窓の灯

窓の灯

小説・文芸
462円 (税込)

2pt

姉さんが私を拾ってくれたのは、二月の、わりと暖かい日だった─大学を辞め、憧れのミカド姉さんの喫茶店に住み込みで働くまりも。いつしか向かいのアパートの窓を覗く事が日課となった彼女が見つけた「窓の向こう側」の世界とは?芥川賞作家のデビュー作/第四二回文藝賞受賞作。書き下ろし短篇を併録。

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    『窓の灯』
    僕も夜中に散歩するのが日課になっていた時期があった。近所の公園に寄ると夜中だというのにちらほら人がいて、ベンチでひとりスマホをいじっている人や、並んでブランコに座っているカップル、池を周回しながら電話で話す人、そしてその中に混ざるように自分も隅の方でタバコを吸った。
    東京の家と家の間隔は本当に狭くて、裏路地を歩いていると他人の家の窓が目と鼻の先、みたいなことは珍しくない。ある家の裏を通ると、毎回カーテンが開け放たれていて、並んでテレビを見ているカップルの背中が見えたりしていた。
    というようなことを思い出した。あのときはただ暇だから夜の街を徘徊していただけだったけど、いま思えば、自覚のない寂しさを持っていたのかもしれない。自分は一人でいることが好きだし、孤独感みたいなものはあまり感じない方で、この深夜の散歩も一人時間を楽しんでいるという認識だったけど、本当はどこかで人との関わりを求めていたのかも、とそんなふうに思った。

    主人公・まりもは向かいの家、街中で他人の生活を覗き見ることが日課になっている。それは単なる興味本位であると本人は思っているけど、きっと根底には僕と同じような動機があったんじゃないかと思う。そして結局、外から見えるのはその人の表面だけ。人とのつながり。ずっと近くにいたはずの姉さんのことも、本当はよく知らない。
    過去に何かあったのか、どんな理由かはわからないけど、まりもは他人との関係性構築に消極的で、姉さんや先生のように好意を抱いた人間にも踏み込むことはできず、観察するにとどまることがほとんど。でも姉さんと先生の距離は自分の存在など意に介さず、近づいていく。もどかしさ、苛立ち。
    最後、まりもが初めて見た向かいの部屋の男の顔や表情には、人間の内面にある欲望や醜さが含まれていたのだと思う。
    僕自身、あまり人と付き合うのが上手ではない方で、つい関わりを遠ざけてしまうことがよくある。でも本当はそんな難しいものでもなくて、わけないことなのかもしれない。考えすぎず、無理しない程度に。

    『ムラサキさんのパリ』
    こういう読後感が好き。
    主人公にとってムラサキさんという存在は重要でも特別でもない。そんな人が、仕事で会う時以外どんな日々送っているのかはわからなくて、突然いなくなった理由もわからない。その後を追ったり想像することも多分ないけど、あの時どんなことを思っていたんだろう、とその人が近くにいたときのことを少し思い返す。

    0
    2026年05月09日

    Posted by ブクログ

    昨年芥川賞受賞作の『ひとり日和』を読んだ青山さん。今回はデビュー作である『窓の灯』と文庫化の為に書き下ろされた『ムラサキさんのパリ』の2編が収められている本作を読んでみました。

    『窓の灯』は大学を1年で中退した女性まりもが主人公。アルバイトをしている喫茶店の2階で暮らしながら、向かいのアパートの部屋を覗き見する毎日。隣の部屋には喫茶店のオーナーであるミカド姉さんが暮らしているが、男性が訪ねてくると2人の様子を壁に耳を当てて盗み聞きをするという…。

    レースのカーテン越しに薄っすら映る人の影や壁越しに聞こえる隣人の声など昭和のアパートそのもの。そんな中で大きな出来事もなく淡々と暮らすまりもの様子を描いているだけなのに何だか引き込まれてしまう。

    『ムラサキさんのパリ』も同じくその場の情景が浮かんできて余韻を残すような描き方がこの作家さんの魅力なのかもしれないです。

    0
    2026年02月01日

    Posted by ブクログ

    主人公の身に何も起こらないけど、だから淡々と過ぎていく日常のやり切れなさや、一度は感じる自分への嫌悪感に共感できる。

    0
    2024年06月10日

    Posted by ブクログ

    窓の灯がデビュー作ということでこれから読み始めました。内面の描写が上手く例えられており、ストーリーもなんでもないことを文学的に描かれており好みの小説でした。この作品以外の作品もぜひ読んでみたいと思わせる作品でした。

    0
    2022年08月20日

    Posted by ブクログ

    解説も面白かった。
    どちらも引き込まれてページが進んだのに、えっ、終わり?という最後でした。
    あの人たちの世界に置いてきぼりにされた感じ…

    0
    2018年02月28日

    Posted by ブクログ

    いずれ新進気鋭の女性監督が映画にしそうな感じ。

    前に読んで、内容はぼんやりだけど、これまた肌触りが良かったので読み返そう、と思った本。

    そう、何か元気がなくなった時は、自分の中で気持ち良かったなぁ、体に悪い刺激を与えないだろうなぁという本を読み返して、元気になるのを待てばよいのだ。

    そんなことができるのは暇を持て余した自分の、数少ない貯金・資産なのかしらんとちょっと思います。

    まぁそんな時は読むだけ読んで感想も書けないですので、9月の中旬から下旬の本の感想を連投しているわけ。元気になりました。

    若いときに本を読んでいて良かった。本は、こうやって私を助けてくれるんですね。

    そんなこんなで読み返していてびっくり、私この本初めて読むわ。

    昔読んだのはひとり日和か。

    いい場末感。いい世界観の中、まりもとミカド姉さんの日々がつづられていきます。
    最初は本当にお姉さんなのかな?と思っていたのですが、違うとわかった時から、なんとなくラスト近くの先生と姉さんへの反抗は予定調和という感じもありましたが、ラストシーンが素敵だったので良しとします。

    絵になるんですよね。いずれ新進気鋭の女性監督が映画にしそうな感じ。

    ミカド姉さん、やりがいありそうな役ね。

    0
    2016年11月20日

    Posted by ブクログ

    自分と現実世界との隔たりは、自分次第でどうにでも違って見えるんだなーと。
    実際の距離は変わらないのに、近づいたと思って一喜。変化してないと気づいて一憂。

    変わらないことを自分が勝手に歪めながら、生きているのか、私たち。

    0
    2012年12月31日

    Posted by ブクログ

    短編二編で合計150頁、凄い手軽に読める文庫。
    そんな非日常な話ではないから自分の近くで起きているとも感じられるし、主人公の世界の見方を参考に自分も少し周りの見方を変えてみようかなって思わせてくれる物語。

    0
    2012年12月10日

    Posted by ブクログ

    どこにも居場所がない、気がする辛さ。
    漂うように生きる姉さんの不思議さ。だからこその魅力。
    人を傷つけるような言葉をぶつけたのに、傷ついてるのは自分で。
    だけど、窓の外から見たら、「なーんだ」って小さく笑える。
    人はまた笑えるようになるんだなぁ。

    0
    2010年11月22日

    Posted by ブクログ

    ミカド姉さんの営む喫茶店で働く『まりも』ある日隣に越してきた若い男の窓を偶然に覗いたことをきっかけに覗き見が楽しみになっている。憧れの姉さんとその男達の中で、それとは一線を画した男性の出現をきっかけに微妙に変化する姉さんとの関係に戸惑い動揺する感情。他人の窓から覗き見たそれぞれの人生のかけら達がしんみりとそして爽やかに吹き抜ける風のように伝わる。第42回文藝賞受賞作。

    0
    2009年10月04日

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