【感想・ネタバレ】ひとり日和のレビュー

あらすじ

世界に外も中もないのよ。この世は一つしかないでしょ─二〇歳の知寿が居候することになったのは、二匹の猫が住む、七一歳・吟子さんの家。駅のホームが見える小さな平屋で共同生活を始めた知寿は、キオスクで働き、恋をし、時には吟子さんの恋にあてられ、少しずつ成長していく。第一三六回芥川賞受賞作。短篇「出発」を併録。

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Posted by ブクログ

相談をするとか、寄り添って抱きしめるとかではなく、むしろほとんど干渉せず同じ家で生活をしているだけ。直接的な描写はほとんどないのに吟子さんの温かさが感じられる。多分それを感じたのは知寿だけではなく、今までこの家に居候してきた少年少女たちも同じで、そんな彼ら彼女らを何人も見送って吟子さんは今もそこで静かに暮らしている。お年寄りという人生の先輩の大きさ、懐の深さ、安心感。

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2024年02月13日

Posted by ブクログ

ひとりの人と生涯付き合っていくことなんてそうそうない。
この人と気が合うなとか一緒にいて楽しいなとか思っていても、気がつけば過去の人になっていく。
人生は短編小説みたい。
大恋愛が終わっても、ひとつの過去の事実として溶けてゆくだけ。
知寿ちゃんはそんな変遷を仕方のないものとして受け入れようと強くなっていく。
おばあちゃんも言ってたけど、あまり考えすぎるのも良くないんだろうなぁ。

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2021年08月02日

Posted by ブクログ

芥川賞受賞作とは知らずに読みました。

20歳のフリーター千寿が71歳の吟子さんの家に居候しながらアルバイトや恋愛をして少しずつ成長していくストーリー。

主人公の千寿は最初の方は読んでいてイラッとする所もありましたが、吟子さんは干渉するでもなく、程よい距離感を保ちながら見守っている感じが良かったです。

71歳でもダンス教室に通い、仲良しの男性も出来て恋人というより茶飲み友達のような関係性も良かったです。お正月はどう過ごしていたのかは気になりましたが…。

淡々と過ぎる日常の中に出会いや別れがあるのは誰でも同じ。そんな当たり前の風景に余韻を持たせる描き方は作家さんならではなのかな。

駅のホームから手を振る姿がしっかり見える吟子さんの平屋の家。お庭には金木犀の木や物干し竿が。都内でそんなお家は今ではなかなか見かけないのでとても印象に残りました。

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

4.0/5.0

大人と子供に挟まれた時期の少女の、やるせなさや漠然とした不安、他人への憧れみたいなものが、あまり大袈裟過ぎない、柔らかいタッチで描かれていると感じた。

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2025年10月18日

Posted by ブクログ

ほぼ何も起きない日常の中で、心の葛藤がある。面白いかどうかは別だけど、それが人生ということかもしれない。別れて、落ち込んで、おばあちゃんの家に居候している女性。70を超えたおばあちゃんが、恋愛し、旅行し、レストランでご飯を食べる。でも老いは確実にきている中で、張り合うように人生を見つめる主人公。だんだん本音を話し、居心地が良くなってくるのを感じながら、新しい彼とうまくいかなくて別れも予感しながら、それでも進み、傷つく。良いことよりも悪いことの方が多いと感じていても、でもおばあちゃんに言わせると、良いところ、素敵な思い出がたくさんあるからと、今と向き合うことを教えられる。素直ではないけれど、少しずつ、人生に溶け込むようにおばあちゃんの言葉が沁みていく。
その家庭で、主人公が、「この人はどんな思考回路で、何を考えているんだろう」と思う瞬間がある。お互いのことをほとんど知らない。それを、知ったかのように思って欲しくない。女性とはそういう思考なんだと気が付かされる。一緒にいるから、お互いの考えがよくわかるというふうに考えていく男性と乖離が生まれるポイントなんだろうな。
ひとりでも、日々は進んでいく。大切な人を、きっと探しながら。

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2025年01月01日

Posted by ブクログ

知寿、吟子さんの関係性が素敵。
年寄りをバカにしてた知寿が段々と
吟子さんに憧れのような感情を抱いていく。

知寿は吟子さんと一緒に住んで、失恋もして
徐々に人間的に成長していく。
文章が読みやすくて2人とも可愛い!

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2024年09月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

⚫︎感想
20歳の知寿。生活、恋愛、母との関係、老人世代に思う事…それら全てが未熟でなんとなく不安がつきまとう、そんな若かった頃のことを思い出させてくれる一冊。人との別れと出会いを象徴として描かれる駅が、部屋から見える。その駅へも遠回りしないと行けない。キオスクで働き出した知寿は、仕事場の駅に留まったまま…だったが、キオスクを辞め、新たな生活を始める。知寿の日常の中にメタファーがうまく取り入れられていて、よく考えられた作品だと感じた。諸行無常。どんなに曇っていても、状況は自分の意思、それ以外でも否応なく変化する。

⚫︎あらすじ(本概要より転載)20歳の知寿が居候することになったのは、71歳の吟子さんの家。奇妙な同居生活の中、知寿はキオスクで働き、恋をし、吟子さんの恋にあてられ、成長していく。選考委員絶賛の第136回芥川賞受賞作!

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2024年08月25日

Posted by ブクログ

高校を卒業したばかり、自分の何者でも無さにつまづき、せつない別れをいくつか経験し、傷つき、それでもこれから自分の人生を作っていかないといけない、そんな期間の物語です。

吟子さんとのやりとりの中で主人公は成長し、前を向かないと、と頑張ります。

みずみずしい感受性で描かれた、どこか懐かしい青春小説です。

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2024年04月06日

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若いときのもやもや感、青春ってほんとは青くないよな、灰色だよな、、、みたいなことをめちゃくちゃ上手に描いてる。

いろいろなことを乗り越えたから、大人って平坦でいられるんだよな、、、と30中盤になった自分でも思う。まだ何者にでもなれるから、何者にも近づいてない自分が嫌なんだよなぁ

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2024年02月11日

Posted by ブクログ

吟子さんと知寿のたわいもないやりとりからは

老いと若さ
生と死

がコントラストをなすのだけれど
老いと死の方が
どうしても目を背けられないものとして
暗い影を落としていて

でも作品にはあたたかい空気が満ちていて

それから京王線沿線の景色には
どうしようもない現実が広がっていて

それでもこの現実世界に
若くても老いていても
生きていられることっていいなって
素直に思わせてくれる素敵な作品だった




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2024年01月14日

Posted by ブクログ

読み始めて面白くなるまでが早いです。作家が20代前半で書いた芥川賞受賞作ですが、技術が巧みです。

高校を卒業しても進学を拒み、就職するわけでもない主人公。
親に依存して生きてきた子ども時代からいきなり社会に放り出されるように自立するのではなく、親戚のおばあさんの家に居候しながら自然と自立へと、誰に促されることもなく自分自身でその道をたどっていく。そういう物語です。はっきりと端的に明文化できるような成長ではない部分を描いた、自立の入り口までの成長物語。

以下、ネタバレありますので、ご注意を。

こういう物語を読むと、自立にはある種の慎重さや段階を踏んでいく過程がほんとうならば必要なんだろうなあと思えてきます。大きな段差のある階段の一段を、「ふんっ」と力を込めながら踏みあがっていくような力業の自立が難しい人はかなりいると思います。新卒で入った会社を3か月で、半年で、一年でといったふうに辞めてしまうのも、そういう力業で人生を歩んでいくのが無理だったりするからかもしれません。本作の主人公は、階段ではなくスロープ状の、傾斜のなだらかめの坂道を歩むようにして自立への段階を踏んでいるように読み受けられます。とはいえ、喩えるなら重力に反して高いところへ歩んでいくのですから、やっぱりショックを受けたり深く落ち込んだりしていきながら、成長していきます。

執筆時の著者の年齢と主人公や彼女をとりまく人たちの年齢が近い人たちについては、よい部分よりもとくに憎たらしかったり自分勝手だったりする部分がよく書けていると思いました。それでいて、70歳を過ぎた居候先のおばあさんの喋る内容がときに含蓄のあるものがあり、それをやんわりとした口調でつつんだものとして出してくる。そこは、主人公の母親について描いている部分もそうなのです。日常のなにげない場面で、年頃の娘との親子関係の特別な緊張感もあるのですが、そんなぐっと構えていない気持ちでいる母親のなんでもない様子に、その人物としての年齢的に育まれているだろう芯がきちんと捉えられている。つまりは、作者の力量だ、と感じられるところなのです。たとえば、

__________

「世界に外も中もないのよ。この世はひとつしかないでしょ」(p162)
__________

というセリフを、居候先のおばあさんである吟子さんに喋らせているように。

また、主人公にはちょっとした盗癖があります。たとえばこれも、本作で描かれている彼女の恋愛姿勢において、自分からは彼氏に求めずにいるようなところがあり、それゆえに彼氏は居心地がよい反面、彼女との関係に見いだせるものがわからなくなってしまうのですけれども、そんな彼女の外面としての「あまり求めない」姿勢の裏返しとして、その意識の奥底では「求めたい」「欲しい」という渇望が強くあるがため、飴玉だとかを盗んでしまう行動として出てくるのではないのかなあ、と思いました。

若い時分に経済的に自立してひとり暮らしを始める。そういう人生が僕にはなかったので、そうだなあ、と寂しい気持ちにもなりました。表題にあるように、自立が果たせたならそこには「ひとり日和」と呼べるようなものがあるんですよね。

表題作のほかに、25ページほどの短編「出発」も収録されています。こちらは新宿の話で、「ひとり日和」のように、モラトリアムの期間を過ごすようなのとは違い、社会のただなかで生きている若い男の話。こちらもよかったです。キーパーソンとなる同年代くらいの女性が出てきて、彼女はいわゆるケバい恰好でサンドウィッチマンをやっていたりする。そういった、住む世界が違う人たちをそれぞれに、その人たちの立ち位置で描けている点が、僕にとって、この作家から特に心を奪われたところでした。世界って、同じ場所にいろいろな人たちが交錯していてもそれぞれの人たちの住む世界は違って、レイヤー構造になっている。そういったことが、この短編から再確認できました。

野崎歓さんによる巻末の解説が、深く読み込んでいてこそで、なおかつわかりやすい筆致でした。「そうそう!」だとか「なるほど、そうだったか!」と頷きながら、深まる読後感とくっきりとしてくる読書感想の言葉なのでした。

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2023年07月02日

Posted by ブクログ

するする読めた。何かが劇的に変わるわけでもなくただ時間は過ぎていく。じゃあ何も変化はないのかというとそういうわけでもない。ぼんやりとそんなお話だった。
読後感は個人的に好きなタイプのものだった。電車の車窓に額をつけて家を眺めるシーンとか良かった。

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2023年05月08日

Posted by ブクログ

日常の描写が細かく、読んでいてその空気感がスッと入ってきた
主人公は自分の人生をどこか他人事で無責任的に考えていて、けれど一方で新しい仕事をなんだかんだやっていたり、そうやって微妙な心持ちで生活や年月って進んでいくんだよなぁって思った
吟子さんはとても穏やかに生活してるように見えるけど、恋人が海外に帰ってしまった時なんかは、今の主人公よりも泣いたかもしれない
そんな事も、積み重ねてきた年月の中の1つになっていくのかな、と
生まれてから死ぬまで人はひとり、とはよく言ったものだけれど、この本を読んでもそれを感じた

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2022年06月23日

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優しい話

ダメな自分にそっと寄り添う、それだけがいい。
心配とか干渉とかおせっかいとか、そんなものよりも
いい。

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2022年05月26日

Posted by ブクログ

母ともうまくいかず、ひょんなことから同居することになったおばあさんともうまくいかず。

自分を好きになれず、自分に優しくできないから他人にも優しくできない。
そんな状況の主人公。少し諦めつつも、それでもその状況から抜け出したい。前に進みたい。そんな悶々とした気持ちと正面から向かい合い、初めて周り人の大切さに気づき、再生をしていく過程を描いた本作品。

主人公が女の子ってこともあって女性向けみたいな雰囲気はありますが、そんなことはない。
男だろうと女だろうと、年齢問わず、少なからず抱いている葛藤からの脱却。

読んでて主人公に共感しつつ、後半に向けて頑張れと励まし、最後には自分のことのようにすっきりとした気分になる見事な作品。
読み終わった途端に、特に後半部分をすぐにでも読み返したくなる名作。

是非一度手にとってみてください。

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2022年01月06日

Posted by ブクログ

主人公の若さゆえの焦りとテキトーさと、性格のひねくれ加減が見ていてハラハラさせられた。読んでいると情景描写が細かいのでまるでこちらが吟子さんと住んでいるような気持ちになりました。猫と住んで、お化粧をして、社交ダンスに勤しんで、慎ましい恋をする、そんな老後を自分も送りたいな、と思う作品でした。ですが最後まで主人公が母親を軽蔑?しているのはなぜかな?という疑問が残りました

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2021年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

淡々と続く日常の中にある、出会いと別れ。

別れは辛いけど、人生には付き物で、それに耐えながら、新たな出会いに期待しながら、歳をとる。

主人公の若さ故のトゲトゲしさ、吟子さんの歳を重ねた静かな穏やかさが対照的で、自分も主人公と吟子さんの中間にいるな、と印象に残る。

「世界に外も中もないのよ。この世はひとつしかないでしょ」「若いころは、むやみに手を伸ばすからね。わたしみたいに歳をとると、出せる手もだんだん減っていくのよ」
という吟子さんの発言は深く、突き離すわけでもなく励ます、歳をとったからこそ言える、穏やかな一言だと思った。

また、駅や電車の描写が多く、自分も通勤途中で電車に揺られながら読み、その世界観に引き込まれた。

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2021年03月14日

Posted by ブクログ

136回芥川賞受賞作。
ゆったりとした時間の流れが基本にあって、劇的なことはなく、主人公の生活を遠くから観察しているような気分になる作品。

20歳の知寿が居候することになったのは、2匹の猫が住む71歳の吟子さんの古い家。
駅のホームが見える小さな平家で共同生活を始めた知寿は、キオスクで働き、恋をし、時には吟子さんの恋にあてられ、少しずつ成長していく。

主人公の知寿が少し意地悪だったり、少しシニカルな物の見方をしていたり、少しダメな部分があるところが絶妙で良い。
「すごく」ではなく「少し」そうであるところが良いのだ。
特段目標を持たず、とりあえず上京して親戚の吟子さんの家に居候を始めた知寿。将来の目標がないので1年で100万円貯めることを当面の目標にしてアルバイトを掛け持ちしたり、でも途中で掛け持ちをやめたり、恋愛の行方しだいで職を変えたり、そうして月日が流れる。
この流れる感じがリアルだった。こういう月日を過ごしてなんとなく適職を見つけたり、なんとなく合うパートナーを見つけたりする人は、案外多いのかもしれない。

程よい距離感のある知寿と吟子さんの関係性がとても良い。
変におもてなししようという精神も、変に恩返ししようという精神もなくて、無理なく共同生活するコツのようなものをお互いが知っているような関係性。
時々吟子さんがこぼす一言がまた良い。「世界に外も中もないのよ」。今いる世界の外に向かって飛び立とうとか、気負う必要はないのかもしれない。つねにそこにあるのが世界なのだから。などと考えたりした。

ゆったり進む時間のなかで、確実に成長している部分がある。悲しい経験も糧になる。
日々の歩みは牛歩でも、大きな尺で物事を見つめたときに分かる変化がある。
そういうことを感じさせてくれる小説だった。

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2021年02月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公の知寿ちゃんに共感できずうまく入り込めなかった。
なんでこんなに捻くれてて皮肉を言うんだろうなんでこんなひどい言葉を言えるのと思いながら読んでいたら、物語の半分以上終わってた。
自分の若さを強みと思って、おばあちゃんやお母さんの老いを馬鹿にするような発言も嫌だった。

ただ、おばあちゃんのような、相手からの攻撃も笑ってかわせるような余裕を持てるようになりたいと思った。今の自分にはそんな余裕なくて、酷い!嫌い!ってイライラしたから。

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2021年01月20日

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どうしようもなくひとりになりたい気持ちと寂しい気持ちを持て余しながら他人と暮らす日々で成長する彼女。いまこそ、環境を変えなきゃと立ち上がって、自分の知っている人を入れ替えて。懐かしい場所が遠くなる、切なさと明るさには覚えがある。

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2025年04月09日

Posted by ブクログ

表題作はフリーター女子が遠い親戚の老女と同居する話。主人公の言動に眉を顰める類のものがあり共感度が少しマイナスされた。もう一つの短編は一言で表せば「新宿西口」。

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2024年09月28日

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20歳の知寿と71歳の吟子さんの物語。

若い知寿の成長物語で、おばあちゃんの吟子さんがあれこれ教えてくれたり時には説教されたりするのかな〜と思いきやちょっと違いました。
世のおばあちゃんに抱いている偏見なのですが、「面倒見」みたいなうっとうしい感じが全くなく、「ひとり」で毎日を過ごしているおばあちゃん。

この物語に出てくる人達はあまり他人に興味がなく、淡白だなと思いました。でもこれくらいだと楽だろうな〜

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2024年04月29日

Posted by ブクログ

『ひとり日和』と『出発』の2篇。
ひとり日和
生きること、歳を取ること、いろいろな人と別れそして出会い関わっていくこと、それらによって自分が変化していくこと。
おばあさんと暮らす1年間の知寿の変化に、少し切なく少し前向きな気持ちになりました。生きていれば出会いも別れもあるんだよねぇ。複雑な気持ち。
とても味のあるおばあさんで、こういう人いそう!と思ったし、本当に知っている人の話を読んているみたいな気持ちになった。実際、親とかおばあちゃんとかって、嫌だったり恥ずかしかったり鬱陶しいこともあるけど、急にドキッとするような物言いする時があるよね。

出発
仕事を辞めることを決意した主人公とまわりの人々。登場人物たちのやりとりや主人公の内面が面白く、とても好きな雰囲気だった。主人公の、覇気がなさそうに見えて自分なりに色々考えてる感じとか、なんやかんや優しそうなところとかが良いなと思った。お話が唐突に終わったことにびっくりした。

野崎歓さんの解説でこの小説の理解が深まり好き度が増しました。こんな風に小説を味わえる人間になりたい。

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2024年02月14日

Posted by ブクログ

タイトルが示す通りの作品だと唸らされたのは、すべてがFになる以来かもしれません。

「ひとり日和」。

縁戚の老婆と暮らす21歳のうらわかき女性。
50歳以上歳の離れた二人の静かな生活が朴訥と描かれる本作ですが、2人で暮らしているのに、何だか「2人」と言うより「1人」と「1人」という印象を受けました

劇的な展開で友情が芽生えるわけではなく、歩み寄っているような気配もないのに、何故か心地よい2人の関係性は最後まで付かず離れずの微妙な距離感を保ち続けます。
ウェットになり過ぎず、だけどドライなわけでもない不思議なアトモスフィア。

青山作品は数冊読んでいますが、もう少し色々読んでみて色を見つけたいなぁ。

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2023年02月21日

Posted by ブクログ

サブカルっぽい日本映画の様な情景が浮かぶ小説でした。内容は淡白で読みやすく多くを語らないところがいいなぁと思いました。

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2023年02月18日

Posted by ブクログ

世界に外も中もない、という吟子さんの言葉が印象的だった。

若い女の子がおばあさんと暮らす小説、ということでもっと温かい交流を想像してたら意外とシビアだった。
吟子さんは知寿を過剰に甘やかしたりしないし、知寿も過剰にいたわったりしない。
知寿はトゲトゲクサクサしていて、子供というわけでもないけれど自立しきったわけでもなく、社会の厳しさもまだあまり体感していない二十歳の頃ってこんな感じだったかもと思った。

恋人にも別れを告げられ、母親ともギクシャクしている知寿にとって、吟子さんとの付かず離れずの生活は心の灯台になるんじゃないかと思った。

藤田くんの、シレッと別れを告げる感じ、読んでるこちらも傷ついてしまったなあ。若い頃ってこういう残酷な別れ方をするよね。。

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2022年10月16日

Posted by ブクログ

 2007年第136回芥川賞受賞作。
 簡潔な文体で、物語の凹凸も少ないのだが、なぜだか自然と引き込まれてしまう。そんな不思議な感じがする物語。
 独り立ちをすると、今まで慣れ親しんだ景色や物事が、目の前にあったとしても急に遠いものになってしまう、そんな感覚が蘇ってくる作品。新しいことに出合うことはいろいろな意味で怖いものであり、ちょっとした刺激で自分の殻に閉じこもってしまいがちになる。ただ、ふとした瞬間にその殻を破ることができるのもまた事実。そうした心の揺れを描いた作品であり、多くの人が新生活を迎えるこの時期に読んでみると、よいかなと思える。

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2022年03月16日

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20歳の女の子と遠い親戚のおばあちゃんの2人の暮らしのお話です。
穏やかな日々の中にも出会いや別れ、不安に悩まされることがあって、それでも毎日が進んでいくところに共感しました。
また2人の距離感が心地よく、干渉しすぎず、でもお互いの優しさを感じるところもあり、温かい気持ちになりました。

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2022年02月24日

Posted by ブクログ

読書開始日:2021年10月2日
読書終了日:2021年10月3日
所感
本日は酔いながら。
読みやすい作品ではあった。
知寿が吟子さんに問いかける何も返答を期待していない質問も、質問を投げてからする後悔も、憤りもそのなにもかもを経験したよ。気持ちわかるよと言う気持ちになる。
同時に知寿の母とも歳を重ねたせいか同意できる。知寿は全てが甘い。母に完璧を強いる。
全ての解を親が持っていると思い込んでいる。
そんなことはない甘い。
ちゃんとして欲しいという母の願いを叶えないのも自由だが、その意図を判断してからその選択をとるべきだ。
と、その選択に迫られなかった先輩から一言というかたちになってしまう。
知寿の考えるだけ考えて、言いたいことは言えず、最終的に事流れ主義をとらざるを得ず、それをあえてとっているという立場でやり過ごす、なんともいえない気持ちを知っている。
そのループの中で死ぬまで過ごすという恐怖もなんとなく知っている。
それでも出会いだとおもう。
出会いがそのループを打破する。
知寿は出会いを採用という形で得た。
いずれにしても変わることの重要性と、ある一定からの変わらないことの美しさへの重要性。
2つの対局性を、知寿と吟子さんが教えてくれた。
そんな作品。


母の愛情ってこんな風だと思ったんだろうな
お互いあってもなくてもどっちでもいい、というのが空気とは決定的に違うところだった
てくせが悪い=タイミングがばっちり!
こんなときでもわたしは少しみとれたや
腕を組んで密着させ、空気の通る隙間さえない感じだ
ラッシュアワーのホームはくらくらするほどの色の洪水
言葉の最初と最後が微妙に重なっている
いちいち嬉しそうに食べてる
母に対しては感謝というより、負い目、という感情の方がまだ強い
二人だけの生活に息苦しさを与えないよう友達のような母親を目指していたのだろうが、疲れや世間体のためにそうなりきれない母親が、中途半端で恥ずかしかった。
ちずは母に完璧を求め続ける
若い人みたいに波のあるお付き合いじゃないの
それは自分が吟子さんに意地悪なことを言う時の声に似ている
そう言う自信は藤田君に対する自信のなさと反比例して、放っておけばどんどん攻撃的になっていってしまいそうで
楽しさが戻ってくるわけじゃないよ。そんなことない。丹念にやれば、戻ってくるのよ

見ていたら自分がイトちゃんの出来の悪いコピー
知寿ちゃん。考えすぎ。よくない
そういうことは考えるほど良くもなければ悪くも無いんじゃないかしら
型からはみ出たところが人間。はみ出たところが本当の自分
この家にいると、自分がすごい歳とっちゃった気になるんだよなあ
憎しみや怒りのすぐそばで、生きていることを「エンジョイ」している若者と対局。
どうして恋は終わるの。どうして吟子さんの恋は終わらないの。これが年の功。
大人なのになんで熊のぬいぐるみなのだろう。
母は誕生会の主役みたいな顔をしている
ちんまりとして
若いときには、苦労を知るのよ
あと人間は変わるってことかね。それも変わってほしくないところご。で変わって欲しいところは変わらないよね
誰かが可か不可か教えてくれなければ、いつまでも不安なのだ。
山と積まれたバナナの中から一つの房を選ぶのにだって、これでよかったのか、食べてからもわたひはくよくよと悩むのだろう
使い果たしたと思っていても、悲しみやむなしさなんかはいくらでも、出てくるんだろう
靴箱は妄想への入り口
世界に外も中もないのよ。この世は一つでしかないでしょ。
そうやって知っている人を入れ替えていく。知らない人の中に自分を突っ込んでみる。
熱烈な恋の仕方

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2021年10月03日

Posted by ブクログ

ヘンリエッタとかとも似てるかなと思った。
東京に一人で出てきた20歳の女の子。親類のおばあさんの家に預けられて、アルバイトをしたり、彼氏ができたり、おばあさんの彼氏とごはん食べたり、まったりと生活する。

ただ彼女のなかには若さゆえの衝動があって、おばあさんに意地悪なことを言いたくなったり、恋人との関係でやさぐれたり、お母さんに「母親らしいことをしてるとでも思ってるの?」という刃のような態度をとったりする。

面白いのは、彼女には盗みぐせがあるところで、それも誰も気づかないようなものたちをこっそりあつめて、そっと靴箱にいれておく。

クラスメートとか、元恋人とか。
自分でもちゃんとしなきゃ、と思っていても何か体に力が入らなかったり、誰かに攻撃的な態度をとってしまったりすることはある。しかも完全なワルにもなりきれず、中途半端なところでうじうじとしてしまう。その自分にも苛立つ。

そんなときに読むと共感するかも。

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2020年06月01日

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