あらすじ
世界に外も中もないのよ。この世は一つしかないでしょ─二〇歳の知寿が居候することになったのは、二匹の猫が住む、七一歳・吟子さんの家。駅のホームが見える小さな平屋で共同生活を始めた知寿は、キオスクで働き、恋をし、時には吟子さんの恋にあてられ、少しずつ成長していく。第一三六回芥川賞受賞作。短篇「出発」を併録。
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Posted by ブクログ
⚫︎感想
20歳の知寿。生活、恋愛、母との関係、老人世代に思う事…それら全てが未熟でなんとなく不安がつきまとう、そんな若かった頃のことを思い出させてくれる一冊。人との別れと出会いを象徴として描かれる駅が、部屋から見える。その駅へも遠回りしないと行けない。キオスクで働き出した知寿は、仕事場の駅に留まったまま…だったが、キオスクを辞め、新たな生活を始める。知寿の日常の中にメタファーがうまく取り入れられていて、よく考えられた作品だと感じた。諸行無常。どんなに曇っていても、状況は自分の意思、それ以外でも否応なく変化する。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)20歳の知寿が居候することになったのは、71歳の吟子さんの家。奇妙な同居生活の中、知寿はキオスクで働き、恋をし、吟子さんの恋にあてられ、成長していく。選考委員絶賛の第136回芥川賞受賞作!
Posted by ブクログ
淡々と続く日常の中にある、出会いと別れ。
別れは辛いけど、人生には付き物で、それに耐えながら、新たな出会いに期待しながら、歳をとる。
主人公の若さ故のトゲトゲしさ、吟子さんの歳を重ねた静かな穏やかさが対照的で、自分も主人公と吟子さんの中間にいるな、と印象に残る。
「世界に外も中もないのよ。この世はひとつしかないでしょ」「若いころは、むやみに手を伸ばすからね。わたしみたいに歳をとると、出せる手もだんだん減っていくのよ」
という吟子さんの発言は深く、突き離すわけでもなく励ます、歳をとったからこそ言える、穏やかな一言だと思った。
また、駅や電車の描写が多く、自分も通勤途中で電車に揺られながら読み、その世界観に引き込まれた。