青山七恵のレビュー一覧
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ネタバレ淡々と続く日常の中にある、出会いと別れ。
別れは辛いけど、人生には付き物で、それに耐えながら、新たな出会いに期待しながら、歳をとる。
主人公の若さ故のトゲトゲしさ、吟子さんの歳を重ねた静かな穏やかさが対照的で、自分も主人公と吟子さんの中間にいるな、と印象に残る。
「世界に外も中もないのよ。この世はひとつしかないでしょ」「若いころは、むやみに手を伸ばすからね。わたしみたいに歳をとると、出せる手もだんだん減っていくのよ」
という吟子さんの発言は深く、突き離すわけでもなく励ます、歳をとったからこそ言える、穏やかな一言だと思った。
また、駅や電車の描写が多く、自分も通勤途中で電車に揺られながら -
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136回芥川賞受賞作。
ゆったりとした時間の流れが基本にあって、劇的なことはなく、主人公の生活を遠くから観察しているような気分になる作品。
20歳の知寿が居候することになったのは、2匹の猫が住む71歳の吟子さんの古い家。
駅のホームが見える小さな平家で共同生活を始めた知寿は、キオスクで働き、恋をし、時には吟子さんの恋にあてられ、少しずつ成長していく。
主人公の知寿が少し意地悪だったり、少しシニカルな物の見方をしていたり、少しダメな部分があるところが絶妙で良い。
「すごく」ではなく「少し」そうであるところが良いのだ。
特段目標を持たず、とりあえず上京して親戚の吟子さんの家に居候を始めた知寿。 -
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ネタバレ不運続きだった矢先、福引でハワイ旅行を当てたものの、誰と行くかでもめた末に、おせっかいな元教え子にちゃっかりかすり取られたハワイ旅行。
親戚のお見舞いに女ばかりの家族と行く途中、友達に頼まれたことと、姉の元旦那の辰年で思い出したこと。
旅行先のチェコで友達と喧嘩して1人で入ったレストランでの写真を売りつけられて思ったこと。
お父さんとお姉ちゃんと車ででかけたとき、1人で車を飛び出し、そして置いていかれた謎の記憶。
もうすぐ店をたたむ予定の旅館に毎年宿泊に来るミュージシャンたちと、従業員のいとこの春子のこと。
9歳のときに亡くなったおばあちゃんだけど、その後もみすずの心に生きるおばあち -
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年を重ねれば重ねるほど、恋愛にばかり時間を割いてはいられない。いい年して色恋に打ち込んでいれば、周囲からは白い目で見られること必須である。
それでも恋愛って、楽しい。(つらいし、むかつきもする。)
潜在的には恋愛にのめりこみたい。それは思春期であろうと大人であろうと変わらないのかもしれない。
ドラマや漫画や勿論小説でも、恋愛が主軸の物語はいつだって愛されている。主人公を自分に重ねて疑似体験できるからだろう。
「いい年」になり、愛だの恋だの言っていられなくなってしまった人には、青春小説を読んで取り急ぎ満足するしかない。
そこで、青山七恵さんの『わたしの彼氏』。
主人公である鮎太朗は非 -
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ネタバレ湖畔に佇む休憩処を営みながら暮らす三姉妹のお話。
二人の妹はそれぞれこの不便な場所から東京に出ようとするが、
長女のあかりだけは、何もない日常からはみ出ようとせず、家族と生まれ育った湖畔を離れることをしない。
彼女の心に横たわる、家族から欠けてしまった母親への想いがどのように変化するのか。
彼女たちが暮らす湖畔のごとく、とても静かなお話。
それぞれが抱える秘密は、その言葉が持つとげとげしさのようなものがなく、最後には雪のように溶けていく。
隆史とあかりの手が触れるシーン、ものすごくドラマチックで儚い。
その一方で淳次のいきなりのプロポーズはものすごく安心感があって。
こういうのってヒューマン -
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いずれ新進気鋭の女性監督が映画にしそうな感じ。
前に読んで、内容はぼんやりだけど、これまた肌触りが良かったので読み返そう、と思った本。
そう、何か元気がなくなった時は、自分の中で気持ち良かったなぁ、体に悪い刺激を与えないだろうなぁという本を読み返して、元気になるのを待てばよいのだ。
そんなことができるのは暇を持て余した自分の、数少ない貯金・資産なのかしらんとちょっと思います。
まぁそんな時は読むだけ読んで感想も書けないですので、9月の中旬から下旬の本の感想を連投しているわけ。元気になりました。
若いときに本を読んでいて良かった。本は、こうやって私を助けてくれるんですね。
そんなこん -
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「別れ」と聞いて真っ先に思い浮かぶような親しい人との悲しい別れではなく、人柄や名前すらも知らないような人との出会いとも言えないような出会いや別れを通して芽生えた心の引っ掛かりのようなものに光を当てた作品集。よく知らない人だからこそ、その人の性格や思い出などと結びつくことができずになまの感情が宙に浮いたままになり、時として後まで強く残ったりするのだろう。すぐ納得して消化できてしまうことほど印象にも残らないものだ。こういうちょっとした引っ掛かりのある出来事だって立派に人生を豊かにすることに繋がっているんだなと思った。2つ目の『お上手』が特によかった。
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何か不思議な味わいのある短編集だった。
読み終えたあと、「お別れの音」というこの小説全体のタイトルについて考えた。
別れと一口に言っても、関係性も長さも別れ方も理由もそれぞれで、本当に浅いところまで視野を広げてしまうと、知り合って親しくならないうちに別れてしまう(二度と会わなくなってしまう)関係もたくさんある。
何となく静かに別れの匂いが漂ってくることもあれば、自分の意思で別れを決めることもある。
この小説は劇的に愛し合った二人が劇的に別れた、みたいなお話はひとつもなくて、どちらかと言えば意識しなければただ通りすぎて終わってしまうような関係性のその別れがほとんどで、だからこそ味わい深いのだと
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