ブックライブでは、JavaScriptがOFFになっているとご利用いただけない機能があります。JavaScriptを有効にしてご利用ください。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで100万冊以上配信中!
来店pt
閲覧履歴
My本棚
カート
フォロー
クーポン
Myページ
2pt
父・露伴の死にゆく姿と、続く葬儀の模様を綴り、刻々の死を真正面から見つめた者の心の記録とした『父―その死―』。掃除のあとで、念を入れるために唱えなければならない呪文「あとみよそわか」のことなど、露伴父子の日常の機微を伝えるエピソード七話からなる『こんなこと』。誠実に生き、誠実に父を愛し、誠実に反抗した娘が、偉大な父をしのんで書き上げた、清々しいまでの記録文学。
アプリ試し読みはこちら
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
幸田文さんの父、幸田露伴氏は戦中の大空襲以来、寝たきりになってしまわれた。寝たきりでもそれ以前の規則正しい生活は変わらず、毎朝同じ時間に目覚められて、すぐに文さんと娘の玉子さんが、洗面の用意をし、煙草、ほうじ茶、朝食、搾りたての牛乳、新聞を決まった順番に用意するなど、厳しいお父上の看護はなかなか大...続きを読む変だった。 いよいよ重篤になられたのは、戦後二年目の昭和22年の夏だった。ある朝血を吐かれ、それを見て文さんは、いよいよお父様に死が迫ってきたと確信した。 急いで親しい人や、医者に知らせなければとあたふたとする。今のように携帯どころか、固定電話もないので、電車に乗って呼びに行く。猛暑の夏でただでさえ蚊が多いのに、蚊帳が切れていること、蚊取り線香がないことに気づき、そのことでも慌てる。氷をたべることを軽蔑していた父親が口のなかが気持ち悪く、氷を食べたいと言うので、猛暑の中、氷を求めて、あっちの氷屋、こっちの氷屋とうろうろする。やっと買い求めた氷を溶けないように持ち帰るのも大変。お父様が食べ物をこぼされた時に、着物や袷やお布団を洗うのも大変。お父様はそんなにきれいにしなくて良いというが、国宝のような父親なので、お見舞いに訪れる人の手前、粗末な格好はさせられない。 そして亡くなる二日くらい前に、お父様が誕生日であることを思い出し、赤飯や尾頭付きを用意していなかったことに愕然とする。何とか、用意出来た赤ご飯と小さな鯛の載った、それまでで一番粗末な祝い膳を見せると、父親は食べられなかったがニッコリした。文さんは子供の中ではお父様に可愛がられなかった子供であったらしいが(可愛がられた姉と弟は早くに他界した)、その時のお父様のニッコリで、今まで積もってきた気持ちが和らいだそうである。 こんなお父様の介護は大変だなあと思ったが、文さんは優しいなあとも思った。 今なら、スマホも冷凍庫もあるし、(私の住んでる所は)病院だってドラッグストアだってあちこちにあるし、交通もかなり便利なのに、私は要介護の母にも、もう亡くなった父にもこんなに優しくしていない。文さんの時代と違って、女性が外で働くことを本人以上に理解してくれ、元気な時は孫をよく預かってくれたのに。 以上はこの本の前半の「父」の感想。お父様の幸田露伴氏の介護から他界、お葬式までを書いたもの。感動しながらも、露伴氏は古い時代の固い、厳しい、わがままな男性で、女性に自分の世話をさせすぎだ。「男尊女卑」の時代の人だと思った。 ところが、後半の「こんなこと」を読んで、誤解していたことが分かった。 文さんに、掃除、料理、障子の張替えなど、ありとあらゆる家事を仕込んだのは、お父様の露伴氏だったのだ。露伴氏はその母親に徹底的に仕込まれたということで、掃除ならまず、ハタキの作り方、障子の張替えなら、ハサミなどの道具を研いだり、糊を煮る所から(少し凝り性だったらしいが)徹底的に丁寧に教えた。文さんは反抗心を持ったが、露伴氏がやってみせる見本はあまりにも手際がよく、無駄がなく、美しかったので、歯が立たなかったそうである。 文さんはいわゆるお嬢様なのに、普通のお嬢様に習わせるようなお茶やお華のお稽古ではなく、家事の一つ一つを修行のように奥深く教え込まれた。 「家事に追われるというのは何と惨めなことで、家事はこちらが先手になって追いまくるべきもの。自分を豊かにして楽しくするために女はもっと勉強しなくてはならない。能力と労力をあげて、本気で家事に集中すれば、勉強の時間は恐らく、必ず得られる。」というのが、幸田家の流儀だったそうだ。 難しいなあと思うが、今のように家電製品もなかった時代の大先輩の言葉に励まされる。 解説に文さんの文章は誠実さが魅力だと書いてあったが、私もそう思った。飾り気はないが、細々とした記憶、国宝のようなお父様の死に直面したときの迷い、幼いときからずっと父親に気に入られたいと思っていた心情など、具体的な事実も自分の心のうちも誠実に書かれていることで美しいものが美しいと分かり、共感出来る。 露伴氏の本は読んだことがないが、文さんによって残された幸田家の記録は私にとっては、文化財のような一冊である。
この人の書く露伴は、気難しくて厳しくて、でもどこかユーモアがあって粋ですらある、ただ一人の、誰のでもないこの人の父親だ。 「偉大な作家」で包み隠すのではなく、真にこの人が見てきた、感じてきた父・露伴を描いたこの作品は、誰が書くよりも(もしかすると露伴本人よりも)作家・露伴の魅力を伝えている気がする。...続きを読む こんなことを書いている私は、実のところ作家・露伴を知らない。 作家・露伴に触れた時、どう感じるのか。 今から楽しみでならない。
父・幸田露伴の晩年と看取りをつづった「父―その死―」、父との日常の思い出をつづった「こんなこと」を収録した本。 「父―その死―」では、父の看病で激しく揺れる筆者の思いがとても正直につづられている。時には憎しみを深く感じる一方で、別の時には心から憐れんで親身になる。その時々に移り変わる気分がつぶ...続きを読むさに書かれて、嘘がないと感じた。頼られている、私がやらなければ誰がやるのかという気持ちと、肉体的な疲労や、もうやってられないという気持ち、さらに長年積み重なった父への愛憎がそこに加えられ掻き混ぜられた結果が、そうした感情のバリエーションとして表れるのだと思う。 人が勧めることを試したいという父、氷を食べたいという父、その望みをかなえるためにあちこち奔走し、頭を下げて回る筆者とその周りの人。『台所のおと』でいくつか読んだ暗く辛い看病の話は、こうした実体験からできたのかと納得した。 「こんなこと」では、子供のころからの父との思い出が書かれている。父・露伴は全く手厳しいし、弁が立つ。自分の怒りを人に向けるやつは下等だと普段は言っているくせに機嫌が悪いと怒られる、と愚痴っぽく書かれていたのには笑ってしまった。実際に父がこうだったらとんでもなく大変だが、読む分にはユーモラスで面白い。 露伴自ら筆者にに家事を仕込む「あとみよそわか」はことに印象的だった。以前読んだ、昭和初期の家事方法の本にここからの引用が使われていたのを覚えている。はたきがけ、廊下の雑巾がけなんて今ではもうしないけれど、やれと言われたら私では絶対に露伴の気に入るようにはできない。だから、十四歳の筆者が悪戦苦闘するのに寄り添い、一緒になって小言を頂戴している気分になる。 筆者にとって父との生活は気が抜けず辛いことも多かったが、どこか愛しい日々だったとも感じている、「こんなこと」全篇からそういう印象を受けた。その「絶対」だった父が死んでしまった後に思い出して書かれたからだろうか。 おばさんになってからもばあさんになってからも読み返したい一冊。 父 ―その死― (菅野の記/葬送の記/あとがき) こんなこと あとみよそわか:掃除、障子の張り替え、薪割りや畑仕事など このよがくもん:浅草教育 ずぼんぼ:父とする遊びの数々 著物:着物(平成6年発行の文庫だが、全部「着→著」になっていた) 正月記 啐啄:露伴・文子流性教育 おもいで二ツ:俳句
この本は幸田文の父、幸田露伴の最期を刻々とつづった作品です。露伴がだんだんと老い衰え病みそして帰らぬ人となるさまを文の書く文章を通して感ずるとき、私は同時に露伴ではなく、私の父との別れを思いました。いずれもう二度と会えなくなるときがくるのだと幹事、切なく胸が苦しくなりました。全くの他人の話なのに不思...続きを読む議なものです。生きていく中で避けては通れない別れの苦しみを痛感させてくれる本です。(学校保健フォーラムvol.9 No.83 2005 1月号)
父のことはよく知らないままに亡くなってしまった。 時が経って、自分の中に父が居る、父の血を感じるのです。
幸田文の文体が好きです。 新鮮な形容のしかたをします。 感性の独自で繊細なところや、それに対して使う言葉が読むたびに心地よいのです。
偉大な作家の娘が、父の事を書くという意味では現代の阿川佐和子と重なるけれど、またこれが本質的には随分と似ていることよ…片や出戻り、片や高齢結婚という事も何となく被る。 作家であるからして、家にいて書き物をしているという事は、サラリーマンの父よりもよっぽど多くの時間を一緒に過ごしているし、作家という...続きを読む職業柄、知識豊富で、多少なりとも頭でっかちな所があり、一番言いやすい家族には色々な要求をしてくるという共通点が要因とも思える… それにしても、阿川家も幸田家もなんだかんだ言いながらも、父親を中心とした家庭における楽しい日常がしのばれる。 さて、振り返って自分は子供達に楽しかった、タメになった思い出を残せてやれただろうかと思うと、甚だ心許ない…特に一緒に過ごせた時間が圧倒的に少なかったと反省するが、後悔先に立たずである… 読後、当然のことながら、幸田露伴の作品を読んでみたくなってしまう。こんな感じで死ぬまでの読みたい本のリストが益々大きくなってしまう。欲のかたまりであっても、こればかりは今から達成不可能な目標と諦めざるを得ないな〜…
父、幸田露伴の娘視点の話。 家事を仕込んでくれたのは露伴だったのか・・・ 父の介護は大変だっただろう。父との思い出話面白かったです。 身近な人が亡くなってしまうと色んなことを思い出しますね。
父:恥ずかしさから父親と向き合って生きていくことをあまりしてこなかったが、これを読んでそれを少ししなければいけないと感じた。 また、作者の表現に植物が多く用いられるところは作者らしくてとても好き。
父の病臥、逝去の前後とその後。 娘・幸田文による幸田露伴の記録と想い出の記。 ・父ーその死ー 菅野の記 葬送の記 あとがき ・こんなこと あとみよそわか このよがくもん ずぼんぼ 著物 正月記 そつ(口偏に卒)啄 おもいで二ツ あとがき 巻末の解説は塩谷 賛。文中に登場す...続きを読むる露伴の助手、土橋さん。 「父ーその死ー」では、病で死への道を辿る父と それを目の当たりにする娘。死、そして葬送、火葬、葬儀。 愚痴、怒り、悲しみ、戸惑い、後悔、迷い等々、 愛憎入り混じった想いが赤裸々に綴られています。 「こんなこと」では父との思い出。 14~17,8歳の頃に家事一般を露伴から習う話。 そこに垣間見えるのは、露伴の年少の頃の生い立ち。 正月、猥談、俳諧等、日常の出来事に交えての、 弟や継母、娘との関わりと感情についても綴られています。 小説家露伴は、私には露伴なるちちおやである。 だからこその感情をむき出しにした記録は、忘れることも 捨てることも出来ない、大切な記録なのでしょう。
レビューをもっと見る
新刊やセール情報をお知らせします。
父・こんなこと(新潮文庫)
新刊情報をお知らせします。
幸田文
フォロー機能について
「新潮文庫」の最新刊一覧へ
「エッセイ・紀行」無料一覧へ
「エッセイ・紀行」ランキングの一覧へ
台所のおと 新装版
流れる(新潮文庫)
駅・栗いくつ
おとうと(新潮文庫)
男
回転どあ・東京と大阪と
木(新潮文庫)
季節のかたみ
「幸田文」のこれもおすすめ一覧へ
一覧 >>
▲父・こんなこと(新潮文庫) ページトップヘ