あらすじ
かつてはこの国にも確かな見識があった。著者は東大を繰上げ卒業して海軍に入り、中国で終戦。戦後は志賀直哉に師事して、生きる意味を深く問いかける名作や人間味溢れる随筆を数多くしたためてきた。その実体験と読書体験と思索に裏打ちされた、人生の叡智が凝縮された読むほどに味わい深い1冊。
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Posted by ブクログ
逆のものさし講で、清水克衛さんから教えて戴いた本です。3年前に亡くなられた阿川弘之さん、陸軍が嫌いで海軍に入隊しています。確かに海軍は自由度が高いと言うか卑屈なイメージはありません。そんな海軍やイギリス、昭和天皇などをベースに、大人の見識を説いています。理屈っぽいお爺さんのイメージがありますが、見識を語れる大先輩の言葉はちゃんと聴いた方がよいですね。生きるヒントが隠されています。
特にユーモアや中道の必要性や、儒教、騎士道、武士道など、阿川さんが人生を通して、迷いなく重要と感じたものと、自分の価値観を照らし合わせる事で、自分の実とする事ができました。阿川さんは日本李登輝友の会名誉会長もされていたようで、色々と共感する部分が多かった気がします。陽の当らない名著で、オススメの一冊です。
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編集が決めた書名と著者のコンセプトが多少違うが、それでも英国のジェントルマンシップと武士道、そしてその流れを汲むネイビイズムの話は十分に楽しめたし納得のいくものだった。昭和天皇の見識を知り驚くとともに、天皇崇拝を唱えながらも、天皇の意思に反し、戦争へ突き進んだ軍部の姿に憤りを感じた。儒教については是非があるかも知れない。しかし、論語を聖典扱いせず、伝記的言行録として読むなら、別の解釈ができるかもと思わせる筆致がここにはあった。本書を読むきっかけは宮脇俊三氏のエッセイであることを付記する。
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読み応えがありました。阿川弘之「大人の見識」、2007.11発行。日本人の国民性は勤勉、几帳面、そして軽躁(熱しやすく、冷めやすい) 東条英機、鈴木貫太郎、吉田茂の話が興味深かったです。東条英機が横暴で独善的(気に入らない人間は二等兵に召集など)、中学生ぐらいの頭脳、重箱の隅を突っつくようなみみっちさと容赦がありません。鈴木貫太郎には首相としての顔つき、人間としての風格があり、それが国家の品位につながった。吉田茂のユーモアには大拍手。GHQを Go home quicklyの略かとマッカーサーにw。
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温故知新・・・古キヲ温ネテ新シキヲ知ル。
『温とは、肉をとろ火でたきつめて、スープをつくること。歴史に習熟し、そこから煮つめたスープのような知恵を獲得する。その知恵で以てア新シキヲ知ル』
書き出しより、東条英機から、海軍の話題が中心であり、アレレと思うところもありつつ、イギリスにおけるユーモアの必要性、朱子学、論語の解釈等は知っておきたいと思うに至る。自分が絶対的に学が不足していることを再認識し、特に歴史とその背景について最低限の理解をしたいと思う。
きっかけとなる本ではないかと思う。もう少し背景を勉強してから再読したい。
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軽躁さというのが日本人の特徴というのは気づかなかったけど言われると納得。
常に第3者的視点で、ユーモアを交えられるくらい冷静に物事を捉えるようにしたい。
紳士になるのはなかなか難しそうだ。
メモ
自分の生活の基準となる思想 家族と友人 意義のある仕事 閑の時間
チャールズラム i love a fool
和魂 ジェントルマンシップ 静かにすごすこと
ポリュビオス
物事がどちらとも決まらないのが一番魂をまいらせるが、この気持ち悪さに延々と耐えなければならない。
温 じわじわと
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中西さんと違うところは、弊原喜重郎外相の外交を擁護しているように見えるところ。中国人による在中日本人の迫害に対し、軍を出兵させず「見殺しにした」「軟弱外交」と言われた裏には、イギリスから学んだ「小さい事件で騒ぐよりも大局を見ろ」という意識があった。
阿川さんは「日本ではこんなことは言えない」と書いてたけど。何事も色んな側面から見て判断しなければね。
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先日、お亡くなりになりました。ご冥福をお祈りいたします。
リベラル派の知識人の意見・文章を読んでみたかった。それだけ、他意はありません。
「私の方も、陸軍の事は士官食の食い方すらしらないから、陸軍軍人の伝記を書く気にはなれず、戦後現存者に取材を申し込んで直接人柄に接するとか、資料を読んで複雑な裏事情を知るとか、それはしてません」
結局のところ、陸軍の一部に存在した「叡智」と「見識」とは他の昭和史研究科の研究にゆだねて、自分は「我が道」だけ行くかたちになってしまったのです・
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この作家の名前は知っていたけど著作ははじめて読みました。本人の海軍経験をもとに海軍→英国→昭和天皇へとその想いを遡り、日本人としての見識とは何かを述べたもの。ふんふんとうなずける話もあるが、ちょっと右翼的かな?
Posted by ブクログ
「急ぎの用はゆっくりと」、「静かに時を過ごすことを習え」といった「大人の見識」を身につけることを勧めた本。
著者は日本人が軽率な者を勇敢と見なしたり、些細なことに対して大げさに騒いだりする傾向を持っていることを「軽躁」であると指摘し、それに対して「静謐」を重んじよ、と主張する。そして、この「静謐」という語は『今昔物語』に出てくる「和魂(やまとだましい)」に通ずる。
これは戦時中に武士の心意気として盛んに喧伝された「大和魂」とは異なり、「日本人なら本来持っているべき思慮分別」と定義される。
その他は日本海軍やイギリス海軍に関する記述が多い。両者ともユーモアのセンスを重んじたとか。その内容の大体はべた褒め。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
軽躁なるものを勇豪とみるなかれ、かつて戦国の名将はそう戒めた。
国を誤る指導者の愚があり、滅亡の淵から救い出した見識もあった。
英国流の智恵とユーモア、フレキシビリティを何より重んじた海軍の想い出…、歴史の中へ喪われゆく日本人の美徳と倫理をあらためて問うとともに、作家生活六十年の見聞を温め、いかなる時代にも持すべき人間の叡智を語る。
[ 目次 ]
第1章 日本人の見識
第2章 英国人の見識
第3章 東洋の叡智、西洋の叡智
第4章 海軍の伝統
第5章 天皇の見識
第6章 ノブレス・オブリージュ
第7章 三つのインターナショナリズム
第8章 孔子の見識
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
筆者の体験した事実を羅列したという印象。
ただ、筆者も書いている通り、読者に対して押し付けているのではなく、
読者が何かを感じ取ればそれでよいという姿勢。
Posted by ブクログ
古き良き日本人の精神と、それが失われた現代への批判。戦争・海軍・英国から見られる「大人の精神性」について。差別的な言動にも逆にユーモアで返し、それを当事者も含め皆が笑ってしまえる英国のユーモア精神は羨ましいところ。重箱の隅をつついて責めるような日本では見られません。こういう器の大きいところは見習ってほしいものです。著者の英国好きがかなり窺えます。
論語についても少し書かれていて興味を持ちました。筆者が子供に伝えようとした様に、一日一つ読んでみようかなという気になりました。少々内容に偏りはありますが、自分の姿を振り返るのに時々読み返したい。
Posted by ブクログ
堅苦しそうな題なのに、実に柔らかい内容だった。
機智、叡智、嗜みなんてのは如何に柔らかいかに尽きるのかもしれない。智というのは人間の心が躍るものであり、人の心を躍らす事が出来る人は、智を養った人なんだなあと感じます。そのためには堅苦しい事から厳しい事辛い事いろいろ大変であるけれど、それ以上に智を身につけることは、やはり心躍る学びであり、緊張感が伴い、激しい抑揚のある成功失敗を重ねるものであるような気がします。いやあもう、怖いわ。
Posted by ブクログ
物知りなおじいちゃんから昔の話を聞かせてもらった感覚。自分の知識不足のせいか、細かい所が理解しにくいところがあったけど、大人の見識を焦点に日本人や東洋人としての見識、または天皇、儒教の見識などをおもしろい見解で書き綴っている。孔子の論語の大切さを聞かされて、勉強してみようかなと思わされた。過去を学んで、新しいを知る。温故知新か。勉強になりました。たまにはこういう話を聞かせていただきたいものです。