阿川弘之のレビュー一覧
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ネタバレとてつもない作品。
少数派であることの難しさ、
そして自分を貫くことに関する難しさを
いやというほど感じる作品です。
彼は多くの人が戦争推進という体をとる中
反対の立場を崩しませんでした。
そう、敵国が持つ技術の差を
いやというほど知っていたから。
しかしながら、多数派が
はびこるということはどういうことかは
想像がつくことでしょう。
実質上の左遷という形をとられることになります。
彼はどこか遊びのない人に想われることがあり
とっつきづらさがありました。
それは彼自身が意見を貫く=みだりに好意に乗らない
というスタイルでいたからでしょう。
そう、中立でいることも難しいことなのです。
ス -
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逆のものさし講で、清水克衛さんから教えて戴いた本です。3年前に亡くなられた阿川弘之さん、陸軍が嫌いで海軍に入隊しています。確かに海軍は自由度が高いと言うか卑屈なイメージはありません。そんな海軍やイギリス、昭和天皇などをベースに、大人の見識を説いています。理屈っぽいお爺さんのイメージがありますが、見識を語れる大先輩の言葉はちゃんと聴いた方がよいですね。生きるヒントが隠されています。
特にユーモアや中道の必要性や、儒教、騎士道、武士道など、阿川さんが人生を通して、迷いなく重要と感じたものと、自分の価値観を照らし合わせる事で、自分の実とする事ができました。阿川さんは日本李登輝友の会名誉会長もされ -
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海軍ものに手を出さず、本書や「南蛮阿房列車」に耽溺する読者というのは、阿川氏ではなく宮脇俊三氏のファンと相場が決まっています。まあ、かく言う自分もその通りなのですが。
鉄道紀行の大家と言えば、初代が内田百閒、跡を継いだのは阿川弘之、そして三代目は宮脇俊三。「こういう場合、二代目は大したことがない」などと仰ったのは阿川氏ご本人ですが、いやいやとんでもない!終戦直後から高度成長期に片足を突っ込みかけた頃の鉄道が、いや日本社会の姿が生き生きと描きだされています。
新幹線も高速バス(いや、それ以前に東名自体が存在しない)も無い時代のエッセイ、今となってはなんとも時代がかっていますが、特急機関士の働 -
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おもしろい。
率直にそう思った。
この本を手に取ったのは、帯に書かれていた「読み終わっちゃうのがもったいない」という言葉に魅かれたからだが、読み進むにつれて残り少なくなっていく未読ページを見て、まさにそう思った。
舞台は昭和40年代。戦後も終わり、○○成長といわれる日本経済の急進期だ。
出版社に努める主人公の六助は短気な一本気質で、あまり口は達者ではない。納得ができないことがあると、かぁっとなってついつい手を出してしまうような不器用な青年だ。
情熱をもって仕事に臨むが、勤務先の出版社はもう倒産寸前で、まわりの同僚は仕事もせずに一日中将棋ばかり打っている。六助が頼み込んで出版までこぎつけたベテ -
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ネタバレ最近読んだのに記録がない。フォルダーの整理をかねて探してみたら、見つかった。
昨年一昨年は疲れてメモする気力がなかったので、読みっぱなしの本が多い。記録しようとは思って書き始めても、書き終わってないものが10冊近くあった。これは途中まででも別のホルダーに入れておけばかすかに記憶は残るだろう。
半分は未完もひどい状態なので削除した。再読して書くことがあるかどうか。
最近読んだ気がしていたのに、日付が昨年や一昨年になっている、日が過ぎるのは早い、まさに矢の如し。
「雲の墓標は昨年読んだ。紛れて無くなる前に載せておこう。
昭和31年4月 新潮社発行
平成12年2月 69刷 新 -
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この時代に生きていたとして、マスコミに踊らされずに米内さんのことを評価できたのか。
山本五十六でテンポをつかめたのか、1カ月弱で読み切ってしまいました。
五十六さんは、戦争の最中亡くなってしまうし、連合艦隊司令官長なので洋上、海外の世界が多かったのですが、こちらは大臣、総理として日本をきちんと敗戦に持って来て、海軍を終わらせた方。
五十六さんだったり、決定版 日本のいちばん長い日と同じ時間を、別の視野からまた読み進めていくことで、まだまだ浅いですが自分の日本史の世界を複眼的にとらえられていく気がします。
黙して語らず、しかし見ていて、本当に重要な部分は外さない。
この器の大きさから、 -
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せっかく読書するならこういう大きな物を残すものと対峙したい
いやあ3か月くらいは延々とこの本に取り組んでいたのではないでしょうか。
引っ越し前から読んでたもん。
しかも文庫本ではない単行本サイズを持ち歩きもして読んでいたので
「凄い本読んでますね」と言われる次第。
大概そのときには「あの、あれです、「聞く力」の阿川佐和子さんのお父様の本で」と返しておきました。
淡々と事実と著書、インタビューであった内容を私情を余り挟まずに書かれている、その量二段組みで400ページ。
本だけでなく新聞、雑誌、書簡までもを丹念に読み込んで読み込んで作り上げた魂の大作。
その力を受け止めるのにこちら -
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阿川弘之著の海軍提督三部作完結編。
井上成美は、「山本五十六」、「米内光政」と共に日独伊三国同盟に反対し、米国との対戦に終始反対していた。また、開戦当時より日本の敗戦を予告し、敗戦前夜は終戦工作にも奔走する。
この三人の中でも井上は参謀タイプで合理的な判断を重視し、孤立を怖れずに自ら強い信念を貫く。
当時、世の中が陸軍を中心にファッショ的になる中でも信念を貫くことは生命の危険にも晒されることでもあり、その気骨ある姿に敬意を抱く。
当然のことながら、井上の言動に対して海軍内でも大いに批判があったわけだが、それを凌駕するだけの合理的な判断力、これはきっと留学等を経験する中で幅広い知見を得ていた -
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下巻では、真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦、次々と歴史のターニングポイントがあらわれる。日本の暗号はアメリカにほぼ100%解読されていた事を知り愕然とした。それに類した話は小耳にはさんだ事はあったが、ここまで詳しく本で読んだのは初めてだ。
そこで当然出てくる疑問は、「アメリカは日本の暗号を解読していたのなら、真珠湾攻撃を知っていたのでは?」というものだ。知った上であえて攻撃させ、国民の戦争気分を盛り上げた、という論法だ。
これについては答えは出ていない。
真珠湾に続くミッドウェー海戦で日本は赤城などの空母を失い、ここから敗北へと突き進むわけだが、ミッドウェーはそもそも有利な条件ばかりが揃っていたと