あらすじ
東京の中流家庭の主婦として誇りを持つ由美子。高校中退の息子が下品なフリーター娘・珠緒と結婚宣言をしたことで「うちが下流に落ちてしまう」と恐怖を覚え、断固阻止を決意する。一方、馬鹿にされた珠緒は「私が医者になります」と受験勉強を開始。愛する息子を取り戻すため、“わたしの”家庭を守るため、専業主婦・由美子の闘いが始まる…。新聞連載時から話題を呼び、主演・黒木瞳でNHKドラマ化も。切実な女の闘いと格差社会を描いた、傑作ベストセラー小説!
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Posted by ブクログ
おもしろかった。
自分の息子が高校を中退していても、息子の結婚相手を下に見ている母親。
身内には甘くて他人には厳しい典型でああはなりたくないと思うけれど、
自分のことは棚に上げて、というのは、大なり小なりみんな持っている感情なのかもしれない。
頑張っているタマちゃんを応援してたから、
ラストは嬉しかった!
タマちゃんおめでとう!
Posted by ブクログ
東京の中流家庭の主婦として誇りを持つ由美子。高校中退の息子が沖縄出身のフリーター娘・珠緒と結婚すると言い出し「うちが下流に落ちてしまう」と恐怖を覚え断固阻止を決意する。一方馬鹿にされた珠緒は「私が医者になります」と受験勉強を開始して…。
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虚構だけどある意味リアルな内容。勉強できることが基準となる今の資本主義社会において、努力は重要だけど、努力しても這い上がれない境遇にいる人たちもいる。そんな社会問題を描いていると思った。
努力しないこと、上昇欲がないことで「下流に落ちる」と登場人物は思っているが、思わぬ病気や事故で人生が一変することだってあるだろう。
匿名
読み切った
たくさんレビューがある昨日です。30年ほど林真理子先生のファンです。文体がだいぶ古臭くなってしまいましたが、嫌な人を描くのは相変わらず上手です。この昨日発表時、今ほど無気力な若者って取り沙汰されてなかったからすごい。
Posted by ブクログ
面白かった。
自分の母親が由美子と同じタイプだったので、私は可奈のような価値観で育ち、けれどある時から自分自身の性格とその価値観が折り合わなくなって、翔のような無気力な人間になってバイトを点々とし、さらに何年も経ったのちに悔しさから珠緒のように奮起して1からやり直し、そんな過去を振り返った現在、父親と同じような考えに至っていたから、とてもリアリティを感じた。
登場人物それぞれが片寄った価値観を持っているけれど、それのどれもが本人の持って生まれた性格や環境や人間関係や時間が作り上げたもので。だからこそ、その個々の作り上げてきた価値観は、このお話の中でイヤな女として描かれてた由美子や可奈ですら、本当は大きな間違いがあったわけではないとは思うのだけど。ハッキリとした悪がなくても、いつか大きな間違いになってしまうことは、人生の中で往々にしてあるよねと。読後、大きく心が動くような感動があったわけではないけれど、じんわりしみじみ考えてしまうような本でした。
Posted by ブクログ
やっぱり、めっちゃ面白い。中学生くらいの時から、何故か唯一何回も読み返している本。
やっぱり林真理子さんの描く、"どこにでもいそうな嫌な女"像が大好物だし、何度読んでもおもしろい。
最終的なストーリーの展開も、ああこうなるのか…と有無を言わせないラストにむずむずするような、スッキリするような。教訓として考えさせられるところもあり、人間の醜い感情に考えさせられるところもあり、という感じ
Posted by ブクログ
がんばる人がんばれない人、っていう対比。わたしはどっちだろうって考えて、どちらにもなると思った。私から見てがんばりすぎてる人を思い浮かべると、たしかに劣等感や責められている気持ち、その人がいることで自分の評価が相対的に下がることへの妬み、少なからずある。逆にもっとがんばろうよとかこうしてみたら楽しいよって言いたくなる人もいる。そういう人とは結局話が合わないし一緒にいると世界が狭まる感覚がある。
この気持ちみんなどう処理してるんだろう?みんな同じような気持ち抱えてるけど隠してるのか、人格者はそうならないのか。
生活レベルのことだけじゃなく、よりがんばりたいっていうのもキリがないよね。がんばっているのが正義になってしまったら、永遠に自分を認められない。珠緒はそうじゃないと思う。天性の(?)100%人と比べない幸福の感じ方。珠緒の台詞には人と比べて自分を卑下したり立場が上と感じたりそういうのはなかった気がする。
珠緒に勇気もらったなぁ。
あと、うまく言えないけど珠緒っていうキャラクターが本の中の人って感覚があまりないかも。珠緒に出会わせてくれてありがと〜林真理子さんって言いたくなる。
Posted by ブクログ
うわー面白い!
こんな親にはならないし、子どももこうは育たないとは思ってはいるけど、紙一重だわ。
私自身の環境に似てるところがあって、身につまされる…
「そこそこの大学を卒業→それなりの収入のある男性と結婚→子供を産む」という生き方が幸せかというとそうではない。人はどんな環境にいようと、慢心することなく努力し続けることが大切さだということを筆者は言いたかったのかなと思いました。
登場人物それぞれに共感できるものがありますが、「こんな人、いるかなぁ?」と思うような極端なキャラ設定は面白く、楽しく読めました。
Posted by ブクログ
人間観察力に優れた林真理子さんの持ち味が活かされた本です。
ルンルンを買って‥からそこは本当に変わらないなと感じました。
一昔前の皆が中流だと思っていた時代も様変わりして多様性の時代となりました。昭和どっぷりの私には違和感多く感じるこの頃ですが、
今の林真理子さんはどんな本を書くのかなぁ〜
立場上、本心なんて書けないだろうなぁなど全く関係ない想像までして読み終えました。
Posted by ブクログ
「我らがパラダイス」読後、久々に手に取った林真理子さんの小説は期待どおりの内容でした。
人それぞれに持つプライドについて、また、それを元にどう生きるか、考えさせる作品でした。
Posted by ブクログ
自分が思春期の親になってみてわかる、子供と自分は別人格ということ。
自分の思うようには子はならない。
我が家の場合、勉強しなくても、歯を磨かなくても、部活を辞めてしまっても。
自分の価値観を振り返ることをせず、見栄っ張りな自分を自覚出来ず、子供を変えようとすると、親子関係は恐ろしいことになるのですね。
諦めと自分の人生を生きること、が大切。
あと、サラリとでてきた、夫婦仲が良ければ、子供は間違って育たない、はグサリときました。
Posted by ブクログ
自分が上流であると思う主人公の母。決して努力をしないその息子。収入の高い相手との結婚のみを目指す娘。
主人公である母親は息子の彼女を叱責してしまう。「あんたのような下流の家の出の娘はうちの息子にはふさわしくない。ウチは代々医者の家系」
息子の彼女は努力の末医大への合格を果たす。しかし、息子は、「がんばった君に僕はふさわしくない」と別れを告げる。
外資系金融機関勤務の男と結婚を果たすが、その男はうつ病を患い、実家に帰ってしまう。乳児を連れて娘は母親のもとに戻る。そして医大合格した交際相手と別れた息子は、マンガ喫茶の店員の給与では自活できず、彼も母親の元に戻る。
下流から出ない若者。上昇志向のある若者。上流とは?下流とは?
「私は何を間違えたのでしょうか」と母親が祖母に書く手紙で終わる。
Posted by ブクログ
福原家と宮城家の話が交互に章立てされていて読みやすかった。中流家庭と自覚している福原家の由美子が息子が高校中退したことをきっかけに家庭の崩壊の危機を感じている様子が描かれている。その息子の交際相手が宮城家となるがこちらも訳ありの家庭で…息子をもつ母親目線では息子の育て方が間違えたかと思い悩む姿は切実で同情するが子育ては思うようにいかないことが多いという前提でどこかで割り切らないといけないのかもしれない。成人した子供の幸せは見守ることしか出来ないのだ。
Posted by ブクログ
これまで読んでこなかったようなジャンルだったので、新鮮でおもしろくサクサク読めた。
個人的には感情が揺り動かされるような感動や学びはなかった。ワイドショーを見てるような感覚で、ほうほうなるほどそういう世界もあるのかという、10歩ぐらい引いたところから本を読むという不思議な感覚だった笑
これでもかというくらいの人間のエゴや見栄、偏見を見せられつつも、一方で這い上がっていく馬力みたいなのも描かれていて(這い上がると表現してしまっているところが既にこの作品に毒されてしまっているかも笑)、個人的には読んだことないタイプだったのでおもしろかった。
Posted by ブクログ
ありそうな話だなぁと読みながらそのリアリティにびっくりした。あなたのためを思っての教育方針、学力での人の見下し、今の時代そぐわないといえばそぐわないけど、それだけの話でもなく。うーん、考えさせられる話だった。
Posted by ブクログ
多分、発行直後に読み、再読。
東京の中流家庭としての誇りを持つ由美子。
高校中退の息子、翔がフリーターの珠緒と結婚すると言ったことで、自分が下流に落ちてしまう、と恐怖を覚える。
そこで、断固阻止を決意する。
ずっと由美子に馬鹿にされ続けた珠緒は、私が医者になれば、結婚を認めるか?と啖呵を切り受験勉強を始める。
中流は、決して上流になれない。
下流を蔑むことで、プライドを満足させる。
なんて話だ!と思って読んだのは、発行直後の2010年。
その時と、12年経過した今では、同じ本を読んでいるのか、と思うほど自分の感じ方が違う。
幼い時から、母親の価値観が全という世界で育ち、中学受験をして高校に進学した頃から、反抗することで自分を見つめ直す翔。
今時の、と言っても2010年の若者の、ずっとフリーターで何が悪い?
この考え方は2022年の今も、ますます増長して受け継がれていると思う。コロナで成人式が無くなった、2000年産まれ、あんなにミレニアムベビーと騒がれた子どもの20年後。
子どもは産まれたときから不況で、私自身は決して裕福だった生活とは思えないが、子どもは、私を恵まれた生活を送ってた、という…
気の毒なことに、高校中退した翔には見本となるモデルがいなかった。中流家庭の自分たち家族はいかに立派か、由美子の父親は、医者だった(からエライ)その感覚は今の子には伝わらない。
翔の父親は、なんか頼りにならない。早稲田理工学部出身でも。
翔の姉の可奈は、対照的で、最後の大学でブランド女子大を選び、卒業後も正社員で決まっていたところがダサいという理由で断り、ハケンで華やかな商社に勤める。
そこで、自分で稼ぐではなく、稼ぐ夫を探す。
大変な努力により、きちんとそんな夫を確保する、しかもデキ婚で。
周りを正しい高収入の暮らしで固めたら、幸せになると疑いもしなかった。それがあっという間に崩れ去る。
いやらしいけど、読者としては、ざまあみろと思う。
翔の好きだった珠緒は、受験勉強の二年間で、離れた存在になってしまう。ここに格差が生まれるが、努力に努力を積み重ねた珠緒は、これからの人生に目的が見えてきた。
翔は変わらないから、その場に立ち止まってしまう。
世の中や男性をナメてきた可奈の将来も気になる。
シングルマザーとして再起するか、夫を回復させ尻を叩いて、もう一度セレブとして返り咲くのか。
林真理子の小説で面白いのは、とにかく学歴フィルター、家系フィルター、ものすごくはっきり分かりやすく描かれているところ。
そしてバブルっぽい描写も素晴らしい。
話し方も…ッ、というのは、ほぼどの本でも健在。
多分、また10年経って読んだら、また違う感想を抱きそう。また読みたい本です。自分への戒めとしても。
Posted by ブクログ
めちゃめちゃ毒毒してましたwこれどちらの側も理解できるし、難しい。自身はかなり努力してきて中流の家庭を築いた由美子からしたら、努力することを知らない玉緒のような田舎の家庭をバカにしたくなるのかもしれない。玉緒の家庭からしたら自分たちの生活がいわば当たり前で翔との結婚を認めてくれない由美子は大層意地悪な親に映っただろう。見返しに玉緒が医学部受験を始めたのに対して翔の気持ちが逆にどんどん離れてしまったのはもうなんとも言い難いほど切ない。結局誰が正しくて誰が間違いなのかとかなにも言いようがないけど、個人的には人には人の暮らしがあって、当人はそれで幸せで満足しているのなら、人を見下す権利はない。たとえ自分がどれだけ努力してその地位を築いていたとしても。
あと、単純に子育てって難しいんだなと思ったw
Posted by ブクログ
それなりの教育を受け、平穏な家庭を営む主婦由美子の悩みは、20歳になる息子が中卒で定職をもたないこと…。
そして完璧な結婚をしたと思いきや…出戻って来た娘 プライドの塊の様な福原由美子が子育てに右往左往している様子が実に丁寧に描かれていて絶えず脳内映像で動いていました。
とても嫌な性格ではあるけれど、どこか同情してしまう部分もあったり、息子(翔)の恋人である沖縄の島育ちの珠緒の行方が気になり最後まで楽しく読めました。
上流・中流・下流の階級、家族の価値観等、色々考える部分もあり面白かったです。
Posted by ブクログ
上に上がりたいと思っても努力ができない、というのと、そもそも上に上がりたいと思わない、という差。息子を持つ母親としては翔の不甲斐なさに絶望を覚えながら読んだが、一端の女性としては可奈の強かさや珠緒のひたむきさ、冷静さに共感を覚えた。そして多くの人が大人になるに連れて、見えないヒエラルキーの中で互いに格付けし合って生きていく現実をこの本は生々しく描いていて、ちょっと心をえぐられるところもあった。可奈の見栄っ張りや母親由美子の「上から目線」は傍から見れば滑稽だが、誰でも思い当たることはあるだろう。結局、人生の幸せって本人にとってしか分からないよなぁと色々考えながら読めた本でした。
Posted by ブクログ
努力する事で新たな扉を開けられることを教えてくれる本。
最終的に同じ道に進んでいても、自分が選んでるか、選んでないかで大きな違いがある。
道は切り開くものではないかと思わせてくれる。
今は私は与えられた場所にいるけれど、自分で努力して切り開きたい。誰にも依存せず、頼らず、自分の価値観で生きたい。
すらすらと読めて、疲れているときにおすすめの本。
どちらかというと。
福原家には共感したというか、感情移入できたけど何故か宮城家には共感できませんでした。
翔みたいな無気力な人間て、生きてる意味あんの?可奈の計算高さって古くない?とか、突っ込みどころ満載だったけど、由美子の滑稽さが楽しかったので星3つ。
誰でも少なからず、他人との関係をランク付けて自分の立ち位置確認するもんじゃないのかなと
思う。
Posted by ブクログ
林真理子さんらしく、心の裏側をリアルに描いたお話で、学歴信仰、エリート志向という親の志向とは逆に転げ落ちていく子どもたちのお話でした。誰の心にも眠っていそうな気持ちを言葉にすると、こんなにダークな黒い欲望になるんだな、と思わされました。そんな気持ちに向き合う機会にもなりましたが、救いのない話に閉塞感も感じ、、。
自分は子どもとどう向き合うのか?理想を言って夢を見ていられるのは子どもが小さいうち?
いやいや、やっぱり理想は持ち続けたい。ただそれは親の理想の人生を押し付けることではなく、子どもの生きる力を信じて、可能性も信じて、子どもの選ぶ人生を支えらる親でいたいと思いました。
リアリティは日々、試行錯誤ですけれどね!
Posted by ブクログ
昔読んだけど二回目。
かなり有名な作品なので読みやすさは格別。
大学生くらいのときに読んだんだけど、結婚したあと読んでみるとまた違う裏の感覚??で読める。
お金持ちに嫁いでも結局、幸せになるというか、幸せを掴むのは自分自身なのよね。お金で幸せになるところももちろんあるんだけどさ。
Posted by ブクログ
Audible
Audible で再読。
Audible で読んだものを登録していいのか悩んだけど、本は本だし、まぁ良いかと。
相変わらず、上流上流と謳ってるお母さんにイライラした。上流ってなんだよ?!
結局器用に生きるなんてことは難しくて、より良いと考える自分に向かって素直に努力することが、成功の近道なんだなと。まぁ、長女も長女なりに女を磨くって点で努力してたと思うから、評価は難しいけど。
でも誰とも比べることなく、ひたむきに努力してれば、誰かみとめてくれるのかなぁと。
幸せになるために、人を落とすのではなく上がる努力をすることってことか。
上がるってどこにーー???!!
Posted by ブクログ
林真理子さんの本を初めて読んだ。
とても読みやすい文章で、すらすら読めた。
人を上に見たり、下に見たり…
気が付かないうちに、自分も同じようなランク付けをしている気がしてゾッとした。やめよ…って。なかなかやめられるものでもないと思うけど。
個人的には、福原家のお父さんみたいに肩の力が抜けている人や、宮城家のお母さんみたいにお金や世間体に振り回されず肝が据わっている人がとっても好きだな~と思った。
Posted by ブクログ
林真理子の小説にはどうして狡賢い特に女が出てくるのだろうか。
読んだ後は自分にその狡さに感染しているような気がする。
世の中を、他人を、冷めた目で見てしまう。
知らないほうが幸せでいられたのかもしれないという世界が見えるようになる。
対照的な二つの家庭。
福原家と宮城家。
大切なのは今なのに親の職業や自分や身内の出身校にこだわる女。
自分の夫や子どもに努力させることに努力するつまらない女。
無知だが素直でまっすぐで、不思議に周囲の人々を惹きつける女。
翔の冷めた考え、上昇志向のかけらもない、こういう人が増えれば日本はどうなるのだろうかと強い不安を覚えた。
下流の国になるのか??
今まで出会ってきた人は福原家、宮城家どっちよりの人だろうか。
私自身は??
今さら珠緒のように真っ直ぐにはなれないが、福原家の女たちのようにならないように気を付けなければ。
珠緒のゲームをやっても楽しくなくなる感覚には共感した。
それまで面白い思っていたことがつまらなくなったが周囲への配慮から付き合う。
でも、その時から少しづつ距離が開いてきているのだと思う。
オーディオブックにて聴く読書。
小説をオーディオブックで聴くのは初めて。
最後のほうは続きが気になり、仕方がなかった。
Posted by ブクログ
人間その気になって頑張れば、とんでもない夢でも叶えることができる。
この本を読んでそんな風に思えるほどわたしは若くないので、ただただ「林真理子の小説」というものを楽しんだ。
早稲田の理工学部出身の夫を持つ由美子の悩みは、20歳になる息子の翔のことだ。中学受験をして入った中高一貫の名門校に入学するも「何か合わない」と言う理由で、高校を中退してしまった息子の翔。まさか一流大学出身の夫とそこそこの女子大を出ている自分との子どもが中卒フリーターになるなんて。。。
そんな翔が結婚したい女の子がいると言う。相手は沖縄出身の2歳年上の女の子で名前は珠緒。高卒でブスで下品だし、ちゃんとした家庭に育っていない。そんな子がうちの息子と釣り合うわけがないと由美子は思う(翔は中卒なのにね)。
二人の結婚に絶対反対の由美子は「あなたとわたしたちではそもそも住む世界が違うのだ」と言う。「わたしは医者の家庭で育った」「うちはきちんとした家だ」を繰り返す由美子にしびれを切らした珠緒は「わたしが医者になったら、翔君との結婚を認めてください」と啖呵をきってしまう。
由美子にはもう一人、可奈という娘がいる。彼女は結婚して専業主婦になり、いい暮らしをするためだけに、男性受けがいいお嬢様女子大に行き、そこそこめぐまれた容姿にお金と時間をかけ、せっかく決まりかけた堅実な会社の正社員の採用を辞退して六本木にオフィスがあるIT企業の派遣になり、日々高学歴高収入の男性との食事会に明け暮れる。
可奈は父親から影で「男を食い物にして」と思われているが、わたしは自分の夢に向かって出来る限り最大限の努力をするという点では、珠緒も加奈も同じだと思う。医者になるため医学部合格を目指す夢と、みんなに羨ましがられるようなセレブリティな家庭を持つための殿方をつかまえる夢。人がそれぞれ持つ夢に、他人が文句を言う筋合いはない。
とにかく、このどうしようもない世間知らずのぐうたら息子を、由美子は一生面倒を見ることになるのだろう。本人の持って生まれた性格や後から育った自我などを一切無視して育てた結果が、この無気力で非生産的な人間なのだから。
結局、由美子は貧しい家庭を嫌っているわけじゃなくて、学歴がない人を下に見ているような気がした。
学歴があったって、お金をかせげない人はこの世の中にたくさんいる。信じられないようなお金持ちも、見るに堪えない貧困家庭も、今この瞬間にそれぞれがそれぞれの思いをかかえながら、懸命に、もしくは自堕落に生きているのだ。
そんな地層のような階級の、わたしはいったいどの辺りなんだろうと、ふと考える。