阿川弘之のレビュー一覧
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500ページ越えの小説だったけれど、話の展開が早く、平易な読みやすい文章で書かれているので、1日目に200ページ、2日目に300ページも引き込まれるように読み進んだ。
たあいもない、ほんのり恋愛、昭和中期の時代背景も織り交ぜた日常のお話ではあるけれど、なぜか読んでいて楽しい本。
つぶれた出版社を、退職金も不渡りでもらえないまま失職した男女二人が、昔、仕事で一緒に食べたカレーライスを記憶の隅に置きながら、カレー屋を始めるまでのストーリー。 最後は店を応援してくれる暖かい人の心に包まれて、希望のあるハッピーエンド、彼のプロポーズで終わる話。
こういう楽しい本をいつも傍らにおいて、マイペースで読 -
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ネタバレ・人間を神様にしては行けない。神様は批判できない。
・考える、頭を使う。アングルを変えて物事を考察する力を養う。自身も読む手を休めてじっくり考えこんでいた。
・「念のため長官に相談して」などとは言わず、自分の役職としての判断を示し、責任は自分で持つ。
・英語教育における直読直解主義。英英辞典を用いる。
・一般教育・教養の重要性。すぐに役立つ知識に偏重しない。
・委員会とは要するに責任を回避するための組織。責任の所在は分散して誰が本当の責任をとるのかはっきりしなくなる。
・迷うことがあっても根本のところをよく考えて下への迎合は避ける。 -
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太平洋戦争に、井上成美、山本五十六と反対し続きた海軍の米内光政。
米内光政とはどのような人物なのか、なぜ内閣は短命で終わったのか。
なぜ昭和天皇に気に入られたのか。
あの有名な畑俊六の極当国際軍事裁判での米内光政。
この本を読み終わった時には、彼をもっと知りたいと思えるようになる。
彼の内閣が短命で終わらなかったら、、、と考えると戦争は終わっていたのではないかと考えます。
表面上、日本は軍部全員が全員戦争賛成をして敗戦したように見えるが、最後の最後まで殺されるかも分からない時に反対し続けた米内光政。
彼から学べることは沢山ありました。
とても面白かったです。
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ネタバレ乗り物好きな阿川弘之氏の、旅のお話集。
紀行文にとどまらず、戦後の日本の交通に関する興味深いレポートも満載。
一章ごとに写真が載っていて、「手前にいるのが著者」などとキャプションが添えられている。
誰が撮ったのかな?編集者でしょうか?奥様でしょうか?
ユーモアあふれる語り口で、昔懐かしくもあり、大変勉強にもなった。
『一級国道を往く』
日本の道路はひどい!
1958年10月、一級国道を使っての東北の自動車旅に、筆者夫妻と編集者カクさん、運転手スケさんの4人でトライ。
あまりの悲惨さに、実体験が書かれているだけなのに、声を出して笑ってしまった。
『機関士三代』
松井さんちの長男3代の国鉄職員 -
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ずっと読みたかった阿川さんの本作をようやく読めた。
確かに、他の作品とはやや毛色が異なる。もともと阿川さんは女性よりも男性に好まれる作家ではないかと思っていたが、もし女性が本作を読んだらどんな感想を持つだろう・・と思った。
冒頭から妻への暴力の場面で始まる。主人公は女性は家長である男性に従うべきであり、余計な教養を身につけるべきではない、と考える男で、一見、何と前時代的な小説だろう、と思える。しかしこの男性の思想の内容自体が問題ではないのではないか。この人物はいわば内弁慶的な性向があり、そのことを自覚してもいる。
もちろん、主人公が多くの同期が死んでいく中、たまたま生き残ったという感覚をもち -
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◇いろいろな面で、非常に勉強になりました。
最も印象的だったのは、
「真の指導者とは何か」を教えてくれる
教科書のように感じました。
今まで読んだリーダーシップの本で、
聞いたことこともないスタイルなのですが、
(つまり、何も言わない。
しかし、内なる信念はハッキリしていて、
最後の最後には、指導力を発揮する)
これぞ、理想のリーダー像なのではないか。
批判ばかりしている自分を大いに反省させられ、
願わくば、かくありたい、と思わせられました。
◇米内とは、偉大な人らしいが、何をしたのか、
かねてから知りたいと思っていたのですが、
本書を読んで、かなり見通しがよくなりました。
あわせて -
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最も印象深い二つの対照的な場面
8月10日の御前会議前
米内光政「多数決で結論を出してはいけません。きわどい多数決で決定が下されると、必ず陸軍が騒ぎ出します。その騒ぎは死にもの狂いだから、どんな大事にならぬとも限りません。決を採らずにそれぞれの意見を述べさせ、その上で聖断を仰、御聖断を以て会議の結論とするのが上策だと思います。」
ポツダム宣言受諾通告後
大西瀧治郎「たしかに戦勢は不利です。われわれの努力が足りませんでした。申し訳ないことです。われわれが責任を負わなくてはなりません。しかし、あと二千万人の日本人を特攻で殺す覚悟なら、決して負けはしません。もう一度だけやらして下さい。もう一度智 -
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やはりこう言った史実を追いながら進む人物像を描いた作品は、読むのがしんどいですね。最初の百ページ読むのに一週間以上かかった。山本五十六とは…名前だけは知っていても、彼の骨柄や来歴、功績なんか全然知らなかったので阿川弘之先生の海軍提督三部作の代表作を選択出来たのは僥倖でした。大東亜戦争が始まる前の日本の政界と軍部の立場や主張、それに陸海軍の軋轢など史実に基づいた詳細な記述は非常に面白かったです。何故、日独伊三国同盟が締結されたのか?その時、それが正しい選択であったのか否か?その辺の経緯が分かって、眼から鱗が落ちる思いでした。それに山本五十六提督がどんな人物で、何をどう考えていたのかよく分かりまし
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上下巻とも、非常に客観的な内容で山本元帥を描き上げた良い著書である。
戦死の原因、アメリカは暗号を解読してたのか、戦死後の各人の動きにかなりの紙面を割いているが、恐らく当時は関心が高かったのだろう。
勝てる見込みのない中、真珠湾攻撃という奇策を用い戦果を上げ、東南アジア側でも連戦連勝、山本元帥は神の如き人間となる。
しかし、ミッドウェイで大敗北を喫したのち、アメリカの圧倒的な国力、戦力の前に敗北を積み重ね、とうとう最前線で指揮をとっていた山本元帥は戦死する。
国葬の後、姉が遺骨を引き取り、山本が信頼した、米内、井上の神格化はするな、という言葉で幕を閉じる。
そして、山本元帥無しでは戦 -
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2015.10記。
個人的追悼:小説家阿川弘之氏 (長いです)
小説家の阿川弘之氏がなくなった。とくに若い頃熱心に読んだ敬愛する作家のひとり。
阿川氏は自ら若き士官として務めた旧日本海軍への深い愛情を文学の下敷きにしていた。故に、戦後の文壇からは長く「反動」のレッテルを貼られ、大江健三郎に代表される「良心的」な作家と不当な形で比較されてきた。しかし一冊でも読めば、彼の作品が痛切なまでの反戦文学であることは容易に読み取れる。
海軍善玉、陸軍悪玉論は阿川氏が確立した史観であり(与那覇潤「中国化する日本」より)、最新の昭和史研究では見直しが進んでいるが、そのことと文学としての価値とはもちろん