砂村かいりのレビュー一覧
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砂村かいりさんの二冊目。
展開や構成が抜群!というわけではないんだけど、この人の選ぶ言葉で綴られるストーリーと、波長が合うような気がする。
奥田亜希子さんみたいに。
「コーヒーの囚人」は、同居人の元?恋人が急に押しかけてきて一緒に住むという話なのだけど。
真波が副業として働くスーパーでのエピソードに、なんだかグッと心を掴まれる。
今までは一つの業務に集中できたのに、なぜかチーム毎に調理から陳列までを競わされる。
それが明らかに効率を悪くしているのに、リーダーは自分のやり方が正しいと固執するのだ。
あー。なんか分かるなー。
そうやってイライラしても、何も変わらない。
どころか、自分の立場を悪くするだけだったりする。
こんな小さなエピソードが、楽しい。
「どこかの喫煙所で会いましょう」は、構成も上手い。
30歳を間近に迎えた一人の女性を巡る、二人の男性が交互に視点人物になって展開する。
女性の持つ二面性の、それぞれを好きになる二人の男性の対比も面白いのだけど。
誕生日を前にした彼女が二人に向けて「結婚」をちらつかせてからの、二人の思考もまた面白い。
これ、映像化してもいいんじゃないかなー。 -
Posted by ブクログ
じっくりと読みました。友情婚たからこその良さもあり、もどかしさもあり、気まずさもあり。
恋愛結婚だったら気まずくならないかもしれないところが友情婚だからこそ気まずくなってしまったり。
読みながら色々考えました。自分の性自認って本当はどうなんだろうとか、無意識に男らしいとか女らしいとかで誰かのこと差別したりしていないだろうか、とか。
尊にとっての奈穂、奈穂にとっての尊のような存在にはなかなか出会えないだろうなと思います。
結婚とか出産とか性自認とか、自分とは違った考え方を持っていても、それを否定するのではなく、ただあなたはそうなんだね、と受け止めてくれる社会であったらなぁと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレコーヒーが登場する短編集。砂村かいりさんといえば、炭酸水と犬やアパートたまゆらを読んでときめきの過剰摂取をし、1人できゃあきゃあした思い出があるので、ほっこりするお話が多いのかなと思いきや。濃く入れすぎたコーヒーの苦味がべったり舌に残っているような、そんな苦い余韻が残る。
所々に日頃「何か嫌だ」と引っかかりつつ深く気にしないようにしてきた感情のささくれみたいなものが散りばめられていて胸がザワつく。そのザワつきが癖になり、あっという間に読み終わってしまった。もっと読みたい。
"招かれざる貴婦人"の得体の知れない不穏な空気がとても好きだったなあ。
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Posted by ブクログ
初めましての作家さん。そして久々の恋愛小説だった。いい恋って、背中を押してくれる感じがすごく好きだなー、と思う。
人はみんなそれぞれに事情がある。相手を思いやりながら、自分の心と折り合いをつけながら、人間関係を構築していく。相手のことを考えすぎて変な方向に解釈してしまったり、自分の思いを不適切なタイミングでぶつけてしまったり、単純にはいかないからこそ、悩むことも多い。
けれど、何度失敗したとしても、ちゃんとやり直すことができる。謝ったり、許したりすることで、もっと相手を知ることができて、深い仲になっていく。
人間関係にもがきながら、それでも一緒にいたい人と一緒に居続けるために動いていた主人公に励まされた。
失敗したってやり直せる、私も頑張ろうと思える作品。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ世界で1番気の合う、友人と結婚しているという見出しに惹かれて読み始めた。性交渉なしの夫婦生活を送る菜穂と尊の日常を描く。結局こういうのって、嫉妬とかがきっかけで恋愛感情が生まれるのが鉄板ですからね、と思いながら読んでいたが結論からいうとそうではなかった。それが、よかった。そうではなかったのだが、物語の終盤で尊が菜穂を助けるシーンがあって、そこがカッコ良すぎてときめきました。
ホモソーシャル的会話に嫌悪感を抱く尊。子どもを産み育てる女性たちの会話についていけない菜穂。男って、女ってこうでしょ?的な世間の風潮からはみ出して、生きづらかった2人が再会して、安寧に過ごせる2人だけの場所があることが、どれだけ幸せなことであろうかと思った。同性とか異性とか関係なく、というのは理想論なのかもしれないが……自分の嫌なことをしないでくれて、つらいときはただそばで寄り添ってくれる人がいることの幸せを感じる一冊でした。 -
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ネタバレれいちゃんみたいな子っているよなぁ。
人を小馬鹿にして見下して、噂や陰口で周りの関心を引こうとする。馬鹿にする相手は選ぶ。卒業した今でこそ、「暇なの?」と一蹴できる強さも余裕もあるけれど、学生の頃はそうじゃなかった。女子高生の友達関係って、本当に難しい。常に誰かの視線を意識していると思う。例えば、教室移動の一瞬でさえ、誰かと一緒でないと後ろ指を刺されてしまうし、カースト上位の子に嫌われるとその波紋はクラス全体に広がってしまう。個人としてはその子のことが嫌いじゃなくても、一緒にいると周りからダサいと思われるからという理由で、みんなの前ではその子と仲良くしている素振りは見せないとかもある。
この小説は、そんな人間模様がリアルに表現されていて、高校生に戻ったような感覚で読んでしまった。寿美子にもすごく感情移入してしまった。
タイトルにある「苺飴」は、れいちゃんが気まぐれで寿美子にあげるお菓子である。苺は甘いもの、毒は苦いもの。れいちゃんは、寿美子にとってまさに毒入りの苺飴のような存在だったと思う。花一匁の出来事は、どれだけ時間が経っても胸を締め付けるような、辛くて重苦しい記憶で泣きそうになる。けれど、飴をくれたり、ムクと遊んだり、そういった無邪気で純粋で楽しい思い出が確かにある分、憎みたくても憎みきれないのだと思う。最後の合評会で、菅原さんが、「純度の高い好意や友情しか感じない時間が存在したからこそ、苦しんだんだと思う。感情の両極を気まぐれに表す行為は、相手を精神的に支配することもあり得るから。それでも、どうしてももう一度見たい景色があったのだと思う。」と評したシーンは、まさに寿美子がれいちゃんに抱えていた感情を言い表しているなぁと思った。
自分を苦しめる人間関係だとしても、それから逃げられなかったり、それに縋るしかない時があるのだと思う。そういう状態に置かれた人って、多分相手を憎みつつ反撃する気もごっそり削がれていて、無力感を感じているのだと思う。この小説を読んで、そういう人間とは物理的に距離を取ること、他の依存先を見つけることが大切だなと思った。都内への進学が決まった寿美子が、れいちゃんに返信しないことでこれまでの関係にけりをつけた場面は、寿美子がれいちゃんの呪縛から解放されたことを象徴しているなと感じた。そんな寿美子には、苺飴の毒はもう効かないのだろう。