幸田文のレビュー一覧

  • おとうと(新潮文庫)

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    美しい日本語の中に、力強さがある。

    どんな不良になっても、弟はやはり弟である。

    おとうとを愛するが故にとってしまう行動、そして生まれる哀しみを身にしみて感じた。

    ひとはあたたかい。

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    2011年12月24日
  • 黒い裾

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    美しい日本語が読みたくて買いました。
    幸田文のことは「露伴の娘」で「随筆家」「着物の人」
    くらいのイメージしかなくて・・・
    でも、この本読んでひっくり返った!

    なんて雄々しい小説を書く人だろう。
    その雄々しさは明治女の雄々しさです。
    キリキリと働く。いちぶの隙もないくらい完璧を目指す。
    最高の仕事(家庭のこと)をして、
    手柄はそっと一人あるいは女同士で噛みしめる。
    そんな生き様の、なんて美しいことか。

    「私」の一人称で大作家の「父」のことを書いたりするから、
    私小説かと思うけど、どうやらフィクションらしい。
    そのへんの曖昧さも、幸田文の力量ってことなんでしょう。
    「姦声」と「段」はフィクシ

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    2011年12月14日
  • 月の塵

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    とても丁寧な文章で書かれた随筆です。

    幼いときからせまく細く生きてきた、だなんて謙遜だと思った。
    四季の移り変わりや、生活のほんの身近なことに目を向けていることのほうが、むしろ視野が広く、おおらかなことではないかと思う。
    だから、この文章を読んでいると、心穏やかな、落ち着いた気持ちになれました。

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    2013年04月06日
  • きもの(新潮文庫)

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    日常生活からこんなにも多くのことが学べるのかと驚嘆した。大正時代の話で、人間の品位みたいなものを感じ取っていく主人公が素敵。好きなものは好き、嫌いなものは嫌いという態度も好き。おばあさんが主人公に対して、日常での出来事が意味するもの、各種ハレの舞台での振舞い方、人との接し方等を教えていく。それは主人公に対し手でだけではなく、私にとっても有意義なものであった。続きが気になる作品。

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    2012年08月09日
  • 草の花 現代日本のエッセイ

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    ネタバレ

    幸田文の文章にはほんとうに何度も頷かされるが、今回は特に「夜長ばなし」になるほどなあと思わされた。

    ・「(映画と違い)物語は耳からはいって眼の底で立体化され、立体化された人物たちはまことに静かにじわっと心の奥へにじみこんでくるのです。話にはスローテムポの浸みこみかたがあっておもしろいものです。」
    これはテレビと書物の違いでもあると思う。

    ・父・露伴の、ながい源平物語を語る句には「春の夜」より「秋の夜」とする方が良いという添削と、その違いを娘にわからせようとする著者への「無理におとなの承知している感覚なんかを、子供に押しつけるな。...子供が自然に秋の夜というものを理解するときを静かに見きわ

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    2012年04月07日
  • 崩れ

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    72歳、52キロの著者が、日本中の「崩れ」を見に行く。建設省富士砂防工事事務所の所長に「崩れるとか崩壊とかいうのは、どういうことなんですか」と聞くと、地質的に弱いところという答えがかえってきた。それを聞いた幸田さんは、弱い、という一語がはっとするほど響いてきたという。
    「読んだのではただ通り過ぎた 弱い が、語られてぴたりと定着し、しかも目の中にはあの大谷崩れの寂莫とした姿が浮かんでおり、巨大なエネルギーは弱さから発している、という感動と会得があってうれしかった。」
    P71も印象的だったな。あの地震があってからすぐに読んだので特に。
    「人は何の彼のと偉そうにしていても、足の下に動かない土という

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    2011年04月29日
  • 台所のおと みそっかす

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    幸田文さんと言えば、幸田露伴のお嬢さん。  ず~っと昔、幸田露伴の「五重塔」を読んだ直後に、そのお嬢さんである幸田文さんの「父・こんなこと」を読んでみようとしたことがあるのですが、当時の KiKi にはどことなく古臭く感じられる一切合財(特に露伴さんのあれこれ)が何となくうざったくて、なかなか前へと読み進めることができず挫折したというありがたくない思い出があります。  そして当時の KiKi は日本人の女流作家の描く日常的なアレコレを言語化したものに対する興味がすこぶる薄くて、そのことが「読み進められない挫折感」をさらに助長しました。  何て言うか、生活臭が強すぎてつまんない・・・・というよう

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    2010年10月22日
  • 流れる(新潮文庫)

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    初めて読んだのは中学の時です。難しい話ではないけれど、古い言い回しや物の名前等、分からない部分も結構ありました。
    でも時にたゆたい、時に蕩々と流れる文章のリズムが心地よくて。
    何度も読み返し、少しずつ腑に落ちて、そのたび味わいが増すように思います。

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    2018年05月24日
  • 台所のおと みそっかす

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    淡々としているのにあまりに美しく力強く迫ってくる文章に心がふるえます
    読み始めてからずっと感動しっぱなしでした
    これが100年前の人の文章なのか あまりの新鮮さに戸惑います

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    2009年10月04日
  • 父・こんなこと(新潮文庫)

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    この本は幸田文の父、幸田露伴の最期を刻々とつづった作品です。露伴がだんだんと老い衰え病みそして帰らぬ人となるさまを文の書く文章を通して感ずるとき、私は同時に露伴ではなく、私の父との別れを思いました。いずれもう二度と会えなくなるときがくるのだと幹事、切なく胸が苦しくなりました。全くの他人の話なのに不思議なものです。生きていく中で避けては通れない別れの苦しみを痛感させてくれる本です。(学校保健フォーラムvol.9 No.83 2005 1月号)

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    2009年10月04日
  • 父・こんなこと(新潮文庫)

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    父のことはよく知らないままに亡くなってしまった。
    時が経って、自分の中に父が居る、父の血を感じるのです。

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    2009年10月04日
  • 台所のおと みそっかす

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    エッセイ・随筆を読むと、幸田文サンがとてもキチンとした、丁寧な女性だというのが伝わってきました。そして小説を読むと、幸田文サンをとても好きになりました。小説に出てくる人物の丁寧さ、素直さ、暖かさ、姿勢にはハッとなります。

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    2009年10月04日
  • きもの(新潮文庫)

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    できれば続きを読みたかったです。ここに登場するおばあさんの「かわいい腰紐をつかってほしい。」という言葉がなんだか印象的で私もそうありたいと思いました。着物話にとどまらず、ここにでてくるお婆さんは素晴らしい事を伝えてくれます。。
    人に物を送るとき不用品を送っていながら、親切した気でいる事をとがめるシーンがありましたが、こういう今、人多いのですよ。

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    2012年08月20日
  • 父・こんなこと(新潮文庫)

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    幸田文の文体が好きです。
    新鮮な形容のしかたをします。
    感性の独自で繊細なところや、それに対して使う言葉が読むたびに心地よいのです。

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    2009年10月04日
  • 木(新潮文庫)

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    新潮文庫の紹介文を引用すれば
    人それぞれに履歴書があるように、
    木にもそれがある。

    それを基調として、北海道から屋久島まで
    木々を訪ね歩いた随筆集。

    映画『PERFECT DAYS』
    ヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』(2023年公開)では、主人公・平山(役所広司)が日常の中で穏やかに生きる姿が描かれますが、彼が手に取り、繰り返し読む文庫本が幸田文『木』でした 。
    幸田文さんは、幸田露伴の次女。
    幸田露伴からの木々の教育は受けていたとしても
    文章を書き始めたのは、離婚して父を介護し
    その父の死を契機として。

    初出は、丸善の機関誌『學鐙』
    どうして、それが今年の新潮文庫

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    2025年10月31日
  • 雀の手帖(新潮文庫)

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    心地いいんだよな。

    等身大だ。背伸びもしなければ、矮小になることもない。それでもって、さまざまな事物に魂を見て、ご縁を見出す。

    一体どうやったらその視点が身につくのか、羨ましい限りだ。

    ご家族の本も読んでみたい。文は遺伝するのか。気になる。

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    2025年09月30日
  • 木(新潮文庫)

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     作者が折に触れて書いてきた木に対しての15の随筆を死後にまとめたエッセイ集。
     作者の深い洞察、素直な視点、少しのユーモアが混じっており、1編1編がとても読み応えのあるものとなっていた。
     「木のきもの」という着物の知識が問われる章もあるにはあったが、基本的には知識がなくても読んでいて楽しめる内容となっており、ストレスなく読めた。
     個人的には「ひのき」の章が好きだった。木の歴史というものに触れ人の性格と似た部分があることを匂わせながら、大工からするとどうしようもないアテという材木の頑固者への作者の思いやりのある視点やそれでもヒノキであることを否応なく思い知らされるハードボイルドさが、神妙な

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    2025年06月14日
  • おとうと(新潮文庫)

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    姉の気苦労が絶えなかった。
    家族はバラバラ。無関心な父、キリスト教徒の継母、結核にかかる弟。
    そして私がなんとかしなければと必死に家族を思っている主人公の姉。
    悲劇的物語と感じる程ではなく、それぞれの関係性、状況が物語の進行と共に良くも悪くも変化します。

    作者の幸田文は、文章が流麗で読みやすいものが多いので他の作品などもおすすめです。

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    2025年05月17日
  • 木(新潮文庫)

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    ネタバレ

    「紅葉黄葉ほど美しい別れ、あるいは終り、ほかにあるまい。いのちの退き際に、華やかに装いを改め、さりげなく、ためらいもなく、居場所をはなれてしまう。はなれて散り敷けば、どこに舞いおりようと、姿よく納まって美しい」

    今年はどうしたことだろう。GWも過ぎてしまった五月の今日も、五月晴れという言葉があるにもかかわらず、まるで似つかわしくない天候だった。気持ちよく晴れ渡る青空など、今年の五月に限っては、とんとお目にかかれない。いつになっても春先のことわりの如く、夕刻から夜半にかけては気温が下がり、肌寒く、明け方の空が薄々と白んでくる時刻ばかりが日増しに早くなるばかりの季節感。夜更かしというものでもなく

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    2025年05月12日
  • 木(新潮文庫)

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    読んでいると気持ちが凛としてくる
    自分が今まで目にしてきたいろいろな木々が思い出される
    薄い本で、何度読んでも飽きないので、持ち歩く事が多い

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    2025年04月30日