砂村かいりのレビュー一覧
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タイトルの通り、駅と旅をテーマにした6人の作家によるアンソロジー。
と言いつつもテーマの縛りは緩めで、アンソロジーとしての統一感は中途半端な印象。
始めの2編、『きみは湖』と『そこに、私はいなかった。』は、いずれも若い女性を主人公にした青春小説。他愛もないと言ってしまえばそれまでだが、どことなく尖った感性が仄かに感じられて悪くない。
次の『雪花の下』は、自意識過剰で家族との関係を壊しかけている中年女性が正気を取り戻していくお話。よくある話ではあるが、旅に同行する義妹の造形が絶妙でなかなか面白い。
ここまでは連作の雰囲気が保たれていたのだが、次の『東京駅、残すべし』で一変。ぶっ飛んだ世界観と作 -
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「マリアージュ・ブラン」、フランス語で「偽装結婚」という意味みたいです。
今作にでてくる奈穂と尊の夫婦は「友情結婚」かはたまた「偽装結婚」か。この物語は、そんな「普通」になりたい2人のお話でした。
私自身、「普通」になりたくて結婚した2人とは少し違うのですが、結婚への憧れがあるので、2人くらいの年齢になったら焦りそうで、そういう部分は共感できました。
「普通」になりたくて結婚した2人ですが、「友達夫婦」だとやはり世間の「普通の夫婦」とは違うのかもという、2人の葛藤が窺える作品でした。
私もいま一度、世間にたくさん存在する「普通」について考える良い機会をいただけました。
この物語のテーマで -
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全てのお話がにコーヒーが出てくるので飲みたくなる。
お話事態もほろ苦さがあって切ない。
コーヒーの囚人は同居している友達が不在の間その恋人と暮らすことになる奇妙なお話。だんだんと距離が縮まる二人だったが、お互いの秘密には踏み込めないもやもや感がありつつ、最後は意外な真実だった。
隣のシーツはもう虚しさしか残らなかった。上司が滅茶苦茶嫌な奴かと思ったが後半はどっこいどっこいかな。
どこかの喫煙所で会いましょうがスピード感もあって、はっきりしたストーリーだったので印象に残った。さんざん男性達を振り回してきたけど、最後に見切りを付けられたであろう最後にスッキリした。
招かれざる貴婦人がちょっとホラ -
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私は、恋愛というものを真剣に考えられない。
恥ずかしいとかそんなものではない。
私は相手の行動で自分が揺さぶられることが
好きじゃない。
好きな人となるとさらに揺さぶれる。
真剣に考えるほど、人をおかしくさせていくのか
恋愛だと思う。
本作、「炭酸水と犬」は恋愛というものに揺れ動く人たちばかりが登場する。
どの主人公も恋愛が絡んだ時の行動がリアルで生々しい。
主人公の由麻は、長年付き合っている恋人への愛情から不義理なことをされても決断ができない。
由麻の恋人、和佐は由麻を愛してるからではなく、自分のルールとポリシーを中心に動いてるゆえ、由麻を傷つけていることに気づかない。
和佐 -
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ネタバレ第三者から見れば別れた方がいいとわかってはいるものの、9年もの何月、30歳手前、彼のことを愛しているという現実が中々そうはさせてくれないよな〜。
和佐は自分も同じ立場にならないと吹っ切れないんだな〜とことごとく呆れた。由麻はもし、真先くんが自分に思いが向いていなかったら、本当に別れるという選択ができたのだろうか?と少しモヤモヤしてしまった。結局、恋愛の穴埋めは恋愛になることに対して少し違和感を覚えたが、最後は不覚にもきゅんきゅんしてしまった。真先くんの対応が、1番納得できて報われて良かったかな〜と終わる1冊だった。
私は馬鹿だから真先くんの気持ちに全く気づかず最後にハッとしてしまった笑。でも気 -
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どの物語にも必ずコーヒーが登場するのだが、それはほっと癒してくれるものだったり、ほろ苦さを味わうものだったり様々で、何だか人生の難しさやもどかしさを表しているようだ。
特に印象深かったのは「どこかの喫煙所で会いましょう」。恋人の兄が障害を抱えていると知り、結婚を躊躇する有沙の気持ちが理解できなくもないし、それを知って気持ちが冷めていく彼氏の気持ちも分かる。しかし一番心に残ったのは有沙の浮気相手である寿のセリフ。
「人は誰しもリスクを背負って生きている」
「他人の持つリスクに排他的でいれば、それはいずれ己にも降りかかってくるものだ」
まさに、そのリスクに対応する努力をし続けることこそ人生