あらすじ
千代は喪服を著(き)るごとに美しさが冴えた。……「葬式の時だけ男と女が出会う、これも日本の女の一時代を語るものと云うのだろうか」――16歳から中年に到る主人公・千代の半生を、喪服に託し哀感を込めて綴る「黒い裾」。向嶋蝸牛庵と周りに住む人々を、明るく生き生きと弾みのある筆致で描き出し、端然とした人間の営みを伝える「糞土の墻」ほか、「勲章」「姦声」「雛」など、人生の機微を清新な文体で描く、幸田文学の味わい深い佳品8篇を収録した第一創作集。
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Posted by ブクログ
美しい日本語が読みたくて買いました。
幸田文のことは「露伴の娘」で「随筆家」「着物の人」
くらいのイメージしかなくて・・・
でも、この本読んでひっくり返った!
なんて雄々しい小説を書く人だろう。
その雄々しさは明治女の雄々しさです。
キリキリと働く。いちぶの隙もないくらい完璧を目指す。
最高の仕事(家庭のこと)をして、
手柄はそっと一人あるいは女同士で噛みしめる。
そんな生き様の、なんて美しいことか。
「私」の一人称で大作家の「父」のことを書いたりするから、
私小説かと思うけど、どうやらフィクションらしい。
そのへんの曖昧さも、幸田文の力量ってことなんでしょう。
「姦声」と「段」はフィクションってわかっていても、
本当にゾッとします。恐ろしいほど巧みな筆致です。
巻末の出久根さんの解説も見事なので、
ぜひ併せて読んでください。