20〜30代の女性主人公達の"ままならない"恋愛を描いた短編集。田舎の男同士の慣習に染まり、夜な夜な飲み歩いてはトラブルを起こすクズ男と婚約することになったり(果実)、過去の恋愛の失敗を踏まえて試し行動をしていたら振られたり(赤ずきんちゃん)、離婚後に生命保険の変更手続きの為に元旦那と会ったはずが、そのまま焼け木杭に火がついた挙句妊娠してしまったり……(お元気ですか)女としての普遍的な幸せを手に入れたいと願いながら、なぜか誤ったルートを選択していく主人公が多く「いや、そうはならんやろ!」と何度も声に出かかった。真似てはいけない恋愛の見本としての資料価値を感じる。
個人的には表題作の「死ぬほど好き」の妙子のイカれ具合が良かった。「業務が立て込んでいて暫く連絡が取れないし会えないよ」という恋人の職場に数時間おきに電話をかける前段に続き、深夜に恋人のアパートの前で帰宅を待ち伏せ。そして「来ちゃった♡」とヤンデレ彼女の十八番を惜しみなく披露してくる。もちろんそこに悪気は一切なく、「いくら仕事で疲れていたとしても、彼氏くんがだ〜いすきなカワイイ私と一緒にご飯食べてセックスすれば元気になるでしょ?」と心の底から信じきっているのが凄い。そして、「最初に熱心に口説いてきたのはそっちなんだから、こいつは私のことが大大大好きに決まってる!」と、交際中に嫌われたり、冷められる可能性を1ミリも考えていない圧倒的な自信……。恋愛に病める女子はこの妙子の強気な姿勢と凄まじい行動力をある意味見習ってもいいのかもしれない。(……だけどやり過ぎは結局妙子のように破局ENDへの道が開くので、彼氏の性格等を考慮し、許される範囲を見極めて実行するのが大事。)
あとごく短い話だったが、「花火」の主人公のミリちゃんはちょっと可愛かった。ざっくり言うと彼氏とのセックスが気持ちよくないので自由研究に励む話なのだが、もうこの設定がエロゲだか同人誌にありがちな感じで既におもしろい。ちなみにこの後の展開もお決まりのパターン通りで、自分の経験不足が問題なのでは?と結論づけたミリは、他の男を試そうと経験豊富な女友達にイケおじを紹介してもらって開発に勤しむものの、最終的には彼氏とのセックスが一番気持ちいいよね〜〜とおじを切り彼氏の元に戻る。
ミリのしたことは浮気といえば浮気なのだが、他の主人公達と違って精神的な部分は一切揺れていない。何度抱かれようと「ワタシ、このおじのことを好きになりそう……どうしよう……♡」みたいなふざけたことを一切言い出さないのが良い。おじとの身体の相性は良いし行為も実際に気持ちがいいけど、それはあくまで彼氏との性生活を充実させるための実験台であり、経験値!と割り切っているのが潔く、一概に彼女をビッチとは言い切れない(言い切りたくない)自分がいる。
なんでしょうね。他の話のスッキリしない関係性や煮え切らない態度だったり粘着質な感情の末に展開される行為と違い、ミリは純粋におじとの行為から自分達カップルに不足しているセックスのいろはを習得しようとしているのが、なんか自身の技術向上に熱心なアスリートのようでさっぱりしていて好感が持てたというか。上手く言えませんが、エロはエロでもスポーツに近しいエロというか、健康的な雰囲気を感じました。以上です。