幸田文のレビュー一覧
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美しい日本語が読みたくて買いました。
幸田文のことは「露伴の娘」で「随筆家」「着物の人」
くらいのイメージしかなくて・・・
でも、この本読んでひっくり返った!
なんて雄々しい小説を書く人だろう。
その雄々しさは明治女の雄々しさです。
キリキリと働く。いちぶの隙もないくらい完璧を目指す。
最高の仕事(家庭のこと)をして、
手柄はそっと一人あるいは女同士で噛みしめる。
そんな生き様の、なんて美しいことか。
「私」の一人称で大作家の「父」のことを書いたりするから、
私小説かと思うけど、どうやらフィクションらしい。
そのへんの曖昧さも、幸田文の力量ってことなんでしょう。
「姦声」と「段」はフィクシ -
Posted by ブクログ
ネタバレ幸田文の文章にはほんとうに何度も頷かされるが、今回は特に「夜長ばなし」になるほどなあと思わされた。
・「(映画と違い)物語は耳からはいって眼の底で立体化され、立体化された人物たちはまことに静かにじわっと心の奥へにじみこんでくるのです。話にはスローテムポの浸みこみかたがあっておもしろいものです。」
これはテレビと書物の違いでもあると思う。
・父・露伴の、ながい源平物語を語る句には「春の夜」より「秋の夜」とする方が良いという添削と、その違いを娘にわからせようとする著者への「無理におとなの承知している感覚なんかを、子供に押しつけるな。...子供が自然に秋の夜というものを理解するときを静かに見きわ -
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72歳、52キロの著者が、日本中の「崩れ」を見に行く。建設省富士砂防工事事務所の所長に「崩れるとか崩壊とかいうのは、どういうことなんですか」と聞くと、地質的に弱いところという答えがかえってきた。それを聞いた幸田さんは、弱い、という一語がはっとするほど響いてきたという。
「読んだのではただ通り過ぎた 弱い が、語られてぴたりと定着し、しかも目の中にはあの大谷崩れの寂莫とした姿が浮かんでおり、巨大なエネルギーは弱さから発している、という感動と会得があってうれしかった。」
P71も印象的だったな。あの地震があってからすぐに読んだので特に。
「人は何の彼のと偉そうにしていても、足の下に動かない土という -
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幸田文さんと言えば、幸田露伴のお嬢さん。 ず~っと昔、幸田露伴の「五重塔」を読んだ直後に、そのお嬢さんである幸田文さんの「父・こんなこと」を読んでみようとしたことがあるのですが、当時の KiKi にはどことなく古臭く感じられる一切合財(特に露伴さんのあれこれ)が何となくうざったくて、なかなか前へと読み進めることができず挫折したというありがたくない思い出があります。 そして当時の KiKi は日本人の女流作家の描く日常的なアレコレを言語化したものに対する興味がすこぶる薄くて、そのことが「読み進められない挫折感」をさらに助長しました。 何て言うか、生活臭が強すぎてつまんない・・・・というよう
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新潮文庫の紹介文を引用すれば
人それぞれに履歴書があるように、
木にもそれがある。
それを基調として、北海道から屋久島まで
木々を訪ね歩いた随筆集。
映画『PERFECT DAYS』
ヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』(2023年公開)では、主人公・平山(役所広司)が日常の中で穏やかに生きる姿が描かれますが、彼が手に取り、繰り返し読む文庫本が幸田文『木』でした 。
幸田文さんは、幸田露伴の次女。
幸田露伴からの木々の教育は受けていたとしても
文章を書き始めたのは、離婚して父を介護し
その父の死を契機として。
初出は、丸善の機関誌『學鐙』
どうして、それが今年の新潮文庫 -
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作者が折に触れて書いてきた木に対しての15の随筆を死後にまとめたエッセイ集。
作者の深い洞察、素直な視点、少しのユーモアが混じっており、1編1編がとても読み応えのあるものとなっていた。
「木のきもの」という着物の知識が問われる章もあるにはあったが、基本的には知識がなくても読んでいて楽しめる内容となっており、ストレスなく読めた。
個人的には「ひのき」の章が好きだった。木の歴史というものに触れ人の性格と似た部分があることを匂わせながら、大工からするとどうしようもないアテという材木の頑固者への作者の思いやりのある視点やそれでもヒノキであることを否応なく思い知らされるハードボイルドさが、神妙な -
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ネタバレ「紅葉黄葉ほど美しい別れ、あるいは終り、ほかにあるまい。いのちの退き際に、華やかに装いを改め、さりげなく、ためらいもなく、居場所をはなれてしまう。はなれて散り敷けば、どこに舞いおりようと、姿よく納まって美しい」
今年はどうしたことだろう。GWも過ぎてしまった五月の今日も、五月晴れという言葉があるにもかかわらず、まるで似つかわしくない天候だった。気持ちよく晴れ渡る青空など、今年の五月に限っては、とんとお目にかかれない。いつになっても春先のことわりの如く、夕刻から夜半にかけては気温が下がり、肌寒く、明け方の空が薄々と白んでくる時刻ばかりが日増しに早くなるばかりの季節感。夜更かしというものでもなく