【感想・ネタバレ】父・こんなこと(新潮文庫)のレビュー

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Posted by ブクログ

 幸田文さんの父、幸田露伴氏は戦中の大空襲以来、寝たきりになってしまわれた。寝たきりでもそれ以前の規則正しい生活は変わらず、毎朝同じ時間に目覚められて、すぐに文さんと娘の玉子さんが、洗面の用意をし、煙草、ほうじ茶、朝食、搾りたての牛乳、新聞を決まった順番に用意するなど、厳しいお父上の看護はなかなか大変だった。
 いよいよ重篤になられたのは、戦後二年目の昭和22年の夏だった。ある朝血を吐かれ、それを見て文さんは、いよいよお父様に死が迫ってきたと確信した。
 急いで親しい人や、医者に知らせなければとあたふたとする。今のように携帯どころか、固定電話もないので、電車に乗って呼びに行く。猛暑の夏でただでさえ蚊が多いのに、蚊帳が切れていること、蚊取り線香がないことに気づき、そのことでも慌てる。氷をたべることを軽蔑していた父親が口のなかが気持ち悪く、氷を食べたいと言うので、猛暑の中、氷を求めて、あっちの氷屋、こっちの氷屋とうろうろする。やっと買い求めた氷を溶けないように持ち帰るのも大変。お父様が食べ物をこぼされた時に、着物や袷やお布団を洗うのも大変。お父様はそんなにきれいにしなくて良いというが、国宝のような父親なので、お見舞いに訪れる人の手前、粗末な格好はさせられない。
そして亡くなる二日くらい前に、お父様が誕生日であることを思い出し、赤飯や尾頭付きを用意していなかったことに愕然とする。何とか、用意出来た赤ご飯と小さな鯛の載った、それまでで一番粗末な祝い膳を見せると、父親は食べられなかったがニッコリした。文さんは子供の中ではお父様に可愛がられなかった子供であったらしいが(可愛がられた姉と弟は早くに他界した)、その時のお父様のニッコリで、今まで積もってきた気持ちが和らいだそうである。
 こんなお父様の介護は大変だなあと思ったが、文さんは優しいなあとも思った。
 今なら、スマホも冷凍庫もあるし、(私の住んでる所は)病院だってドラッグストアだってあちこちにあるし、交通もかなり便利なのに、私は要介護の母にも、もう亡くなった父にもこんなに優しくしていない。文さんの時代と違って、女性が外で働くことを本人以上に理解してくれ、元気な時は孫をよく預かってくれたのに。
 以上はこの本の前半の「父」の感想。お父様の幸田露伴氏の介護から他界、お葬式までを書いたもの。感動しながらも、露伴氏は古い時代の固い、厳しい、わがままな男性で、女性に自分の世話をさせすぎだ。「男尊女卑」の時代の人だと思った。
 ところが、後半の「こんなこと」を読んで、誤解していたことが分かった。
文さんに、掃除、料理、障子の張替えなど、ありとあらゆる家事を仕込んだのは、お父様の露伴氏だったのだ。露伴氏はその母親に徹底的に仕込まれたということで、掃除ならまず、ハタキの作り方、障子の張替えなら、ハサミなどの道具を研いだり、糊を煮る所から(少し凝り性だったらしいが)徹底的に丁寧に教えた。文さんは反抗心を持ったが、露伴氏がやってみせる見本はあまりにも手際がよく、無駄がなく、美しかったので、歯が立たなかったそうである。
 文さんはいわゆるお嬢様なのに、普通のお嬢様に習わせるようなお茶やお華のお稽古ではなく、家事の一つ一つを修行のように奥深く教え込まれた。
「家事に追われるというのは何と惨めなことで、家事はこちらが先手になって追いまくるべきもの。自分を豊かにして楽しくするために女はもっと勉強しなくてはならない。能力と労力をあげて、本気で家事に集中すれば、勉強の時間は恐らく、必ず得られる。」というのが、幸田家の流儀だったそうだ。
難しいなあと思うが、今のように家電製品もなかった時代の大先輩の言葉に励まされる。
 解説に文さんの文章は誠実さが魅力だと書いてあったが、私もそう思った。飾り気はないが、細々とした記憶、国宝のようなお父様の死に直面したときの迷い、幼いときからずっと父親に気に入られたいと思っていた心情など、具体的な事実も自分の心のうちも誠実に書かれていることで美しいものが美しいと分かり、共感出来る。
 露伴氏の本は読んだことがないが、文さんによって残された幸田家の記録は私にとっては、文化財のような一冊である。




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2021年02月17日

Posted by ブクログ

この人の書く露伴は、気難しくて厳しくて、でもどこかユーモアがあって粋ですらある、ただ一人の、誰のでもないこの人の父親だ。
「偉大な作家」で包み隠すのではなく、真にこの人が見てきた、感じてきた父・露伴を描いたこの作品は、誰が書くよりも(もしかすると露伴本人よりも)作家・露伴の魅力を伝えている気がする。
こんなことを書いている私は、実のところ作家・露伴を知らない。
作家・露伴に触れた時、どう感じるのか。
今から楽しみでならない。

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2014年05月29日

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 父・幸田露伴の晩年と看取りをつづった「父―その死―」、父との日常の思い出をつづった「こんなこと」を収録した本。

 「父―その死―」では、父の看病で激しく揺れる筆者の思いがとても正直につづられている。時には憎しみを深く感じる一方で、別の時には心から憐れんで親身になる。その時々に移り変わる気分がつぶさに書かれて、嘘がないと感じた。頼られている、私がやらなければ誰がやるのかという気持ちと、肉体的な疲労や、もうやってられないという気持ち、さらに長年積み重なった父への愛憎がそこに加えられ掻き混ぜられた結果が、そうした感情のバリエーションとして表れるのだと思う。
 人が勧めることを試したいという父、氷を食べたいという父、その望みをかなえるためにあちこち奔走し、頭を下げて回る筆者とその周りの人。『台所のおと』でいくつか読んだ暗く辛い看病の話は、こうした実体験からできたのかと納得した。

 「こんなこと」では、子供のころからの父との思い出が書かれている。父・露伴は全く手厳しいし、弁が立つ。自分の怒りを人に向けるやつは下等だと普段は言っているくせに機嫌が悪いと怒られる、と愚痴っぽく書かれていたのには笑ってしまった。実際に父がこうだったらとんでもなく大変だが、読む分にはユーモラスで面白い。
 露伴自ら筆者にに家事を仕込む「あとみよそわか」はことに印象的だった。以前読んだ、昭和初期の家事方法の本にここからの引用が使われていたのを覚えている。はたきがけ、廊下の雑巾がけなんて今ではもうしないけれど、やれと言われたら私では絶対に露伴の気に入るようにはできない。だから、十四歳の筆者が悪戦苦闘するのに寄り添い、一緒になって小言を頂戴している気分になる。

 筆者にとって父との生活は気が抜けず辛いことも多かったが、どこか愛しい日々だったとも感じている、「こんなこと」全篇からそういう印象を受けた。その「絶対」だった父が死んでしまった後に思い出して書かれたからだろうか。

 おばさんになってからもばあさんになってからも読み返したい一冊。

父 ―その死―
(菅野の記/葬送の記/あとがき)

こんなこと
 あとみよそわか:掃除、障子の張り替え、薪割りや畑仕事など
 このよがくもん:浅草教育
 ずぼんぼ:父とする遊びの数々
 著物:着物(平成6年発行の文庫だが、全部「着→著」になっていた)
 正月記
 啐啄:露伴・文子流性教育
 おもいで二ツ:俳句

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2013年11月08日

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この本は幸田文の父、幸田露伴の最期を刻々とつづった作品です。露伴がだんだんと老い衰え病みそして帰らぬ人となるさまを文の書く文章を通して感ずるとき、私は同時に露伴ではなく、私の父との別れを思いました。いずれもう二度と会えなくなるときがくるのだと幹事、切なく胸が苦しくなりました。全くの他人の話なのに不思議なものです。生きていく中で避けては通れない別れの苦しみを痛感させてくれる本です。(学校保健フォーラムvol.9 No.83 2005 1月号)

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2009年10月04日

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父のことはよく知らないままに亡くなってしまった。
時が経って、自分の中に父が居る、父の血を感じるのです。

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2009年10月04日

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幸田文の文体が好きです。
新鮮な形容のしかたをします。
感性の独自で繊細なところや、それに対して使う言葉が読むたびに心地よいのです。

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2009年10月04日

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偉大な作家の娘が、父の事を書くという意味では現代の阿川佐和子と重なるけれど、またこれが本質的には随分と似ていることよ…片や出戻り、片や高齢結婚という事も何となく被る。

作家であるからして、家にいて書き物をしているという事は、サラリーマンの父よりもよっぽど多くの時間を一緒に過ごしているし、作家という職業柄、知識豊富で、多少なりとも頭でっかちな所があり、一番言いやすい家族には色々な要求をしてくるという共通点が要因とも思える…

それにしても、阿川家も幸田家もなんだかんだ言いながらも、父親を中心とした家庭における楽しい日常がしのばれる。

さて、振り返って自分は子供達に楽しかった、タメになった思い出を残せてやれただろうかと思うと、甚だ心許ない…特に一緒に過ごせた時間が圧倒的に少なかったと反省するが、後悔先に立たずである…

読後、当然のことながら、幸田露伴の作品を読んでみたくなってしまう。こんな感じで死ぬまでの読みたい本のリストが益々大きくなってしまう。欲のかたまりであっても、こればかりは今から達成不可能な目標と諦めざるを得ないな〜…



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2023年04月28日

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父、幸田露伴の娘視点の話。
家事を仕込んでくれたのは露伴だったのか・・・
父の介護は大変だっただろう。父との思い出話面白かったです。
身近な人が亡くなってしまうと色んなことを思い出しますね。

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2023年01月07日

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父:恥ずかしさから父親と向き合って生きていくことをあまりしてこなかったが、これを読んでそれを少ししなければいけないと感じた。
また、作者の表現に植物が多く用いられるところは作者らしくてとても好き。

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2021年04月06日

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父の病臥、逝去の前後とその後。
娘・幸田文による幸田露伴の記録と想い出の記。
・父ーその死ー
    菅野の記 葬送の記  あとがき
・こんなこと
    あとみよそわか このよがくもん ずぼんぼ 著物
    正月記 そつ(口偏に卒)啄 おもいで二ツ  あとがき
巻末の解説は塩谷 賛。文中に登場する露伴の助手、土橋さん。
「父ーその死ー」では、病で死への道を辿る父と
それを目の当たりにする娘。死、そして葬送、火葬、葬儀。
愚痴、怒り、悲しみ、戸惑い、後悔、迷い等々、
愛憎入り混じった想いが赤裸々に綴られています。
「こんなこと」では父との思い出。
14~17,8歳の頃に家事一般を露伴から習う話。
そこに垣間見えるのは、露伴の年少の頃の生い立ち。
正月、猥談、俳諧等、日常の出来事に交えての、
弟や継母、娘との関わりと感情についても綴られています。
小説家露伴は、私には露伴なるちちおやである。
だからこその感情をむき出しにした記録は、忘れることも
捨てることも出来ない、大切な記録なのでしょう。

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2020年05月25日

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NHK番組「グレーテルのかまど」で紹介されていた幸田露伴と幸田文の関係を見て興味を持ち読みました。

露伴が亡くなった時の話から始まり、思い出を回想する形式なので、本全体を通してお父様を懐かしむような寂しさと愛おしさが感じられました。丁度自分の父親の病気が発覚したタイミングで読み進めたため、より一層その雰囲気が身に迫る思いでした。

文豪の父親、というと恐ろしく近寄りがたい人物というイメージがありましたが、この本を読む限り、厳しくはあるものの怖いということはなく、シングルファザーとして子どもと上手に接していたのだなと思います。文豪は世間離れしているという勝手なイメージもありましたが、実学をしっかりと教えていたのだなと驚きました。

父親とじっくり話したい気分になりましたが、、実際は難しいかな。

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2015年04月22日

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【本の内容】
幸田露伴の死の模様を描いた「父」。

父と娘の日常を生き生きと伝える「こんなこと」。

偉大な父を偲ぶ著者の思いが伝わる記録文学。

[ 目次 ]


[ POP ]
家事全般に人づきあい、果ては男女のことまでも、あらゆる作法を父・幸田露伴から習ったという著者。

「こんなこと」に書かれている露伴の物言いは大和美人になるための教科書のよう。

「薪割りをしていても女は美でなくてはいけない」って、所作が雑な私としては反省しきり。

[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2014年08月24日

Posted by ブクログ

「父」
 「じゃ、おれはもう死んじゃうよ」、死を身近に感ずる年齢の自分もこういう風に行けたらよい。文さんの、時にはユーモアすら感ずる看病の七転八倒が如何にもであり、こういう人が傍に居た父親露伴は幸せ者かも知れない
「こんなこと」
「おまえが馬鹿なのはものをよまないからだ」幸田親子の戦いの模様が誠実に父を愛する子の立場から描かれていく
子が親の云う事を利くのは子が親を愛しているからだ。今の子が言う事を利かないのは親が尊敬されていないからなのか。となると・・・・。

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2013年11月07日

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父を題材にした2編。再読です。最初に出会ったのは中学生の時、国語の先生に薦められて。名文というものは、こういうものですよ。と言われるまま手に取り、当時はさほど内容には興味を持てず、ああ、文章ってこういうものなのね。と、半ば作業的に読んだものでした。そしてそれからだいぶ年月を経た今回。身近な人の死に幾度か触れ、健在ながらも老いていく父を持つ身になり、ようやく文面から、情景や心境に実体を感じる事ができるようになってきました。またしばらく時を置いて読み返したらどう変わるか。10年後くらいに、また再読したいです。

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2012年09月17日

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幸田露伴の実生活に基づく像が見えてきて、興味深かった。
幸田文さんの悪戦苦闘の日々を通して、昔の父親は絶対と考えられていたころの時代の空気を感じることが出来た。
現在のわれわれの世代ではあまり父親の威厳というものは強く感じる機会はないが、この作品を読んで、古き良き日本を感じることが出来た。

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2012年01月05日

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親子の繋がりというものはこんなに深いものなのか、と読み終わってため息。
今の時代…と言っていいのか、そんじょそこらにはない繋がりだと思います。

私は親をこんな風にして看取ることが出来るだろうか、と考え込んでしまった一冊。

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2011年09月28日

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国語のテスト問題で抜粋されていた。
「この文章、好きだ!」と思った。淡々としているけれど、日本語が美しい。
内容もおもしろかった。父であり作家であった幸田露伴との思い出を綴る。
「あとみよそわか」の章、父親から掃除の仕方を習っている場面だったと思う。
たかが掃除ではない。作者も「掃除の稽古」と書いている。
まず手始めに、掃除道具の改良から。そして、掃除の手順に加えて、見目の良いしぐさも要求される。
はたきの音がうるさいと注意され、父が言うことには「物事は何でもいつの間にこの仕事が出来たというように際立たないのがいい。」
そして、ぞうきんがけに至っては、難易度が高いということですぐには教えてもらえない。

現代では考えられないことばかり。
でも、私が今まで出会ったおばあちゃん世代の掃除や生活の所作には通じるところがある。
「丁寧に、手間を惜しまない」ということは、素晴らしい。
昔のほうが、生活も余裕がなく忙しかったと思う。
その中で、淡々と日々積み重ねていくこと。
昔は当たり前だったのかもしれないけれど、便利な世の中に慣れきった私はぐうたらしてるから。
幸田文の作品を読みながら、昔の人の感性に惚れ惚れしてため息をつきます。

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2010年09月06日

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再読しました。幼い頃に父が急死したので、こんな送り方もあるのかと。父子の濃密な関係に羨ましかったり辛かったり。

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2010年03月09日

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父である幸田露伴との幼少時代の思い出から父の最期のときの思い出までを綴ったエッセイ集です。自分が親になったときに、父、露伴のようにに自分の子供をしつけることが出来るのだろうか。

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2009年10月04日

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全編通しての美しいリズミカルな日本語が印象深い。

「父」はすこし読むのがつらい。
「こんなこと」は、壮年の日の幸田露伴の、文子への折り目正しい家事指南と
はっちゃけた愛情の注ぎっぷりがまぶしい感じ。

時々読み返したくなる本。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

この人の繊細な言葉選びや描写が好き。『父』と『こんなこと』の二つが入っていて、両方とも著者の父親である幸田露伴について書いてある。
父親で大作家の本当の末尾までしっかりと書き込まれた私小説。

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2009年10月07日

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 日記作品。明治を代表する人物「幸田露伴」、その寂しい晩年をみまもる娘の日記。だけどとてもみずみずしい。 「みずみずしい」なんて表現はきらいだけど、この文章には「みずみずしい」ってことばがとても似合っている。どの辺りがみずみずしいかって、作者のきもちがころころ変わっていくところ。たとえば死にゆく父を介護していても作者のきもちはゆれうごく。泣いたかと思ったら、次の瞬間には笑ってる。一日の気持ちの移り変わりをそのまま文にしている。 こういうのって、なかなかできない。だいたい「死」を前にすると、たいていの作家はなにか重苦しいテーマを書いてしまう。だけどこの作者はそんなの書いてない。じゃあ何を書いてるかっていうと、それは「気分」。露伴を看取る一日の「気分」を書いている。気分だからころころ変わる。怒ったり、悲しんだり、喜んだり、さまざま。そしてそんな気分といっしょに描かれた出来事は、ひとつひとつがとても印象的だった。特に自分は、氷を買いに行く場面がいちばん印象に残っている。 この作者は小説も書いているけれど、このエッセイ「父」がいちばん好きだ。こんなにうまく「気分」を書けた作品ってなかなかないと思う。(けー)

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2009年10月04日

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幸田露伴は厳しい父ちゃんですが、
素敵だなと思った。
はたきをかける格好、掃除の音、
「女はいつでも見栄えがよくなくてはいけない」「何のために音楽をならっているんだ」
って娘に言えるお父さんは今、どれくらいいるのでしょうか…?

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

父と娘

本当は別の一冊を読みたいと思っていたけど
自分も父を亡くしていることもあって
こちらを先に読んでみたくなった。


父、露伴の病と葬儀の記録。
そして父娘の思い出。


作家である露伴の娘だった幸田文にとって
書くことは無意識のうちに彼女自身の中に
すでにあり、ごく自然なことだったんだと思う。



そして作者はメモ魔だったのでは…
それを示すような一節が度々出てくる。


父、露伴から教えられたことや出来事について
いくつか書いているけど、
それもその当時の湧き出した
思いが原動力となり一気に書かれている気がした。
休みなく呼吸することすら忘れてひたすら書き続けた、そんな印象だった。


解説では「誠実」という言葉が使われていたけど、
描写の細かさは作者のまっすぐな気持ちの表れのようにわたしも思う。


単なる「文字」でしかないけど、
思いは文字に表れるから。


わたしも父が入院していたおよそ一年間、
日記をつけていればよかった。


毎日病院通いしていたから、
一番近くに父を感じていたし
振り返れば大事な父娘の時間だった。



わたしのメモ魔は父譲りだ。
父母ともにその節はあれど、父の手帳の書き方や細かさはわたしのそれと同じである。



こうやって親と子は、本人たちが気づく
ずっとずっと前からすでに繋がっている。


父と娘のつながりを改めて感じた一冊。

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2020年06月04日

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父の死を受けて、遺された家族としての感情を 素直に表現し、故人の生きた事実を 確かめるように 忠実に再現し 回想している。親から自分か受け継ぎ、次へつなげるべき命の尊さを感じた

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2016年12月11日

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ネタバレ

誠実はこの著者の修正である。
のあとがきが残る?

死にゆく人をみつて感じたまま、向き合った言葉で綴られて、こちらは息をひそめて読み進めるしかなかった。

薪を割ることも父からこってり習い、
その斧、その木を手で感じきっちりとしたためるほどだから、「木」で反りもがく「アテ」に心揺さぶられていたのかと納得した。

物事や己の心をしっとりみつめる文章、正直な文章を書きたいと思う。あらためて。

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2016年03月13日

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こんなこと の中で説明される家事が、特にすてき。これで女性としてのたしなみを身につけられたらと思う。

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2014年04月14日

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「父」菅野の記 は胸にせまるものがあった。また、全体に折り目正しく生きるということが繰り返し描かれており、今の自分の生活が恥ずかしくなった。幸田露伴と娘 文の関係が、まだ私にはピンとこない。恋愛のようにも…思えてしまったり。ぜひ他の本も読んでみたい。青木玉も含めて。

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2013年10月22日

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幸田文さんが、父・露伴さんの思い出を綴った本。露伴晩年の闘病生活の看病と看取りは気持ちが生々しく、祖母を看取ったときのことを思い出しました。それにしても、幸田文さんの文章って、心のなかそのままで、面白いです。

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2013年08月24日

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幸田文が、父・幸田露伴にまつわる思い出を綴った本。一風変わった露伴に対する娘としての反抗、愛情にジンとなる。

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2011年01月22日

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