阿川弘之のレビュー一覧
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昭和史(ここでは終戦まで)というものは、どうしても後ろめたさが先行してしまうもので、もちろん学校で習ったり、テレビや映画を通じて受動的に知ることはありますが、自分からよく知ろうとは思いませんでした。したがって、戦国や幕末、明治を舞台にした小説はこれまで数多く読んできましたが、昭和史、つまり太平洋戦争を扱った小説というものは、本書が初めて。では、なぜ本書なのかと問われると、「山本五十六」という名前は、そんな受動的な自分にとってもよくよく聞こえてくる人名でして、例えば「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という有名な言葉も、実はこの言葉を通じて山本五十六という名前を
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2012.1記。
太平洋戦争前夜の海軍大臣にして首相の地位にあった米内光政の伝記的小説。その人となりを周囲の人の証言をもとに描き出すことが本書の狙いであるが、史実に忠実であろうとすると同時に、著者は主人公に強い共感を抱いていることを隠しておらず、そのことがかえって読後感を心に残るものにしている。
米内光政は必ずしも同期の秀才ではなかったらしい。実際、参謀だの米国大使館だのを同期が歴任する中、佐世保あたりで芸者にもてまくってたりする。しかし、時代とともにドイツと連合して対ソ戦に備えるべきと主張する陸軍と、ドイツと組めば対米戦争不可避と絶対反対の米内ら一部海軍との対立が先鋭化、政治もこう着して -
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海軍予備学生だった著者が、資料を駆使して書きあげた『山本五十六』『米内光政』『井上成美』からなる「海軍提督三部作」の第1弾です。上巻では、ロンドン軍縮会議での活躍が中心に描かれており、陸軍との摩擦や、海軍内の「艦隊派」の突き上げに苦慮しながらも、冷徹な目で日本の行く末を見据えていた山本の考えに迫ろうとしています。
日本海軍の歩みをたどることが本書の眼目ではなく、むしろ山本の人間像を活写することに著者の力が注がれているように感じます。ちなみに下巻の「解説」を執筆している村松剛は、山本の私生活にまで立ち入ることで、彼の人間像に迫ろうとした本書の叙述を「反英雄(アンチ・ヒーロー)的な方法をもって、 -
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ネタバレ書かれたのは今から55年くらい前…
戦後の好景気に沸く時代の物語である。
勤めていた弱小出版社が倒産してしまい、遅配分の給料ももらえず、退職金も空手形でごまかされて、すっかり宮仕えに嫌気がさした六助は、今風に言えば「起業」をしようと思い立つ。
やはり、元同僚である千鶴子が賛同して協力を申し出て…
二人がカレー屋の亭主と女将さんに納まるまでの、カレーなんですが、甘酸っぱい青春物語です。
出てくる単語が「オールドミス」とか(今ならエイハラで訴えられます)、ハイビスカスを「ふよう(芙蓉)のような花(言われてみれば似てる!)とか…品物も、なつかしきブーブークッションが出てきたりとか…
うわ~、昭和 -
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目的化した死が、あらゆる不安をはらいのける
サルトルは、自由が人間を縛りつけるのだと言った
だが徒競走ならば、自由もへったくれもない
きれいさっぱり清められた一本道を、おのが死めがけて突っ走る
そのように自らを律して特攻の日を迎えようとする若者たちの手記
というテイで書かれた小説
その、スマートとすら呼べるすがすがしさは
ひょっとしたら同調圧力に負けたおのれをごまかす
自己欺瞞でしかないのかもしれない
いや、しかし実のところそれは、要領よく生き延びたとして
おのれに恥じないでいられるような人間でありたくはない、がゆえに
自らの意志でつかみとった気高さ、潔癖さであると
・・・生き延びてしまった者 -
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タイトルを見てなんか美味しそうなお話だなーと思って手に取りました。カレーライスって匂いだけじゃなくて文字にしても食欲をそそりますね。
ただ作品の中身はカレーがメインというわけではなく、カレーライスが出てくるのは大分後になってからです。ちょっとラブコメな感じで、辛いというより甘い。でも甘ったるいかというとそうでもなく、バーモントカレー中辛といった感じかな。
われ鍋にとじ蓋の例として挙げられるような六さんと千鶴子カップル。お嬢さん育ちでちょっぴり気の強い千鶴子は、六さんをひっぱりつつも下がるところは下がって縁の下の力持ちに回ろうとする。六さんもすぐ癇癪を起こすくせに二の足を踏んで前に進めずどこか要 -
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ただしい、を貫き通すことと、善し悪しとは、また違うんだろうなあ
山本五十六、米内光政と来てようやく!!
読み終えました。
春夏秋とかかりましたね。今年の収穫というか、じっくりと、取り組んだ海軍三部作です。
で、いきなり
晩年、東郷元帥をどう思ふかと人に問はれて
と旧仮名遣いになりびっくり。
前2冊を新しいバージョンで買ったのか、と驚いてしまいましたがそうでもない模様。
読み物的面白さ、それはつまり人物としての面白さで言いますと前二作の山本五十六、米内光政の方が魅力的です。米内さんが一番人としては大きいのかな、と感じさせられました。
とにかく、曲がったことが大嫌いなんですね。正しい。