに対して抱く感情ではない。そして大抵は一対一のものであり、自分と同じ気持ちでいることを相手に求めてしまうし、始まりがあり終わりがあるものなんじゃないかと思う。
『恋文』に出てくる郷子と将一は夫婦であり、優という小学生の子供がいる。将一は郷子より一つ歳下で教員をしているが、ある時突然「昔の恋人が不治の病にかかり残り少ない命なので、せめて残された時間を共に過ごしてあげたい」と家を出て行ってしまう。
恋人の名は江津子といい、漢字は違うもののわたしと同じ名前だ。郷子は将一の居場所を突き止め、話をする。そして彼が江津子の最期を看取ることを認めてしまうのだ。そして更に将一の従姉妹と偽り、定期的に江津子を訪ね、話し相手になってやる。
郷子のこの行動を、勤め先の編集長は健気だけど見栄っ張りだと言った。わたしもそう思う。でももしわたしが彼女の立場なら、おそらく同じことをしただろう。周りの目を気にして、自分自身に同情しないよう、傷に塩を擦り込んで早くその痛みが気にならなくなるように。
離れて暮らすようになり、郷子は初めて将一を夫としてではなく一人の男性として意識するようになった。もともと最初から、夫婦愛と家族愛で成り立っていた関係だった将一に恋をしたのだ。でもその恋仇の江津子は、彼女にとって唯一心を許してなんでも話し合える親友のようになっていた。ただひとつ、この苦しい恋心を以外は。
さて、この複雑な三角関係はどのような結末を迎えるのか。そしてそれがまた一対一に戻ったとき、二人はどんな決断をするのか。
郷子が最後に流した「それまで忘れていた涙」の忘れていたものはなんだったのか。彼女の心情に思いを馳せれば、この物語の余韻も更に深くなり、美しくて儚い数々の情景と共に、しみじみと心に染み入るものになる。
それ以外の作品ももちろん『恋文』に負けず劣らず素晴らしいものだった。特に女のいじらしくも哀しい想いの描き方は秀逸だ。作中に引用される詩のひとつひとつも心に強く残った。 -
Posted by ブクログ
<感想>
初・連城作品。
評判の良かった短編集から読んでみた。
もともとはミステリー作家だったとのこと。本短編集はヒューマンドラマがテーマのようだが、ミステリー的などんでん返しもあり、作家の力量の高さを感じる。
ミステリー要素と「切なさ」を絡めるのが本当に上手い。
ただ、女性の描き方が昭和感を感じさせる。令和の感覚だとヤバいおじさんの恋愛小説と感じる人もいるかもしれんない。
●恋文
別れた女の最後を見取りたいと言い残して消えた夫。妻が最後に送ったものは…。
●赤き唇
死んだ妻の母と暮らす主人公。新し恋人ができるが義母の辛辣な態度で距離ができてしまう。死んだ娘のことは忘れて早く新しい相手を見つけなさいと言うのだが…。
●十三年目の子守歌
いい歳になった母が自分より若い男と再婚した。離婚して実家に戻っていた主人公は新しい継父との付き合い方が分からない。母が知人から引き取った血のつながらない弟はすっかり懐いている。主人公も次第に心を通わせるようになるが…。
●ピエロ
何をしても怒らない夫。妻は夫に嘘をつき高校の頃の同級生に会いに行く。相手は約束の場所に現れなかったが、睡魔に襲われ一泊してしまう。帰宅した朝、夫に浮気したと嘘をつくが逆に夫から意外に言葉が…。
●私の叔父さん
姉の孫が妊娠した。その父は主人公だと言うのだ。トラブルに巻き込まれるうちに、主人公は死んだ姪のことを思い出す。残された5枚の写真に秘められた思いとは…。 -
Posted by ブクログ
『すぐに門灯がともり、その灯におびえるように周囲の暮色は黒く陰り、花が光って見えるのが、蒸し暑さのために脂汗をしたたらせているかのようでした。』
この家には戦地経験のある桂造、その息子の立介と妻の聡子、娘の佳代の4人が暮らしている。
聡子には幸子という妹がいて、その幸子にも直子という4歳になる娘がいるのだが、最近カルチャーセンターに通い始めたという理由から頻繁に直子を預けに来る。聡子はそれをとても迷惑だと感じている。なぜなのかは、複雑な彼女なりの事情があるのだが、上手く断り切れずにまた直子を預かることになってしまった。その日佳代と歯医者に行っている間に、直子が行方不明になってしまった。やがて、その庭のノウゼンカズラの木の根元に埋められている死体が発見されることになる。
冒頭の文章は、その直子が発見される直前の文章だ。
なんて趣のある文なんだろうと思った。夕暮れの色が暗くなる様を「おびえて黒く陰る」と表現するなんて。前にこの著者の本を読んだときも感じたが、ミステリーなのだが文章がすごくいい。時々はっとさせられる。
語り手が次々と代わるように、もっとも疑わしいと思われる人物も目まぐるしく変わっていき、読み手は非常に混乱させられる。今日はここまで読んで続きは明日にしようと思いながら、気がつけばまたページをめくっている。ずるずると後ろ髪を引っ張るのだ、この本は。
事件の関係者はほぼ全員、少なからず思っている。
「直子は死ななくてはならない存在だったのだ」
だから殺人はこのような形で行われたのだ。
真実と呼ばれるものは、まずは誰に都合のよい角度でその顔を見せるのか。
クラシカルな話が苦手な方でなければ、是非手にとってもらいたい一冊だ。
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Posted by ブクログ
自分が自分ではない、あるいは身近な人物が他人にすり替わっている、という考えに憑りつかれた4人がとある精神病院に集合し、程なくして失踪と殺人事件が起きるという、ひとつ間違えばバカミスと呼ばれかねない突飛な設定で、どこに連れて行かれるか分からない展開に読み始めは不安を覚えたのですが、読み終えてみたら全て納得しました。なるほど、伊坂さんが本作を好きというのはすごくよく分かります。
リアリティ云々で言ってしまうと正直無理があるとは思いますし、真犯人が誰かという点もミステリーを読み慣れている読者であれば恐らく薄々予想はつくので、そのあたりの驚きはそれほどでもないです。また本作で描かれている個人のアイデンティティをめぐるあれやこれやに関しても、精神に異常をきたしているという前提があるので個人的にはそこまで響きませんでした。
では本作の魅力はどこにあるかというと、雰囲気は似ているものの全く異なった方向を向いた複数の怪奇話を、最終的に全て論理的に纏め上げて解決に導いた点に尽きるでしょう。このアクロバティックな手腕は率直に見事だと思いました。初版が40年以上前なので当時これがどう評価されたのかはよく分からないのですが、文体の古さを気にしなければ現代でも十分楽しめます。ようやく連城さんの魅力の一端が垣間見える作品に出会うことができました。