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社会人五年目で友人なし。恋人は三ヶ月前に出て行ったばかり。そんな私の前に四年間行方知れずだった弟・風太がリーゼントの緑くんと共に現れた。突如始まった、弟との奇妙な共同生活。そんな風太は毎夜、なぜか私の「観察日記」を付け始めたのだが…。短篇「松かさ拾い」を併録。『ひとり日和』に続く、芥川賞受賞第一作。
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Posted by ブクログ
青山七恵さんは『ひとり日和』が好きなのと私と同世代ということでこの小説を読んでみようと思いました。この方の文章はやっぱり好きです。後半に収録されている磯崎憲一郎さんとの特別対談もとても良く、私も小説書いてみようかな!!なんて思ってしまったほどです。
気負わず読める小説。 ちょっと踏み出してみたり、前向きになんでもやってみたり。失敗してもまあいいかと思えるときもあるし、逆にひどく落ち込むときもある。 上手くいったりいかなかったり。一辺通りに日々は過ぎていかない。そんな感じのはなし。
再読。 大した出来事でなくても思いがけず人の心境は変化していく。 その時その人がどんな表情をしていてもその姿は煌めき、額に収めたいほどに美しい。 目を凝らさないと気が付けないそんな瞬間を切り取るのが本当に上手いなと改めて思った。
17/03/25 (22) 『ひとり日和』の延長のよう。さみしい人生。それでもふとつくため息はこんなにもやさしい。 ・「うん。じゃあとりあえず、さよならまどか。アディオス。アデュー。さよなら」 「はい。バイバイ」(P31 やさしいため息) ・靴を脱いだら、コンタクトをはずして、服も脱いで、さっさ...続きを読むとお湯につかって寝てしまおう。風太のノートなどもういらない。自分の生活がどう記録されようともう興味はない。本当の人生はこんなにもつれなくて、安全だけどもどこまでも不毛だ。(P109)
代わり映えのしない毎日。なんの盛り上がりもないけれど少しずつ確実に物事が前進。そんな毎日だけど、寂しかったり、孤独だったり、喜び、驚きだったり。心はおsれなりに動いている。小さな日記の嘘の真意。勇気を出して一歩踏み出すヒロイン。何を考えているのか今ひとつ分からない弟。なんでもない日常の断片に光をあて...続きを読むながら、そこから広がる世界を静かに見つめる。
人との距離感。 とか、空気。 とか、意味の分かんない気遣いと気づかれ。 とか、誰かと一緒にいる時間を持て余す感じ。 とか。 すごくリアルに、じんわり伝わってくる。 無関心で執着心のない風に装っているけど、ほんとはすごく気になるのだ。 こんな風に思ってるのって、私だけじゃないかも。。 じゃあどうし...続きを読むて、私はみんなと同じように、恋愛したり、結婚したり、子育てしたり、できないんだろう。 無言の何とも言えない空気の間に流れてくる生活音に存在意義があってすごく良い描写だなって思った。
表題作、起伏のない代わり映えしない日々でも、その変わらない事が救いになるのかもしれない、と思いました。 他人の日常を記録する、ってえっと思いますが、風太はそこに自分の主観を入れずに淡々と記録しているので誰も嫌悪感みたいなものを抱かないのだろうな。勝手に幸せ・不幸せとか評価されてたら嫌だけど彼はそれを...続きを読むしない。 どうしても物事をややこしく考えてしまう人はいるので、こうやって軽く「やってみればいいじゃん」みたいに言われると(やってみよかな)となれる気がします。やりたくない事は無理してやらなくていいけど。。 緑君、こういう人居るんだろうなと思いました。亀を飼っている所で、植物みたいなある人を連想しました。 「松かさ拾い」、主人公は苦しい恋愛ばかりしてるんだろうなと思いました。ナッツを口実にしているけど、小日向さんへも抑えつけてるだけで気持ちありそう。気付いてて付き合ってくれてる西君は優しいな。 ぼんやり読みましたが、どちらの主人公も幸せになってくださいと思います。妙に現実味が感じられたので、現実にいるこういう人たちも。
うーん、なんとも言えない。どちらの話も主人公に感情移入できず、最後まで何を伝えたいのかよく分からなかった。
やさしいため息というのは、呆れつつも受け入れてる状態だったり、良い意味で諦めがある場合につくため息のことだと思う。主人公も弟も今のままで駄目なことは分かっているけど、小説にあるように人は容易く変われない。でも、外部の働きかけや自分の意志でたまに普段と違う行動をとったりすることを繰り返して、少しずつ変...続きを読むわったり、変わらない部分は諦めがついていったりする。そうやって徐々に失望のため息からやさしいため息に変わっていくのが人間の成長なのかなと思う。自分が変わる順序としてまず諦めが必要な場合もある。主人公に自分と重なる部分がありすぎて嫌な汗が出るのを感じながらの読書だったが、この読書経験も自分の変化への1ステップだといいなとかそんなことを思った一冊。
冬のひだまりみたいな、静かな物語でした。 たしかに、風来坊な弟が登場して、誰かの人生を毎日綴り続ける、なんてちょっと変わった設定はありますが、基本的には何か大きな事件が起こるわけではなく、淡々とした日常が続いていきます。 人付き合いが得意ではない主人公が、職場での人間関係にもやっとしたり、ちょっ...続きを読むと気になる人ができたり、とにかく不器用なところに共感を覚えます。 青山さんの文章はたまにすごくリアルな質感を持っていてドキっとするのですが、気になる人にメールを送ろうか迷って迷って、えいっと送った後の表記とか、すごくわかるなー!と。 “送信ボタンを押した。押した瞬間、電波がこの狭い浴室の壁に跳ね返って、戻ってくればいいと心から思った。気づかないでほしい。いい返事がもらえないなら、返事もしないでほしい。“ 本書は表題の「やさしいため息」と、「松かさ拾い」の2作からなっています。 「松かさ拾い」の方が「一人でいる」ことの輪郭が濃くて、登場人物は他にもたくさんいるのに、青山さんのこうした「一人」に焦点が当てられた作風が疲れたときにはほっとします。 最後は磯崎憲一郎さんとの対談ですが、こちらも読み応えあっておすすめです。 小説をすこし、書いてみたくなる対談です。
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