阿川弘之のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
新幹線もない。高速道路もない。航空便はあるけれど、まだ高根の花。
解説には、懐かしい時代と書かれているが、自分には想像のできない時代。
未来を予測した著者は、50年後の現代をどのように感じているのか。残念ながら著者による文庫版のあとがきはない。
北杜夫が亡くなった時も、阿川佐和子がコメントを出すのみで本人はもう表にでるつもりはないのか。
アナウンスの騒音→ずいぶん静かになったのでは。車内の美化→列車の高速化、乗車時間の減少、飲食の不要(駅弁かけが身にも車内美化がうたわれていたが、相当の問題だったのだ。これもよくなったが、車内マナーという意味では別種の問題が・・・。道の埃→これは圧倒 -
Posted by ブクログ
何というか、描写が凄いの一言
藤倉悲しい。
この作品の中で、誰に一番感情移入をしたかと問われれば、
自分は間違いなく藤倉と答える。
藤倉が一番現代人っぽい感受性を持っており、でも、昇華の仕方は矢張り軍人らしさはあったかな
甘い物食べたがってた吉野がどんどん変わっていくのが、緩やかに教育に浸っていった感じで恐ろしいけれど、悲しかった。
教育の賜物と言うより、そうしないと生きていけなかったのやもしれない。
そう考えると、当時の世論的なものがいかに今と違う事なんだろう
最後の方の殺伐とした雰囲気の日記が、もう、ね。。。。
でも、日記を書く帳面も鉛筆もあったンだ。
特 -
Posted by ブクログ
阿川弘之による「最後の海軍大将」井上成美の伝記。
戦前、戦中にその合理的かつ冷徹な目で対米戦争に勝利の可能性がないことを見いだし、戦争に一直線だった当時の日本の流れに抗って何を犠牲にしても戦争は避けるべきだという姿勢を貫いた海軍左派軍人の一人井上成美。戦後は軍人としての責任をとり神奈川の片田舎に隠棲し英語教師として余生を送った。山本五十六、米内光政とともに必死に軍ではなく国?国民を第一に考えて行動することはあの時代にあってはものすごく勇気のいることだったと思う。その急進的な姿勢から敵を作ることも多かったようだが、それくらい極端にやらないとひっくりかえせないと踏んでいたのだろうか?
印象 -
Posted by ブクログ
戦後60年経つが、先の太平洋戦争の終結に尽力した一総理大臣を忘れていないか?
その名は、「米内光政」。
1880年に岩手県の盛岡に生を受け、海軍大将で何度も海軍大臣になり、第2次世界大戦勃発後、陸軍大将で総理大臣になった阿部信行の辞任を受けて、1940年に総理大臣になる。わずか半年で辞任するも、その後に総理大臣になり太平洋戦争を始めた東条英機内閣の倒閣や戦争の早期終結に尽くした大人物で、戦後の1948年死去。
この人物を忘れさせまいと、同じ海軍兵が筆を執った。この人こそ、タレント阿川佐和子の父親として有名な阿川弘之氏だ。多くの戦争小説を書いたけど、海軍提督三部作(「山本五十六」、「井上成 -
Posted by ブクログ
なかなかの読後感。山本五十六を神格化するでもなく、腐すわけでもなく。子供っぽくて短気で他所に女を作っていたが、博打は強くて頭も切れる山本五十六という人間が実によく書けている。死地を求めるように最期にブーゲンビル島に赴いた描写も素晴らしい。
山本や井上らの東郷平八郎評が低いのにびっくりしたが、彼らにとって日露戦争は冴えない先輩の最高の武勲であり、劣等感の根源なのだろう。必敗だがやらねば東郷の鼻を明かせないし、東郷ごときがロシアに勝ったのだから、ひょっとして我々もアメリカに勝てるんじゃないか…?そういう深層心理が太平洋戦争開戦に働いたようにも見える。 -
Posted by ブクログ
阿川弘之による山本五十六のロンドン軍縮会議から連合艦隊司令長官就任と日独伊三国同盟締結あたりまでを追いかけた本。幼少時代がないのは惜しいが、オンナとバクチに関するエピソードがちょこちょこ入るのが微笑ましい。
いわゆる海軍善玉論の旗艦とも言うべき本だが、今になって読むと「海軍もどこか他人事だな…」とも感じる、海軍は政治に口を出さないというモットーも大企業病的な印象を受ける。五十六自身も航空機の台頭など賢くはあるのだが、海軍内の意見すらまとめられておらず、大将として器があるかはやや疑問な印象。
さていよいよ下巻は真珠湾だが…印象は変わるかな?